表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/138

vsクリスタルドラゴン 2


「ふむ、やっぱりどれだけ身体が強靱でも、こうすればダメージは通るのか……がふっ!?」


「痛いわ、馬鹿者ッ!」


 冷静に観察をしていたアルブレヒトの下に、中空から生み出された大量の水晶が殺到する。


 彼はサンダーリィンフォースを使い雷で肉体の速度を可能な限り上げながら回避しようとしたが、処理が飽和するほどの面の攻撃によって大量の水晶をその身に食らい、吹っ飛んでいく。


 けれど彼の方に意識が向いているということは、その逆側にいるロンドの方には余裕ができたということでもある。


 使用するのはもちろん龍毒、発動の際の魔力は後先を考えず多めで。

 背後を見ているクリスタルドラゴンの至近距離から一撃を放つ。


「ポイズンナックル・アクセル!」


 ポイズンナックルとポイズンアクセラレーションと同時発動。

 一瞬のうちに紫色の毒で固められたロンドの拳が、クリスタルドラゴンのつま先へと放たれる。


「ぐっ! このおっ!」


 クリスタルドラゴンは翼をはためかせると、またしても尋常ではない軌道を取りながら即座にロンドへと反撃をしてみせる。


 魔法陣から飛び出してくるのは、大量の水晶。

 先ほどまでと比べものにならないほどに一つ一つが大きく、それはもはや水晶というよりも岩石に近かった。


「ポイズンウォール」


 ロンドは一撃を放ち離脱をしながら、毒の壁を放つ。

 風切り音を放ちながら彼の下へ殺到する大量の水晶岩は、一つでも食らえばタダでは済まないだろう。


 面の攻撃で全てを防ぐことは不可能と考えたロンドは、その勢いを弱めるべく、水晶の軌道上にポイズンウォールを発動させる。


 水晶が毒壁へと激突し、液状のポイズンウォールが波打ちながら弾けていく。

 一発二発と耐えることができたものの、更に波状に攻撃が続くことでこちらも飽和してそのまま魔法が消えていく。


 けれどその間に毒壁の後ろ側を駆けていたロンドは、魔法を避けることができるだけの十分な距離を取ることに成功していた。


 そんなロンドに対して追撃をしようと再び魔法陣を展開させるクリスタルドラゴンだったが、すぐに魔法の狙いを己の背後へと変える。


「おおおおおおおっっ!!」


 マクレガーが飛び上がりながら放った大剣の一撃が、クリスタルドラゴンの表皮を浅く裂いてみせる。

 パリッと小さな音が聞こえると思うと、クリスタルドラゴンの鱗が割れてその内側が露わになる。

 透明な鱗の内側にある肉体は、ミラーボールのようにキラキラと輝いていた。


「か、硬あっ!?」


 同時に接近していたクリームも剣を振るうが、彼女の得物は刺突用のレイピア。

 膂力と衝撃を直に伝えることができる大剣と異なり、突きを放ってもその鱗にわずかな傷をつけるに留まった。


「それならぁ……ウィンドスラストぉ!」


 クリームは一度剣を引くと、再び刺突を放つ。

 その刀身に沿うようにして風魔法が展開されているのが一目でわかる。

 己の剣と魔法とを一つに合一する魔法剣、練達の魔法剣士のみが使えるようになる必殺の一撃である。


 風によって勢いを増し、鋭利な風の刃をその身に纏うことで一撃の威力が向上し、再度放った一撃はドラゴンの鱗をしっかりと砕いてみせた。


 ただ鱗こそ砕くことができたものの、内側の肉体には傷一つ付けることができていない。 クリスタルドラゴンの肉体はあまりにも強靱であった。


「痴れ者共がっ!」


 クリスタルドラゴンは再び魔法を発動させる。

 何度も魔法を使用しているうちに慣れてきたからか、戦い始めた当初と比べると明らかに魔法の使用までの流れが滑らかになっていた。


 シームレスに放たれる水晶の弾丸。

 どうやら魔法の練度も上がっているらしく、面としての攻撃になっているだけでなく、張られている弾幕が波状攻撃に変わっていた。


 更には軌道を直線的なものだけでなくなり中に曲射の魔法が織り交ぜられることで、ロンドが先ほどやったように防御魔法を一度使うだけでは避けきれない弾幕が張られていた。


 マクレガーとクリームはその全てを受けることを諦める。

 先ほどまでと魔法の種類が変わっていることを瞬時に読み取った彼らは、そのまま防御魔法を展開させた。


「アースウォール」


「アクアウォール!」


 彼らは防御の壁を真っ直ぐにではなく、斜めに傾斜を付ける形で発動させた。

 マクレガーが生み出したのは土の、そしてクリームが生み出したのは水のスロープだ。


 マクレガー達目掛けて殺到する水晶の弾丸達はそのまま軌道をわずかに逸らし、狙いから外れた場所へ向かってゆく。

 彼らへやってくる残りの攻撃を、マクレガー達は魔法剣を使って捌いていった。


 そして彼らが稼いだ時間により、また新たな魔法を発動するだけの猶予ができる。


「フレアバースト!」


「アイスバースト!」


「ウトモストタイフーン!」


 後方で護衛に徹していたリエン達の魔法が飛んでいく。

 比較的広域に展開される魔法ではあるが、彼らの狙いはアルブレヒトの雷槌が穿った後ろ足。


 雷魔法が通っていたからか、わずかに動きが鈍っているその足目掛けて放たれた攻撃達。

 一撃目がその鱗を割り、二撃目がそれを削り取り、三発目の魔法が内側へ衝撃を通す。


 如何に神獣と言っても、流石に攻撃の全てを無効化できるだけの能力を持っているわけではない。

 現状ではダメージを通すことはほとんどできていないとはいえ、攻撃がまったく通らないわけではないというのがわかっただけで収穫だ。


 再び放たれた後方への水晶の魔法。

 風の推力を得て勢いよく飛び出した巨大な水晶は、その質量によってリエン達を押しつぶそうと迫る。

 彼らは即座に防御魔法を展開する。


 ただ水晶の砲弾は威力が高すぎるため、一度の防御魔法では全てを防ぐことができない。

 まず最初に泥の壁と水の壁で勢いを削ぎ、その上で風の壁と再度展開した防御魔法で受け止める。


 魔法を防ぐためだけに、複数の防御魔法を発動させなければならないだけの馬鹿げた威力をしている。


 けれど魔力の減少を気にしなければ、攻撃を受け止めることはできる。

 彼らが敢えて攻撃をその場で受け止めたのは、後方にいる彼らの存在のため。


「大地よ!」


 大きな溜めの後にキュッテが放ったのは、土魔法によって生み出された岩石の砲弾――岩砲弾であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ