9話
城塞都市ローフェンの街、外敵からの攻撃にビクともしなさそうな高く分厚い壁がこの街を囲い、短い距離のトンネルと思えるこの門を潜り、この街に入り、そのまま馬車は進んで行く。
その壁には所々低い塔が備わっていて、その場所で外敵が侵攻したり外での異変を見張りしている兵士であろう人がいる。
そして、外の自然豊かな外の音とは違い、街の中は人と人の会話や、商売の掛け声、馬車の車輪の音が飛び交い、この街の繁盛を喜び分かち合うよう活気のある街の状況だ。
しかも、街並みもファンタジー世界で良く見られる中世ヨーロッパのようで、そこに行き交う人々の格好もまたそうだ。
だが、ここは異世界。
俺は、何か突拍子の様な物が無いか、街の景色を見ている。
「め……ハーデス。 街、見ても、なぁーんにも変わった事無いよ」
「はっ! なっ。 そんな事ないだろ」
「ハーデスさん。 まぁ、珍しいのっていったら」
マラダイが、俺の目をみて黙る。
「……」
「んっ。 無い!! 変わった所なんて」
マラダイ自身自分の言葉で項垂れるると、ダナーとライカが最近の街事情を教えてくれたが。
「まぁ、そうだな。 最近食事処など増えているぐらいかな」
「なんて言ったっけ――――ココでしたっけ?」
「ライカ。『それ言うならなんて言ったっけ?』だろ?」
「しかもナタデココと混ざっている」
ライカの焦りに、マラダイとダナーのフォローで何を言ってたか分かると微笑が入る。
「ハーデスさん。 ナタデココって言うのが流行っているんですよね。 コリコリしたやつ」
「マラダイ。 食べたのか?」
「いち早く頂いたぜ。 すっげぇ結構並んだけどな」
羨ましそうなキラキラした目でマラダイを見るライカは、その後直ぐに外の方へ目をやる。
「あそこですよ。 なんちゃってココのお店」
「ライカ。 お前、ワザとだろ?」
「俺もマラダイに同意だな」
「いえ、その……」
「リーダーに頼んで今度食べに行くけど。 ライカお前は、なんちゃってココにさせるぞ!」
「ご、ごめんなさい」
「まだ、あの行列か!」
平謝りしているライカをよそにダナーが見ている方に視線をやると、俺たちの世界の人間界でも同じような、話題の物を求めて行列が出来るお店の様な長い行列ができていた。
平和を感じ取られる城塞都市ローフェン。
その光景を楽しんでいると、建物と建物の間から軒並み高い塔の様な物が一瞬だけ見えて馬車は、ゆっくりと速度を落として停車する。
「着いたぞ。 荷降ろしするから手伝ってくれ」
フォルクスが、やってきてダナー達を前と真ん中で走っていた馬車に向かって行った後、フォルクスが俺達に尋ねてくる。
「ハーデスさん。 ペルセポネさん。 この後どうするんですか? まだ日も高いので、この後俺の家族がやっている店に行きませんか?」
「俺も助けて貰ったから、何か返せないかと思って」
マイクが、ひょこっと出てきて告げると、フォルクスが「お前、戻って荷降ろし手伝ってこい」と先頭の馬車の方を指す。
マイクは、駆け足でこの場を離れて行くと共に「考えておいてください」と言ってマイクの後を追っていった。
馬車が止まった所の前は、工場もしくは倉庫と思わしき奥行と幅が広い建物だ。そして、大きな入口にタリアーゼのメンバーと御者を含む三人が、運んでいた荷物が入っている箱を中に入れている。
だが、その入口に扉というのが見当たらない。馬車が二台並列しながらでも余裕のある幅なのに、横にスライドする扉こと、思いきやそれも無い。
「フォルクスありがとうな。 今回はマジでビビったぜ」
「俺もだ。 まさかあんなのに出くわすとは」
「やはり魔王絡みなんだろうな」
「それじゃぁなきゃ、あんなのこの辺りで見ないからな」
「報告しとくわ」
「コベトさんいないのか?」
「なんか今出てるみたいだな。 トンドさんと一緒に出てるって言うしさ」
「わかった。 コレにも」
「おう!」
話し終わったのか、御者が建物の奥に入ると、いきなり大きな音がし始める。
ガラガラガラっと大きな何かが動く音だ。
すると、大きな入口の上から垂れ幕が降りてきた。
――――これ、シャッターじゃないか?
ペルセポネも、そのシャッターもどきを凝視し眉間に力が入り違和感を感じ取ってそうな顔をしている。
――――もしかしたら、このヒロックアクツ商事の中に転移もしくは転生者がいるのかもな。
だが、聞き出すにはこの商事の偉い人と会うのが一番だろうし、予想としては、一番手辺りが転生転移者であると考えられる。
そして、もうひとつ、一緒にいた御者と話をしているフォルクスとの会話が、俺にも聞こえるが『魔王』とか言ってたな。勇者が居れば魔王もいるのか。つくづく異世界物として楽しめそうだ。
タリアーゼのメンバーが、俺とペルセポネの所にやってきてフォルクスが聞いてくる。
「お待たせしました。 どうです? この後仕事完了の打ち上げするんです。 先程言った俺の家族がやっている店なんですけどね」
「お言葉に甘えて行きましょう。 ハーデス」
「あぁ、そうだな」
フォルクスの会話で魔王と言う単語が出てきたが、それが勇者と何か関係があるのか?
ライカの言っていた勇者と魔王の恋の物語が、架空とはいえあるんだから、もしかしたら魔王も転移や転生者なのかと言う疑問が俺の中で上がってきた。
だが、ペルセポネの躊躇なき返答に俺は、なんにも疑問を思わなかったが、ご馳走になるのだ、この異世界の食事も体験しないとな。
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