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たったひとつの冴えたやりかた


 龍の形をした紋章など、見たことも聞いたこともない。

 だが間違いなくそれは、才ある者にのみ与えられる魔力紋だった。


「毒魔法………系統外魔法だから、俺自身ですら自分の力に気付けなかったのか」


 魔法を使えるようになるための第一歩は、それに触れることだ。


 火魔法使いは松明に手を翳し、水魔法使いは水に全身を浸し、風魔法使いは強風にその身を晒す。

 そして毒魔法使いにとっての第一歩とは……毒を実際に服用することだったのだ。


 そんなもの、わかるはずがない。

 知らないまま死んでいてもおかしくはなかった。


 頭の中に大量の情報が流れ込んできたおかげで、ロンドには既に毒魔法というものの本質を理解している。


 毒魔法とは、己の体内に取り込んだ毒を解析し分析し、生成・中和できるようになる魔法。


 ロンドは新たな毒を取り込めば取り込むほど、使える毒の種類が増えていく。

 この力を使いこなせることができるようになれば、彼は誰よりも強くなれるだろう。


 しかし彼には時間がなかった。

 彼が本当に服毒自殺をしたのかどうか、確認するために警備兵たちがいつやってくるかもわからない状態だ。


 おまけに今のロンドが使えるのは、徐々に生物を弱らせていく衰弱毒のみ。


 それほど効果が高いわけではなく、相手を戦闘不能にするまでにはかなりの時間がかかるものだった。


 無策のまま戦いになれば、効き目が出る前に剣で斬り殺されてしまって終わりだろう。


「どうしろ、どうすればいい、考えろ俺。絶対どこかに、活路はあるはずだ――」


 ロンドは必死に頭を回転させる。

 今の自分が、なんとかしてこの檻から抜け出すための方法を。


 自分の戦闘能力は未だ未知数。

 対しこの辺境伯家には、屋敷を巡回するたくさんの衛兵がいる。

 絶対にどこかで、見つかってしまうだろう。


 厄介なことに、衛兵達をなんとかすることができたとしても、屋敷にいる親族達からも逃げなくてはならないのだ。


 ロンドのことを辺境伯家の面汚しと考えている彼らなら、嬉々として捜索に加わるはずだ。


 そして見つけ次第、サーチ&デストロイで彼のことを殺しにくるだろう。


 認めたくはないが、辺境伯家の人間は皆魔法の天才ばかりである。


 もし戦闘になったとしたら、まともに戦うことすら許されず一方的にやられてしまうに違いない。


「――ダメだ、どうやっても屋敷を抜けられる気がしない」


 衛兵と親族という二重の捜索網をくぐり抜けることは、今のロンドには不可能な芸当だった。


 ここからなんとかして逃げ出しても、絶対にどこかで誰かに捕まるか殺される。

 捜索をされてしまえば、今の自分では――。


「……いや、そうか、その手があったか」


 逃げてしまえば、捕まってしまう。

 だからこそロンドは、逆転の発想をした。


 逃げれば終わりだというのなら……最初から逃げずに、堂々と屋敷を出ればいい。


 ロンドは一つ頷き、己の手を見つめる。

 初めて使う毒魔法に、不安はある。

 だが生き残るために、手段を選んではいられなかった。


「頼むぜ、俺……衰弱毒、発動!」


 そうしてロンドは――初めての毒魔法を、己にかけた。






 コンコン。

 控えめなノックが室内に響く。

 外からはガシャガシャという金属鎧の擦れる音が聞こえてくる。


 少し間を開けて、ドアがゆっくりと開かれる。

 衛兵達がそうっと中を確認した、その視線の先。


 広くあつらえられた鉄檻の中には――苦悶の表情を浮かべる、ロンドの死体があった。


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