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「ふむ、なるほどな……」
別荘での一泊二日を終え、ロンドは公爵邸へと帰ってきた。
そして彼は即座に、公爵へと報告へ向かった。
襲撃があった旨は伝わっているはずだが、まだロンドしか知らない情報がある。
下手に疑われぬよう、毒魔法の力で知ることのできた襲撃者の名前は伏せていたからだ。
「ダン、スル、テンソル……恐らくそれは、コニー三兄弟だろう」
「その界隈では有名なんでしょうか?」
「ああ、暗殺者界隈では特に有名だな。金を積まれれば、赤子だろうが切り刻む残忍さ。そして気が付けば命がなくなっているほどの隠密能力。ロンドがいなければ危ないところだった」
どうやら三人は有名な人物らしかった。
やはり護衛達を倒すあの実力は、伊達ではなかったということなのだろう。
龍の毒が使われたことや、物騒な暗殺者が送り込まれていること。
ここらへんから考えれば、マリーを狙う人間の正体は絞られてくる。
恐らくは、貴族か豪商あたりの金がかなり自由に使える人物なのだろう。
そしてそんなことはロンドでもわかるのだから、更に色々な情報に触れる機会のある公爵であれば、更に深い洞察をすることができる。
どうやら彼は、その大体の見当がついたようだった。
「助かった、その三人に頼んだ……ということであれば、大分絞れそうだ」
「お役に立てて何よりです」
「ああ、これでまた借りができてしまったな。とりあえず食客をやめてここを出ていっても、数年はなんとかなるくらいの額は用意しよう」
ロンドはその言い方にひっかかりを覚えた。
出ていってもということは……。
「その通り。私の諜報網で調べた限りでは、追っ手がかかった様子や、エドゥアール家が躍起になっている様子、何かを探しているような様子はない。それどころか、既に君が世を儚んで自殺していることが発表されているくらいだしな。もちろん今後あまり派手な活躍をしたら話は変わってくるだろうが、今のところ静かにしてさえいればバレることはないだろう」
その言葉を聞いて、ホッと安堵の息がこぼれた。
追っ手の心配をしなくていいというのは、最大級の朗報だ。
ついでにマリーのことに関して妙な話が公爵までいっていないことも、安心の材料になってくれる。
後ろを気にしながら歩く必要がないと知れたことは非常に大きい。
これで大手を振ってとまではいかずとも、どこぞで暮らしていくことはできそうだ。
ロンドという名前など腐るほどいるし、同姓同名ですと言えばいくらでも逃げ切れるだろう。
自分が肉親と戦って、躊躇するだとか抵抗があるという話ではない。
純粋に兄弟達に追われて襲われれば、今のロンドでは死んでしまいかねない。
アナスタジア公爵の後ろ盾もそれほど長く続くとは限らないし、とにかくなんとかしてもっと己の力を使いこなすための訓練をした方がよさそうだった。
「もちろん、このまま公爵家に滞在してもらっても構わない。今はまだマリーのことがあるから、正直なことを言えば私の方から頼みたいくらいだ」
「はい、まったく問題ありません。少なくとも問題が解決するまでは、マリー様のお側で守ることができればと思います」
「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」
とりあえず、マリーを害そうとする者達をとっちめることができるまで、ロンドは公爵家に滞在させてもらえることになった。
役目も果たせたし、一安心である。
一つの懸念が解消され、ルンルン気分で部屋を出ようとしたロンドの背に、声がかかる。
「ロンド、くれぐれも言っておくが……愛しの愛娘であるマリーに手を出したりしたら……」
「安心して下さい、アナスタジア公爵。そんなこと、ありえませんから」
どうやら使用人達から陳情が言っていたようで、彼の口調は本気のように感じた。
ロンドは公爵の疑念を、笑って切り捨てる。
その様子を見て公爵の方は、落ち着きを取り戻したようだった。
「そうか、それならいい。――すまなかったな。私も娘が襲われて、少しばかり気が立っていたようだ」
「いえいえ、心中お察し致します。それではまた何かあれば連絡致しますので」
今度こそロンドは部屋を出る。
肩の荷が下りたようで、廊下を歩く彼はリズムに乗ってスキップをしながら、自室へと戻るのだった――。
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