ウエストウイングオーバルオフィスにて
情報整理回。
この面子ですらまだあのポンジスキームの話が出てこない事に注目。
「また四年間この部屋の主になった訳だが、厄介事というものは待ってくれない訳だ。
とはいえ、今日ぐらいは祝ってもいいだろう。
そんな祝いの席だ。ついでにいうと私はあまり頭は良くなくてね。
という訳だ。副大統領。
後は頼むよ」
「はい。大統領。
という訳だ。
欧州で起こっているこのバカ騒ぎについて、我々の間で情報を共有したい。
盗聴する馬鹿もここには居ないだろうし、メモを取る事も禁止する。
だから、ここにいる諸君は諸君の抱えている情報を提示し、問題解決について協力する事を期待する。
元CIA長官代行。
我々は君の貢献を高く評価している。
新しいチームにしかるべき席を用意しよう。
だからこそ、君の口から、欧州の魔女たちについて語ってもらいたいのだよ」
「副大統領。
貴方はご存じのはずだ。
私の口からそれをお聞きかせする必要はないと思うのだが?」
「もちろん知っているとも。
だが、互いにカードを隠してゲームをすると思わぬ第三者が漁夫の利を得る事もとてもよくあることだ。
この場はそういう席なのだよ。
ファルージャにて作戦が始まろうとしている今、この欧州のバカ騒ぎはおしまいにする必要がある。
だからこそ、互いに知る事を出して、何か見落としていないかを確認する必要があるのだ」
「……わかりました。
『欧州の魔女たち』は米国が金を出し、マフィアと教会が管理し、欧州の情報機関がそれを使って東側の脅威に対抗するシステムでした。
白色テロを用いて西側諸国を引き締め、テロの被害を保険でカバーして各国に金を回す。
誰もが一面しか知らず、知らない事を良いことに各々が対東側で結束する限りは、東側もこのシステム全部を潰すことができないよう設計されています」
「ありがとう。
君の発言は記録に残さないけど私は決して忘れないよ。
その上でだ、このバカ騒ぎが起こった事について何か話せる情報を持つ者はいるかな?
……FBI長官」
「はい。マネーロンダリングですが、これはマフィアとの関係が深く、特にニューヨークのマフィアの勢力拡大と共に肥大化していった背景があります。
去年、樺太銀行を舞台にしたマネーロンダリング事件が発覚した結果、アジア側、つまり麻薬供給側の洗濯機が止まる事になりましたが、欧州の、つまりニューヨークやイタリア系マフィアの洗濯機は回り続けていました。結果、そちらの金も取り込もうとしたという見方もできますが、このシステムは我が国の欧州意思決定の一番古くて大事な所ゆえに、誰もが見ないふり、知らないふりをして過ごす事になったのです」
「なるほど。
だが、おかしいじゃないか?
二つある洗濯機の内一つが故障したからもう一つに集中するのは分かる。
にもかかわらず、あのお嬢様の修学旅行をギャンブルにして、我々がここで話すぐらいに金をかき集める必要があったのかね?」
「順番が違うのです。大統領」
「どういう事かな?財務長官?」
「去年、あのお嬢様によってアジア側の洗濯機が壊れて、欧州側にダーティーマネーが集中した。
それは間違っていないんですが、その後そのダーティーマネーが日銀砲でヘッジファンドごと丸焼きにされたんです。
あの日銀砲でかのお嬢様が掻っ攫った利益は500億ドル。
その負け分500億ドルをヘッジファンドが背負う事になり、ヘッジファンドに金を貸していた大手金融機関も致命傷を負う事になった」
「だが、財務長官。
少なくともウォール街の各金融機関からはそんな巨額損失の報告は出ていないぞ?」
「そこです。副大統領。
まず認識を改めていただきたいのは、『500億ドルを手に入れる』のではなく『500億ドルを穴埋めする』なんです。だからこんなバカ騒ぎが発生する事になった。
バカ騒ぎで賭けられた金と損失で金融機関は損を公表しやすくなるでしょう。
また、パリの暴動で出た損害に対する保険の支払いもこの損の穴埋めに使われるかと」
「巨額損失はスタートを切るにあたってあまりよくはないな」
「大統領のおっしゃる通りだから、金融機関も損失を隠したのです。
とはいえ、ウォール街についてはあまり心配しなくてもいいかと。
ウォール街はサブプライムローンの収益が膨大で、損失を消せるという報告を受けております」
「なるほど。ウォール街はともかく、欧州の金融機関はロンドンだからこそ、イギリスが前に出てきたのかな?
国務長官。財務長官の話を前提にするならば、今回イギリスの意図は何処にあるのかね?」
「欧州が一枚岩でないという事です。大統領。
少なくとも欧州内部は、ドイツとフランスとイギリスの綱引きがあり、カトリックとプロテスタントの綱引きが行われています。
今回の欧州の失態は、フランスとカトリックの失態であり、イギリスとプロテスタントが前に出て事態を収拾する事で欧州内部で確固たる主導権を握ろうという事かと。
少なくともイギリスは日本と共にイラクに派兵している仲です」
「落としどころは?」
「大統領。
既に英国大使が秘密裏に接触しており、南イラクの石油権益の幾ばくかを譲渡する事で仲介を求めています。
更に王立エディンバラ商業銀行の巨額損失と救済合併をトリガーに、各金融機関が損失を公表しやすいようにするとか。
英国は善意の第三者としてお嬢様を宥め、イラク戦争に派兵している事から悪くない話かと思いますが?」
「副大統領。
その話で英国の取り分は何になるのでしょうか?」
「国防長官。
彼らも善意でお嬢様をなだめる訳ではない。
欧州メジャーの仕切りである、イランの迂回原油の拡大で損失分をカバーするつもりだ。
ファルージャの戦いに直接は関与はしないが、自衛隊と共に英軍が後ろを守る事は我々の利になると信じている」
「……思ったのだが、ドイツはこの騒ぎにどうして関与しなかったんだ?」
「大統領。
ドイツの現政権は、高い失業率や保険制度改革が不評で選挙に連敗し、政権内部で動揺が走っています。イラク派兵に反対したフランスと足を合わせて国内対策に専念したい所でしょうが、フランスがこの状況に追い込まれた今、矢面に立たざるを得ないでしょう。
おそらく、フランスと共に国連軍としてイラクに派兵するあたりでこちら側につくかと」
「ありがとう。国家安全保障問題担当大統領補佐官。
たしか、ドイツはロシアを相手に国家プロジェクトを進めていたな?」
「はい。ノルドストリームと呼ばれるロシアとドイツを結ぶ海底パイプライン建設について交渉しています。財政難のロシア政府が建設資金を渋っているのですが、ロシア政府とロシアのガス会社は桂華資源開発に資金援助の要請を出しており、桂華資源開発の返事はまだこちらに伝わっておりません。
この桂華資源開発はあのお嬢様のムーンライトファンドの中枢でございます」
「欧州の魔女たちはウクライナに巨額資金を投じていたが、CIAは何か仕掛けるのかね?」
「表立っては何も。
ですが、ウクライナの選挙で行われた不正などは民主主義国家としてメディアに晒し、ウクライナ国民の判断を仰ぐべきだと考えております」
「CIA長官。
お忘れにならぬように。
ウクライナのガスに絡む不正はロシア政府が主張するより酷く、そのロシアのガスを欧州に売って巨万の富を得ているのがあのお嬢様だという事を」
「なるほど。
今の元CIA長官代行の言葉を聞けただけでも、この場の席を設けたかいがあったというものだ。
ここから先は、各人の権限と書類を持って改めてしかるべき場所にて話を進めてくれ。
我々は勝って四年間の信任を得た。
その最初の仕事はファルージャであり、欧州のバカ騒ぎは早急に終わらせないといけない。
さて、少しばかり料理が冷めたがパーティーを始めようか」
ウエストウイングオーバルオフィスにて
頭に『ホワイトハウス』をつけると分かりやすい。
要するに米国大統領官邸の大統領執務室。
ニューヨークのマフィア
ラッキー・ルチアーノ。
彼の帝国が困った事に二次大戦の欧州戦線に関与して……『ゴッドファーザー』あたりを調べなおしたらリアルの方がえぐいのが困る……
なお、それでYouTubeくんがお勧めしてきたJOJO五部の『黄金の風』を一気見中(笑)。
この時期のドイツ
シュレーダー政権の末期で、高い失業率と保険制度改革で選挙に連敗。
なお、ノルドストリームはシュレーダー政権の功績だが、支持率は回復しなかった。
この後に出てくるのがメルケル政権である。




