悲鳴
ロンドが気にしなくてはならないのは、戦う相手のHPだ。
今のロンドには、相手のHP――つまりは体力を可視化することができる。
これを見ながら自分の毒魔法を使い、相手のHPをゼロにして勝つ。
恐らくはそれが、ロンドの基本スタイルになってくるだろう。
別荘から離れていけば魔物も出るらしいので、ロンドはマリーとその護衛達に別れを告げ、単身奥へ進むことにした。
魔物相手に試さなければ、実際に自分の魔法がどれほどのものなのかわからない。
ガタガタな獣道を進んでいくと、魔物の鳴き声が聞こえてくる。
近付いていくと、そこには緑色の小鬼であるゴブリンの姿があった。
身長は自分と比べると一回りほど小さく、手には錆びた剣を持っている。
ロンドは家からほとんど出たことがないため、当然ながら魔物の姿もほとんど見たことがない。
冒険者生活を頑張っていこうとする前に公爵に拾ってもらえたおかげで、実は実戦もこれが初めてだ。
けれど彼は、初めて見る魔物の姿も見ても、まったく怖いとは思わなかった。
今の自分の力があれば、ゴブリン相手に物怖じする道理はない。
しっかりとそれを理解できているのだ。
右手をかかげる。
「ポイズンボール」
即座に魔法を発動させる。
ポイズンと名の付く攻撃・防御魔法は使うと実体を持つ毒が出てくる。
その分毒は弱くなってしまうが、素の身体能力がさほど高くないロンドからすれば、いきなり相手にゼロ距離まで接近するのはリスクが高過ぎる。
一瞬のうちに、ゴブリンが毒状態に変わった。
今回使ったのは麻痺毒だ。
魔力を込めすぎたようで、ゴブリンは一瞬のうちにその動きを止め、地面に倒れ伏す。
そしてそのまま息絶えてしまった。
見ればゴブリンのHPは既に0になってしまっている。
どうやら対して魔力を込めていないポイズンボールを当てるだけでも、結構なダメージを与えることができるらしい。
(やはりゴブリン程度なら、問題なく倒せるな)
絶命したゴブリンを見ながら、魔物相手でも十分に力は使えるぞ、と強く頷く。
「麻痺毒」
「グギャギッ!?」
先ほどのゴブリンの身のこなしから判断し、次は接触して毒を使う。
これであればダメージを与えることなく相手を麻痺させることが可能だ。
今度はここに新たに毒を重ねがけしてみる。
「猛毒」
「ギッ……グ、ガッ……ッ!?」
どうやら複数種類の毒を同時にかけることも可能らしい。
ゴブリン
HP 10/13
健康状態 毒(麻痺毒・猛毒)
ゴブリンのHPはみるみる減っていき、すぐに絶命した。
まずは麻痺毒で相手の動きを止めて、他の毒で相手のHPを削る。
これを安定してできるようになるのが、ロンドの必勝パターンになってくるだろう。
ちなみに今のロンドが使える毒の種類は、衰弱毒・麻痺毒・猛毒・龍毒・微毒の5つである。
衰弱毒は相手の動きや思考を鈍らせる。
麻痺毒は相手の動きを止める。
猛毒は相手の身体の内側を蝕み、HPを削る。
龍毒は猛毒をより強力にしたようなものと考えればわかりやすい。
そして微毒は毒を薄めて使うことで、薬のようにすることのできる毒。
平たく言えば、微毒とは回復魔法のようなものだ。
龍毒が最も効果が高いため、今後は基本的には麻痺毒→龍毒というコンボを使うことになるだろう。
歩いていると、再度ゴブリンが見つかる。
今度も麻痺毒を使って相手の身体の自由を奪ってから、龍毒を使った。
すると、毒をかけると同時にゴブリンが息絶えた。
あまりに一瞬のことすぎたのでロンドからしても驚きだ。
今回のゴブリンのHPは13だったので、少なくとも龍毒は一瞬のうちに13以上のHPを持っていくことができるようだ。
(もう少しタフな魔物に使って、試してみたいな)
ロンドはとりあえず進んでいき、手当たり次第に毒で魔物を倒していく。
他にも蜘蛛の魔物やオークなどもいたが、そういう手合いには麻痺毒を込めたポイズンボールを打って皆動けなくしてから、色々と試してみた。
……相変わらず龍毒で一瞬で息絶えるのも変わらなかったが。
どうやらもう少し強い魔物がいるところではなくては、自分の毒魔法を使いこなす練習すらまともにできなそうだった。
食客は別に屋敷をしばらくの間空けていても問題はない。
マリーの精神がもう少し落ち着いたら、一度強い魔物達の出現する場所へ行ってみるのもありかもしれない。
そんな風に考えながら帰ってきたロンドの耳に届いたのは、マリーの叫び声だった。
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