表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】毒殺された世界無双の毒魔法使い  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/148

仰天


 ロンド達は更に進み、いよいよ公爵領まであと一日というところまでやってきた。

 間違えてエドゥアール辺境伯領に入ってしまわぬよう事前に何度も方角を確認していたキュッテが太鼓判を押すのだから、恐らく間違いはないのだろう。


 とうとう迎える最後の日。

 自分が間違いなく寝付くことができないとわかっていたロンドは、不寝番をすると主張し、二人を納得させた。

 そして迷いの森で過ごす最後の夜がやってくる――。



 エルフ達特製のテントの中で、マリーとキュッテの二人は横になっていた。

 討伐の報酬と友好の印ということで、エルフ達がロンドにプレゼントしてくれたのだ。


 だから本当ならロンドが使うべきなのだが……彼はほとんど使うことなく、基本的には外で樹や岩に座りながら寝ることが多い。


 自分にもしものことがないよう配慮しての行動だということは、マリーにだってわかっている。


 けどそれだけでは、到底納得はできない。理解はできても、心の中にあるもどかしさは消えてなくならなかった。


 理屈や論理で正しいことと、それが当人にとって正解どうかはまったく別の問題だ。

 特にそれがうら若き乙女であれば、尚更のこと。


 外からは鳥達の鳴き声に紛れて、パチパチと薪が爆ぜる音が聞こえてくる。

 火の粉が飛ばぬよう、少し離れたところにはロンドがいるはずだ。


 マリーは気付けば、テントの入り口を凝視していた。

 その垂れ幕の向こう側にいる、誰かを捜し求めるかのように……。


「寝られない、ですか?」

「……ええ」


 キュッテの言葉に寝返りを打つマリー。

 くるりと振り返ったその視線の先には、真剣な顔をするキュッテの姿があった。


「キュッテ、どうしたの?」

「私……悩んでいたんです。マリーさん達を送ったあと、一体どうすべきか」


 旅の最後の夜とあってか、今まであまり自分のことを話すことのなかったキュッテの口は滑らかに動く。


 彼女は出立の際、父であるオウルにこう告げられたという。


『ナルの里に帰ってくるのもいい。そのままロンド君達についていったって構わない。キュッテ、全ては君の自由だ。一人前の戦士になったんだ……自分の身の振り方くらい、自分一人で決めなさい』


 オウルはキュッテのことを認めた。

 そして彼女のことを一人前と認めたからこそ、行動の自由を与えてくれた。


「私、里を出ていくなんて、考えたこともありませんでした。皆に認めてもらおうって気持ちだけで、私の心のコップはいっぱいいっぱいだったから……」


 キュッテの気持ちはマリーにも理解できた。


 自分が今まで暮らしてきた場所は、この広大無辺な世界の中でのごくごく一部に過ぎない。 迷いの森へと飛ばされて初めて、彼女はそんな世の中の当たり前を知ったからだ。


「世界を知る……なんて言うと大層な気がしますけど。私はロンドさんやマリーさんと会って、変わることができました。だからまた新たな人と出会って更に変わることができるかもしれないし、私と出会うことで誰かを変えることもできるかもしれない……だから私、決めたんです」


 キュッテとの出会いは、魔物にやられそうになっている彼女を助けるところから始まった。 その頃の弱々しかった様子は、今はもう微塵も感じられない。

 キュッテは立ち上がり、そして堂々と胸を張って言った。


「私は……里を出ます。そして世界をこの目で、実際に見てみるつもりです」

「そう、ですか……」


 そのキュッテの力強さを見て、マリーは何も言うことができなかった。

 するとキュッテの方が、たたみかけるように続けた。


「と、いうわけで……私ロンドさんを呼んできます。マリーさん、待ってて下さい!」

「え……えええええええっっ!?」


 マリーが仰天して言葉を失っているうちにキュッテは本当にテントを飛び出してしまったのだった――。

【しんこからのお願い】

この小説を読んで

「面白い!」

「続きが気になる!」

「応援してるよ!」

と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!


あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ