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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
Prelude to Yusei Theater

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道化遊戯 正義しか見なかった刑事と正義の味方になれなかった探偵の回想 三田守 その1

「あれ?副店長式行かないんですか?」


 東京都台東区鶯谷。

 インターネットカフェ『ズヴィズダー』。 

 駅前のラブホテル街に潰れたラブホテルを再利用したネットカフェの受付にて、副店長の三田守はスタッフの女の子たちにそんな事を言われる。

 ネットカフェではあるが、ここの女子スタッフたちを相手にお金を用いた自由恋愛もありというスタイルが未だに変わっていないのは、多くの女子スタッフが訳アリで連れてこられたからで、そのままその自由恋愛なしで生活するには東京の物価は高く、彼女たちの職業スキルは低いからに他ならない。


「行くほどの仲でもないし、仲になりたくもないし」

「意外ですね」

「本当の所は、式場でね」

「ああ。なるほど……」


 顔も良く頭も悪くない彼女たちだからこそ、最近は都や桂華グループの職業支援プログラムを受けられたりもするが、身に着いたものはなかなか離れられる訳もなく、それはそれとして高級娼婦集団神奈一門の手ほどきをオーナー自ら受けていたり。

 末端にここまでするほど、与えた側が受けた恩というものは大きい。

 何しろ日本有数の政商桂華グループの総本山。九段下桂華タワー内部の桂華ホテルの式である。

 最安値のプランですらオーナー兼店長の愛夜ソフィアが目を剥いたというお値段が、桂華グループのご好意によって最上級プランになっているという恐怖。

 副店長だから出られないというのは三田守にとって最高の言い訳であり、近藤俊作と愛夜ソフィアがそれを許したのも、その後に待っている色々を考えての情けだったりする。


「極上の料理とお酒に、超有名人の桂華院瑠奈に会えるかもしれないなんてお得では?」

「うん。そうだね。お得だと思っていたよ。内情を知るまではね……」


 黄昏る三田守。

 さて問題だ。

 勇者はお姫様を助け、人知れず去っていきました。

 現代社会でそれができるのか?

 答えはNOである。

 功績には礼と賞をもって報いねば、組織が成り立たないのだ。

 それが政商桂華の至宝と謳われる桂華院瑠奈公爵令嬢の命を救ったとあれば、外様の傭兵ゆえにというか外様の傭兵だからこそ大々的に賞せねば、組織が納得しない。

 更に問題だ。

 その場所に総理大臣と都知事も居た。

 当然お礼を言わねばならぬ立場と組織人である。

 結婚式という祝い事に代理でも送らねば人がついてこないのである。

 つまり結婚式という祝い事を名目に天上人がお礼を言いに現れる訳で、一般人にそのオーラはきついなんてものじゃない。


「けど、よく副店長見逃してもらえましたね……?」

「まったくだ。色々苦労したんだよ」


 新宿ジオフロントのテロを実際に止めたのは、そのジオフロントの中で一人走り回っていた三田守当人である。

 本来なら呼ばれてしかるべき所だが、この真面目系クズはそういう所に悪知恵を働かせたのである。


「ほら。俺って元平成天誅の構成員だったじゃないか。

 犯罪者が表に出たらまずいでしょ?」


「普通犯罪者の経歴って隠すものじゃないですか……何自慢気に言っているんです?」


 平成天誅。

 華族や財閥子弟などの特権階級に制裁をと集まったカラーギャングたちの総称だが、彼らはこの新宿ジオフロントテロ未遂事件に前後して警察の捜査により組織は壊滅したと見られていた。

 表向き逮捕されていないが、威張れるような経歴でもないそれを堂々と言って逃げる程度には三田守も殿上人の世界に気づいていた。


「あの手の席は、そのクラスの通過儀礼なものでね。

 店長と旦那さん、間違いなく取り込まれるね」


「いい事じゃないですか!セレブの仲間入りですよ!!セレブの!!!」


 店長以下顔と体がいいから樺太より売られてきた彼女たちはそもそも所属するという事に憧れと幻想がある。

 紀伊の山持ち息子で、酒と博打に溺れて死んだ父とその父を見限って男を作って出て行った母を持つ三田守にとって、己の生まれ持ったコミュニティー自体が好ましいものでなく、だからこそ上京してこんな所に居る羽目になっているなんて当人も口にするほど愚かではない。

 なお、その出自を知った女の子たちは新宿ジオフロントテロ未遂事件の後、桂華グループと行政の特例を用いて店長以下偽装経歴から本土出身の奇麗な経歴に身ぎれいになっているのにこの真面目系クズの経歴欲しさに堂々とアタックしたりするのだから、互いの欲しがるものはよく見える一例なのだろう。多分。


「あれは試しで入ってみたけどいいものじゃないよ。

 何一つ自由にできず、一人になる事すら難しい豪華な監獄だよ」


「あら?

 その豪華な監獄だからこそ、私はお相手してるのだけど?」


 入口の方からの声に二人が振り向くと、北斗千春がほほ笑んでいた。

 花嫁の愛夜ソフィアから母親役として出てくれないかと頼まれたので黒留袖姿が美しいというより凄い。未婚なのだが花婿役のパトロンは両手で足りないほど居るのでこの瞬間だけの旦那にと暗闘があったのを三田守は睦言での笑い話として聞いていたが、凄いと評したのには訳がある。

 笑っているからだ。怒りながら。


「あ、いらっしゃーい。わたし、用事を思い出したので。でわー」


 女の子は薄情にも逃げてゆき、フロントは無人にできないという意識のみで三田守は目をそらしつつ逃げを打とうとする。


「千春さん。結婚式の母親役なのに、こんな所にいていいんですか?」

「いい訳ないじゃない。だ・ん・な・さ・ま♡」


 ぞくりと悪寒が三田守に走るが逃げられない。

 今までで一番の恐怖を感じているのに、北斗千春の笑顔は本当に美しく引き寄せられるのだが、怒っていた。


「知ってる?

 テロを未遂にしたヒーローが出たくないって逃げ出したって」

「へ、へー。そうなんですかー」

「出たくないなら出たくないで逃げ出してもいいのよ。

 けどねぇ……こんな所で、のうのうと仕事をしていたら、それ捕まえてくださいって言っているのと同じだと思わない?」

「ほ、ほら。そのヒーローって元犯罪者だから、あんな晴れやかな場所に出るのはよくないし、仕事をさぼるのは良くないじゃないですか」

「ええ。だから、そんな人でも出られるように、今日一日は貴方は私の旦那様ですので。わかりましたか?

 だ・ん・な・さ・ま♡」


 散々お金を払った個人恋愛で聞いていた声なのに、ちっとも嬉しくない。

 そして、面子というものをどれだけ殿上人が大事にするのか、この日三田守は思い知った。

 結婚って男にとって墓場なのだと痛感しながら、北斗千春に腕をからめられて三田守はドナドナされていったのである。

犯罪者自慢

 多分学生運動の自慢をじかに聞いたのが私たち氷河期世代が最後だと思っている。

 ここから下は岡田斗司夫氏が提唱している『ホワイト化』の影響を受けているのかなと思ったり。


【岡田斗司夫】※中居正広さん引退発表..いかにもホワイト社会ぽい..ホワイト社会では芸能人だけではなく全員が気を付ける必要があります【切り抜き】

https://www.youtube.com/watch?v=j4T-iSG66_8

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― 新着の感想 ―
世代的にこちらが小中高校に通っていた時代では教師や塾講師が全共闘世代でした。 一人の塾講師はちゃんと元活動家だって明言してましたねー、当時のいわゆる三大私塾の一角でしたが、どこの会社も取ってくれない…
>今までで一番の恐怖を感じているのに、北斗千春の笑顔は本当に美しく引き寄せられるのだが、怒っていた。 日本語としてはたぶんおかしいんだろうけど、この場はこれが最適ですね。。。 ああああ、あまりの怒り…
余計なお世話かもしれませんが…… >天上人がお礼を言いに現れる訳で >三田守も殿上人の世界に気づいていた。 天上人 殿上人 の表記の揺れがあります。意図して使い分けているのでしたらごめんなさいなんです…
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