四月一日(月)
「いい加減起きろコラァ!!」
乱暴極まりない大声と腹部への強烈な打撃(腹パンと言うらしい)の合わせ技で僕は目を覚ました。
危うくまた眠るところだったけれど。
「おい、まだ寝たりねぇか?痛くして良けりゃ寝かしつけてやろうかぁ!?あぁ!?」
「いえ、いいです、おはようございますレンさん…」
僕の腹部に思い切りカカト落としをかましてくれたのはやはりレンさんらしい。
蓮水レン・27歳独身・職業は料理人で飯処「蝋燭亭」の店主。備考・元キックボクシングプレイヤー。
過激な性格の人は皆濃い味が好きなものだと思っていた僕の偏見をひっくり返した人である。
「ならさっさと降りてこい、皿が片付かねぇ」
ブツブツ言いながら部屋を出ていくレンさんの背中を視界の隅にそそくさと着替え、一階の店舗フロアの片隅に設けられた食卓に向かう。
「おはよう少年、どうやら重いのをくらったみたいだねぇ、店が崩れるかと思ったよ」
食卓につくと向かいに座っていた眼鏡の男に声をかけられる。
「おはようございます、ガミさん」
ガミさん・本名不明・年齢不詳・職業は自称情報屋。
いつも妙なサングラスをかけており、日によって形が違う。ちなみに今日のはヒトデ型だ。
「あの、ガミさん」
「なんだい?少年」
「やっぱりそのサングラス星型なんじゃ」
「ヒトデだ、譲る気はない」
即答、しかも声のトーンがマジだった。
「テメェらいつまで食ってんだ、さっさと食ってさっさと働いてこい。おいガミ、指示書届いてんだろ?
さっさとそいつにくれてやれ」
「はいはいわかってますよぅ、今日もおっかないなぁレンちゃんは…」
「あぁ?」
「ナンデモナイデス!」
棒読みでそう答えると、ガミさんは赤黒い封筒を足元の鞄から取り出し、こちらに手渡してきた。
「昨晩の午前二時頃、居住域の南西五キロ地点に突如街が出現したらしい。本部は今朝までに二度調査隊を送ったがいずれも帰らず、今わかっているのはあの街が埋没都市ではなく『ムジナ』だろうって事だけだ」
いつになく真剣なガミさんの説明に、背中を冷たい汗が伝う。




