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舞ちゃんの誕生日  作者: 青空夢花
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舞ちゃんの誕生日

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それから2年の時が流れました。 今日は舞ちゃんと愛ちゃんと花音ちゃんの誕生日です。ママはバースデーケーキを大小2個作ってくれました。ご馳走もたくさん用意しました。 パパが会社を定時で帰って来ると、パーティーの始まりです。 お隣の山崎さん夫婦、沙紀ちゃんのお母さん、花音ちゃんのお母さん、それにパパとママの両親(おじいちゃんとおばあちゃん達)と集まり賑やかなお誕生会になりました。 沙紀ちゃんのお父さんと花音ちゃんのお父さんは仕事が忙しくて帰りが遅くなるので、先に始めていて下さいと連絡がありました。



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「何か私だけ誕生日が違うんだよね。一緒に祝って欲しかったな」 沙紀ちゃんがしょんぼりして言いました。 「沙紀ちゃん、ケーキを見て(^ー^)」 舞ちゃんがにこにこしながら、少し小さい方のケーキを指差しました。 「ケーキを?」 沙紀ちゃんは、ケーキを見たとたん元気になりました。ママは沙紀ちゃんの事もちゃんと考えていたのです。 「沙紀ちゃん、お誕生日おめでとう ちょっと早めのバースデー」 とチョコペンで書かれていました。 「ママ大好き‼」 思わず沙紀ちゃんはママに抱きついてしまいました。




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「おやおや、それじゃ私は沙紀の誰なんだい?」 沙紀ちゃんのお母さんが少しいじけたそぶりで言いました。 「誰って…決まっているでしょ、私の大好きなお母さんだよ」 そう言って沙紀ちゃんは、お母さんにも抱きつきました。



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「こっちがママで、こっちがお母さん」 沙紀ちゃんは嬉しそうに言いました。 「まあ、良いことにしましょ」 沙紀ちゃんのお母さんが言うと、皆は笑いました。 楽しい楽しいお誕生会でした。 おじいちゃんとおばあちゃんに愛嬌をふりまいて愛ちゃんも大サービスしました。



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お誕生会が終わると、片付けは皆が手伝ってくれました。皆が帰った後は洗い物も終わっていて、ママはパパと向き合って座りました。 「愛ちゃん、私達は2階に行こう」 「うん」 子供達が2階に上がって行くと、ママが言いました。 「私、不安なの」 「愛のことか?」 「…ええ」 「実は俺もなんだ。 愛が生まれ変わりと知った時から、いつも心のどこかでくすぶっていたんだ」



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両親の不安



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「最初の時、3才の誕生日のすぐ後に死んでしまったから…、この子も死んでしまうんじゃないかっていう思いがあってさ。 いくら打ち消そうとしてもダメなんだ。特に3才の誕生日が近づいて来た頃からは、その事で頭の中が一杯になってしまうんだよ」 「私もそうなの。神様この子を私達夫婦から奪わないで‼…って、いつも祈っているわ」



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その頃2階では…。 「愛ちゃん、この頃は少し楽になったでしょ」 そう言いながら、舞ちゃんがベッドに座りました。 「うん、赤ちゃんの真似をしなくても良いからね」 愛ちゃんもそう言いながら、舞ちゃんの隣に座りました。 「今日は疲れたでしょ。ずいぶん皆に気を使っていたものね。もう寝ようか」



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「うん」 舞ちゃんと愛ちゃんは洗面所に行って顔を洗い歯磨きを済ませると、リビングのドアを開けました。 「パパ、ママおやすみなさい」 舞ちゃんと愛ちゃんが挨拶すると、 「あ、ああ、おやすみ」 パパとママは、少し驚いたように言いました。 ( ; ゜Д゜)(^_^;)



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花音ちゃんも愛ちゃんと同じように、この頃は赤ちゃんを演じなくてもすむので、少し解放感を感じていました。 4月になったら一緒に同じ幼稚園に行くので、今から楽しみにしています。 幼児の相手をするのは疲れると思うけど、愛ちゃんも一緒なので、あまり先の事は考えないようにしています。



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それから1週間後愛ちゃんはママと手をつないで近所に買い物に出掛けました。 交差点で信号を待っていると、突然2人に向かって車が飛び込んで来ました。 ママ危ない‼ 《ドン‼》 愛ちゃんは、ありったけの力でママを突き飛ばしました。その直後 《ガシャーン》 (@ ̄□ ̄@;)!! 一瞬の出来事でした。 衝撃音と共に愛ちゃんの体は宙に舞い上がり、3m ほど飛ばされました。



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《ピーポー、ピーポー》 救急車がかけつけ、直ちに近くの救急病院に運び込まれました。 犯人は酔っぱらい運転の男でした。 「慌ててブレーキを踏んだが間に合わなかった」 男は警察官に言い訳しましたが、ブレーキを踏んだ痕はありませんでした。 ママはかすり傷程度ですみましたが、愛ちゃんは重態になり、酸素マスクをして苦しそうです。 病院のベッドの上で愛ちゃんは生死をさまよっていました。



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《あ~、一番恐れていたことが起きてしまった‼》 「愛‼」 「愛ちゃん」 パパと、ママはベッドの愛ちゃんに語りかけますが、反応がありません。 「誠に申しあげにくいのですが、恐らくこのまま意識が戻ることはないと思います。 せめて最後の瞬間を共にしてあげて下さい」 医師はそう言うと、病室を出て行きました。



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『あ~、何であの時買い物になんて出掛けたんだろう』 ママは後悔しました。 「お前は悪くないよ。自分を責めるんじゃない。 後は神様に愛の命を救ってくれるように祈るだけだ」 ママは黙って頷くと、両手を組み祈り続けました。 病院にあるテレビではこの事故のニュースを報道していました。 事故現場でリポーターの男性がマイクで話しています。



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「たった今入ったニュースをお知らせします。 〇〇県〇〇市〇〇の交差点で、交通事故が発生しました。犯人はかなりの量の飲酒をしており、交差点で信号待ちしていた数人が犠牲になった模様です。 …… 怪我人の中でも一番重症なのは、星野愛ちゃん3才です。愛ちゃんはお母さんと買い物に行く途中だったそうです。



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この事故の目撃者の主婦の話によりますと、幼い女の子がとっさに母親をかばったように見えた…と言っていましたが、…はたしてそんな幼児が、とっさに母親をかばうなどと言うことが有りうるのでしょうか?  ……… この事故では、他にも数名の怪我人が出ている模様です。 ……。 詳しい情報については、後ほどお知らせします……。 ***** 連絡を聞いて、親戚や近所の人達が心配してかけつけました。 皆必死で奇跡が起きることを祈り続けました。



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名前を呼んでも返事がありません。 それでも舞ちゃんは、泣きながら愛ちゃんの名前を呼び続けました。 ママは愛ちゃんの頬を優しくなでました。 パパはぐったりとうなだれ、歯を食いしばっています。 おじいちゃんやおばあちゃん達は泣いています。



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今まさに息を引き取ろうとしていた愛ちゃんの目の前には、医者と看護士がいました。 医者は首を横に振りました。看護士も深く頭を下げています。 愛ちゃんの体から魂が抜けました。そして、魂の愛ちゃんは家族の泣いている姿を見ていました。



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花音ちゃんとも会えなくなっちゃうのかな? 一緒に幼稚園に行くのを楽しみにしていたのに…。 だけど、それも…無理なんだね。 愛ちゃんの目からは後から後から涙が溢れるのでした。




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ベッドに横たわっている自分の姿を、魂となっている愛ちゃんが見つめています。 皆さよなら。 毎日、楽しかったよ。 もっと、皆と一緒にいたかったけど…。 きっと…、 これが運命なんだね。 もう私…生きられないんだよね。 だって、お医者もダメだって言ってたもの。 でも、大好きなママが助かって良かった… 愛ちゃんは泣いていました。



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そんな愛ちゃんの肩をたたく者がありました。 振り返ると、白い服を着た男の人でしたが、お医者様ではありません。 でも、その人が誰なのか愛ちゃんは分かっていました。 「神様。迎えに来たんですか?」 そう言う愛ちゃんの目からは、また新たな涙が溢れました。



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神様は愛ちゃんに向かい合うと、肩に手を置いて見つめながら言いました。 『あなたは天国に来るにはまだ早い』 「えっ」 『まだ生きてやるべき事がたくさんある。このまま戻って行きなさい』 「それじゃ……それじゃ…私…」 愛ちゃんはあまりにも嬉しくて、言葉になりませんでした。 「ありが…とう。ございます」 愛ちゃんは手の甲で涙を拭いながら言いました。 『ほらほら早く戻って、家族を安心させてあげなさい』 神様はにっこり微笑みました。



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愛ちゃん(の魂)は、ベッドに横たわる自分の体の中に戻っていきました。 すると、不思議なことが起こりました。 身体中の傷や、傷から流れ出る血ががみるみる消えていきました。 医者や看護士はビックリして目がテン(・・?)になり固まっています。 パパやママは驚いてお互いの顔を見ました。 舞ちゃんは愛ちゃんの顔を覗き込み「うそ~っ‼」と大きな声を出しました。 青ざめていた顔色も明るくなっていきました。 家族はビックリして、愛ちゃんを見つめました。 愛ちゃんのまぶたがピクッと動きました。そして家族が見つめる中で、愛ちゃんは静かに目を開けました。




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目を開けた愛ちゃんは、天井を見つめていました。 「愛ちゃん…気がついたのね」 舞ちゃんはにっこり笑顔で語りかけました。すると、愛ちゃんは舞ちゃんの方を見て言いました。 「舞ちゃん…、私…生きてる…のね? (@゜▽゜@)」 「うん、生きてるよ。 良かったね~。本当に良かったね~」 舞ちゃんは泣きながらながら満面の笑み ヾ(=^▽^=)ノで言うと、後ろに立っているパパとママの方を振り返りました。



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ママはあまりの嬉しさにパパの胸に顔を押しつけて泣きました。 愛ちゃんが奇跡的に回復したことを知らされ、かけつけた親戚や近所の人達ばかりでなく、病院中の人達が喜び、歓声が沸き上がりました。 ほぼ絶望と思われていた愛ちゃんの奇跡的な回復は、もちろんその後のニュースでも放送され、手紙や花を届けてくれる人もたくさんいました。



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全国の皆さんの励ましのお陰で、愛はこんなに元気になりました。有難うございました(^ー^)」 愛ちゃんが元気に回復している姿が放送されると、日本中の人が喜びました。 愛ちゃんは無事退院して、いつも通りの生活に戻りました。




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春になり桜が咲きました。愛ちゃんは花音ちゃんと一緒に3年保育で幼稚園に通い始めました。



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前世では幼稚園に通うことが出来ず悲しい思いをした愛ちゃんでしたが、今こうして花音ちゃんと手を繋いで通えていることに胸がいっぱいになるのでした。 花音ちゃんもまた、初めて通う幼稚園にワクワクドキドキして、楽しみにしていました。



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舞ちゃんと沙紀ちゃんは中学2年生になりました。 「ただいま~」 沙紀ちゃんが元気にリビングに入って来ると、 「この子ったら、まるで自分の家と勘違いしてない? 鞄くらい家に置いてから来なさい( ̄~ ̄;)」 沙紀ちゃんのお母さんが言いました。 「な~によ。お母さんだって毎日のように来てるじゃないの(-_-;)」 沙紀ちゃんが口を尖らせて言いました。



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「まあまあ、いいじゃありませんか。皆で一緒にいると、私も嬉しいんだから」 ママはクスッと笑うと言いました。 「その為にパパが特注で大きなテーブルを作ったんだものね、ママ」 舞ちゃんが笑顔で言いました。 「そうですよ。このテーブルを囲んで、皆の楽しそうな顔を見ていると、私も嬉しいんですから…」 「そう言ってもらえると私達も嬉しいわ。ホホホ…(^-^)」 山崎さんの奥さんも笑顔で言いました。



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楽しみ



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翌日の午後。 「安藤さん遅いわね」 山崎さんが入口の方を見ました。 「さっき、少し遅くなるから、先にお茶会を始めていて下さいっていうメールが来ていたわ」 ママが言いました。 「それじゃ、始めちゃいましょうか」 山崎さんが言ったので、「そうね」とママと花音ちゃんのお母さんがうなづきました。 ママが作ったスイートポテトを食べながらおしゃべりをしていると、 『ピンポーン』 インターフォンが鳴りました。



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「やっと来たみたいね」 ママが玄関に迎えに出て行くと、やはり沙紀ちゃんのお母さんでした。2人でリビングに入って来ました。 「遅くなってごめ~ん」 (;^_^A 沙紀ちゃんのお母さんは、頭をかきながら皆の座っているテーブルの所まで来ると、 「待たせたお詫びに~、はいお土産」 と言ってテーブルの上に紙袋を乗せました。そして中から綺麗な包装紙に包まれた箱を出しました。



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「今日は東京で永谷萠のイラスト展をやっていたから見に行って来たの。帰りにデパ地下で、美味しそうなクッキーを売っていたから買って来ちゃった」 「せっかく東京まで行ったんだから、もっとゆっくりしてくれば良かったんじゃないの?」 ママが言いました。 「そうも思ったんだけど、今回は1人で行ったから…。それに、美味しいクッキーを皆で早く一緒に食べたかったから…」 沙紀ちゃんのお母さんは包装紙を破ると、箱の蓋を開けました。



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「まあ美味しそう(o^-^o)さっきスイートポテトは食べたけど、まだまだ大丈夫。だって別腹だも~ん」 若い花音ちゃんのお母さんは、おどけたように言うと、口の回りをペロリとなめました。 「別腹、別腹っと」 山崎さんも(o^-^o)笑って言いました。 「はいはい。どうぞ食べて下さいな」 ママがスイートポテトの皿を沙紀ちゃんのお母さんの前に置きました。



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「いっただきま~す(^q^)」 沙紀ちゃんのお母さんは美味しそうに食べています。 「やっぱり星野さんの作るおやつは最高に美味しいわ~」 沙紀ちゃんのお母さんは満足そうに食べ終わると、 「そうだ。イラスト展に行った時に買ったんだけど見る?」 と言って、バックの中からポストカードを出して見せました。



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「まあ素敵‼」 花音ちゃんのお母さんがうっとり(*´-`)した表情で言いました。 「あ~私も行きたかったな~。永谷萠、好きなのよね誘ってくれれば良かったのに…」 山崎さんも最初は嬉しそうに見ていましたが、すぐに残念そうに言いました。 「ごめんなさい。朝のテレビを見ていて急に思いたってすぐ出掛けたから…。 東京まで2時間近くかかるから、誘っちゃ悪いかな?って思ったの」



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「そんなことないわよ。今度行くときは誘ってよ」 山崎さんは、隣にいる沙紀ちゃんのお母さんの腕をポンと叩きました。 「今度行くときは誘います」 沙紀ちゃんのお母さんはペコリと頭を下げました。 「ところで…。もし良かったら、これあげるわ」 沙紀ちゃんのお母さんは、先程とは違うポストカードを皆に配りました。 「えっ、もらっていいの?」 花音ちゃんのお母さんはニコニコ嬉しそうです。



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「これは誰の作品なの? 綺麗なイラストね」 ママが言うと、 「実はこれ私が作ったのよ」 「えっ、(;゜∇゜)そ…そうなの? 凄いじゃない‼」 山崎さんは、驚いているようです。 子供たちも「見せて~」と言って見ています。 「すご~い(*゜Q゜*)‼ おばちゃんじょうず~」 愛ちゃんも目を丸くして言いました。 花音ちゃんもニコニコして見ています。 o(^∇^o)(o^∇^)o



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「安藤さんにそういう才能があるとは知らなかったわ」(*^□^*) 山崎さんはポストカードを見ながら言いました。 「お店に出さないんですか? もし売ってたら買いますよ、私」 花音ちゃんのお母さんが笑顔で言いました(o^-^o)。 「う…ん。私の作品がお店に並べられたら嬉しいけど。 こう言うのってやっぱり卸し屋さんなんかを通さなきゃいけないんでしょ。 やっぱり無理よ(^_^;)」 沙紀ちゃんのお母さんは言いました。



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「私思うんだけど…、こういう風に才能があっても、その才能を活かしきれない人って、たくさんいると思うわ。 例えば、星野さんはお菓子作りが得意だし、私はお総菜作りなら自信がある…とかね」 皆はウンウンと興味津々です。 「それで……?」 花音ちゃんのお母さんが尋ねました。 「それで~? ヘヘヘ…おしまい」 皆、ガクッと来ました。 山崎さんは(≡^∇^≡)ハハハ…と照れくさそうに笑いました。



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「それじゃ、家の敷地にお店を作っちゃう(@゜▽゜@)……とか」 ママは子供のような発想だなと、言い終わってから恥ずかしそうに(*''*)モジモジしました。 「それ、いいわね 星野さんの家は敷地も広いんだから、ここに店を増築しちゃえばいいんじゃない? それに確か…ご主人の実家は工務店をやっているのよね。そしたら格安でお店を作ることが出来るんじゃな~い?」 山崎さんは身を乗りだして、はしゃいでいます。



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「まあ、素敵だわ。手作りショップね。 安藤さんのポストカードに星野さんのお菓子、それから山崎さんのお総菜…。 他にも声をかけたら商品はたくさん集まるんじゃない? それらをセンスよく配置して…フフフ。楽しそう。 私は不器用で何も作品は作れないけど、店員で頑張るわ」 花音ちゃんのお母さんは両手を組んで夢見る乙女といった感じです。



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「皆の想像力には驚いたわ。でも、楽しそうね」 ママはにっこり笑いました。 「私、体力には自信があるから営業もします」 花音ちゃんのお母さんは、元気よくガッツポーズをしました。 そこに舞ちゃんと沙紀ちゃんが「ただいま~」と言って帰って来ました。 花音ちゃんのお母さんは、慌ててあげた手を下ろしました。



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「なんか盛り上がっているようなんですけど~」 沙紀ちゃんがママたちの方を見ながら言いました。 「フフフ…(=^ェ^=)皆でお店をやりたいわねって話していたのよ」 花音ちゃんのお母さんは、さっきのガッツポーズを見られたかも? …と恥ずかしそうに言いました。 「わぁ~、素敵‼ 私さんせい~」 沙紀ちゃんは身を乗り出して言いました。 「私もさんせ~‼ ところで…どんなお店なの?」 舞ちゃんも興味津々です。



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「夢の話をしていただけよ」 ママがクスッと笑いながら言いました。 すると、 「( ; ゜Д゜)エエッ、夢の話なんですか~ 私マジ、ヤル気なんですけど…」 花音ちゃんのお母さんはガッカリしているようです。 「確かに実現したら楽しそうだけど…(^_^;)、無理なんじゃないかしら」 ママが言いました。



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「まあ、星野さんたら、若いのに冒険心が無いのね。そんなこと言ってないでやりましょうよ」 山崎さんが説得するように言いました。 「山崎さんの言う通りよ。人生にはチャレンジ精神は大切よ。 でも店を増築するには、たとえ小さなお店でもかなりの金額がかかってしまうから… まずはガレージセールやフリーマーケットから始めてみない? それで感触を確かめてみて…、それでもやりたい気持ちが変わらなかったら…、その時はお店を始めるの。どうかしら?」



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「そうね。それなら無理がないわ。私も安藤さんの意見に賛成よ」 山崎さんは頷きながら言いました。 「確かに…そうね(;^_^A ズブの素人が突然お店なんか始めても…失敗するのがオチよね。 たくさんの人が起業するけど、成功するのはほんの1割程だって、この前テレビでやってたわ」 花音ちゃんのお母さんも大きく頷きました。 「会社を経営していくためには、勉強もしなくちゃいけないわね。経理とかパソコンとか…」 ママが言いかけると、山崎さんは頭を抱えながら「私には無理無理」と言いました。



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まずはフリーマーケットをやりましょう。今度丸山公園でフリーマーケットがあるんだけど、出店者を募集していたわよ」 沙紀ちゃんのお母さんが言うと、山崎さんと花音ちゃんのお母さんは、「やろうやろう」と、大きく頷き固く手を握りました。 「そんな風にやっていくなら堅実ね。上手くやっていけそうなら主人と相談して、お義父さんにお店を建ててもらえるようにお願いしてみるわ」 ママも嬉しそうです。



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「それはそうと、大変よ。もう6時だわ」 山崎さんがリビングの時計を見て、焦ったように言いました。 「うそっ…(;゜0゜)あ~っ、ホントだ。 ヤバい( ̄□ ̄;)!! 急いで夕御飯作らなきゃ。花音ちゃん、帰るわよ」 「はい、ママ」 花音ちゃんのお母さんも急に焦りだすと、花音ちゃんを連れて帰って行きました。



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山崎さんと安藤さん親子が帰ると、家の中はシーンとなりました。 「ママ、本当にお店やるの?」 舞ちゃんが尋ねました。 「さあ、どうかしら」 ママは首をかしげました。 「それよりも夕御飯の準備を急がなきゃね」 「私も手伝うわ」 「愛ちゃんも~」 舞ちゃんと愛ちゃんが元気に言いました。すると、ママはクスッと笑いながら言いました。



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「愛ちゃん、家族だけの時は普通に話して良いのよ」 「そう言えば、花音ちゃんは家族といるときも3才を演じているんだよね。 疲れそう…」 「舞ちゃんが言いました」 「そろそろ本当の事を教えた方がいいんじゃないかしら」 「でもね。 前に花音ちゃんが言ってたんだけど、もし本当の事を言ったら、花音ちゃんのママは気絶しちゃうかもしれないって」 愛ちゃんが言いました。



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「花音ちゃん、優しく子だから本当の事が言えないのね」 ママはそれでも本当の事を言おうと思いました。 山崎さんと安藤さんにも本当の事を言った方が良いように感じました。 「皆、驚いて腰を抜かすかもしれないけど、明日お茶を飲みながらリラックスしている時にママ言ってみるわ」 ママは決心したように言いました。



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告白



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夕食の後ママがパパに相談しました。 「愛や花音ちゃんが前世の記憶を持っていることを、皆に話そうかと思っているんだけど…」 「そうだな~。 皆驚くとは思うんだけど、俺もそろそろ言った方がいいんじゃないかと思うよ。だいいち花音ちゃんが可哀想だよね」 「そうよね。それじゃ、明日皆に言うわ」 「うん、そうだね」



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***** そして翌日。 いつも通り皆が集まって来ました。 「「わぁ、おはぎ…美味しそう」」 (⌒‐⌒) ヾ(=^▽^=)ノ 皆、楽しくおしゃべりしながら食べています。



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「実は…、皆に話したいことがあるの…」 ママが緊張した表情をして言ったので、皆は(・・?)キョトンとしています。 「どうしたの? 真剣な顔して…」 花音ちゃんのお母さんが心配そうに言いました。



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「実はね…」 そう言った後ママは、愛ちゃんと花音ちゃんを見つめました。 皆はママが何を言いたいのか分からず、首を傾げました。 ママが並んで座っている愛ちゃんと花音ちゃんの後ろへ行き、2人の肩に手を置きながら言いました。 「皆、信じられないかもしれないけど、この2人…前世の記憶を持って生まれてきたの」



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「エエッ((((;゜Д゜)))な…何ですって‼」 山崎さんは(οдО;)驚いて、ドスンと椅子から落ちました。 「イタタタタ…☆ ̄(>。☆)。な…な…何ですって~‼」 山崎さんはお尻をさすりながら、また椅子に座り直しました。 「そ…それ、どういうことなの?」 ( ; ゜Д゜) 沙紀ちゃんのお母さんも信じられないと言う顔で身を乗り出して来ました。



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「この2人は生まれる前の記憶を覚えているのよ」 「そう言うのテレビで見たことあります。でも、まさか自分の子が…」 花音ちゃんのお母さんは言いかけて、隣に座っている花音ちゃんを抱きしめました。 「まさか花音が、前世の記憶を持って生まれてきたなんて…全く気づかなかったわ。 どうして今まで言ってくれなかったの?」



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「だって……。 だって…、ママ。…本当の事を知ったら、ショックで気絶しちゃうと思ったんだもの」 花音ちゃんは泣いていました。 「ずっと言えなくて辛かったでしょう?」 花音ちゃんの頬を流れる涙をそっと指で拭いながら、花音ちゃんのお母さんは言いました。 「…うん」 頷く花音ちゃんの頭を優しく撫でながら、花音ちゃんのお母さんは言いました。




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「そんな心配すること無かったのに…。ママなら全然平気よ。 ところで…」 花音ちゃんのお母さんはにっこり笑いました。 「前世の記憶って言うのを聞かせて?」 「はぁ…(・・?)(・・?)」 それを聞いて、山崎さんと沙紀ちゃんのお母さんは驚いて、花音ちゃんのお母さんの顔を見ました。



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「だって~、興味あるじゃない? 前世って未知の分野なんですもの。どういうものなのか知りたいわ」 それを聞いて山崎さんは呆れたと言う顔をしています。 「ママ…(*゜Q゜*)驚かないの?」 花音ちゃんはこんなことなら、もっと早く言うんだったわ…と思いました。 それからもう1人。ママももっと早く言うんだったと後悔しました。



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花音ちゃんのお母さんは興味津々という感じです。 「若い人は違うわね。私なんて…腰を抜かしそうな位ビックリしたわ」 山崎さんは胸を押さえています。 「それじゃ、まず私から話します」 愛ちゃんが遠い記憶を呼び戻すように語り始めました。 「明治時代の中頃、私と舞ちゃんと沙紀ちゃんは三つ子で生まれたの」



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「へぇ~、三つ子? 珍しいわね」 山崎さんは驚いています。 「私と沙紀ちゃんは親戚に養女に出されて、家には舞ちゃんだけが残ったんです」 愛ちゃんは花音ちゃんを見ると、花音ちゃんがうなづきました。 「ここからは私が話します。 その当時の舞ちゃんは『おりんちゃん』という名前で、私が『おまつ』という名前だったんだけど、私達はお隣同士でとても仲良しだったの」



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「私とおりんちゃんは大の仲良しで、何をするのも一緒だったわ」 花音ちゃんは、二人がそれぞれ遠い所にお嫁に行ってしまい、2度と会えなくなって悲しかったことを話しました。 「天国で、神様にママの子供になったら『おりんちゃん』にもう一度会えると言われて、ママのお腹に入ったの」 「そうだったの。 そう言う話を聞くと、何かジーンとくるわね」 花音ちゃんのお母さんは感動しているようです。



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「その後、私と舞ちゃんは、明治時代の最後に別れた場所に行って来たの。 花嫁衣装を着た私(花音ちゃん)とおりんちゃん(舞ちゃん)が最後の別れをしている所に行って来たの。 長い間の夢が叶って嬉しかったわ。 私達はそれぞれ昔の私達の体の中に同化して……。そして、後の時代でまた会いましょうと誓いあったの」。 「奇跡の再会ね」 山崎さんは瞳を潤ませています。



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「奇跡と言えば…。 交通事故で愛ちゃんが大ケガをした時、身体中傷だらけだったのに、嘘のように傷が消えていたでしょ。 それを見て私…神様が奇跡を起こしてくれたと確信したわ」 沙紀ちゃんのお母さんがキッパリと言いました。



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「そうよ、あの時は…私も…もう死ぬんだと思っていたわ。 でも……。 神様が現れて…、 『あなたは、まだ生きてやるべきことがたくさんある。このまま戻って行きなさい』 優しくそう言われたの。 それで私はベッドに横たわっている私の体の中に入っていったのよ」



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その話を聞いて、皆涙ぐんでいました。 これまでは誰も信仰を持っていた訳では無かったので、本当に神が存在しているのかどうか疑問に思っていました。 しかし、まざまざと奇跡を目の当たりにして信じざるを得ないのでした。 そして、今は全員がハッキリと確信しました。目には見えないけれど、神が存在しているということを…。



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「花音ちゃん…。 これまでずいぶん辛い思いをしてきたのね。ママに相談してくれたら良かったのに…。 ママはそんな《ヤワ》じゃないわよ」 花音ちゃんのお母さんは、花音ちゃんを見つめてそう言いました。 「ママ、ごめんなさい」 花音ちゃんは素直に謝りました。 「2人とも前世の記憶を持って生まれた為に、普通の人間がしなくていい苦労をしてしまったのね」 山崎さんは、泣きながら愛ちゃんと花音ちゃんの手を握りました。 「私達、前世の記憶を持って生まれて来て良かったと思っているの」 「だって、パパとママを自分で選んで生まれて来たんですもの」 愛ちゃんと花音ちゃんは、お互いの顔を見ると、にっこり笑いました。



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「そう言えば、この事を星野さんは大分前から知ってたんでしょ…。水くさいわ。もっと早く教えてくれたって……」 山崎さんは、少し不満げな表情をしています。 「山崎さん。 そんなことを言ったら可哀想よ。…星野さんだって、私達に、いつこの事を話そうかと…ずいぶん迷ったと思うのよ」 「…そうね」 沙紀ちゃんのお母さんの言葉を聞いて、山崎さんは頷きました。 その時、 「ただいま~」 舞ちゃんと沙紀ちゃんが帰って来ました。



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「お帰りなさい」 ママが2人に笑顔を向けました。 「「お帰り~」」 皆も2人に声をかけました。 「皆、神妙な顔しちゃってどうしたの(・・?)」 沙紀ちゃんが首を傾げながら言いました。 「ねえ、沙紀も知っていたんでしょ」 「知っていたって……? えっ、( ; ゜Д゜) ひょっとして……前世の……こと?」 「やっぱり知っていたのね。 お母さん達、今初めて聞かされて…、もうビックリしちゃって~」



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「しっかし、驚いたわね。こんなことが起こるなんてね(;^_^A」 私……、まだ心臓がドキドキしているわ」   山崎さんは胸に手を当てて大きく深呼吸しています。



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「私と舞ちゃんは、前世の記憶を覚えていなかったんだけど……。 でも、…私は舞ちゃんや愛ちゃんと三つ子だったと聞いて納得したの。 あ~、やっぱりって。 何か他の友達とは違う……絆と言うのかな…。 偶然出会ったと言うよりも、必然的に出会った者同士みたいな感じがしていたから」 沙紀ちゃんの話を、皆は頷きながら聞いていました。




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「神様は、私達の目には見えないけど…、でもいるのね」 沙紀ちゃんのお母さんが言いました。 「心だって見えないけど、間違いなくあるものね」 花音ちゃんのお母さんが、にっこり笑いました。



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「舞の9才の誕生日に愛を見たときは……、驚いたわ」 ママは愛ちゃんを見つめて微笑みました。 愛ちゃんもまたママを見上げて、嬉しそうににっこり笑いました。 「私達は目に見えるものしか信じないけど、目には見えなくても存在するものはあるのね」 山崎さんは大きく息をはくと続けました。



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「そう言えば、あの日…何年か前の雪が降った日の…舞ちゃんの誕生日に、星野さん一家を見かけた事があったわよね。 あの日、家族で小学校の校庭で雪合戦していたでしょ。その時ご主人が誰もいない所に雪の団子を投げていて、「あらっ」って思ったの。 何となく気になって…。 一旦帰りかけたんだけど、また戻って来たのね」



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「そしたら、今度は舞ちゃんが楽しそうにブランコに乗っていたんだけど。 誰もいないはずのもう1つのブランコが揺れていて、…ずっと不思議に思っていたの。 あれは、私には姿が見えなかっただけで、愛ちゃんが乗っていたのね」 山崎さんは気になっていたことが、やっと判明して晴れやかな顔をしています。



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そこにいた皆が、ゆったりと幸せに包まれたような穏やかな表情をしていました。 そして、瞬く間に楽しい時間は過ぎていき、皆はそれぞれの家へ帰って行きました。 そして、家に帰ってから今日の話をしました。 当然の事ですが、この話を聞いて、どこの家族もとても驚いていました。 最初は信じられないという表情をしていた家族も、真剣に話をするうちに、頷きながら聞いていました。



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《山崎さんの家では…》 夫「やっぱり…そうだったのか。愛ちゃんが事故にあって瀕死の重症だったのに、嘘のように元気になっていったろ。 それを間近で見ていて、何か不思議な気持ちになったのは事実なんだ」 長男「何か神秘的な話だね。そう言う話好きだな俺」 長女「愛ちゃんも花音ちゃんも気持ちは中学生なんでしょ。ずっと皆の前で、幼児を演じるのは辛かったと思うわ」



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長男「今はともかくさ。 赤ちゃんの時なんて、もっと可哀想だったよね。 俺なら耐えられないよ」 次男「それにしても、2人とも演技力あるね。隣に住んでいるのに、全然気づかなかったよ。将来は主演女優賞もらえそう……」 長女「もう、あんたはすぐふざけるんだから。 自分が愛ちゃんや花音ちゃんの立場だったら、どれ程辛いか考えてご覧なさい」 母「2人とも育児雑誌を読みながら頑張ったそうなのよ。 今はもう3才になったから、精神的にはだいぶ楽になったみたい」



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《沙紀ちゃんの家では…》 父「いや~、驚いたな~。沙紀と舞ちゃんと愛ちゃんが前世では三つ子だったなんてねぇ」 この世には、人間には計り知れないものがあるんだね」 母「私も聞いた時は、ビックリして腰を抜かしそうになったわ」 姉「沙紀は舞ちゃんとは小さい頃からホントに仲良かったものね」 沙紀「まあ、お兄ちゃんやお姉ちゃんが遊んでくれなかったというのもあるんだけどね」



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兄「うはっ、(-。-;)耳が痛いな~」 母「まあ、沙紀とは年が離れていたから仕方無いわよ(^-^;)」 沙紀「まあね(´Д`) 最初は聞き間違いだと思ったわ。だって生まれたての愛ちゃんから聞こえたのよ、『さきちゃん』って」 兄「ぞくに言われるテレパシーってヤツだね」 ( ̄ロ ̄;) 沙紀「そうよ(^_^;)。 赤ちゃんの愛ちゃんから、話す声が聞こえて来るんだもの。そりゃ~、ビックリしたわ」 舞ちゃんのママが作った雪の妖精の人形が、突然話し出した時も《ドキッ》としたわ」 (@ ̄□ ̄@;)!!



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姉「星野さんの家は、不思議ワールドね。まだ3才の幼稚園児だと思っていた愛ちゃんが、心は沙紀と同じ13才だと言うし…」 兄「俺なんて、何も知らないから、赤ん坊の時、いいないばあ(/\)\(^o^)/なんてあやしてたよ」 父「ハハハ…。でもこの事は、俺たちを含めた4家族だけの秘密にした方が良いね」 母「もちろんよ」



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《花音ちゃんの家では…》 母「あなた、さっきから黙っているけど……?」 父「いやぁ~、あんまりビックリしちゃって…さ。 まさか我が子に前世の記憶があったなんて……。驚きのあまり、…言葉が無いんだよ」



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母「そうよね。私も今日聞かされるまで気づかなかったのよ。 これまでずいぶん辛い思いをしたはずなのに…。花音ったら…いつもにこにこして…、私には少しも辛そうな素振りを見せないんだもの」 父「まあ、でもこれからはパパやママの前では、普通の13才の女の子として振る舞っていいぞ」 花音「うん、有難う。 そうする。 パパもママも大好き‼」 花音ちゃんは、本当に心から晴れ晴れとした表情で言いました。



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その日の夜、夕食の後家族がリビングでくつろいでいる時にパパが言いました。 「皆に相談したいことがあるんだ」 「「なあに?」」 舞ちゃんと愛ちゃんが同時に返事しました。 「実はさ。愛が前世の記憶を持って生まれたことをおじいちゃんやおばあちゃんに話そうと思うんだ…」 それを聞いて、舞ちゃんと愛ちゃんは顔を見合わせて笑顔になりました。そして「うん」と元気に言いました。



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「でも…、大丈夫なの? お義父さまもう70才過ぎていらっしゃるのに、あまりにビックリして倒れたりしないかしら?」 「ハハハ…大丈夫さ。親父は毎日ジョギングして体を鍛えているんだから」 パパは笑顔で言いました。 「…そうね(*^_^*)。 そうしましょ」 *** それから1週間後。 パパとママの両方のおじいちゃんとおばあちゃんがやって来ました。 「いらっしゃい」 家族全員で玄関まで出迎えました。



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先に来たのは、パパの両親おじいちゃんとおばあちゃんでした。 「まあまあ、家族揃ってのお出迎えなの、有難う」 おばあちゃんは目を細めて嬉しそうに言いました。 「まずはリビングにどうぞ」 ママが言いました。 パパの両親がリビングのソファーに座り、日本茶を飲み始めた時、チャイムが鳴りママの両親おじいちゃんとおばあちゃんが来ました。 舞ちゃんの家族とパパの両親とママの両親、全員で8人が揃いました。



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皆がそれぞれ好きな飲み物を飲みながら談笑した後、 「ところで、今日大事な話があると言っていたが…どんな話なんだい」 パパ方のおじいちゃんが言いました。 その言葉によって、他の人達もパパの方を見ました。 「今日皆に集まって貰ったのは……(^_^;)」 パパは大きく深呼吸をしました。 「実は、今まで黙っていたんですが…」 全員がパパを見ました。



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「今まで黙っていたんですが…、実は…愛は前世の記憶を持ったまま生まれてきたんです」 「それは…どういうことなの?」 パパ方のおばあちゃんが、キョトンとして言いました。 「やっぱりね」 ママ方のおばあちゃんが呟くように言ったので、今度は皆が驚いておばあちゃんを見ました。



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「私…、前からそうなんじゃないかと思っていたのよ。 愛ちゃんは、生まれる前の前世の記憶を持っているんじゃないかって…」 おばあちゃんはそう言うと、向かい側に座っている愛ちゃんを見つめ涙を流しました。 その後愛ちゃんの小さな手を両手で包みました。 「これまでずいぶん辛い思いをしてきたんでしょうね」 「おばあ…ちゃん」 愛ちゃんも泣いていました。 この様子を見ていて、他の人達もどういう事なのかが理解出来たようです。



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「そう言えば、前にテレビで見たことがあるわ。3才までの幼児の中には、前世の記憶を持って生まれて来る子がいるって。 でも、それはお母さんのお腹の中にいたときの記憶でしょ? 愛が、それよりも前の記憶を持っているってことなの?」 パパ方のおばあちゃんが目を丸くして言いました。 「愛は、それよりもずっと以前の明治時代に生きていた頃の記憶を持っているんです」 パパが言いました。



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「「((((;゜Д゜)))エエッ‼」」 パパ方のおじいちゃんとおばあちゃんは、とても驚いたようで、口をポカンと開けたままで唖然としています。 「そう言えば…、以前にお前が言ってたね。愛はいつも演技しているような気がするって。それは…、 本当は…心は舞と同じ年になるのに、姿が赤ちゃんだったから、赤ちゃんの演技をしていたと言うことだったのか」 ママ方のおじいちゃんは、妻に語りかけると、天井を見上げて目を閉じました。そして大きく息を吐くと、 「これまで…、辛かったな」 と言って、愛ちゃんの頭をなでました。



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「皆、ありがとう。 それじゃ、私が知っていることを全て伝えます。 話が長くなるのでテレパシーで伝えます。皆テーブルの上に手を出して下さい。」 愛ちゃんは、そう言うと、パパやママの両親の手をテーブルの上に重ねて乗せるように言いました。 そして、一番上に自分の小さな手を乗せました。 すると、それらの重ねた手がキラキラと輝きだしました。そして、その回りを小さな星が瞬き出しました。



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皆は何事かと驚きましたが、次第に穏やかな表情になっていきました。 そうです。 これまで愛ちゃんが生きて見てきたこと、感じてきたことが、手の温もりを通して伝わってきたからです。 皆の目から、次第に涙が流れてきました。 そして、皆の重ねられた手の回りから光が消えた時、愛ちゃんはそっと、一番上に乗せていた手を下ろしました。 今、ここにいる8人の心が一つになりました。



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《ここは愛ちゃん達の通う幼稚園》



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ママたちに送り迎えしてもらい、愛ちゃんと花音ちゃんが並んで歩いていると、 「愛ちゃんと花音ちゃんって、仲がいいね。けっこんしちゃえば?」 真央ちゃんが言いました。 「けっこん?」 愛ちゃんと花音ちゃんは、思わず顔を見合せました。 「女同士ではけっこん出来ないんだよ」 あずさちゃんが言いました。 「ええっ、そうなの? どんなに好きでも…けっこんできないの?」



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「そうだよ。男の人としかけっこん出来ないってママが言ってたもん」 「私、夏菜ちゃんのことが好きだから、けっこんしようと思ってたのに…」 真央ちゃんはガッカリしています。 あずさちゃんは、何と言っていいか分からず困っているようです。 「けっこんなんて、大人になってからするものだよ。今から決めちゃったらつまんないよ。 女の子同士で仲良くしようよ」 花音ちゃんがにっこり笑って言いました。



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「そうだね。夏菜ちゃんは可愛いから好きだけど、麗奈ちゃんは優しいから好きだし、智也君もかっこいいから好きだし…。 真央、皆大好き(^ー^)」 真央ちゃんがにっこり笑いました。 そんな真央ちゃんを見て、愛ちゃんと花音ちゃんは、お互いに顔を見合わせて、ほっとした表情を浮かべるのでした。 こんな幼い子供達を相手にしているので、愛ちゃんと花音ちゃんはお互いがかけがえの無い存在であると思っています。



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あの日公園で出会わなければ、私の人生はどんなに暗かったかと、花音ちゃんは思いました。 しかも、長い時の中でずっと探し続けたおりんちゃんにも会えたし、体が幼児である不自由さなんて…、なんてことはないわ。 花音ちゃんはそんな風に思うことにしています。



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愛ちゃんと花音ちゃんは同じ『さくら組』です。 2人は教室の中でもお姉さん的存在です。おゆうぎをしても、歌を歌っても、絵を描いても、頑張って下手にやろうとするのですが、それでも他の子供たちより上手に出来てしまうのです。 担任の佐々木由美先生も一目おいています。



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長い間探し続けたおりんちゃん(舞ちゃん)に会えた時は信じられない奇跡に感動したけど…、 でも今は、愛ちゃんといる時が一番楽しいし、幸せを感じられるのでした。 「花音ちゃん、何ニヤニヤしてるの?」 愛ちゃんに言われ、ハッと我に返った花音ちゃんは、 「何でもな~い。 それより教室に行こう」 笑顔で愛ちゃんの手を引っ張るようにして歩き出すのでした。



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それから数ヶ月の月日が流れ、今日は舞ちゃんと愛ちゃんの誕生日です。 舞ちゃんは14才に、愛ちゃんは4才になりました。 ご近所のいつものメンバーの他におじいちゃんやおばあちゃんも来て、賑やかな誕生会になりました。 ケーキや料理を食べて、皆お腹一杯になりました。



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「そう言えば、以前…店をやりたいとか言ってたけど、あの話はどうなっているんだい」 パパ方のおじいちゃんが言いました。 「今、ご近所の人達とフリーマーケットやガレージセールとかやって楽しんでいるんですよ。 お店を建てるとなると相当なお金もがかかるし、今のままでも良いかな…と思っているんです」 ママが言いました。



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「そうなのか…。別に私はその分を負担してやってもいいと思っていたんだけどね」 おじいちゃんの意外な言葉に皆はポカンとしました。 「エエッ、ホントにいいの?」 愛ちゃんが身を乗り出して言いました。 「ああ、私だってその位の金は持っているよ。私からのプレゼントだから、別に儲からなくたって構わないよ」 おじいちゃんは笑顔で言いました。 「でも…」 ママが言いかけると、 「さすが~、おじいちゃん。気前がいいわ~ お店建てて貰いましょうよ」 花音ちゃんのお母さんは大喜びで、ママにウインクしました。




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隣でおばあちゃんがクスクス笑いながら言いました。 「おじいちゃん、工務店の方は武志(長男)に譲ったでしょ。 暇が出来たから、もし店を始めたら、舞や愛と一緒にお店に立ちたいみたいよ」 「そうだったんですか。それなら甘えちゃおうかな」 ママはにっこり笑いました。 「おじいちゃん、だ~い好き‼」 舞ちゃんと愛ちゃんが笑顔で言いました。



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沙紀ちゃんと花音ちゃんも笑顔で「良かったね」と言い合っています。 楽しい楽しい笑顔いっぱいの誕生会が終わりました。 *** それから1週間後、いつも通りの近所のメンバーで集まっておしゃべりをしていると… 花音ちゃんが「頭が痛い」と言って、うずくまりました。 「花音、どうしたの? 大丈夫?」 花音ちゃんのお母さんは青ざめています。



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すると、今度は愛ちゃんが、 「ああ~、私も…頭が…割れるように痛い~」 と言って、苦痛に顔を歪めています。 どうしたのかしら? ママは不安になりました。これまでに起きた、『誕生日の1週間後』に起きたことが脳裏に浮かんで来ました。とにかく近くの病院に連れて行きました。 「詳しいことは検査をしてみないと分かりませんが、まずは鎮痛剤を飲ませたので、様子をみてみましょう」 医者は言いました。



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新たな旅立ち




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薬が効いたのか痛みが治まったようで、2人はそのままぐっすり眠ってしまいました。 「一応痛みも治まったようなので、このままお帰りになりますか?」 医者の言葉に、ママは少し不安そうです。



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「…念の為1日だけ入院して様子をみますか? ちょうど、今日退院した人がいて、一部屋空いたんです」 「それなら入院させていただきたいんですが…」 ママはそう言い、花音ちゃんのお母さんの方に視線を移しました。 花音ちゃんのお母さんもうなづき、「お願いします」と言いました。 「分かりました。普通なら帰って頂くんですが、お話を伺うとお母さんも不安でしょうからね」 医者はそう言い、しばらくすると、看護師が病室に案内してくれました。



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案内された病室はちょうど2人部屋でした。 ママと花音ちゃんのお母さんはずっと見守り続けました。 愛ちゃんも花音ちゃんもあれからずっと眠り続け、とうとう朝になってしまいました。2人の母親は『何事もおこらないで良かった』と胸をなでおろしました。 夫達には、何かあったら連絡するから」と言い、家で待つように伝えました。



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「う……ん」 先に目をさましたのは花音ちゃんでした。 「あれっ、ここはど~こ?」 目をこすりながら、病室をキョロキョロ(゜゜;)(。。;)しています。 「ここは病院よ」 花音ちゃんのお母さんが言いました。 「びょういん?」 「そうよ。花音が急に頭が痛いって言うから、念のため一日だけ入院したの」 「ふうん、そうなの…」



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続いて愛ちゃんも目をさましました。 「あれっ、ここはどこ?」 やはりキョロキョロ (゜゜;)(。。;)しています。 「ここはびょういんだって」 花音ちゃんが言いました。 「ふうん、そうなの?」 愛ちゃんが言いました。 それを聞いて、ママと花音ちゃんのお母さんはクスッと笑いました。 「なんで笑うの?」 キョトンとする愛ちゃんに「仲良しなのね」とママが言いました。



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ママと花音ちゃんのお母さんは、取り越し苦労だったわね、と顔を見合せ笑顔になりました。 さっそく家に帰って来ると、いつも通りに過ごしました。 夕御飯を食べ終え、リビングでくつろいでいると、愛ちゃんが言いました。 「パパだっこ」 「えっ(;゜∇゜)」 思わずパパが言いました。ママも舞ちゃんもポカンとして愛ちゃんを見ました。 「う…うん、おいで」 パパが言うと、愛ちゃんは「わ~い」とはしゃいでパパにだっこしてもらい上機嫌です。



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「何かいつもの愛ちゃんと違うね」 舞ちゃんがママに呟くように言いました。ママも「確かに…」とうなづきました。 お風呂は普通は舞ちゃんと入るのに、 「ママ、いっしょにおふろはいろうよ」 と甘えて言いました。 舞ちゃんが脱衣所に行くと、愛ちゃんがキャッキャッとはしゃいでいる声が聞こえます。



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お風呂から上がると、愛ちゃんは着替えもせずに、リビングを走り回っています。 「愛、風邪引くから早く着替えなさい」 パパに言われてパジャマを着ようとしますが、ボタンがずれています。 舞ちゃんは首をかしげ、愛ちゃんのおでこに自分の手のひらを当てました。 「熱は無いみたい」 舞ちゃんが言いました。



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その時電話がなりました。花音ちゃんのお母さんからです。 「あのう、花音が何か…おかしいんです( ̄□ ̄;)!!」 「エエッ、花音ちゃんも? (*゜Q゜*) 愛も…何かいつもと違うのよ。 まるで、4才の幼児に戻ったというか…」 「ウチも…そうなの ( ̄ロ ̄;)。どうなっちゃったのかしら?」 「前世の記憶が…無くなった…のかしら…」 ママがポツリと言いました。そして、自分の口から出た言葉に驚いていました。 「そうね…( ̄ロ ̄;)。 そうかも…、しれないわね。 確認して…( ; ゜Д゜)みるわ。あ…有難う(^_^;)」 まさか…ねぇ(^_^;)



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でも、その《まさか》が現実となったのです。



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ママたちが幼稚園に迎えに行くと、愛ちゃんと花音ちゃんは顔を見るなり走って来て、抱きつきました。 「ねえママ~、 聞いて聞いて~(^ー^)」 「どうしたの。にこにこして何か良いことあったの?」 ママが言うと、愛ちゃんは赤い顔をして、 「あのね、タケル君にすきだって(*''*)言われたの」 「そうなの?良かったわねタケル君格好いいものね」 「うん。タケル君モテるんだよ。だけど、愛ちゃんが一番すきだって( 〃▽〃)」



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「よかったね愛ちゃん」 (o^-^o)✌ 花音ちゃんが愛ちゃんに笑顔を向けました。 そんな花音ちゃんの所に宇宙そら君が赤い顔をして近づいて来ました。 「かのんちゃん、( 〃▽〃)あの…これ…いいにおいのする消しゴム。かのんちゃんに…あげる」 「まあ、ホントにいいにおい。ありがとう( 〃▽〃)」 かのんちゃんも、少し赤い顔をしてお礼を言ってます。



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「ねえママ、もう少しあそんでもいい?」 愛ちゃんが言いました。 「ええ、いいわよ」 ママが言うと、愛ちゃんと花音ちゃんは「やった~‼」と言って手をつないで走って行きました。 「これで良かったのよね」 花音ちゃんのお母さんがポツリと言いました。 「たぶんね」 ママも言い、子供達の楽しそうに遊ぶ姿を眺めていました。



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愛ちゃんと花音ちゃんは、前世の全ての記憶を忘れて、普通の子供として生活しています。 *****


あれから2年後、道路に面した庭にお店を建築しました。 ご近所のコミュニケーションの場所として、笑顔の輪が広がっています。 店の半分は手作り品の販売で、後の半分は中央に大きなテーブルを置き、誰でも気軽に座っておしゃべりを楽しむコーナーです。 ここに来た全ての人が、自宅にいるような《アットホーム》な店にすると言うのが、皆の一致した意見です。 希望により飲み物や簡単な食事、スイーツなども販売はしますが、必ずしも注文する必要はありません。

でも実際には大半の人が注文します。言うまでもなくとても美味しいから…そして値段も安く設定しているからです。 オープン前に手作りのチラシを配っただけなのに、いつのまにかクチコミで伝わり、いつもお客さんが来ていて繁盛しています。 一緒に働いている近所の主婦達にもキチンとお給料を払っている他にも利益も出ています。 用がある時には、お互いに助け合いながら無理なく続けられ、皆はりきって楽しく仕事をしています。 そして、出資者のおじいちゃんやおばあちゃんも時々店に顔を出し、客たちとおしゃべりの花を咲かせています。        おわり



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