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悪魔とイズっちゃん

そろそろ物語を大きめに動かそうと思ってます

 飛び上がって見たが空には何もいない、となると一体どこだ? ぐるりと周囲を見渡しながらテレパシーの範囲を広げていく、するとすぐそばの森の中にテレパシーが引っかかった。


(どうなってる!? ちゃんとブルニオの結界を破れる程度の威力はあったはずだろ!)

(王様になんて言えば……せっかくの仕事をパーにしちまった!)

 なるほどこいつらの仕業か。場所を感知した以上ここからでも倒せるが、奴らに関する情報も欲しいところだ。


 俺は透明化でそっと二人組に近づいて聞き耳を立てた。

「なぁなんて報告する? 俺死刑はやだよ!?︎」

「落ち着けって! えーっとそうだな、聖騎士団の妨害を受けたってことにしても駄目かな」

「駄目に決まってるだろ! あぁもうおしまいだ! 短い一生だったなぁ……」


 国がらみの陰謀か、それはまた規模の大きな話だ。しかし近くで見るとこいつら人間じゃないな。肌色がなんか赤紫というか、例えるなら悪魔だな。

「……ていうかなんか視線感じないか?」

 む、透明化しているのに目があっただと?

「でも誰もいないぜ?」

 ふぅ、冷や汗かいたな。てっきりバレたかと思った。

「そうだ、町からでてきたやつを片っ端から殺していけば少しは認められるんじゃねぇか!?︎」

「でも聖騎士団がいるんだろ!?︎ 殺されちまうよ!」

「どっちにしても殺されるんだよ! 腹くくれ!」

「チクショー! こうなりゃヤケだコンニャロー!」


 うん間違いなく悪魔だ。森から飛び出そうとする悪魔たちをサイコキネシスで引き戻し、地面に叩きつける。


「ぬあっ! だ、誰だ!?︎」

「おい! そこの茂みにいるやつ、お前の仕業か!」


 おっと、透明化を解いた瞬間気づくとは。透明化中も何度か目があったのは気のせいじゃなかったらしい。


「あぁ、俺の仕業だよ。物騒な会話が聞こえたんでね」

「……なんか全裸の変態がいるぞ」


 あ、服着てないんだった、これは失敬。

 服を着ようとしゃがみこんだ瞬間、一人が結構な速さで俺の横に回り込み、何をする気かと思って見ていると脇腹に蹴りを食らわせてきた。

 あまりに唐突な出来事に驚いて、半分ぐらいまで上げてたズボンがずり落ちてしまう。


「おい、着替えの邪魔をするな。お前たちには色々聞きたいことがあるんだ、少しくらい待ってろ」


 平然と告げる俺に驚いた様子の悪魔は、今度は紫色の炎を纏う拳を振り下ろしてくる。なんだかいつかのハーレムクズ野郎の強化魔法と似てるな。


 とりあえずズボンを抑えながら飛び退って躱しながら、もう一人の方が飛ばしてきた火球をサイコキネシスで相殺する。


「貴様……人間にしてはなかなかやるな、そこらの冒険者ではなさそうだが」

「残念そこらのBランク冒険者だ、あと今更カッコつけてもさっきまでのカッコ悪い会話全部聞いてたからな」

「……なんのことだ? 分かるか相棒」

「いやさっぱりだ、俺た……我ら最初からこんな喋り方だったよな?」


 いやさっき王様に怒られるとかなんとか言いながら頭抱えて転げ回ってた奴らが何を抜かす。

 まぁいいか、それよりも情報だ。


「面倒は嫌いだから単刀直入に聞こう、お前たちの目的は何だ?」

「フン、人間風情に教えてやるつもりは無い」

(王様が復活したから人間界に混乱を与えるべく、まずは人が集まりやすいブルニオを壊滅させてこいって言われたんだよな。まさかモディロニア聖騎士団が来てるとは予想外だったけど)

 よし情報ゲット、じゃあ次の質問。

「何故人間を殺そうとするんだ」

「決まっている、我ら悪魔族の住み良い世界にするために人間が邪魔なんだよ」

(まぁ俺は別に恨みも何も無いけどね。別に今の生活でも割と満足してるけど王様強いし逆らえないんだよね、戦わなくていいなら戦いたくないし)

 なるほど、じゃあ最後の質問だ。

「王様を殺せば悪魔たちは人を殺さないのか?」

「……さぁな」

(多分大半はね? 本気で慕ってる人とかぶっちゃけかなり少数だし、でも謀反起こして死にかけるくらいなら人間狩る方が楽だし、あの人倒すとか夢のまた夢だしな)

 なんだ、こうもあっさりと解決の糸口が見つかるとは思わなかった。やることが分かれば楽勝だな。

「王様は何処にいるんだ? 俺が倒してきてやる」

 悪魔二人はしばらく硬直して、二人で顔を見合わせて溜息を吐いた。

「またか……勘弁してくれよ、毎回いるんだよなーお前みたいなタイプ」

「そーそー、正義感強いのか知らんけど身の程わきまえろって話だよね本当」

 やっぱ結構いるんだな倒そうとする奴、口ぶりから察するに返り討ちにあうのがお約束らしいけど。

 悪魔たちが手招きしてきたので側へ歩み寄ると、周りに聞こえないように耳打ちした。

「いや大きい声じゃ言えないけどね? 俺たちだって別に好きで人殺してるわけでも無いし、世界征服とか興味ないし、倒してくれるんならありがたいわ」

 でもな? と悪魔が続ける。

「俺たちだって命かかってるし、もし人間送り込んだってバレたら即死刑だし、だから悪いこと言わねぇからそういう考えは捨てときな?」

 悪魔も苦労してるんだな、本気で世界征服とか考えてる奴らは今時はほんの一握りらしい。

「……とりあえず行き方だけでも教えてくれないか? あとは自分で勝手に行くから」


 悪魔たちは互いにしばらく話しあって、どうやら答えがまとまったらしい。悪魔の一人が紙切れを落として言った。


「やっべー! 魔界へ行くルートを書いたメモ落としちまったー!」

 続けてもう一人が言う。

「どーしよー! それ拾われたら魔界へ行く方法が分かっちまうじゃねーか! 急いで探しに行かないとー!」

 そして二人は羽を広げて飛び去ってしまった、いや今の茶番いる? 普通にしれっと渡せばよかっただろうに。

 ともあれルートは分かった、後は悪魔の親玉を倒すだけだな、いつかサクッとやっておこう。

 とりあえず悪魔たちを追い払うことはできたから護衛任務に戻ろう。そう思い振り返ると護衛メンバーとヴェルデが駆けてきた。

「イズハさん! 良かった、ご無事でしたか」

 聞くと、相手が魔人化した人ならまだしも、悪魔となると流石に不安なので、みんなであちこち探し回っていたらしい。


「リリーちゃんがどうしてもって言うからさー、お陰で買い物し損ねちゃったよ」

 じゃあそいつらに持たせている大量の荷物はなんだ? 用が済んだならとっとと帰らせろ。



 帰りの護衛中、ローズが話しかけてきた。

「なぁ、リリーの言っていたことは本当か?」

 どうやら巨大なエネルギー弾を防いだことを聞かれているらしい、他の聖騎士や三勇者も気になっていたのか、口々に聞いてくる。

「あの魔法弾……ブルニオの結界どころか……国そのものも……ふあぁ〜」

「いや言うなら最後まで言い切れよ」

「リリーから聞いた話だと、攻撃のタイミングを把握していたかのように防いだらしいが、本当か?」

「門のところで不穏な声が聞こえたもんだから、あらかじめ予知しておいた、それだけだ」

「ワーォ! 流石はイズっちゃん、そこに痺れる! 憧れる!」

 おい何処かで聞いたようなセリフやめろ、若干変えてもアウトなんだよ。あと誰がイズっちゃんだ殺すぞ。

「帰りはやけに魔物が少ない気がするな……?」

 さっさと帰りたいのに魔物相手にいちいち止まるのも面倒だからな、半径1キロ以内のテレパシーに引っかかった魔物を次々と排除している。

 その甲斐あってか、帰りは行きより早く着いた。


 城に戻って王に聖騎士団の件と姫のお見合いの件を丁重にお断りして、褒美を受け取り帰路につく。

 まだこの世界に来て数日しか経っていないけど、もう家々の配置や人の名前も何となくわかる、今までの俺なら絶対にありえないことだ。


「イズハさん? なんだか嬉しそうですね、どうしたんですか?」

「……別に、リリーは今日はどうだった?」

 リリーが待ってましたとばかりに嬉々として語り出す、これはしばらく止まらないな。

「ヴェルデさんと色んなことを話しましたよ! 色んな国のこととかその国の見合い相手のこととか、あとやっぱり聖騎士団長の名は伊達じゃないんですね、色んな魔物とか死にかけた体験とか……」


 本当によく喋るな、いい加減鬱陶しくなってきた。

「私も結構お喋りな方だと自覚はありますけど、ヴェルデさんも負けず劣らずよく喋るんですよ、そうなるともはや会話というより議論みたいになっちゃって、まぁ楽しいからいいんですけどね?」


 そこまで言って急に話がピタリと止んだ、舌でも噛んだなら治してやろうか?


 リリーはしばらく考え込んで、言った。

「……でもやっぱり、私はイズハさんに聞いてもらうのが一番好きです」

「そうか、俺もリリーの話を聞くのは結構好きだ、鬱陶しいけど」

「それ矛盾してません?」

「かもな、それがどうした?」

「いえ別に、今日の夕飯どうします?」

「スープが飲みたい、最初の日作ってくれた奴」

「任せてください! それじゃさっさと帰りましょう」


 そういえば何か忘れているような……? あぁ、悪魔の親玉退治してないな、明日あたりサクッと済ませるか。




◆◆◆



「契約したけど全然呼ばれる気配がない……」

 

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