成功
「キュアアアッッ!」
グレッグベアの身体は小さく、そしてスピードは速い。
(ポイズンボール……じゃダメだな、威力と毒の強さは置いといて、とりあえず範囲攻撃だ)
ロンドは前に出ながら、脳内に構文を浮かび上げる。
込める毒は衰弱毒、形状は横に広く、魔力を込めて威力を底上げ。
「ポイズンウェーブ!」
少し薄く青みがかった紫色の毒の波が、グレッグベアに襲いかかる。
いくら動きが速くとも、魔法の飛来する速度はそれより更に早い。
横に伸びた攻撃を避けることはできず、熊は攻撃をモロに食らった。
ダメージが入って感じた違和感。
どこにあるのかと思えば、本来なら威力で劣るはずの衰弱毒を使った毒魔法にもかかわらず、龍毒使用時を超えたダメージが出せているのだ。
(グレッグベアは……衰弱毒に弱いのか? ――って、まずっ!?)
考えることに頭を回しすぎていたからだろう。
気付けばロンドが想定していたよりもずっと近くにグレッグベアの姿があった。
運悪く、周囲に距離を稼いだり相手の動きを阻害できる障害物もない。
「大地よ!」
けれどキュッテがそれを生み出した。
グレッグベアの足元が凹み、それによって体勢が崩れる。
ロンドは更に前に出る。
ロンドの応援をより正確に行うためにはキュッテも前に出て、詳細に観察する必要がある。
キュッテはロンドより数歩後についていき、遮蔽物に身を隠しながら援護に徹した。
タイミングを合わせる。
「ポイズン――シェル!」
ロンドが放つのは、毒の砲弾。
毒の強さは距離の近さに比例するが、魔法は凝集すればするだけ威力が上がる。
魔力を大量に込めた衰弱毒の砲弾が、体勢を崩したグレッグベアに着弾。
「キュウウッ!?」
グレッグベアのHPが100以上一気に削れた。
今の一撃が、ロンドがポイズンドラゴン以外で出せる最高威力の毒魔法。
やはり勝機は、接近に敷かない。
ロンドと熊の距離が近付く。
遠目から見れば小さいとは言っても、近付けばその体躯はロンドのそれを超えている。
ビビりながらも近付いていく。
常に毒魔法が使えるように、注意を払う。
「キュウッ!」
かなりのダメージを与えたとはいえ、グレッグベアの闘志にはいささかの衰えもない。
グレッグベアはグッと前屈みになったかと思うと、爆発的に加速した。
「ぐっ、速っ――!?」
遠くから見るのとでは雲泥の違いだった。
鋭く太い爪が、ロンド目掛けて襲いかかる。
首をグイッと曲げながら右に倒れると、なんとか爪撃をかわすことには成功する。
ゴロゴロと横に回転して受け身を取りながら、頬に手を当てる。
ピッと走った赤い線から、つぅと血の雫が垂れていた。
「キュウキュウッ!」
続く連撃。
先ほどとは逆の右の爪の一撃。
避けようとするが、身体が追いついていかない。
ロンドはあくまでも魔法使いが持つ程度の身体能力しかないのだ。
仕方なく、事前に溜めていた魔法を発動させる。
「ポイズンシールド!」
魔力を普段の倍近く込めた毒の壁は、明らかに強度が上がっていた。
見事爪の攻撃を、貫通させぬまま耐えきっている。
「キュウッ!」
だが毒の壁は、ポイズンボールのように液体状の壁だ。
ぐっと力を込めれば奥には進むので、グレッグベアは思い切り腕を突き込んだ。
貫通する頃には既に勢いは削がれていたため、ロンドでも避けられるほどに速度は下がっている。
その様子を見て閃いたロンドは、新たな魔法を生み出し、発動させる。
「ポイズン……ウォール!」
発動させるのはポイズンウォール。
けれど発動させるのは――グレッグベアの足下だ。
ズッと足の周りの一帯が毒の壁による毒エリアと化す。
グレッグベアは足を取られ、明らかに動きづらそうにしていた。
「キュッテ!」
ロンドは側面に回り込み始める。
接触時にカウンターを食らわぬよう、見えづらい後方の位置を取りに行くためだ。
そしてキュッテも、ロンドに動きを合わせた。
「大地よ!」
新たに生み出される土の壁。
けれどグレッグベアの臀部のあたり、ちょうどロンドが手を伸ばせば届く位置に銃眼のような穴が空いている。
ナイスだ、キュッテ。
そう呟いてから、ロンドはグレッグベアに触れる。
「ようやく捕まえたぞ――龍毒!」
こうしてロンドはグレッグベアに対し、最大効力の毒を叩き込むことに成功したのだった。
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