第3話 消しゴム。2
よし。いきます。
…………消しゴムを落とそうとしましたが、いざやろうとすると緊張して手が震えます。
実はこの作戦、3年前からずっと温めてきたです。これが失敗に終わると恋愛も失敗したも同然です。もう策がありません。でも、でも、でも!小さな勇気が成功へと導くはずです!
どれだけ脳内で消しゴム落とし続けてきたと思ってるんですか!頑張れ私!
手は震えながらもか弱い小鳥を逃がすように大事に消しゴムを両手で包み込みゆっくり下に落としました。私の気持ちとは裏腹にウサギのように消しゴムがぴょんぴょんと地面をバウンドしていきます。上野君の座席を行ったり来たり……まるで私の心を弄んでいるように思えてきます。消しゴムは最終的に上野君の席の真下に落ちました。
頑張ったね!消しゴム!
次は上野君に気付いてもらえれば作戦大成功です。しかしここが一番難所でもあります。こうなってくるともう完全に運になってしまうので、今度は消しゴムに念を送る作業をします。
……!!!
端から見ればこいつ目からビーム出すんじゃないかと期待をされてしまいそうですが出ません。ただただ真剣なだけなのです。
3分ほど時間は経過しましたが、上野君は全く消しゴムの存在に気づきません。状況としては私と消しゴムが少し離れた位置でにらめっこしてるだけです。これはもう自分で拾うしかない――そう諦めかけていた時。
上野君が私の消しゴムを踏みました。