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ブリキヒーロー part10

 早朝四時。この時間だとまだ春の空は暗いしやや肌寒い。

 まだ黒みを帯びた青空と真逆に、鉄矢の気持ちは自分でも不思議と思うくらい明るかった。


 簡単に支度をし、母親を起こさないよう、彼はすり足でゆっくりと廊下を歩く。

 

「もう行くの?」


 背後から声を掛けられた。

 振り返ると、敦子が眠い目を擦りながらよろよろしていた。


「母さん……どうして起きてるのさ」

「なんでかしらねぇ。今日があなたの新しい門出な気がしたんだよねぇ……ふぁぁ~」


 大きなあくびを必死に噛み殺し、再び目を擦る。当然ではあったが、これから鉄矢が何をしようとしているのかを全く知らない故に見せた、落ち着いた素振りだった。


「母さん」

「なに?」

「ちょっと、ちょっとだけなんだけどさ。やっぱ怖いもんなんだね」


 この先待ち受ける世界は、アニメのように全てが上手くいくような甘い世界ではないのだ。

 怪我も負うだろうし、もしかしたら死ぬのかもしれない。

 血反吐を吐きながら、砂を噛む思いをしながら、泥を食いながら、それでも終わりの見えない真っ暗な道を進み続けるのだ。


 そう思うと、足が震えてくる。今ならまだ引き返せるぞと心臓の高鳴りが進言してくる。


「…………」


 無言で敦子は、鉄矢を抱き留めた。


 温かい。

 自然と体の震えが治まる。これでなにか解決できたわけではないが、鉄矢にとってそれはとても心地よく、頼もしかった。

 今ならなんでもできるような気がする。


「大丈夫よ。あなたなら、きっとできる。自信を持ちなさい。自信がないとなにもできないわよ?」

「それもそうだな」


 小さく笑い、落ち着いたところで、鉄矢は敦子から離れた。


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


 玄関のドアを開け、そのまま家を出る。

 そのまま歩き、人気のない十字路まで差し掛かったところで鉄矢はこれから取る行動について考えた。


 さて、どうしたものか。

 まずは美鈴に会う必要がある。

 そのためには彼女のいるD.I.N.Oに向かう必要があるが、あいにく場所が皆目見当つかない。


 そうなると――


「どこかで見ているんですよね? 盾賀美美鈴さんに会わせてください」


 誰に向けて、というわけでもないが、鉄矢はとにかく叫んだ。

 勿論、こんな朝早くに周りに誰もいない。いるはずがない。

 ただしそれは普通の人間に限っての話だ。鉄矢は今も、監視対象として置かれている。

 槍花はいないが、代わりにD.I.N.Oの諜報員なりが近くにいるはずだ。まずは彼らと接触をする必要があると鉄矢は判断したのだ。


 しばしの沈黙。

 返事はない。

 向こうは取るに足らない戯言と捉えているのだろうか。それとも、本当に誰もいないのか。


「いいんですか? このままベラベラ喋っちゃおうかな~」


 まずはなにから喋ろうか。とりあえずディノサウェポンのことから話すべきか。

 そう鉄矢が思案しているうちに背後から声を掛けられた。


「そこまでにしてもらおうか」


 かかった。

 ごくごく普通の私服の男が二人、どこからともなく現れた。

 てっきり黒服にサングラスと典型的な格好で出てくると思っていたが、よくよく考えると逆に悪目立ちしてしまうのは火を見るよりも明らかだ。

 流れで鉄矢は彼らが自分を監視している人物だと察した。

 ひとまず、接触には成功した。

 ここからなんとしてでもこの二人に連れてってもらう必要がある。


「もう一度言います。あの人の元へ、連れてってください」


 今度は素人なりに凄みのある声で言ってみた。含みのある物言いで、脅迫まがいに問い詰めるように。

 だが構うものか。こちらは急いでるし、本気なのだ。


 二人の男が向き合い、目を合わせた。互いに探り合い、やがて片方の男が、


「……ちょっと待ってろ」


 無線を取り出し、どこかと連絡を取る。しばらくすると、こちらに向き直った。


「美鈴司令に会わせてあげよう。ついて来なさい」


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