オーガプリースト
(あれは……オーガプリースト! こんなにすぐに出会えるとは、案外俺の運も捨てたもんじゃなさそうだ)
ロンドが発見したのは、赤いボロを身に纏ったオーガであった。
オーガメイジよりも小さな白い杖を持ったその魔物は、オーガプリースト。
オーガ種でありながら回復魔法を使うことのできる、かなりレアな魔物である。
どうやらオーガは魔法を覚える場合は攻撃魔法ばかりになるらしく、メイジとプリーストだと圧倒的にメイジの方が数が多い。
本来ならオーガの強靱さと回復手段を併せ持つ厄介な魔物なのだが、ロンドはその姿を見てほくそ笑んだ。
ロンドがやりたいと思っていた、攻撃・防御の毒魔法を使いながらの戦闘訓練と、回復魔法を持つ相手への対処法の研究。
回復魔法も使えてタフネスもあるオーガプリーストは、その両方にうってつけの相手だった。
まずは状態の確認からすることにした。
オーガプリースト
健康状態 良好
HP 87/95
オーガメイジよりも体力が低いため、龍毒は使うべきではないだろう。
(一瞬で終わらせちゃ意味がない。ここは猛毒を使わせてもらうことにしよう)
周囲には四匹のオーガがいたので、まずはそれらに龍毒をかけて即殺する。
「グラッ!?」
オーガプリーストはその様子を見て、慌てている。
その背目掛けて毒魔法を放ち、無事猛毒状態にすることに成功する。
自分が魔法を受けた段階で、オーガプリーストはロンドの存在に気付いた。
「グラアアッ!!」
そしてオーガプリーストは、ロンド目掛けて突っ込んでこようとする。
だがその最中、毒を受けており、このままでは自分が死んでしまうことに気付いたようだった。
(さて、どうなるのか……)
ロンドはオーガプリーストが魔法を使うのを、黙って見つめることにした。
オーガプリースト
健康状態 毒(猛毒)
HP 52/95
オーガプリーストが自分目掛けて回復魔法を使い、減ったHPを回復させていく。
回復魔法を使うと、状態はこのように変化した。
オーガプリースト
健康状態 毒(猛毒)
HP 83/95
どうやらオーガプリーストの回復魔法は、一度で30程度のHPを回復するようだった。
別にオーガプリーストは回復魔法の達人というわけでもないだろう。
討伐ランクはCだし、脅威度はオーガメイジと同等のはず。
となればやはり、龍毒が与えることのできる継続ダメージは、回復魔法使いにとってはなんとかできるものなのかもしれない。
あまり龍毒を過信しすぎていては、いずれ痛い目を見そうだった。
「グッ、グガアアアアアッ!」
オーガプリーストはキツくなる度に回復魔法を使ってHPを回復させながら、ロンドの方へと迫ってくる。
魔法を使うまでには集中する時間があるため、回復魔法は毎秒打てるわけではない。
ロンドに接近するまでに、その体力はかなり落ちていた。
そう遠くないうちに死んでしまうだろう。
ロンドは少し悩んでから、オーガプリーストを解毒することにした。
これ以後回復魔法使いが現れるかわからないのだから、この機会を大切に用いなければ意味がない。
ニュートラライズポイズンを使用し相手の健康状態を良好にしてから、再度向かい合う。
オーガプリースト
健康状態 良好
HP 32/95
相手が再度回復魔法を使う素振りをみせたので、今度はまともに発動できぬように邪魔をする。
「ポイズンボール」
即座にポイズンボールを発動し、オーガプリーストへ命中させる。
ジュウジュウと肌が溶かされる音が、少し離れているロンドの耳に届く。
「グギャアアアオッ!!」
するとそのままオーガプリーストは攻撃を食らい……倒れてしまった。
起き上がる様子はない。
見れば既にHPが0になり、絶命してしまっていた。
「うーん……上手くいかなかったか」
ポイズンボールに魔力を込めすぎたせいで、想定以上のダメージが入ってしまったらしい。
回復魔法の勝手についてはわかったが、肝心の戦闘訓練はできなかった……と思ったところで、ロンドは自分の考えが誤っていたことに気付く。
(……いや、よくよく考えてみれば、純粋に攻撃魔法と防御魔法だけで戦えばいいのか。なんでこんな簡単なことにも気付かなかったんだ)
相手に回復され続けると、魔法でかけた毒だけでは倒しきれない可能性がある。
そのため相手が回復してくるのなら、回復する暇を与えぬようにするか、ポイズンボール等を使って物理的にHPを削る必要がある。
これがわかったのだから、あとは物理的にHPを削る方法を、毒をかけずに戦うことで見つければいい。
毒をかけても死なない相手との戦い方を探そう。
そう躍起になっていたせいで、毒以外でしっかりとダメージも与えられるようになっておこうという目標の方が、すっかり疎かになってしまっていた。
いかんいかんと頭を振って、ロンドはオーガプリーストの魔石を取りに向かうのだった――。
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