『ひらがなーず』2004年秋編
リアルパイセンに容赦なくぶん殴られたので、しばらく現実逃避系のお話でお茶を濁します(血涙)
ベネゼエラにイランよ……orz
この国の華族や財閥、または上流階級が通う帝都学習館学園。
この学園は小学校からの一貫教育だが、中等部、高等部には外部の一般生徒から優秀者が特待生という形で招かれる。
という事は、中等部や高等部の特待生に選ばれることを目指す生徒たちが集められた学校もまた周辺に存在してる訳で。
帝都学習館学園中等部の修学旅行が全世界に放送される中、彼女たちは日常を営んでいたのだった。
「おはよー。るりちゃん。
テレビ見た?」
「だから『ちゃん』をつけるな。『ちゃん』を。
あんな凄いもの見逃せる訳無いだろうに」
竹刀を肩にかけて歩く大倉るりの隣に甘崎ひなが追いつく。
もちろん話題は、深夜なのにこちらでも信じられない視聴率になった、パリ暴動と桂華院瑠奈のルーブル美術館大暴露である。
「ふぁあ……おかげで眠たくて眠たくて……」
「今日は授業中に居眠りする奴多そうだな……」
深夜放送が拡大していたタイミングでの海外の大ニュース。
各局は特番を組んで大々的に流し、そのまま朝のニュースにワイドショーと繋がったために、当然朝の話題はこれ一色である。
「新聞も一面がこれなんだよね。おはよう」
「おはよう。さっちゃん。すごかったよねー」
合流してきた美春さつきも話を合わせるぐらい、今の通学生や通勤客もこの話題でもちきりだった。
同時に、本来の最重要ニュースである米国大統領選挙が完全に霞んでいるのだが、三人とも気にする訳もなく話が盛り上がる。
「けど公爵令嬢かっこよかったよねー」
「ルーブル美術館での説明を聞いていた所は、深夜番組で見たことがあるお嬢様だったよね」
「いつサイコロが出るかひやひやしていたんだけど、あれニュースなんだよなー」
北海道を中心とした某地方番組視聴者はリアルタイムニュースだというのに、まるで何処かで見たようなわざとらしい棒読みにデジャヴを感じ、いつサイコロが出るかとひやひやしていたのは言うまでもない。
更に年をとった視聴者の一部はサイコロの6の目が『東京直行』だと信じて疑わなかったとかなんとか。
「けどロマノフの財宝って凄いよねー。大金持ちだよ!」
「その前からあのお嬢様は大金持ちだって。桂華グループのお嬢様なんだから」
「石油王とのロマンスや欧州貴族とのロマンスも映画みたいだよね」
恋に恋するお年頃。女の子はそういう話題に目がないのである。
なお、イタリアのドッキリもこちらに流れてきたので、彼女たちが見れないワイドショーの話題は桂華院瑠奈公爵令嬢が堪能したイタリアスイーツ特集である。
これに全力で乗っかったのが、桂華グループの帝西百貨店なのは言うまでもない。
更にルーブル美術館大暴露にて明かされたロマノフの財宝の実在になぞらえて、インペリアルイースターエッグや宝石特集が午後のワイドショーに合わせて組まれるあたり商魂はたくましいが、さすがに彼女たちに買えるお値段ではなく。
「で、今は英国ロンドンで、そこで晩餐会だって。
欧州貴族の集まる中で、デビューするなんて本当に映画みたいよねー!!」
「たしかに映画ならいいけど、現実にしたいかと言えば……ねぇ……」
「わかる。堅苦しそうだもの。絶対に」
この一件で桂華院公爵家どころか日本国政府が激怒して特命全権大使を欧州に派遣しているとか、スイスのプライベートバンク界隈でムーンライトファンド引き出し阻止でスイス政府まで動いての引き留め工作を始めたとか、欧米をまたにかける大粛清が行われるとかなんてニュースを彼女たちが見ている訳もなく、話はそれ相応の年頃の話題に落ち着いてゆく。
「あれ、絶対映画になるよね」
「しかも、本人が演じるならアカデミー賞主演女優賞だな」
「オペラ歌手から歌手になれば、主題歌も歌えてレコード大賞どころかグラミー賞まで取れるかも」
そんな話題で盛り上がるけど、だからこそ多くの人が気にする疑問を甘崎ひなは口にする。
「何でお嬢様テレビデビューしないんだろ?」
「なに言ってるんだ?
もう深夜番組に出続けているじゃないか」
「ちがうよー。
お嬢様だったら、ゴールデン進出も楽勝じゃない!!」
「たしかに、あのお嬢様深夜番組にしか出ていないな……」
テレビ局側が何度も誘い水を向けているのに当の本人はまったく出る気のないゴールデン進出。
その為か、いつの間にかお嬢様につけられたあだ名に『深夜番組の女帝』があったりする。
何しろ、その深夜番組の多くのスポンサーをしているのがそのお嬢様の桂華グループだから、あだ名の出所は察する事ができるが、そのあたりもこの三人に分かる訳もなく。
「舞踏会かー。どこかの局が中継してくれないかな?」
「見たいけど、また寝不足になりそう……」
「同じく。せめてワイドショーでファッションチェックとかしてくれないかな」
対テロがらみでガチガチに固められたロンドンではパパラッチが容赦なく追い立てているとか、富嶽放送買収で手を組んだガーファコーポレーションが富嶽放送経由で取材を申し込もうと暗闘しているなんて事を彼女たちは知る由もなく平凡な朝が過ぎてゆく……
『東京直行』
アメリカ横断ウルトラクイズ。
ハワイから先の脱落者も罰ゲームも見どころの一つ。




