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32話

 高く分厚い壁が街を囲む城塞都市ローフェン。そこから離れた拡がる大平原。

 そこには五つ天幕があり、その一つ中心に大きな天幕が建っているその中、膝まつき頭を下げる一人の兵士が、向かいにいる者に発言を許される。


「王よ。 面会を求める者が。 どう致しますか?」

「こんな緊急事態に面会だと? なんだそいつらは!まぁ通せ」

「はっ」


 縁取りを金色で装飾され、左腕には緑色の布が巻かれ、ランドベルクの国旗が胸当て全体的に描かれた汚れのない銀色の鎧を纏ったランドベルク王は、金髪の頭部を掻きながら現状に苛ついているのか、肘掛に指を打ち付け足を組んで豪華な椅子に座っている。


「王よ。 久しぶりという日数は経ってないが、久しぶりだな」

「おお、ヒロックアクツのコベソとトンド。 何故ココに?」

「何故とは知っておるのだろ?」

「これはすまん。 カツオフィレに捕まったと聞いたぞ。 よくぞ無事だったな。 まさか我らが勇者ユカリを筆頭に世界を統一するだとか、エウラロノース様の許しも無く魔王を討伐する勇者を戦争の道具にしたとか、こちらに全く意も無い文面が送り付けられ、直ぐに攻めて来たと思いきや対峙する寸前で逃走を計るしからな」

「だが、魔族が攻めてきた」

「そうだ。 奴らが逃げなかったらカツオフィレ軍と魔族の挟み撃ちに合っていた。 これは運が良かったのか……。 いや良くないな。 戦争はしない方が良いからな。 ――――で、どうしてこの場所にきた? アテルレナスに向かうのがお主らへ話たさずだ」

「それが……」


 立って話しているコベソとトンドの後ろから中に入るユカリが、一礼して膝をつく。


「立ってくれ。 勇者ユカリよ」

「いえ、コベソさんとトンドさん。 戦争を止めようと私の無理を聞いてくださって、そして近くで魔族と戦争をするランドベルク軍の話を耳に入れ、協力しようとしに参りました」

「――――勇者は魔王討伐するのが最終目的な筈、そして魔王誕生によって活性化した魔族から人族を守るの勇者。 だが……」

「それも私の、だからこの場所に駆けつけました」

「うむ、――――だがなぁ」


 足を広げ肘掛に少しもたれるランドベルク王は、ユカリを凝視した後コベソに尋ねる。


「武器や防具は変わったと分かるが――――レベルは上がったという事だなコベソよ?」

「ええ、多少なりとも」

「多少? 我ら軍が対峙する魔族、その軍の奥にいるあの禍々しいオーラを発するアイツが魔王なら、勇者はあるべきレベルを達した事になるが、どうなのだ?」

「伝承とは違い、勇者ユカリのレベルはまだそこまでには……」

「この場所に【鑑識眼】を使える者は今、戦場にいる我が国の聖女のみ。 ――――もしレベルが達してなかったら引き返しアテルレナスに向かって貰うぞ」

「ですが!!」

「勇者ユカリっ!! 我々人族は、勇者を失う訳にはいかないのだ。 ここで奴らを食い止めたとしても君が死ねば多くの人族が亡くなるのだ」


 ランドベルクは、席を立ち上がり仁王立ちにてユカリに真剣な眼差しを向ける。


「そして、いつどこで勇者召喚されるか分からない。 その時はこのランドベルクは無くなっているかもしれないのだ、その命を粗末にするな! そして強くなってより多くの人族を救え。 それが我らの本望であり、神エウラロノース様の教えでもある」


 そう残しランドベルク王は、この天幕から出てると、日を浴びて少し背伸びをしその後コベソとトンドにユカリも出て日差しを遮るように手をかざしている。

 ふとランドベルク王と目が合う俺は、ペルセポネと一緒に乗っ来ていた馬車に寄りかかって休んでいると、ランドベルク王は俺らを見た後、コベソを呼ぶ。


「コベソ、あの者は誰だ?」

「あの二人は、我らの護衛の者です」

「所でだ、四人はどうした?」

「あの四人は、捕まった時カツオフィレに寝返り、勇者ユカリを殺害を目論見それをあの二人が食い止めました」

「……あの四人、人族を仇する者だったと言う訳だな。 カツオフィレも」

「そうです」

「それより、あの四人。 我が軍でも少々腕の立つ者だったがそれを食い止めたと言うとなると……。 あの二人も連れて来い」


 マントを翻し歩み進めるランドベルク王の先には、四輪の荷車に祭壇の様な装飾が施されソコに一人の白い服を着た女性が、腕を広げたり前にかざしたりし、言葉を発しているが俺には聞こえなかったが、トンドがそれを見て口を漏らす。


「ありゃ山車だな」

「トンド、あれこっちで『フロート』と言うらしいぞ」

「『フロート』それ英語じゃないか?」

「もしかしたら、昔やってきた俺らと同じ者が作ったのか……とかな」

「えっ?」

「どうした、ユカリ?」


 ユカリは、コベソとトンドの会話を聞いていたがその内容に驚き、大きな声を出してしまう。

 そして、その声に先頭を進むランドベルク王も驚き振り返るとコベソとトンドも、慌てふためいて小刻みに指をフロートと呼ばれる山車を指し、ユカリは口を塞ぐ。


「そうか、フロートが珍しいのか」


 納得するランドベルク王に、ほっと一息つく三人は、その会話を止め黙々とランドベルク王に付き進んでいく。

 目と鼻の先に山車はある為、王を守る舞台も同時に進行し、聖女を囲む騎兵隊及び歩兵隊と合流すると、少し額から汗をかくも清々しいそうな笑顔と空のような青色の髪を靡かせて、近づく俺らに気づいくと少し深呼吸をした後落ち着き、ゆっくりとフロートに付いた階段を降りこちらにやってくる。

 俺とペルセポネは、コベソ達から少し離れて現状を眺めているが、如何にも中世的な戦争を見て異世界なのに普通だなぁと俺は、口を手で塞ぎ声を出さずに欠伸をする。だが、目を凝らし見ていると聖女の周りとは違う所に、魔法使いと分かる格好をした部隊が火の矢を放っているのが見え、関心を持っていると、聖女とランドベルク王の声が耳に入る。


「戦況はどうだ?」

「前衛に五千の兵は、魔族とぶつかり均衡状態。 こちらの重装歩兵と軽装歩兵で魔族を倒してはいるけど、魔族もそれなりの武器や防具を持っていて中々倒せず、中衛の弓兵隊の攻撃も、魔法部隊も動いてはいるけど、このままでは長期戦になるわ」

「それは不味いな」

「ええ、あら勇者ユカリじゃない?」

「聖女様、久しぶ……」


 聖女の目が微かに青く光ると、数回瞬きをした後ギョッとし目を見張る。


「貴女、そのレベル……。 えっ? 魔族が攻める。 魔王……って、ユカリのレベル……」

「おい、そんなになのか?」

「もしかして……高いと思ってる?」


 聖女の顔色を見たランドベルク王は、そのままコベソの両肩を鷲掴みし揺らしながら問いただしている。


「まさか、まさか!!」


 王の凝視しから、背けるコベソだが逃がすまいと更に力強く両肩を掴むと、再び聖女に顔を合わせる。


「で、勇者のレベルは幾つだ?」

「……19」

「じゅ……きぃゅう……だと? 魔王の出現は30半ばだと言うのに……19だと。 どういうつもりだ」

「うっ、どういう……つもりだ……と言われても」

「アテルレナスに向かえと言って於いただろ」

「向かっ……てもこの……状況は」


 怒りが収まらないランドベルク王は、八つ当たりをコベソに向けいるのはここに居る全員分かるが、ランドベルク王とコベソの間にユカリが、身を呈して入り込む。


「私が、ここに来たいと、わがまま言って」

「……」

「勇者を、ユカリを入れたら変わるかも……」

「どういう事だ、聖女よ?」

「勇者としてのスキル【神意を授かる者】は対魔族にも有効。 それが我が軍に有利に働くかも」

「うむ、それも一理あるが……。 勇者を死なせてしまっては人族に損害与えるのでは?」

「そうですが、この均衡状態を打破し、我が軍の勝利か魔族の撤退すれば、より人族の為になるのかと」


 いつの間にかコベソから手を離し、聖女からの言葉に頭を悩ませているランドベルク王だが、今まで掴まされ揺らされていたコベソは、少し離れた所で様子を見している。


「なら、勇者ユカリよ、我が軍の数名を同行させる。 前衛部隊で指揮をしているガランツの元に向かってくれ」


 手を上げると、数名の文官が動き出し同行させる者を連れてくる様子だ。

 しかし、王の背後から一人の騎士が馬から降りて、膝まつく。


「どうした?」

「だ、ガランツ様率いる中央前衛部隊!」

「ガランツが、どうしたのだ?」

「全滅です!!」

「はっ? 我が軍……隊長……ガランツだぞ」


 ランドベルク王と聖女は、一人の騎士の言葉を聞き入れられず目を見開き固まっている。

 すると、聖女は血相を変えてフロートの階段を駆け登り前衛のいる前方へ手をかざすが、直ぐに両手を手摺に置くと溜息を漏らし膝を床に下ろししまった。


読んで頂きありがとうございます。


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