12話
何やら一枚の依頼書を引き剥がすペルセポネは、それを持ってスタスタと、受依頼受付のカウンターへ持っていく。
そこには完了報告が、終わっていたフォルクス達のパーティ【タリアーゼ】が横にズレて内輪で話をしていた。
ヒロックアクツ商事から護衛の依頼が、合ったらしいが其れについての内容が、うっすら聴こえる。
ペルセポネが、カウンターに依頼書を強く貼り付けてしまうかのように音を出して置いている。
強気な冒険者が、依頼をカウンターに置くような仕草を真似ているかと目を疑う。
すると、受付の人がその音にビクッと身を震え少し青ざめている。
「この依頼ですか?」
「そうよ。 これ本当に……?」
「ええ、最近活発したのかこの地域にまで襲うように」
「それじゃ、これしかないわ」
張り切る笑顔で依頼書を指すペルセポネに俺は声をかけようとしていたら受付の人と話が進む。
「おい、何やっている? 勝手に依頼受けるなんて――――」
「では、これに」
既に依頼書の上に石を置いあり、それに手を載せる。
神力を流している様には見えないが、石が緑でなく青に光ると、受付の人がめをひん剥く程の驚きをして、石から目を離してない。
「えっ?」
「これで、受託ね」
「えっ? えぇ。そう……。 えーっ確かこの依頼書って――――ランクAじゃ!?」
あたふたしている受付の人が、石を退けて依頼書を取り上げ目の中に入れてしまいそうなほど内容に目を通してが、ペルセポネは、その紙を掴み取ってバッグにしまう。
「さぁハーデス、行きましょ。 向かうは東の……」
依頼書を取り出しては場所を確認しするペルセポネは、続く言葉を平然と述べる。
「山の麓。 ブラックサーペント退治」
だが、その言葉を耳に入る近くの冒険者やフォルクス達タリアーゼのメンバーも驚きを隠せないで、ギルドから出るペルセポネの後ろ姿をただ、見るだけであった。
「おい、なんで、依頼うけた?」
「なんでって、冒険者なんだから。 依頼あるから受けるの当たり前じゃない?」
「だが、これからコベソの所に」
「そんなの後でも良いじゃん。 依頼受けて冒険者ってのやって、しかも高ランクの依頼で注目浴びれば……。 こう言うのやってみたかったんじゃない?」
俺の事を見透かしてこようとするペルセポネの厭らしい目が、俺の心に突き刺す。
そりゃやってみたいって正直に言うとな。でも、ひっそりと自分で依頼受けて依頼を達成させるというのもやりたい。
奥歯を噛み締める思いで、ペルセポネを見るが、後ろからフォルクスの声がする。
「その依頼って……。 ランクAなんじゃ」
「なんで受けられる?」
「ペルセポネさん、強いけどあれはっ!」
マイクとマラダイも追い掛けて来たのか、少し驚きと焦りの顔でペルセポネに聞いていた。
そして、ダナーもフォルクスの後ろからライカと共にやって来る。
「ペルセポネさん、あなた……」
「石が受託了承するなんて! しかもランクAのって」
この五人驚きの顔を隠せないどころか、少し大きな声を出している為、街中通行する者達やら俺達の密集を見てコソコソして通り過ぎていく。
うーん、気まずい。
「私が誰であろうと、ランクがなんであろうと気にしない、気にしない。 これからハーデスと討伐クエストやるんだから」
可愛らしく首を傾げ、笑顔でそれをフォルクス達タリアーゼのメンバーに伝えてはいるが、俺はペルセポネの動きに少し引いてしまった。
「さぁ、ハーデス。 行きますわよ!」
「どこのマネだ?」
ミュージカル俳優のような口調で高らかに、この城塞都市ローフェンの出口を指す。
俺は、少し恥ずかしい気持ちになり、ペルセポネより徐々に離れながら着いていくが、気付かれてしまい、腕を引っ張られ、そして腕組みされてしまう。
夫婦なのだからやっても良いのだと思うけど、やはり公共の場である街中、かなり恥ずかしく顔を下げ、腕を離そうと試みている。
「――――やはり、行く前に、コベソの所にいくぞ」
「依頼終わってからでも」
「勇者絡みなんだ。 多分、鈴木ゆかりと接触できるタイミングを逃す訳には」
「そこ言葉エロい……」
「ん、なんでだ?」
「接触だなんて、触るなんて」
「直接、触るって言う意味ならそうだが、その意味でないしエロくない。 顔合わせできるんだ、もしかしたらあの女の神が何処にいて、会うことができるかと聞けるだろ?」
「うーん」
「俺達が、ここに来た意味覚えているだろ?」
「ええ、分かっているわ。 でも――――」
ペルセポネは、依頼書を俺に見せてくる。
「ハーデスは、勇者とこの、冒険者ギルドの依頼どっちがやりたい?」
「そりゃ、こっちだろ!!」
「――――ですよね。 でも勇者なんて、また会えますよ」
「いやいや、鈴木ゆかりは地球、俺達の世界絡みなんだ。 しかもその依頼も今日中ってわけないだろ。 明日にでもできるんだろ?」
「そ、そうですけど……」
「なら、直ぐに出発という訳では無いと思うからな。 明日それだ」
俺は、冥王と言うのを置いて目をつぶって依頼書に人差し指を向ける。心做しか、自分を少し解放したみたいで、晴れやかになったが、その俺の行動を間近に見ているペルセポネは、ニタニタと自分の気が赴くままに喋り、俺がそれを正す。
やはり、勇者と女の神エウラロノースの動向も知って於かなければと、やはり冥界冥府の王なのだから遊んでいてはならないな。
ペルセポネは、渋々俺の後を着いてくる。
冒険者ギルドの前を通り過ぎる頃、既にフォルクス達の姿は消えていた。
「先ずは、コベソ達に俺が冒険者になった事を言うのと、勇者について少し聞ければ」
とペルセポネは、相槌をついて着いてきているが、少しだけゴニョニョと声を小さく誰にも聞こえさせない程の呟きを戻る時からしていた。
『勇者ぶっ壊す。 女の神もぶっ壊す。 ブツブツ……』
俺は、微かに聞こえた言葉を、一旦胸にしまい聞いていない振りをして、先に進む事にした。
すると、後ろペルセポネよりも後ろから、走ってきたのだろうフォルクス達の声で呼び止められた。
「はぁ、門の方に向かったと思ってたら」
「どうした?」
「いや、どうしたもんじゃない」
「?」
俺とペルセポネは、よく分からないフォルクス達の行動に戸惑う。
「まさか、ペルセポネさん。 ギルドランクAだなんて」
マラダイが、息を整えて落ち着きを取り戻していると、ダナーも息を吸い話しかけて来る。
「ギルドの、受付がビックリしてあの後、職員全員てんやわんやでしたよ」
「マジで混乱」
マイクは、冷静な口調で話しているが、額から汗が出ているし、ライカは、男四人走っているのにゆっくりとここにたどり着く。
「それに、ハーデスもなんで言ってくれないんだ――――」
だが、俺とペルセポネは、フォルクスの一言で目が点になり、体が凍りついたようだ。
「――――勇者だって事!!」
……えっ? 勇者? 俺が?
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