お嬢様が馬主になるそうです 2004年セレクトセール編
ウマ娘のおかげでこのあたりのイベントとかがまとめ動画で出るのが本当にありがたい。
夏の北海道は涼しいとは誰の言葉だろうか?
そんな言葉に納得する今日の気温は昨日の雨もあって少し肌寒い感じもする。
今日は競馬のセレクトセールの見学であり、岡崎と天満橋のおっさんを連れていい馬があったら買おうという訳だ。
会場はえらく熱気に包まれていた。
「今回は注目馬が出ていますからね。
みんなそれ目当てなんですよ」
岡崎の説明に私はその馬のリストを確認する。
96年菊花賞馬と96年オークス馬の子で、牝馬の方は牡馬と互角以上に渡り合った戦績から『女帝』と称されるとか。
「ここだけの話、嬢ちゃんがこれ買うんちゃうか思て皆見とるんですわ。
億超えるのは確実な馬やさかい、これも有名税でんな」
天満橋の楽しそうな笑みを見て、こいつ完全に趣味に入っていると察する私。
競馬というのは物語を、それこそ天満橋本人の言葉を借りるならば『ドラマをつくるかもしれへん馬』が大事となる。
人は、その馬が勝つ事も好きだが、それ以上にその馬が走る物語が大好きという困った生物なのだから。
それでいて仕事は忘れないのがこのおっさんの食えない所である。
「まぁ、仕掛けには行きますが、取りには行きまへんな」
「何で?」
おっさんに素で聞いた私に返事をしたのは岡崎だった。
そんなやり取りの最中でも、競りは行われ続けている。
「うちは今回、G1取りに行ってますからね。
成金が金でぶっ叩いて、他の馬主から後のレースに残る遺恨なんて買ったら目も当てられません」
競馬にも人が関わる以上、しがらみとか遺恨とかがついて回るのは避けられない。
こういう場所で誰かの恨みを買って余計な敵をつくると、当然相手はレースで遺恨を晴らそうとする訳で。
馬主というのは基本上流階級なのだから、下手すると私に矛先が向かないとも限らない。
そう考えると、確かに強引に手を出すべきではないだろう。
「あと、うちが出た事でダート馬の相場が急騰しとります」
「樺太競馬が開かれる事で、三歳ダート路線が整備されましたからね。
上山競馬場に新規オープンした宇都宮競馬場はお嬢様の直轄だし、北海道競馬も桂華はスポンサーの上、樺太競馬場にも絡んだ。
この夏の樺太競馬場での桂華杯がうちの指定席なんて影口叩かれている以上、ここは目立たない程度に」
岡崎の台詞八百長じゃねと思ったが、こっちは金は腐るほどあり、欲しているのは栄誉である。
もちろん八百長なんてしないが、岡崎のあげた競馬場ではネットによる馬券購入システムを桂華で構築していたので実質的な胴元である。
そうなると、八百長ではなく別の言葉の方が相応しくなる。『忖度』とか。日本語ってすばらしい。
「JRAを管轄する農林水産省の方もうちについては頭を抱えているみたいで。
何しろ管轄が違いますからね。地方競馬と樺太競馬場は」
ああ。縦割り行政バンザイ。
なお、その縦割り行政でこちらも盛大に頭を抱えていたりするのはお約束。
「で、樺太競馬場の建物ができていないってどういう事なのよ?」
「元が社会主義国ですよ。
スケジュール通りにできる訳ないじゃないですか」
「せやから、レースに欠かされへん部分の設備だけはこっちで整えて、観客はキャンピングカーで観戦してもらおという事で」
なにその野良レース?
というか、岡崎と天満橋の会話がキレッキレである。
それで全く困らないのは、富嶽テレビというテレビ局を抱えて放送ができるのと、馬券購入がネット購入に対応しているからである。
むしろ、セレブ連中の警護の観点から、ある種の野良レースの方が嬉しいという警備側の本末転倒ぶりも晒しているが、それでも樺太競馬場は欧州やアラブのセレブな人々が色々と頑張った結果、G1レースを開く事が出来るのだから、世の中は金とコネである。
「遅れるのは当たり前。
言われてするなら上等。言うにも金持って逃げる奴がゴロゴロ。
機械はいいですよ。人と違って言われた事を言われた通りにしますから」
「今回の樺太競馬のスタッフはうちと関係の深い地方競馬場に頭下げて、人員と設備を融通してもろとるんです。
アラブと欧州も色々尽力しとるさかい、うちに口を出すと、外務省とこれらの自治体が農水省にカチこむ。こういう仕掛けでんな」
そんな話を聞きながら、競りは佳境へ。
というか、会場のざわつきが凄い。
うちではなく、別の人間が金にモノを言わせて有望そうな馬を買い漁っていた。
「で、間違いなく恨みを買っているだろう、あれ、だれ?」
「あれ、代理人で、たしかオーナーがアラブの人だとか」
「ああ。JRAに馬主登録撥ねられたよって、樺太経由で入る腹でんな。
誰や知りまへんけど、嬢ちゃんの盾になってもらいましょ」
「副社長。分かっています?
樺太競馬場の桂華杯で、うちのケイカプレビューのライバル馬を出してきているんですよ。あいつら」
私のジト目に岡崎の呆れ声をものともせずに天満橋のおっさんは楽しそうに言い切った。
「それも含めて競馬でんがな」
その言葉と同時に競りが終わり、目玉であるあの馬をアラブの代理人が五億円という高値で掻っ攫って、今日のスポーツニュースにちょっとした話題を提供する事になった。
なお、今回私が買った馬は9頭。
牡馬5頭と牝馬4頭で、どっちかといえば天満橋副社長の浪漫色が強めで、来ていた馬主から好意的な視線を向けられていたのが印象に残る事になる。
買った馬
前に話した通り、基本架空馬。
デビュー前にどんなのが出るかはサイコロで決める予定。




