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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
虚塔の宴

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桂華金融ホールディングス上場記念式典 その2

 東証アローズ待合室に届けられた大量の花束。

 当たり前のように桂華グループ企業から日本を代表する企業の花束まで無駄にあって匂いがちょっときつい。

 それでも、慶事という事で我慢して待合室に入る。

 橘と一条とアンジェラだけでなく、藤堂や岡崎に天満橋、カリンに三木原、清麻呂義父様に仲麻呂義兄様までいる。

 エヴァにアニーシャや佳子さんに直美さんに亜紀さん、橘由香や一条絵梨花、桂直之の裏方も当然のように控えて居た。

 なお、当然のように居るカメラマンと監督は無視することにした。

 つまり、これは私のここまでの軌跡の一区切りなのだ。


「ああ。本当にここまで来たのね」


 自然と出た私の言葉を誰も止めなかった。




 式典というイベントなので、当然色々なセレモニーがある訳で。

 法的な色々は大人に任せるとして、私の仕事はここに飾られている鐘を鳴らす事である。

 その為に多くの報道関係者が押し寄せ、無数のカメラが今か今かと主役の登場を待ちわびていた。

 持っていたPHSが震える。

 見ると栄一くんだった。


「上場おめでとう。瑠奈」

「ありがとう。栄一くん。どうしたの?」

「たいした事じゃない。ただお祝いがいいたくなってな」


 そんな他愛のない会話をしたあとで栄一くんが切り出す。


「で、瑠奈はこれからどうするんだ?」

「どうするって?」


 わざととぼける。

 これを機に引退するって憶測流れていたからなぁ。確認しに来たのかな?

 栄一くんも企業経営者として背負うものが大きくなった。

 そんな栄一くんとのこの電話は友人としての祝いと経営者としてのライバル宣言に聞こえる。


「私は私。別に変わらないごく普通の中学生だけど?」

「瑠奈らしいや。

 引退するんじゃないかと少し思ってた。

 そうすると……」

「そうすると?」


 栄一くんは少しの間と共にその答えを出し、私は笑い転げてしまう。


「勝ち逃げされたようでなんか悔しくてな」

「あははははははははは!!!

 もうちょっと気の利いたこと言ってよ!」

「うるさい。なんか色々考えて、瑠奈の声聞いたら馬鹿馬鹿しくなった」


 なんだか自然と顔がにやけるのが分かる。

 これ以上ない挑発に乗っている自覚がある。

 楽しそうな声で私は挑発してしまう。


「追いつけるの?」

「追いついてやるさ。だから、その高みで飛び続けてろ」


 どくん。


 心臓が、違うリズムで跳ねた。


「いいわ。私が宇宙に出る前に追いついてごらんなさい」


「ああ。楽しみにしていろ。

 改めておめでとう。

 そして、がんばれ」


 そっかー。追いついてくれるのか。

 だったら、もっと高く飛ばないとねー。

 栄一くんならば、この高さまで確実にやってくるだろうから。


「お嬢様。鐘を鳴らすセレモニーの用意が整いました」


 久しぶりに秘書役をするアンジェラを見ながら、私は岡崎を見つけて手招き。

 露骨にアンジェラの顔が険しくなるのだが、まぁ気にしない。今回の悪だくみはフルオープンだ。


「岡崎。全部買うわよ」

「何をと確認したくなるんですけど、一応」

「決まっているじゃない!」


 腰に手を当てて悪役令嬢ぽく、堂々と宣言する。

 岡崎とアンジェラが私の言葉を聞く前にため息をついたが、実は仲良しなのでは?


「喧嘩よ。最高値で買ってあげようじゃないの!」



 中二階のオープン・プラットフォームでの撮影と記者会見の後、私の打鐘でセレモニーは終了である。

 鐘は五回鳴らされる。

 この五回という回数は五穀豊穣の祈願が込められているとか。

 なお、鳴らす人数は自由らしいので、私以外にあと四回できるのだがという説明を聞いても誰も名乗りを上げなかった。解せぬ。


「ではお嬢様。点鐘をお願いします」


 橘に促された私は鐘の前に立って、ゆっくりと木槌を振り下ろす。


カーン!


 一回目。カメラは私から視線をそらさないが、記者連中が狼狽えてるのが見える。


カーン!!


 二回目。いい笑顔で木槌を振るう。

 そりゃそうだ。さっきの記者会見で『桂華グループとして富嶽放送のホワイトナイトに名乗りをあげる』と公表したのだから。満を持しての主役登場である。


カーン!!!


 三回目。

 ちらちらと見えるモニターからは先物が乱高下の荒れ相場が見える。

 これも、岡崎が『桂華資源開発は日樺石油開発の救済から撤退しない』と発表した為で、法廷闘争も辞さない強硬姿勢で真っ向から喧嘩を買った形になったからである。

 今の桂華には、それを行える資金があった。


カーン!!!!


 来てもらったみんなの顔を見て叩く。

 ここまで来たし、これからもだ。

 さっきの二つのニュースできっと色々動くだろうが、最高値で買ってやった。

 さぁ。相手はどう動く?

 最後の鐘を叩く前に、少しだけ我に返る。


 たとえ全てを失うとしても、これだけのものを背負っているのだ。

 無様には負けられないし、主人公以外に負けてやるつもりもない。

 だからこそ、私は全力で勝ちに行く。

 その決意を笑顔という表情にのせて、私は全世界に宣戦布告した。


カーン!!!!!



 かくして、桂華金融ホールディングスは上場した。

 なお、初値は特別気配のまま今日中にはつかず、一週間後についた価格は倍の6000円だった。

上場セレモニーの参考にしたサイト


東証一部上場セレモニーレポート|株式会社ファンコミュニケーションズ 広報ブログ https://www.fancs.com/pr/2014/03/10/1750


鐘についての由来

【ビッグカンパニー】上場のときに鳴らす「鐘」とはhttps://www.bigcompany.jp/useful/14407_compa_008/

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― 新着の感想 ―
最早誰も止めない。 深淵の深みをエネルギーにして、その反動で跳び上がる。
[一言] 久々の全面戦争。いい!
[気になる点] なんだか自然と顔がにやけるのが分かる。 にやける(若気る)男性が女性のようになよなよとして色っぽい様子。 元々は鎌倉・室町時代頃に貴人の側に付き従って男色の対象となった少年。
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