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 ロンドが取ったやり方は、自分自身に衰弱毒をかけることで仮死状態にしてしまうというものだった。


 どこまで上手くいくかはわからなかったが、少なくとも身体からは自由が利かなくなっており、おかげで兄や兵士達を欺くくらいの弱り方はしてくれたようである。


 ただフィリックスが全身を切り刻んだときは、本当に焦ったぜ。

 あのまま放置されてたら、多分失血死してたからな……。


 屋敷を汚したくないという兄のありがたい配慮により、ロンドはなんとか回復魔法をかけてもらうことができた。

 そしてズタ袋の中でなんとかして体力を回復させ、仮死状態から脱した時には最低限動ける状態になったのだ。


 なんとかあの屋敷から脱出し、生きて外へ出ることができた。

 だからこそ、これから先のことを考えなければならない。

 それを決めるためには、自分が持つ力のことをよく理解しなければならなかった。




 彼の持つ毒魔法は、父や兄たちに負けず劣らず強力なものだった。

 この魔法は、実力の高低に関係なくどんな相手にでもかけることができる。

 つまりまともに戦闘経験のないロンドでも、父クラスの強者に毒をかけ倒すことができるのだ。


 そしてリンドが毒魔法として使える毒のレパートリーは、自分で服用したものに限られる。 つまり彼は、色々な毒を飲めば飲むだけ強くなる。

 今後のことを考えれば、毒を飲めるだけ飲み、その持ち玉を増やす必要があった。


 ただし、やたらめったらに毒を飲めばいいというわけではない。

 リンドは体内の毒を即座に解毒することはできず、彼が天の声と呼ぶことにしたあの脳内アナウンスが流れるまでは身体に毒が残り続ける。


 恐らくは体内で毒が中和されることで、それを解析し使うことができるようになる、という仕組みなのだろう。

 即死するような猛毒を服用した場合や、まともに頭が動かなくなるような神経系の毒を飲んだ場合どうなるのかがわからない以上、無理をすることはできなかった。


 魔力紋を発現させるほど彼の毒魔法の才は高いが、しかしこの系統外魔法は万能の力ではない。

 そのためとりあえず使える毒を増やして戦闘能力を手に入れつつ、なんとかして辺境伯家に見つかる危険のない所へ行くことが当座の目的となった。






「冒険者登録、ですね。登録料銀貨一枚はお持ちですか?」

「はい」


 毒には強弱というものがある。

 たとえば同じ麻痺毒であったとしても、舌がピリッとする程度のアスピリ草と、ワイバーンでも麻痺させるといわれる蛇王ヴェノムの牙毒とではその効果は全く違う。


 ロンドが最終的に求めることになるのは、使えば勝負が決まるような強力な毒だ。

 彼が魔物の毒を入手できる職として、冒険者を志願するのは当たり前のことだった。


 やって来たのは、北を守るエドゥアール辺境伯領とは真逆の位置にある、王国南部に位置するアナスタジア公爵領である。

 まずは遠く離れたこの地で、ある程度の地力を養うつもりだ。


「それではネームプレートを拝見致します……ロンドさん、でお間違いないでしょうか?」

「間違いないです」


 この世界において、偽名というのものは意味を成さない。

 何故なら神が実在するこの世界においては、神殿に奉納した名前がその人物の魂と結びつけられるからだ。

 神殿特注のネームプレートは、偽造が不可能な太古の技術で作られている。

 そのためロンドは、偽名は使わず自分の名前を使って行動しなければならなかった。


 ちなみにこれでわかるのはあくまでも名前のみなので、ロンドが貴族家に連なる人間である情報が暴かれてしまう心配はない。


 ロンドは強力な毒を手に入れたいが、手に入れることができるような高名な冒険者になれば間違いなく疑いを持たれるという、難しい立場にある。

 できればほどほどの地位に居て、毒の収集をやっていきたいところだった。


「ジョブはなんにしておきましょう?」

「えっと……レンジャーで。一応専門は毒の使用関連の技能です」

「まぁ、珍しいですね」


 自分が何の役目を果たすことができるのか、ということを示すことは重要だ。

 依頼人は受注した冒険者のことを知りたいと思うのも当たり前だし、ギルドも専門が分かっていれば適した仕事を振りやすくなる。

 毒魔法使いと正直に言えるはずもないので、ロンドは自分のことを毒を扱える斥候職として通すつもりだった。


「それなら今は稼ぎ時かもしれませんね」

「え、そうなんですか?」

「はい、各種毒草や解毒薬の買い取り価格が軒並み上がってますので。この公爵領で出回っていない解毒薬であれば、かなりの高値がついてますよ」


 どうしてそんなことになったのだろうと思ったが、聞いてみても受付嬢は苦笑するだけだった。

 なんでも答えを教えてくれる、というわけではないらしい。

 もしかしたら言えない事情があるのかもしれない。


 とりあえずはアドバイスに従い、毒草の採取依頼から始めることにした。

 まずは毒草ぐらいから初めて徐々に慣らしていくのがいいだろう。




「いやぁ、しかし公爵様々だな。とりあえず毒を持ってくりゃあ金になるってんだからマジで楽だぜ」


 ギルドを出ようとした時、入れ違いで入ってくる冒険者の一行とすれ違う。

 どうやら彼らも、自分と同様とりあえず稼げそうな毒関連の依頼を受けているらしい。

 ……さっき言い淀んでいたのは、公爵関連の話題だからということなのか。

 彼らならある程度、込み入った話をしてくれるだろうか。

 毒に関連する話なら、自分の力は恐らく世界中の誰よりも役に立つことができるはずだ。


「あの、すみません、一つ聞きたいことがあるんですが」


 そう言って、ホクホク顔で上機嫌なリーダーの男に声をかける。

 そっと袖口から銀貨を手渡すと、彼はぺらぺらと実に簡単に答えを教えてくれた。


「どうやら公爵令嬢が、毒に倒れたらしい。このままじゃ長くないみたいでな……公爵閣下が躍起になってなんとかしようとしてるんだ。山師達にすら窓口を開いてるあたり、容態は相当に厳しいんだと思うぜ」


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