第8話 記憶。
「サイコパスって……?」
私も桃百合さんと同じく小声で話します。何か周りに聞かれてはいけない話なのでしょう。
……しかし何故桃百合さんは上野くんのことをサイコパスと言ったのでしょう?
確かに上野君は動物の死体を見てニヤニヤしそうな雰囲気はあります。猫を上に持ち上げてからいきなり突き落とすのが趣味ですと言っても何ら違和感がありません。
ですが、私にとって上野君は天使のような存在です。いい匂いがする羽が生えてそうな感じです。もうめっちゃパタパタ飛んでる感じです。雲を突き抜けそれはもう高く!より高く!……要するに言いたかったことはサイコパスとは真逆の存在ということです。
サイコパスだなんてあり得ません。サイコパスは飛びません。冷静に考えてみれば、そんなことを言う桃百合さんのほうが数段サイコパスです。頭いかれてます。大体桃百合さんは――――。
「ねえ!ハッチ!ねえ!聞いてる???」
すっかり考え事に熱中してしまい、桃百合さんの話を全く聞いていませんでした。
「……失礼しました。脳内で桃百合さんをバットでぶん殴ってたらつい……」
「え!?なんでっ!?私何も悪いことしてなくない!?」
「そんなことより話の続きをしてください」
「いやいや!めっちゃ気になるんですけど!?」
「それでなんで上野君がサイコパスだと思ったんですか?」
「え……いや…………だってさ……さっき上野に顔面踏まれそうになってなかった?」
「……??」
言ってる意味がよくわからず首を傾げてしまいます。
……確かに先ほどそのような出来事が起きた気はするのですが……何故だか上手く思い出すことができません。
……!もしやこれは恋する乙女に表れる好きな人を前にすると頭が真っ白になっちゃう現象が私にも発生したのでしょうか……?
ここは一度冷静に記憶を整理するためにも、先ほどの出来事を順番に思い出すことにしました。
◇
「ごろごろー!私消しゴムごろごろー!」
「一番近くにいる俺が拾うのは自然の摂理!踏みまーす!!」
「わぁあああ!上野君の上履き私の顔面の横にある!気持ちいぃ!!最高っ!!!」
「あはははっ!!!殺しまーす!!!」
◇
何だかこれじゃない感があります。