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【コミカライズ】毒殺された世界無双の毒魔法使い  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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真剣


「フレイムフラワー」


 自身の周囲に対して展開される炎の花。

 放射状に展開される火魔法に対応する際、ロンドは自身の身体に毒を纏わせた。


 ポイズンナックルで己の毒を拳に纏わせるのと同様、ロンドは自身の肉体そのものに硬質化させた毒を展開する。


「ポイズンメイル」


 現れたのは毒の鎧。

 ロンドは全身を紫色の甲冑を包み込み、炎の中へと突っ込んでいく。


「なっ……」


「ポイズンアクセラレーション!」


 毒による加速を発動させ、更に勢いをつける。

 迎撃のために打たれる魔法を、加速しながらかいくぐっていく。


 たしかに彼女の火魔法の温度は今まで食らってきたどの火魔法よりも高い。

 けれどその速度はアルブレヒトの雷魔法ほどではない。

 威力は高いとは言っても、クリステラの攻撃と比べればまだまだ劣る。

 強敵との戦いが、今のロンドに自信を与えてくれる。


(熱いし痛いが……耐えられないほどじゃないっ!)


 あと一息でカテーナの下へ届く。

 彼女もそれを理解しているからこそ、溜めが大きく威力の高い火魔法を放つ。


「ヘルフレア!!」


 放たれたのは、白色炎よりも更に高温で展開された青色の炎で縁取られた犬の頭部。

 そこから吐き出される地獄の業火は、それよりも更に澄んだ青色をしていた。

 まだ距離があるにもかかわらず既に熱を感じるその魔法へと、それでもロンドは飛び込んでいく。


 あの攻撃は恐らく、ポイズンメイルだけでは防ぎきれない。

 そして現在のロンドは既にポイズンメイルとポイズンアクセラレーションの二重展開を行っている。そして現在のロンドにはまだ魔法を三重に展開する技能はない。


 けれど今この場には、ロンドの毒魔法とカテーナの火魔法がぶつかり合うことに生まれている毒の霧がある。

 それを操る程度の余力は、今のロンドにもある。


「ポイズンミスト……ッ!」


 戦いの最中、自身とカテーナを繋ぐラインの中に留めておいたポイズンミストを圧縮。

 霧状に散っていた毒達を一箇所に集めることで、それはカテーナへと一直線で向かうトンネルへと変わった。

 ロンドは毒の道を作り出し、その中を駆けていく。


 ちりちりと熱を感じ始める頭上。見上げなくとも、炎はすぐそこにまで迫ってきている。

 毒と炎が激突する。

 ただ霧を集めただけの毒では、あれだけの高温を相手にして数秒も持たなかった。

 けれどその数秒が、今のロンドには何よりも重要だった。


 後頭部に感じる熱。

 背後で着弾した魔法の余波で自身の身体が焼けるのを感じる。

 けれど内側の肉が焼かれても、外側にある毒の鎧は未だ形を保ち続けている。


「食らい……やがれえええっっ!!」


 ロンドはその全身に火傷を負いながら、肉薄したカテーナへとその拳を振り抜く。

 そして拳がその腹へとめり込んでいき……カテーナは再び吹っ飛んでいった。

 燃えさかる家屋をぶち抜きそのまま家の中へと転がっていく彼女を見ながら、ロンドは荒くなった息を整えることに注力した。


カテーナ・フォン・エドゥアール


健康状態 衰弱毒(×龍毒・混合毒『死に至る病』)

HP 264/844



 HPを確認したが、毒によるスリップダメージを与えられているとはいえ未だ致死まで持って行けるところまではいっていなかった。

 けれどここまでHPを削れていれば、あとは大技を決めれば勝負が決まる。


 爆発音、そして家屋が崩れるバキバキという音。

 周囲の喧噪はますます大きくなり、いくつかの足音も聞こえてくる。


「まさかあんたが……ここまでやるとはね」


 ゆらりと立ち上がり、こちらを見つめるカテーナ。

 彼女の顔はあらゆる属性魔法に適性がない庶子のロンドを見下していた当初のものではなくなっていた。

 目の前の相手を己の好敵手として認めるその態度に、もはや嘲りは欠片もない。


「カテーナも……強いよ、めちゃくちゃ」


 そしてそれは当然、ロンドも同じ事だった。

 既に全身に数えきれぬほどの火傷を負っているロンドは、正直現時点でもかなりの重傷を負っている。


 これだけの怪我を負ったのは、グレッグベア・アルブレヒト・そしてクリステラの時の三度だけだ。


(俺の身体……保ってくれよ)


 クリステラとの戦いとその後のミスリル鉱山周りの戦闘で、既に回復の魔法石は全て使い切ってしまっている。

 そのため誰かに頼まなければ、今のロンドには回復をする手立てがない。

 そうなればこれだけの重傷を治すのはかなり難しいだろう。


 だがそんな先のことを考えているだけの余裕がない。

 カテーナがロンドを見ているのと同様、彼もまた目の前の彼女を倒すことしか脳裏になくなっていたからだ。


「食らいなさい……」


「絶対に、倒す……」


 両者の魔力が高まっていき、魔法の構築の際に漏れ出した魔力が周囲へ滲出する。

 自分も、そして相手も、この一撃で勝負を決める気でいる。

 それがわかるからこそお互いが、今から放つ一撃に己の全てを込める。


 ロンドの頭上には黒色の龍が、そしてカテーナの頭上には炎によって形作られた不死鳥が浮かぶ。

 そして両者の大魔法が――激突した。


「ポイズンドラゴン!」


「ファイアフェニックス!」

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