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第5話 消しゴム。4

 では早速消しゴムになっていきます。


 方法はよくわからないので、まずは自分を消しゴムだと思い込むところからスタートします。何事もまずは自分を信じてあげることが大切です。自己啓発の本にも書いてありました。


 自分を消しゴムだと思うことさえできれば、後は周りの人がフィーリングで対応してくれるはずです。上野君も「あっ。こいつやべえ奴だ」って察して消しゴムだと思ってくれるはずです。要はフィーリングです。よくわかりません。


 では消しゴムになります。


 大きく息を吸って深呼吸をします。全身に無駄な力が抜けていくのがわかります。


 はい、私はもう消しゴムです。


 結構なるタイミングというのは唐突なのです。果たして消しゴムが消しゴムになったという認識をするのかという疑問は残りますが、一旦人間的思考は捨てて、私は消しゴムになったということにします。


 ではでは上手に消しゴムになれたところで現実に戻る前に転がることにします。


 ごろごろー!ごろごろー!


 ――端から見れば私が急に倒れたように見えたのではないでしょうか。当たり前といえば当たり前ですが、うまく転げ落ちて上野君の足元に辿り着くことができました。後は上野君が踏むか拾うかしてくれれば私の作戦は大成功です。


 ……しかし上野君は私のほうを見向きすらしません。ここは私が消しゴムだということをアピールしたほうがいいのではないかと思いました。


「私は消しゴ――」


 顔の横を勢いよく何かが掠りました。横を見てみると上野君の足が見えます。


「殺すぞ」


「……けし、消しゴムじゃなかったなー……あはは……」




 殺されるかと思いました。


 動物的本能で、何事もなかったようにすぐ自分の席に戻りました。


 上野君と会話をしたのはこれが初めてですが、恋は本当に難しいと改めて痛感しました。

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