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この世界は都合がいい

なんか長すぎたので分けます


 リリーの家に戻ってきたと同時に、疲労がどっとあふれてきたように感じる。まぁ体というより心の疲れだが。


「イズハさん、お布団ここに敷いておきますね。ベッドのほうがよかったら代わりますけど」

「いやいい、ありがとう」

 幸いリリーが客用布団を持っていたため、同じベッドで添い寝するという最悪の事態を回避することができた。

 別に照れているわけじゃないぞ。添い寝すると距離がゼロ距離となり、一晩中リリーの思考や夢が頭になだれ込んでくるのだ。添い寝ボイスなんて生易しいものじゃない。

 

「寝る前に少し調べたいことがある、本を借りてもいいか?」

「か、構いませんよ。……ちなみに何時ごろまで起きてるつもりですか?」

(私、明るいと眠れないんだよね。でも調べものするって言ってるし、消せっていうわけにもなぁ)

「あぁ、明かりが嫌なら消すぞ?」

「ありがたいです。本は自由に読んでもらって構いませんから。おやすみなさいイズハさん」

「ん、おやすみ」


 卓上のランプのボタンを押すと、中で浮遊していた光の玉が底に描かれた魔法陣に引っ込み、あっという間に部屋のなかが闇に包まれる。

 彼女の睡眠を妨げぬよう、超能力で手元にのみ明かりをつけた。テーブルの上に数冊の本を広げ、本を浮かべて椅子代わりに腰掛ける。では早速この世界について色々考えるとしよう。


 まず俺が一番気になっていることは、“この世界は何かと都合が良すぎる”ということ。

 異世界というからには、元の世界とは歴史も何もかも違うはずだ。現にこの世界には元居た世界とは文化も発展具合も異なっている。

 それなのに俺の世界の言葉が通じる、それどころか読み書きに漢字まで通じるという始末。偶然というにはあまりにも無理があるだろう。

 この問題に関してはさっきリリーに聞いてみたのだが

「昔神様が私達に文字を授けてくださったってお母さんが言ってました、多分どこの家もそう習ってると思いますよ?」

 という回答しか返ってこなかった。

 神様が? ひらがなやカタカナに漢字まで教えるだと? さっぱり訳がわからん。

 そういえばこの世界の宗教だとかはどんな具合になっているのかも聞いてなかったな。神様神様とは街中でも聞こえてきたりはしたが、具体的にどういう神でどんな姿なのかは分かっていない。

 

 適当に本を読み進めていると、少し気になる神話のようなものがあった。


 ◆◆◆


 昔々、1人の神様がいました。その神様はとても強大な力を持っていて何でもできるすごい神様でした。

 でもそんな彼にもどうしてもできないものが1つありました、“友達”です。

 彼は下界に降り立ち、人々に声をかけました。誰かが友達になってくれるかもと思ったのです。

 しかし彼の強大な力を恐れた人々は彼を悪魔と呼び、忌み嫌いました。


 神様はどこにいっても恐れられ、悲しくなってしまいました、そして

「もう誰も信じない、1人でいい。友達なんて必要ない」

 と心を閉ざしてしまいました。


 そんなある日、1人の少女が神様に声をかけました。でも神様は答えません、しかし少女は何度も何度も声をかけてきました。

 あまりにも彼女がうるさいので、神様は言いました。


「僕に構うな! どうせ君も僕を嫌うんだ、あっちで普通の友達と遊んでろ!」


 しかし彼女は言いました。


「私に友達はいないよ。神様と仲良くしようって言ったら、みんないなくなっちゃった」

「なんだよ、僕のせいだって言いたいのか?」

「そうかも、だから私の友達になってよ」

「お断りだよ、どうせ僕をからかってんだ。さっさと帰れ!」


 神様は不思議な力で、彼女を家まで飛ばしてしまいました。しかし次の日になると彼女はまた来ました。


 神様は彼女が来るたびに何度も何度も少し話しては追い払いました。だんだん話す時間が増えていき、追い払う時も力を使わずに手を振ってお別れするようになりました。


「あぁ、明日はどんな話をしよう。明後日は何をしよう」


 神様はいつのまにか、彼女と話すのが一番の楽しみになりました。


 そんなある日、彼女は急に来なくなってしまいました、神様はとっても心配になりました。


「あの子は一体どうしたんだろう、僕といるのが嫌になっちゃったのかな」


 神様は居ても立っても居られず、彼女を探しに行きました。

 久々に見る世界は荒れ果てていました。戦争をしたり人を騙したり女の人に乱暴したり、目も当てられません。早く彼女を見つけないとおかしくなりそうです。


 しばらくすると道端に1人の女の子が倒れているのを見つけました、彼女です。

 神様は急いで駆け寄りました。彼女はぐったりとしていて、目を閉じています。何度揺すっても起きません、不思議に思って道行く人に聞いてみました。


「この子を起こしたいけど、どうすればいいの?」


 相手はムッとしてこう答えました。


「無駄だよ、その子はもう死んでる。そんなことより忙しいんだ、邪魔しないでくれ」


 神様は目の前が真っ白になりました。どうして彼女は死んでしまったんだろう、どうして誰もこの子に見向きもしないんだろう。どうしてどうしてどうして……


 神様は怒りました、とてもとても怒りました。


「彼女のいない世界なんてもういらない、全部消してしまえ」


 その時彼女の声が聞こえてきました。


「この世界を壊すのは可哀想だよ。もっといい方法がある、私達の新しい世界を作ろう」


 そうだそれがいいと、神様は力を使って新しい世界を創りました。

 彼女が2人きりだと寂しいというので2人で色んな生き物を創りました。

 彼女は死んで体がなくなってしまったので、代わりにそっくりな女の子を創って、その世界に住まわせました。

 そうしてついに神様と女の子の理想の世界ができました、それがこの世界「パラレティア」誕生のお話です……


 ◆◆◆


 なんだこの話、万能の神様が友達欲しがるってどういうことだ。それに神様神様とだけ書いてあって名前や姿の描写は一切なしか。なんだそれ。

 でもなんとなくだがこの話には既視感がある、いつか似たような話を聞いたことが……ダメだ眠い。

 寝不足で超能力が不安定になっても困るし、続きは明日考えよう。それに寝たら思い出すかもしれない。


 俺は敷いてもらった布団に包まり、眠りについた。

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