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6話

 既に命を失った茶色のコボルトは、首から出ていた血が収まるとそのまま、転げ落ちた頭の上に倒れていく。


 両手に剣を持って白い格好の女ペルセポネが、血で染った真っ赤な地面を避けてマイクに向かいスっと手を差し伸べる。


「大丈夫?」

「あっ、はい。 大丈夫です」


 意味が分からないのか、マイクは少しだけ当たりを見回し腕や身体に、どっぷりとかかった血を気にせずに返答する。

 そんな光景を、木々の隙間から覗いている俺は、今置かれている状況を忘れていた。


――――えっ?いつの間に?全く気づかないなんてな。


 マイクの声が聞こえてきた残りの四人は、背けていた顔を上げ状況を確認している。

 そして、戦斧を持つ男マラダイが、一足先にマイクに近づき、その後バスターソードを持つ男フォルクスが近ずいて頭を下げる。


「おい、あんたかこれやったのか?」

「ありがとう。 救われたよ」

「あっ、済まない。 ありがとう」


 フォルクスが頭を下げたのを気にしたのかマラダイも続いて頭を下げ、マイクの手を掴み立たせていた。

 その時に魔法使いのダナーと神官風のライカも駆け寄って礼をしていた。


「助かった命だ。 あなたがたまたまなのか通りかかった事に感謝しなくちゃな」

「私の主人が、この先の街に用があってね」

「ご主人?」

「えぇ、あそこで待って貰っているわ」


 ペルセポネが、隠れている俺のいる所へ指を指すと五人とも俺の方へ視線を動かす。

 一度に見られても気にはしないが、妻を向かわせて旦那が木々に隠れていると言うこの状況。

 普通、一般的にも俺は周りからヘタレとか思われないか?

 そんな恥ずかしい事を考えていたら、ペルセポネがニヤッと笑いながら俺へ手招きする。

 ここにいてもバレているし、出てこなければ恥ずかしさの上塗りの様な気がしてならない。

 俺は、サッと木の影から出て五人とペルセポネがいる、茶色のコボルトが倒れている脇に向かう。


 俺が到着するや否や、茶色コボルトの胴体を二本の剣で仰向けにし、剣を逆手で持ち胸に突き刺しては内部をほじくり返してい五人へ話しかける。


「ブラウンコボルトが、この界隈にいるのは珍しけど、群れ作る魔物で魔法やらでコイツが率いてたらと思ったのよ」


だが、そこにダナーが口を挟む。


「このブラウンは、魔石持ってないと。 思います」

「えっ? なんで?」


 マイクは、足がもつれてしまい、マラダイとライカの肩を借りてラ馬車の方へ向かっている。

ペルセポネが、ダナーの言葉に疑問を持つ。


「群れを作る魔物。 コボルトの習性で強い物がリーダーとなると聞いてますよ」

「あぁ、だからこのブラウン八匹も纏めてたのか」

「魔法使うなら何かしら使っていたと思うけど、コイツはただ、遠くで俺たちの戦いを観てただけだしな」


 ダナーの見識にフォルクスは頷き、ペルセポネは無いと言われた魔石とやらを探していたらしく、二本の剣を刺しては抜き刺しては抜きを繰り返していたが、ダナーの言葉を聞いて血や肉片の付いた剣を振って落とし鞘へ戻す。

 その茶色コボルトの胸は、見るに堪えない程のグロテスクな状態になっていた。


「魔石無いならコイツに用はないわ」

「ちょっと待ってくれ。 ブラウンコボルトは貴女が倒したが、コイツの死骸は貰ってもいいか?」

「ええ、良いわよ」

「それと、この先の街に行く言っていたが、ローフェンの街か?」


 フォルクスが、少し焦っているかのような感じで、馬車の方を気にしながら目を動かしてはペルセポネに尋ねている。

 そのフォルクスを見て、多分だがペルセポネは少しだけ戸惑っている。


「ええ、この先の城塞都市だったかな。 その街に行くわ」

「それなら、俺たちもその街に向かっているんだ。良ければ一緒に行かないか?」


 そう、言って馬車に向かっていた仲間を手招きしているのだが、それに気づいてない四人。

 その言葉にペルセポネは、俺を見てくる。


「どうしましょ?」

「どうしましょ? ってどうするよ?」

「いえ、めい……」


 ペルセポネが、言葉に詰まる。

 多分俺の名を呼ぼうとしたのだろうが、普段俺の事を『冥王さま』としか呼ばないし、俺たちの世界での人間界では、俺にはハデスやプルート等、複数の呼ばれ方も有るから詰まってしまったのだろう。

俺もその状況を察して。


「ここは、道中何があるか分からないからな。 この者達と着いていくのが賢明だろう」

「貴方が言うなら……」

「では!」


 フォルクスは俺と握手をしようと手をだしてきたので、俺も手を握り俺自身とペルセポネを紹介する。


「俺の名は、ハーデスだ!で、俺の妻、ペルセポネだ」

「よろしくですわ」

「妻……。あっ俺は、フォルクス。 向こうにいる四人と共にパーティを組んでいる。 こちらこそ、よろしく」


 元気な姿をしたマイクとマラダイが、やって来た。


「リーダー。 コボルトの解体やり終えたけど」

「すみません、先程助けてくれてありがとう。 マラダイももう一度礼を言え」

「なっ、なんでだよ! マイクお前が何度も言えよ」


 マイクは、マラダイの腹へ思いっきり殴るが防具の上からなので痛みは無いが突然だったらしくマラダイは、驚いてマイクの両頬を片手で摘む。


「こっちの大きいのがマラダイで、小さいのがマイク」

「「おい、そんな紹介あるか!」」


 マラダイとマイクの息の合ったツッコミが入る。

覚えやすといえば覚えやすそうで、ペルセポネは、少しだけ笑っていたが、それを恥ずかしいそうにマイクは顔を赤くしている。


「向こう馬車にいる。 あのローブを来たのがダナーで、女がライカ」


 こっちに気づいたライカが会釈をして、それに続いてダナーも軽く頭を下げる。

 フォルクスが、マイクとマラダイにブラウンコボルトの解体を指示していた。


「本当に良いって言ったのか?」

「ペルセポネさんから許可貰った」

「リーダーの強面で脅したとか?」

「そんな事出来んだろ! ブラウンコボルト倒した方だぞ!」

「そりゃそうだな!」


 マラダイとフォルクスの掛け合いにマイクは、笑いながら手際よく皮や牙など分けていく。

 胸のぐちゃぐちゃな所を気にせずに綺麗に捌いているが、その状態を気持ち悪いとか気にならないのかと不思議に思いつつ、ふと、思い出す。

 何故、この先に街があるのか?

 ローフェンという名の街と言うのは、フォルクスが言ったが、何故その街が城塞都市なのをペルセポネが知っているのか?

 ペルセポネは、この世界に一度、俺よりも先に来ていると踏んでも良いと俺は考え、ふとペルセポネを見ると、フォルクスとマイクにマラダイと共にペルセポネが、馬車に向かっていて俺は置いてけぼりにされているのに気付く。


「おーい!ハーデス」

「うん? あぁ」


 少し離れた所から俺が着いていない事に気付くペルセポネは、俺を呼ふが俺は、先に行っていた事を気にもしないフリをしてペルセポネ達に向かっていく。

読んでいただいて、ありがとうございます。

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