夏の終わりのお嬢さんたちの話
『薩意』がTwitterでバズって喜んでいたらこれだよ
今回はお礼話
「そーいえば、愛媛旅行来なかったけど何処に行っていたの?」
「そりゃ、みんなが波の上に乗っている時に私は男の上に乗っていた訳で」
しょっぱなから飛ばして行く神奈水樹。
こういう人間だと分かれば、こういう付き合い方もある訳で。
私の後ろにいる橘由香がすっごい顔をしているのだが気にしないのも彼女らしい。
「おい。占い師。
仕事はどーした?仕事は?」
「もちろんやってますよ。
というか、男に抱かれるのもそっちの仕事だし」
少しだけ空気が変わった。
まだ付き合って一年ほどなのだが、色々オカルトに巻き込まれたので、それ相応にこいつの変化が分かったり分からなかったり。
「具体的には、どんな仕事なのよ?」
「大げさに言うと、歴史のコントロール?」
また大げさなワードが出てきたぞ。おい。
そんな晩夏の頃、テーブルには飲み物と夏休みの宿題。
もちろん『写させてくれ』を名目に私に会いに来た訳で、そういう話題なのだろう。
ついでにいうと、こいつ何故かメイド長の斉藤桂子さんとウマが合うらしく、側近団や橘由香の懸念を振り払って、ほぼフリーパスを与えているとか。
「すっごい究極的な話になるけど、歴史って人の意思の押し付け合いの結果なのよ。
大河のような社会の奔流も、元をたどれば源流の湧き水みたいに、必ず一人の意思に繋がる。
そんな源流を見つけて、水の流れをコントロールするって訳」
「だからそれがどうして男と……」
と言って気づく。
こいつは高級娼婦神奈一門の後継者だから、必然的に上流階級の男の上に乗っている訳で。
「こういう仕事やっていると『人は平等である』とはさすがに言えても信じられないわね。
そして、私が乗っていた男たちは、いやでも大河の流れの真ん中に行く連中ばかり。
少しばかり、良い方向に歴史を動かして……を名目に男遊びしているだけなんだけどね」
台無しである。
とはいえ、それが神奈水樹らしいといえばらしいのだが。
こいつは私の人間関係の中で道化師的な位置を作って、私を含めて周囲に認めさせ……ん?
「ねぇ。神奈さん。
貴方、神奈一門の後継者よね。この街の夜に君臨する高級娼婦集団の」
「そうね。継ぐかどうかはまだ先だけど、その後継者候補の一人よ」
不意に天啓が降りてくる。
馬鹿馬鹿しい妄想と切って捨てるには惜しく、尋ねるには勇気がいる質問を私は言葉に乗せた。
「もしかして、あんたが乗った男が社会の中枢に進む事が後継者としての条件?」
できるのだ。
個人ではなく組織だと、財力と情報力、特に権力層への絶大なコネがあれば、一般人より有利な場所からスタートが始められる訳で。
男が見事野望の階段を上りきったら、後は女がそれを見守るだけの人生という訳だ。
ついでに言うと、黒子役というか都合のいい女でいる代わりに、責任も束縛もない。
「さぁ?私はただのエッチ大好き女の子なだけかもしれないわよ?」
神奈水樹がとぼけるが、そうなるとゲームで出てきた彼女の立ち位置というものが見えて来る。
そして、彼女はおそらく目をつけていただろう帝亜栄一、泉川裕次郎、後藤光也の三人の誰とも仲良くならずに海外留学する事になる。
色々あったのだろう。神奈水樹も。私も。
「話、続けていいかな?」
変わった空気のまま神奈水樹は続きを口にする。
冗談七割に本音三割という顔で話すには、その話題は重たかった。
「桂華院さん。
貴方はいずれ、大河の源流として歴史に流れ出す人間よ」
「それは貴方の占い?」
「いいえ。歴史から見た必然。
だからこそ、いずれ決断する事になるわ」
「何を?」
「歴史を」
それだけ言って、神奈水樹は言葉を切った。
そして、宿題に手を付け始める。
話は終わりという事なのだろう。
私も宿題を再開する事にした。
「わっかんないなぁ」
その声は私の口から自然と出た。
夏休みの宿題でない事を察した神奈水樹だが、手は宿題を写している。本当にしていなかったのか?こいつは……
「何が?」
「そういう貴方とオカルトに関与している貴方の違い」
「ああ。それはある程度説明はつくけどね」
手は宿題をしつつも口は説明をするあたり、商売柄というかなんというか。
出て来る言葉はある意味納得するものだった。
「今の世の中って科学全盛期でしょう?
言い換えれば、なんだかの説明がつく世の中になった。
高度情報化社会ってのは詰まる所そういうものなのよ。
でも、そんな世の中でも説明できない『何か』ってのは当然ある訳で、私たちはそれを使っている訳」
「怖くない?その説明がつかない何かを使う事って」
私の手が止まり、少し言葉がきつくなった。
そんな私の言葉を神奈水樹はいつものように受け流す。
「テレビの仕組みを知らなくてもリモコンを押せば番組が出て来るでしょう?
基本はそれよ。
ただ、知らなくて操作した結果テレビがつかなかったとしてもそうそう危険はないけど、オカルトはそれで触ってしくじると危ないものなのは否定はしないわ。
それに……」
「……それに?」
神奈水樹はノートからだけでなく私からも視線をそらす。
言いにくいというよりも、なんともやるせない仕草で。
「……オカルトって言っても、行き着く所は人の所業にあるのよ。
最初の話で歴史と言ったでしょう?
オカルトと歴史はコインの裏表なのよ。
そういう占い師の事をなんて言うか知ってる?」
私だけでなく、橘由香も唾を飲んで神奈水樹の言葉を待った。
それは世紀末に散々聞いたあのワードである。
「預言者って言うのよ」
私が読んでいるやる夫スレで『真・女神転生オタクくんサマナー ~世界滅亡パパ活計画を阻止せよ!~』というのがあるのだが、作者の人がお嬢様を出していたらしくて、Twitterで見かけたからとりあえずお礼を急いで作り上げる。
何度か言っているが、神奈水樹まわりの話はケルト系の話がベースになっていたり。時間軸的には魔女として相良絵梨も出ているのかもしれんなぁ。
という訳でやる夫wikiペタリ。
ガチの18禁なので注意。
https://yaruo.fandom.com/wiki/%E5%A5%B3%E7%A5%9E%E8%BB%A2%E7%94%9F_%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%83%91%E3%83%91%E6%B4%BB%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%BB%85%E4%BA%A1%E9%98%BB%E6%AD%A2%E8%A8%88%E7%94%BB
さて、お嬢様が何処に出ているか探さないといけないのだが何処にあるんだ……?
本当にありがとうございました。




