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【コミカライズ】毒殺された世界無双の毒魔法使い  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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接近


 ロンドは放つ毒魔法に乗せる毒を選択することができる。

 衰弱毒・麻痺毒・猛毒・龍毒。乗せる毒によって魔法の威力は変わる。

 龍毒が最も高威力で、それ以外は皆横並びの形だ。


 故にロンドが毒魔法に乗せる毒は、威力が出る龍毒一択になった。


「ポイズンウィップ!」


 使う毒は龍毒、形状は鞭、魔力を普段の倍近く込め、毒魔法を発動させる。

 紫色をした鞭がしなり、グレッグベアの胸を強かに打ち付ける。


「キュルルルルッ!?」


 グレッグベアが一歩後ろに下がった。

 胸からはジュウジュウと音が鳴り、体毛は溶け中にあった皮膚が露出する。


(どうやらある程度魔力を込めれば、ダメージはしっかり入るみたいだな)


 先ほど龍毒をかけるために放ったポイズンボールではほとんどダメージは入らなかったが、今回のポイズンウィップであれば十分なダメージが入った。

 魔力を込める量の塩梅が掴めてくる。


「ウィンドジェットカッター!」


 マリーは周囲の魔物を蹴散らしながら、隙を見て援護を入れてくれる。


「きゅううっっ!」


 けれどマリーの放った風魔法は、グレッグベアの体毛を散らせるだけだった。

 見ればHPはまったく減っていない。

 どうやらグレッグベアは、魔法に対してかなり高い耐性を持っているらしい。


「くっ!」

「大地よ!」


 マリーに注意が向きそうになるのを、キュッテがグレッグベアの足下に凹みを作ることで防ぐ。

 キュッテはマリーの魔法が効かないのを見て即座に攻撃ではなく、遅滞戦術を採るように切り替えたようだ。


 マリーもそれを理解したようで、周囲の魔物へと再び全神経を注ぎ始める。


 この三人で戦おうとする場合、ロンドがいかにダメージを与えられるかがキモになるだろう。


(どうやら毒魔法は、こいつの魔法耐性の例外らしいからな……全ては俺の頑張り次第、か)


 系統外魔法だからなのだろうか。

 ロンドの魔法はさほど魔力を込めずともしっかりと通る。


 グレッグベアもそれを理解しているからだろうか、ターゲットを完全にロンドに定めている節があった。


「キュアアッ!」

「――っと!」


 ロンドは頭を下げながら、横に転がる。

 先ほどまでロンドがいた場所を、高速でやってきたグレッグベアの頭突きが通り過ぎていく。

 そしてすぐ後ろにあった木へと激突。


 ベキベキベキッ!


 木は音を立てて倒れていき、ドスンと完全に幹の根元から折れてしまっていた。


 グレッグベアの突進を真っ向から一撃食らっただけで、恐らく自分は挽肉になってしまうだろう。

 ロンドがそう感じてしまうほどに威力が乗っている。


「ポイズンウェーブ!」


 次に放つのは、毒の波だった。

 避けようと横っ飛びしたグレッグベアにも当たるよう、横に薄く長く拡げた毒魔法は見事命中する。


 ジュウッと音を立てて、毒が熊の表皮を削る。

 皮膚がただれ、少しだけ赤くなった。

 グレッグベアのHPが40前後削れる。


「ギュウゥッッ!!」


 攻撃を一方的に食らうだけで苛立つグレッグベアが爪を振るう。

 ロンドはその一撃を余裕を持って避けてから、更に森の奥深くへと入っていく。


 今ロンドが攻撃を躱しながら魔法を当て続けることができるのは、純粋に地の利を活かすことができているからだ。


 森は木々や岩石、魔物の死骸など障害物がとにかく多く、熊が四つ足で全力疾走をするのに適していない。

 更にそこにキュッテが足元に干渉することで、グレッグベアの移動のスピードはかなり制限される形になる。

 その速度は余力を残して駆けるロンドと大差ないほどにまで落ちている。


(こいつと出会ったのが森で、本当に助かった……)


 ここが密生している木々の多い森でなく平野であれば、ロンドは間違いなくやられていただろう。


 数度の攻防を経て、再度HPを確認する。


グレッグベア


健康状態 毒(龍毒)

HP 2700/3034



(やっぱり毒だけで削れるダメージがかなり少ないな……多少無理してでも、直接触れて龍毒をかけるべきか? このままいくと、俺の魔力が尽きる方が早いぞ……)


 毒には強弱がある。

 ポイズン系の魔法を命中させることで確率でかけられる龍毒と、ロンドが直接触れて流し込める毒とでは毒の強度がまったく違う。


 ポイズン系の魔法に込めた毒でかける龍毒では魔力をどれだけ込めても秒間20前後のダメージが限界だ。

 グレッグベアが持つ回復力のせいで、ほとんどダメージは入らないに等しい状態だ。


 だが直接触れれば100前後のダメージが見込める。

 これなら回復を差し引いても、かなりの継続ダメージが見込める。


 ロンドが魔力を込めて放つポイズン系の魔法を当てても、与えられるダメージは20~40前後。

 恐らくはポイズンドラゴンを使っても、一撃でHPを持っていくことは難しいだろう。


 であれば、なんとかして直接触れて最大の龍毒を打ち込む必要がある。

 そのための隙をどうにかして作らなければならない。


 キュッテの方を見て、ハンドサインをする。

 彼女はこくりと頷いた。


 マリーの方は他の熊達を相手取るので精一杯だ、今回は頼れない。

 見ればエルフの戦士達も、戦線に復帰していた。

 マリーが使う魔法から逃れた魔物達のことを、的確に狩ってくれている。


(マリーが打ち漏らした奴らがこっちにこなかったのは、そういう理由だったのか……)


 全体を俯瞰したロンドは、パチンと手を打ち鳴らした。

 そして震える身体に鞭を打ち――今まで逃げて距離を取り続けてきたグレッグベアへと、駆け出すのだった。

コミカライズの兼ね合いによりいくつかの基本設定の変更を行いました。


来週までには今までの話も修正を行いますので、もうしばらくお待ち下さい!

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