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vsクリスタルドラゴン 1


「ポイズンアクセラレーション!」


「サンダーリィンフォース!」


 戦闘開始と同時、まず動き出したのはロンドとアルブレヒトであった。

 魔法によって身体の加速が可能である彼らは、純粋な身体能力以上の速度で高速移動をすることが可能だからだ。

 彼らはその軌道を読まれることがないよう不規則なジグザグを描きながら、クリスタルドラゴンとの距離を詰めていく。


「行くぞ、クリーム」


「はいはーい」


 その後ろに続く形で前に出たのは、騎士団長のマクレガーと騎士クリームだった。


「フレアゲヘナ」


「ワールウィンド」


 マクレガーが放った炎と、クリームが放ったつむじ風が絡み合い、混じり合っていく。

 風を送り込まれた炎はよりその勢いを増していき、渦巻く風は炎を伴う火災旋風へと変わってゆく。


「ごああああっっ!!」


 クリスタルドラゴンが咆哮をあげると、その口元に魔法陣が浮かび上がる。

 数瞬の後に現れたのは、見たこともない摩訶不思議な魔法であった。


 クリスタルドラゴンの口元から飛び出したのは、ものすごい勢いで展開されていく水晶であった。

 まるで水流のように水晶が瞬時に生み出されていき、そのまま火災旋風と激突する。


 拮抗は一瞬。

 火災旋風がその勢いを止めると、パキパキと音を鳴らしながら水晶に変じていった。

 そしてその場にはかつて魔法であった水晶だけが残る。


(魔法を無力化する魔法!? ――めちゃくちゃだぞ、あのドラゴン!)


 横目で確認しているロンドは思わず背に冷や汗をかきながらも、その足を止めることはなかった。


 ドラゴンは既に二撃目の体勢に移っており、新たな魔法を発動させた。

 魔法陣が飛び出したのは、ドラゴンの頭上。

 両手両足では数えきれぬほどに大量に展開された魔法陣から、何か黒い影が飛び出していく。


「うわっと!?」


 大きく右に飛んだロンドの下に飛んできたのは、先端を鋭く尖らせた水晶の塊だった。

 見れば数えるのも馬鹿らしくなるほどの大量の水晶が、放物線を描きながらあちこちにばら撒かれている。


 前方に居るロンドから後方にいるタッデン達まで全員目掛けて放たれる、水晶による範囲攻撃だ。


 空を切った水晶の弾丸はそのまま地面にぶつかるが、衝撃波を伴い地面に小さなクレーターを作っている。

 範囲攻撃にもかかわらず、一度食らえばただでは済まないだけの威力を宿しているのは間違いない。


「アースシールド!」


「アイスシールド!」


「ウィンドシールド!」


 残る三人はキュッテとタッデンを護衛できる後方に待機しながら、魔法の発動準備を終えていた。

 彼らが防御魔法を発動させ攻撃をしっかりと受け止めている間に、既にロンドはクリスタルドラゴンのすぐ側にまで接近を終えている。


 彼は後方に回ってから、クリスタルドラゴンの後ろ側の胴体に触れた。

 使う毒は龍毒。恐らくあらゆる耐性が極めて高いはずのクリスタルドラゴンには、この毒以外はまともに効かないはずだ。


 文字化けをしてしまっているせいで状態を確認することはできないが、毒を食らった瞬間にクリスタルドラゴンが身じろぎをしたことから推測するに、毒はしっかりと通ったようだ。


「出し惜しみはなしで行くよ――サンダードラゴン・レプリカ!」


 ロンドの毒が通ったことを確認すると同時、既に彼と逆側に立っていたアルブレヒトの雷魔法が発動する。

 彼の手元から現れたのは、ロンドが放つポイズンドラゴンに似た、雷の龍だった。


 雷龍の大きさは、およそクリスタルドラゴンの半分ほど。

 至近距離から放たれた一撃は、そのままクリスタルドラゴンの胴体を食いちぎらんと迫っていった。


「カッカッカッ! 我を前に龍を模するとは……片腹痛いわ!」


 クリスタルドラゴンは現れた模造の龍を見て笑いながら、翼を羽ばたかせる。

 それと同時、その巨体が本来であればあり得ない軌道を描きながら雷龍と相対してみせた。

 ロンドの視界の端に、クリスタルドラゴンの翼の周囲に魔法陣が現れているのが映る。

 どうやら風魔法か何かを使い、姿勢制御を行っているらしい。先ほどロンドがその背で空を飛んでいる間も、ほとんど風圧を感じることはなかった。

 どうやらあの龍はあの水晶の魔法以外にも、複数の魔法を使いこなすことができるらしい。

「ぬううんっ!!」


 クリスタルドラゴンはやってくる雷龍と真っ向からぶつかり合う。

 そして自身の身体に絡みつこうとする雷龍を、その強靱な顎で貫いてみせた。

 雷龍の身体が薄くなったかと思うと、そのまま音もなく消えている。

 けれどその時には、術者であるアルブレヒトの姿も消えていた。


「僕は戦うことも好きだけど、勝つことはもっと好きなんだ」


「むっ!?」


 ロンド達が見失うほどの速度で移動していたアルブレヒトが現れたのは、クリスタルドラゴンの後ろ足。

 彼は辿り着いた時には、魔法発動の準備を終えていた。


「トールハンマー!」


 彼が放ったのは雷の槌。

 先ほどの雷龍と比べればサイズも使用している魔力量も少ない一撃ではあるが……その一撃は的確に、クリスタルドラゴンの四本ある足の指のうちの一本、恐らく小指に相当するであろう部位を打ち抜いた。


「ぐあああっっ!?」

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