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俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件 〜実は二人は両想いです〜  作者: 木嶋隆太


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第十話 私は幼馴染から食事に誘われる


 ……普段、湊はお昼を何時ごろ食べるんだろう?

 私は部屋にあった時計を見ていた。


 もうすぐ十三時になる。……朝食は食べなかったが、まさか昼飯まで抜くということはないだろう。

 湊はスマホを弄っていた。何かしらのアプリをしているのではないだろうか。

 私もいくつか気になって入れたソシャゲなどはある。湊がやっていると風の噂で聞いて、色々知るために入れてみたのだ。


 ――共通の話題になると思って。

 けど、そもそも私から話題を振るということはできなかった。


 だっていきなり、「そのソシャゲやっているんですか? 私もです!」と言ったら……ストーカーみたいだから。


 そもそも、私が入れているアプリはすべて湊がしているものだけである。

 ……そんな画面見られたら、ガチで引かれる可能性もあった。

 だから私は、結局ただただ純粋にソシャゲを楽しむことしかできなかった。


 ちらと部屋の時計を見る。

 ……。

 私は背筋をぴしっと伸ばしていたのだが、そろそろ疲れてきた。

 普段、部屋ではぐーたらしているものだ。……とはいえ、湊にその姿を見せるわけにはいかない。


 湊は反対にかなり自然体だ。……たぶん、私なんていないものとして扱っているのだろう。

 だからこそ、普段通りに生活できる。ただ、湊らしさがよく出ていてそれが凄い合っていた。

 ……どうしよう。昼食の提案をいつしようか。

 十三時にでもなったら、一度聞いてみようか。


 そんなことを考えていた時だった。


「なあ、夏希」

「なんですか?」


 急に名前を呼ばれてびくっとなる。

 そりゃあ昔から名前で呼ばれていたが、不意に呼ばれると驚く。

 湊の声はかなり好みで、耳がくすぐったい。


「昼、どうする? 近くのファミレスにでも行くか?」


 ……その提案で、私は軽く絶望していた。

 昨日の夕食を作ったときに思ったことだが、外食を提案されたということは口に合わなかったという可能性もあるのではないかということ。


 ……やはり、味付けにミスがあったのかしら? けれど、かなり岸辺家の味付けに近づけたと思っていたのだが――。


 私が作りましょうか? そう提案しようとしたのだけど、これで拒否されたら寝込む。

 私は苦渋の決断で、小さく頷いた。


「……そう、ですね。ファミレスに行きましょうか」


 そういうと、彼は少し驚いたような顔になった。

 え!? なにその反応は!? まさか聞くわけにもいかないので、私は分析する。

 私はこれでもかなり頭が良い。学校内の試験では常に一位、二位を争うほどだ。

 そんな私の脳が、瞬時に彼の表情から彼の思ったことを分析する。


 答えは簡単だった。一緒に食事に行くことに対しての拒絶、ではないだろうか?

 湊は恐らく、社交辞令的に一緒に食事に行くことを提案したのだ。

 なのに、私はそれに気づかず、その誘いに乗ってしまった。答えは、「いえ、私は一人で食べるので気にしないでください」が正解だったのだろう。


 なにをしてしまったの私……ッ。選択肢を完全に見誤った。ベリーバッド!

 私はけれど、いまさらあとには引けない。そして、湊もついてくんな! という非情さは持っていない。

 彼は軽く頷いた後、まるで逃げるかのようにソファから立ち上がった。


「それじゃあ、少し準備してから行くか」

「はい」


 彼の背中を視線で追い、私は額に手を当てるしかなかった。

 また、嫌われてしまった。

 

 だが――後悔ばかりはしていられない。すぐに切り替えるんだ。切り替えていこう!

 部活でもやっている気分で、頬を叩く。


 ……落ち込んではいられない。

 ファミレスに食事に行く。

 ……こ、これは実をいうと、ででででデートみたいなものではない?


 ならば、ここで少しでもアピールできれば、好感度アップにつながるのではないかしら?

 私は、そう思い込むことにした。


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