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予兆 part5

 ――数時間後。


「 」


 槍花(そうか)はただただ様々なサークルをたらい回しにされては誘いを断り続けた結果、魂が口から零れ落ちそうなくらいくたびれてしまい、先程の校舎裏でうなだれている。あまりにも慣れないコミュニケーションのラッシュに彼女の精神は擦り切れてしまったのだ。


 そこには先ほどの淡麗な姿は見受けられない。あるのは心を失った骸のみだ。


『…………随分お疲れのようね、槍花ちゃん。 なにかあった?』

「あなたがっ! 私をほったらかしにしているからじゃないですか! 私がここまで苦労しているというのに、あなたといったら……なんなんですか!? あのへんちくりんな留守電は!」


 美鈴の発言によって導火線に火が付いた槍花は、無線を両手で思いっきり掴み、捲し立てるように怒鳴りつけた。


『いや、ほんとごめんって。丁度いつも見ている昼ドラが始まっちゃってねー。あははのは~』

「……グッ! ぬがあああああああああ!!」


 あまりにもプライベート優先な内容に、槍花は青筋を立てる。彼女の心の導火線を走る火花のスピードがより一層早くなったのだ。

 油に火を注ぐような発言で怒りのボルテージが振り切れた彼女の説教は、小一時間続いた。

 やれ姉さんは日頃からだらしがない、やれもっと妹を敬うべきだと、とにかく浮かぶ限りの小言を重ねる。


『――はい、すみませんでした……』

「ふぅ、それで鎧鉄矢はいまどこにいますか?」


 閑話休題、一通り鬱憤を晴らしたところで、槍花は空を見上げる。

 彼女がこの場に足を踏み入れた時には太陽はまだ東にあったが、今ではもう西に沈みかけ、空は茜色に染まっている。

 すっかり夕方になってしまった。もしかしたらここにはいないのかもしれない。


『あー、それなんだけどね。今はもう校内にいないのよ』


 案の定、彼はこの場にはいなかった。急いで後を追いかけて、引き続き監視をしなければならない。


「ということは、今はもう自宅ですか?」

『それも違うの』


 どこか寄り道でもしているのだろうか。槍花は疑念を抱く。


「ではどこに?」

『いやー、実はトラックにはねられて病院にいるんだよね~ アッハッハッハ!』


 快活に満ちた声とは裏腹に、告げられた内容はとんでもないものだった。

 どう考えてもトラックにひかれたらただでは済まない。


「笑っている場合じゃないです、姉さん! 彼は無事なんですか?」


 問いをぶつけた途端、美鈴の声色が変わったのを彼女は感じ取った。


『ええ。無事よ。“傷ひとつなく”ね』


 傷一つない。その言葉はつまりし、鎧鉄矢が能力の発現が兆しに差し掛かっているのを指し示している。

 普通の人間なら、トラックにはね飛ばされた途端、重体もしくは死亡に至るだろう。


 だが宿主は違う。人間にとっては致死に至る物理量も、“その程度”という認識レベルに押しとどめてしまうほど頑丈かつ強靭となる。


 瞬時にその事実を察した槍花の声が強張っていく。


「……! それってもしかして!?」

『ほぼ宿主であるのは確定ね。まずは一回帰投してちょうだい』

「了解しました」


 一先ずその場を後にし、槍花は美鈴と合流することにした。


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