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イズハの長考

 リリーが浴場を使う許可を貰ってきたので俺も浴場に来たが、城の浴場なだけあって広いな……湯加減はなかなかいい塩梅だな。

 湯の浮力に身を預け、隅の方でゆったりしながら静かに考え事に耽る、この時間は俺にとって心のオアシス、元の世界にいた時も風呂場に1時間篭ったりしたものだ。

 さて、今まで色々流してきたこの世界についての尽きない疑問を一つ一つ解消していこう。


 まずはレベルやスキル, ステータスの概念についてだが、まずレベルは魔物を倒すと放出される【経験値】というキラキラした粒子を取り込むことで上がる。

 スキルには常時発動している【パッシブスキル】と任意発動する【アクティブスキル】の二つがある。

 アクティブスキルには一度発動した後に再発動するための【チャージ時間】、何度も使用していると性能が上がっていく【スキルレベル】の概念があり、パッシブスキルにはこれらは存在しない。

 ステータスについては以前詳しく説明した通り、【攻撃】【防御】【魔導】【魔抗】の4種類。


 ……うん、どう考えてもゲームだ、今まで何となくスルーし続けてきたがやっぱりゲームだ、パーティに経験値? レベルにスキルに魔物? どれを取ってもゲームだ。

 しかし肝心の「何のゲームか」が分からない、どの単語も元の世界でちらりと見たり聞いたりしたことはあるが、どのゲームかはさっぱりだ。


 次は異世界の勇者たちとチートスキル、これは言うまでもなくラノベだな、よくある設定だろう。

 性格も「ハーレム願望剥き出しのクズ」と「不良だけど根は優しい奴」と「生きることに疲れた無気力な奴」、まさにラノベあるあるな性格だな、ハーレム願望は珍しい気がしないでもないが。

 そして三人とももれなく異世界への順応が非常に早い、今までただの学生だったと言うのが嘘のように剣を取り魔法を使い魔物を倒している。

 俺は早くて当然だ、今まで数々の修羅場をくぐった経験があるからな。


 うーん奇妙だ、ますます奇妙だ、考えれば考えるだけ分からなくなってくる、頭の中に宇宙が広がっていくのを感じて、気づけばもう40分も経っていた、流石にもう上がろう。





 城の夕飯はとても豪華で味も抜群にいい……ただしこいつらも一緒とは聞いてなかった。


「テメェ何俺の肉とってんだコラ! 殺すぞボケ!」

「……いやお前のとか誰が決めたの」

「俺が決めたんだよ! 寄越せオラァ!」

「まぁまぁ、僕のをあげるから落ち着いて」


 不良も無気力も相変わらずブレない、ハーレムクズ野郎は姫の前だから猫を被ってただの優男になっている、その性格のままでいた方が絶対目的の達成早いと思うけどな。


「イズハさん、この料理すっごく美味しいですよ! ほら口開けてください!」

「いやいい、俺の皿に置けば勝手に食べるから」

「うー……分かりました」


 リリーがしょんぼりと項垂れる、演技なら無視できるが本気で落ち込まれるとやりづらいんだよ全く……

 仕方ないので口を開けて「ん」と合図を送る、するとリリーは嬉しそうにスプーンを俺の口に運ぶ、その様子をワクワクしながら見ている王と姫、そして恨めしそうに顔をしかめる三勇者。


「……何見てんだお前ら、さっさと食えよ」

「チッ! いちゃついてんじゃねーよバカップルが、だいたい護衛に女連れてくるとかどんな神経してんだよクソが」

「まぁまぁ落ち着いて……」

(いーなー! リリーちゃんの「あーん」いいなー!あいつも内心嬉しいくせにスカしてんのがクッソムカつく!)

「……リア充死ね」

「だからいいっていったんだよリリー、こういう妬み嫉みが集まるんだから」

「聞こえてんぞ! 妬んでねぇよカス!」

「イズハさん、あーん」

 またリリーが口元に料理を運び、俺が受け取る。

「ん、これどの料理だ? 美味いな」

「お、落ち着こう落ち着こう……冷静に冷静にぃぃ」

(ぬあぁぁぁクッソがぁぁぁ死にさらせゴミぃぃ!)

「お前も落ち着けよ……目がヤバい」


 別に食べさせて貰うだけの作業だろ、何を目の敵にする必要があるのか分からん……それにしても気になることが一つ。


「お前らはパーティいないのか?」

「うるせぇ! 何でテメェにんなこと言わなきゃいけねぇんだよ!」

「……単純に人が嫌いだから」

「今はまだいいかなって」

(男は全員断ってんだよね、女は何故かこないし)


 何故かってこともないだろ、男と女で露骨に態度変えるような奴は誰だって嫌だろうよ。


「とりあえず一人ぐらいは作っとけよ」

「チッ、余計なお世話だ」

「……できたらね」

「うん、気遣いどうも」

(じゃあその子を寄越せすぐ寄越せはよ寄越せ)


 別に気遣いではない、この三人は性格上横に誰か置いとかないと絶対何かする気がする、どこか遠くでしてくれればいいけど俺の近くで何かされちゃ邪魔だ。




 夕飯を終えた後、明日の説明があった。

 リリーはすっかりヴェルデ姫と仲良しになっていて、今日は一緒に寝るらしい。

 いいのか? 得体の知れない庶民なのに。


「明日はこのルートを通っていく、この辺は元々盗賊なんかと出くわしやすい上にエネミーの目撃情報まで入っている、ということは……分かるな?」

「魔人化した盗賊と会う可能性が高い、ということか……頑張らないと」

「うわめんどくさ……」

「ハッ、上等だよ。ぶっ潰せばいいんだろ?」


 それぞれが意気込んでる? 所悪いが多分盗賊と出くわすことはない、俺が往復ついでに締め上げたからな、まぁそれを言うと絶対騒ぎ出すので胸に秘めておく。


「聖騎士たちにも同行させます、有事のときの勇者様たちへの負担も少しは減るだろう」


 過保護な警備は俺を姫に合わせる建前みたいなことを言っていた気がするが、やっぱり普通に過保護なだけな気がする。


「勇者様がた, イズハ様、明日は頼みましたよ」

「任せてください!」

「おう、報酬期待してるからな」

「……ん、やるだけはやります」



 リリーがいない寝室はとても静かだったが、何となく寝付きが悪かったのは明日の緊張のせいだと思うことにした。


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