逆転の物語 ~勇者と怪しと異世界譚~ (短編)
僕は昔から妖怪が見え、それらに好かれた。僕はそんな彼らを友達だと思っていたし、彼らもまた僕を友達だと言ってくれた。
そんな中で僕はある一人の女性に一目惚れしてしまったー八狐(八尾)さん。だけど、その出会いが僕の運命を大きく変えてしまった。一尾~九尾を吸収し、大妖十尾復活!! そのうねりに僕は自ら飛び込んだ、僕は好きな人を取り戻し、この思いを伝えたい!
僕と妖怪達は全てを懸けて戦ったが、全く届かなかった…、切れた尾は一本だけ、不甲斐ない…、悔しい…、もっと力があれば…
あと一撃でやられる…、そう思った矢先に僕は別の場所にいた…
「勇者様、私達をお助け下さい!」
最初は何かの冗談だと思った、寧ろ助けて欲しいのは僕の方だ…、だが、王女の話を聞いて考え直した、この世界では “レベル” と言うものがあるらしい、これだ! と僕は確信した、僕は強くならなければならない、好きな人の為に。
僕のスキルは『百鬼夜行』文字通り、妖怪との絆を力とするものだ。もし、僕のレベルが上がれば彼らの強さも上がるかも知れないーそんな甘えた考えを持つ僕は即座に打ちのめされた…
魔物と戦った怪しが消えてしまったのだ…、彼らの力の源は妖力、それがこの世界では回復しないのだ…、また、名が浸透していないことが原因でステータスも弱体化を受けていた…、それでも彼らは命を懸けて僕を押し上げるという…、僕は泣いた…、友達との別れが辛すぎるのだ、だが、前へ進むしかない、僕がいや俺が決めた道だ、その意志を俺が一緒に背負っていく。
その日から俺はより強き者ーレベルが高そうなものに果敢に挑んでいった…、それを王国は褒め称えてくれたが、ただ友達を喪いたくないだけだったのかも知れない、まだまだ俺は弱い。
三尾ー十尾と対戦中に切った尾だったが、この娘に慰めることも増えてしまった…、寝ている時のフラッシュバック…、それも呑み込まなければならない。
レベルを上げ、遂には四天王達を下す、ここまでに多くの犠牲があった、だが、もう止まれない、消えて行った彼らの為にも、そして、俺が彼らに胸を張る為にも…
艱難辛苦の果てに魔王を倒す…、その瞬間後ろから攻撃を受ける…、予測していたとはいえ…やるせない気持ちになるな、彼らの中では強き勇者などいらないのだろう…、相討ちが筋書きだろうか?
神速とジェットババアが攻撃し合う…
魔王を倒した直後なら場が乱れてるからいけるだろうか? 三尾がいるからこそ、可能な秘術ー三尾が十尾に戻ろうとする縁を利用して俺の世界に飛ぶ…、また怪しを犠牲にしてしまったな…、すまない。
こうして異世界に勇者はいなくなった…
俺は誤解していたかも知れない、今この場になって分かる、こいつはあの世界の魔王より格が上だ、だが、それでも諦めるわけにはいかない、もう退路はないのだから。
十尾を相手に大苦戦を強いられる…、だが、彼がレベルが上がっているのならば、当然他の妖怪達も上がっている、妖怪達が力を振り絞り八つの尾を切断する、そして最後に三尾が十尾に止めをさした…
こうして、大妖怪との戦いは終結した! 数多の犠牲はあったが、人々はそれを知らない、彼らにはそれが見えないからだ…
彼だけが彼らの想い出を繋いでいく…、そして彼は彼女へと告白した。
「嫌です」
彼は頭の中が真っ白になった…
バチンッ、その熱が彼を取り戻させる。
「よく聞きなさい、私は私の妹を不幸にするような人とは付き合えません、貴方は貴方を一番に考えてくれる人とまずはキチンと向き合うべきです、そしていい加減自分の思いにも気づきなさい、姉として貴方と妹のことを応援してますよ、しっかりね」
叱咤激励され、俺は駆け出す、誰よりもあの娘にこの思いを伝えたかったからだ…
この後、彼と彼女は妖怪も羨む理想のカップルになったそうな、めでたし、めでたし(完)
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