プロローグ
むかしむかしあるところに、美しい娘がおりました。
娘は幼い頃に母親を亡くし、父親が再婚した義理の母とその連れ子である2人の姉と暮らしていました。
しかし父親が急病で亡くなってから、義理の母と姉たちの態度は急変しました。娘にボロを纏わせ、暗く狭い部屋に押し込め、まるで召使いのように扱ったのです。
毎日義理の母と姉たちから虐げられても、娘の美しさや気高さは変わりませんでした。
そんなある日、娘に運命の出会いが訪れました。
義理の母の使いで離れ町まで出かけた日のこと、白馬にまたがったハンサムな男性に道を尋ねられたのです。
2人が交わした言葉は僅かでしたが、互いに心を通わせ合うようになり、再び巡り会うことを願っていました。
道で出会った男性が一国の王子だと知った義理の母は、王子から遠ざけようと、娘を牢屋に閉じ込めてしまいました。
娘は嘆き悲しみます。
自分は幸せになれない。
冷たい牢屋の中で絶望し、涙していた時でした。
牢屋の小窓から一筋の月明かりが差し込み、娘をキラキラと照らし始めたのです。
光はやがて美しい魔法使いに姿を変えました。
「いつまで泣いているの?涙を拭いて、早くここから抜け出すのよ」
魔法使いは氷柱のように光る杖を振り、娘に魔法をかけました。娘の体は一瞬のうちに軽くなり、両足は床を離れていました。靴に羽根が生えていたのです。
娘は小窓から牢屋を抜け出し、羽根の靴で夜空を飛行しました。
そうして娘は無事、王子の元へ辿り着くことができたのです。
運命の2人は晴れて結ばれ、いつまでも幸せに暮らしました。