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『幻獣闘士サクセサー』

 かつて幻だと思われていた伝説上の動物達の遺伝子が近年相次いで発見された。

 世界征服を企む悪の秘密組織『ヘルシャフト』

 奴らは非道な人体実験の末、幻だと思われていた獣、幻獣の能力を人に移植する事に成功した。

 彼らは『幻獣の後継者(サクセサー)』と呼ばれ伝説にある様な恐るべき力を手に入れた。

 人体実験の末ケルベロスのサクセサーにされた主人公『六道 凱(ろくどう がい)』は洗脳される寸前に組織を脱走し悪の組織ヘルシャフトとの過酷な戦いの日々に身を投じて行くのだった。

 一見王道的なストーリーですが随所に散りばめられた複線や人間ドラマが織り込まれた奥深いストーリー。

 演じる俳優陣の真に迫った演技、そしてダイナミックな殺陣など、子供のみならず大人からも絶大な人気を博した作品。

 以上が私の知っているサクセサーの大まかな情報です。


「そうそう、そんな感じ」

 私の知っている『幻獣闘士サクセサー』の情報に鈴さんは、お弁当のウィンナーを齧りながら色々補足を入れています。

 はい、最近恒例になってきたような気がする大樹の傍での昼食。

 今回は鈴さんも入れて三人に成りました。


 あの後、流石に二回目ともなると結構冷静だったと思います。

 むしろ正体を見られた鈴さんの方が慌てていました。

 その後私達も転生者だと言う事を話すと落ち着きましたが、流石に乙女ゲームやバトル漫画の事を話すと驚いていました。

 やっぱり他作品とクロスしてるなんて思ってもみなかったようです。


 とにかく落ち着いて話し合おうと言う事に成り深夜だった事もあり、そのまま就寝、翌日帰宅し何処か落ち着いて話し合える場所に集まろうという流れになりました。

 落ち着いて話し合える場所として思いついたのが、何時もと同じ大樹の傍。

 学園は夏休みに入っていますが、図書室などの施設は開放されており、他にも部活動などに勤しんでいる学生の声で平時よりも騒がしい位です。

 この中庭も部活動中で一休みしてる学生の姿がちらほら見えます。

 流石にこの大樹の傍は静かな物で、ここなら余計な事を聞かれずに話を聞けます。


 鈴さんの話によれば優さんの時と同じく転校してくる前に原作は終了しているそうです。

「ああ、転校してくるまでごたごたがあったってそういう……」

「うん、実を言うと転生してからまともに友達と遊んだ事なくて……」

 彼女の今での話を聞きましたが、結構凄まじい人生を送っています。

 まず、原作ではペガサスのサクセサーは出てきません。

 正確に言うと、名前だけは出てきてました。

 ヘルシャフトの首領クリーゼの娘として。


 原作ではクリーゼは妻と娘さえも人体実験の道具に使い原作開始時にはすでに死亡しているという設定でした。

 ですが鈴さんと言う存在がそこに介入したからなのか原作と齟齬が生じます。

 鈴さんの母親が人体実験で幻獣の遺伝子を移植された時、すでにそのお腹に鈴さんが宿っていました。

 母親はメデューサの遺伝子を移植されましたが拒絶反応を起こし死亡します、ですが鈴さんはその時生まれました。

 血を吐き、息絶える母の胎から生まれた彼女、その身にはすでにペガサスの力が宿っていました。

 彼女は生まれながらのサクセサーとして組織の中で実験体として生まれた時から監禁されていたそうです。

 原作では過酷な実験のせいで命を落としたとだけ言われていましたが、鈴さんはそれに耐え抜き、主人公である凱さんと共に組織を脱走し、その後共に戦ってきたそうです。

 その戦いの中で鈴さんは優さんと同じように死ぬ運命に会った人たちを何人も助けて行き先日、首領であり父親でもあるクリーゼとの戦いに終止符を打つ事がそうです。


 ちなみに父親に関しては。

「アイツの事父親だなんて思ってないから」

 とのことです、ちなみに名字の『天羽』は母親の旧姓で、名前は凱さんがつけたそうです。

 組織に居た時は番号で呼ばれていた事を不憫に思った凱さんが名前を付けてくれたと嬉しそうに話してくれました。

「凱はアタシの命の恩人なんだ」

 凱さんの事を鈴さんは本当に尊敬しているようです。

 辛く苦しい組織での生活も何時かヒーローがやってくる事を心の支えにして耐える事が出来たと。

 その後の組織からの逃亡生活、そして戦いの日々、凱さんは常に鈴さんと共にあり彼女を支えてくたと。

 鈴さんにとって凱さんは単なる原作主人公と言うもので無く、本当の意味での希望の光(ヒーロー)なのです。


 そんな極悪な組織、ヘルシャフトですが、その規模は非常に大きく影響力も馬鹿には出来ません。

 突然そんな組織が消えたりしたら裏も表も大騒ぎになるので血縁上の娘としての義務で今は鈴さんが首領代行となり穏便な組織解体を模索している最中だそうです。

 無論たとえ前世の知識があったとしても十代の少女に全て任せている訳ではなく、凱さんを始め、様々な人の手を借り組織を運営しているそうで、彼女自身は。

「アタシはお飾りみたいなものだから」

 と、言っていますが原作で非業の死を遂げるはずの人達を鈴さんが積極的に助けた結果、恩返しの意味も込めて手伝っている人達がかなり居るみたいです。

 彼らのおかげで鈴さんは、この学園に来る事が出来たそうで、周りは鈴さんに普通の学生生活を楽しんで欲しいそうです。


 ただ、組織解体に反対する過激派は先日のように彼女の身柄を狙い襲ってくる事がたびたびあるそうで、先日の蟹怪人もその一人だったと、それを聞いた優さんは。

「次は私も呼んでよ!そんな奴ら十二神流の錆にしてやる!」

「ありがとう優、頼りにさせてもらうよ」

 そう言ってガッチリと固い握手を交わす優さんと鈴さん。

 良く分からないけど戦いに身を置く者同士の友情のようなものが芽生えてるような気がします。

 バトル漫画と特撮のコラボって、凶悪ってレベルじゃ無い気がする。

 次の怪人さんご愁傷様です。

 鈴さんはここが乙女ゲームの舞台で、おそらく眼鏡風紀委員長のルートに入っている事を知って、嫌な顔をしていましたが彼に付きまとわれている現状には納得してくれました。



 その後の展開をちょっと駆け足で紹介します。


 その後は普通に夏休みを三人で楽しく過ごしました。

 遊園地に行ったり

 プールに行ったり

 お茶会を開いたり

 一緒に宿題をしたり

 たまに襲ってくる怪人を二人がボコったり

 鈴さん経由で知り合った凱さんと優さんのお兄さんの竜太さんが軽く手合わせをしてちょっとしたクレーターを作ったり

 色々ありましたが転生してから一番充実して居た夏休みでした。


 そんなこんなで夏が過ぎ、秋が来て、冬を迎えて、再び春が来ました。


「私達も二年生ですか早いものです」

 既に定番となった大樹での昼食。

「早いもんだよねー」

「ホントだね、みんなと出会ってからがアッと言う間だったよ」

「だね、転校してきてから色々騒ぎを起こしてきたからね」

「私は起こそうなどと思っていませんが」

「うふふふ、色々あったけど楽しかったわ~」


 ………はい、増えてます。

 結論から先に言います、全てのヒロイン全員が転生者でした。

 しかも、それぞれが他作品のメアリー・スーとして存在していました。

 彼女達の事を大まかに説明させていただきます。


 三作目ヒロイン『東 由梨華(あずま ゆりか)

 ふわりとウェーブのかかったセミロングにパッチリした瞳が印象的な正統派美少女。

 性格も割とあくの強い優さんや鈴さんと違い割と普通の性格ですが、芯はしっかりと強く優しい女の子です。

 ただしその正体は超能力者。

 ライトノベル『賢者の憂鬱』

 超能力を手に入れた主人公『笠部 十夜(かさべ とおや)』が仲間と共に超能力者による大規模テロを企むテロ組織と戦いながら恋と友情を育んで行くストーリー。

 難聴系ハーレム主人公でアンチもいましたが根強いファンも大勢おり二次創作なども活発に作られていました。

 由梨華さん自身もやはり自分は、そう言った二次創作などに出てくるオリ主だと思い原作に介入。

 その結果、原作最終巻で多数の死傷者を出す惨劇『ヴァイゼの紅』という事件はごく小規模のテロに終わったそうです。

 彼女自身も主人公に負けないくらいの強力な超能力者ですが何故かサイコキネシスやパイロキネシスなどの物騒な能力が得意で、サイコメトリーやテレポートなどの応用が利くような能力は苦手だそうです。


 四作目ヒロイン『常盤 早苗(ときわ さなえ)

 二つ結びの三つ編みに眼鏡の真面目な印象の女の子、ただし、お約束的に眼鏡を取ると美人。

 性格も真面目だがガチガチの生真面目と言う訳でもなく、必要になれば色々と状況に応じて対応できる柔軟さを持っています。

 その正体は勇者。

 ファンタジーRPG『ドラゴンレジェンド』

 剣と魔法の世界で勇者が魔王を倒す物語で早苗さんは昨年その世界にトリップしたそうです。

 二度目のトリップは転生ではなく、普通?の異世界トリップで原作の勇者とは別の勇者として召喚されたそうです。

 その後、早苗さんも自身がオリ主だと思い、物語の中にある様々な悲劇を回避してきたそうです。

 その結果、勇者を利用して領土拡大を狙う王の企みを暴き、腐敗した側近を排除していたら何だかんだで悲劇の物語を辿るはずの原作主人公が新たな国を起こし、魔王とは平和条約を締結させたそうです。

 その後、異世界を渡る魔法を完成させた早苗さんは、向うの世界とこっちの世界を行き来しながら生活しています。

 ちなみに、この世界では見えませんが異世界ではレベルの概念があり彼女のレベルはカンスト、魔法は全部習得済み、アイテムコンプリート、さらに裏ダンジョンまで攻略済みだそうです。

 何でも生前は中々の廃ゲーマーだったそうで。

 なお、こっちの世界でもレベル自体は見えませんが、勇者としての力や魔法は問題なく使えるそうでアイテムの類も異世界から持ってきた、無限にアイテムを収納できる魔法の袋から聖剣なども出し入れできます。


 最後の五作目ヒロイン『サアーダ・エレオス』

 彼女は私達の中でも特に変わり種と言っても良いでしょう。

 腰まで伸ばしたプラチナブロンドの髪に琥珀色の肌、瞳は神秘的なエメラルド、顔つきも東洋系とも西洋系とも付けがたく、どちらにも見えるし、どちらとも違うように見えます。

 こうした特徴的な見た目に反し本人は、至って穏和で優しい人です。

 親しい人には『サア』と愛称で呼ばれると喜び、大抵の事は「あらあら」とか「うふふ」と言って流すその姿は思わず「お母さん」と呼びたくなるほど母性に溢れています。

 ちなみに胸部装甲的な意味でも私達の中で一番母性に溢れています。

 それも無理は無い事です、彼女はこう見えて実は年上なのです、それもこの学園の誰よりも。

 伝奇小説『妖魔ハンターモルス シリーズ』

 絶世の美貌を持つ黒衣の青年モルス、彼の正体は妖魔を狩る凄腕の妖魔ハンター。

 古代、中世、近代、現代、そして未来。

 様々な時代を舞台に彼は旅を続け妖魔を狩り続ける『死神(モルス)』の名のもとに。

 サアさんが生まれたのは今よりも遥か古代。

 妖魔の生贄にされた彼女は、とある妖魔の気紛れで不老不死の呪いを受け奴隷件玩具として生かされていたそうです。

 その後、モスルの手で、その妖魔は討伐されましたが彼女の呪いは解ける事は無く、それ以降、彼と共に旅を続けているそうです。


 なお転生前は、鈴さんは特撮物に、由梨華さんはライトノベルにハマっており、ゲーマーだった早苗さんもプレイするのは主にRPGで、乙女ゲームなどはプレイした事無かったそうです。

 サアさんに至っては、長い間生きていたせいで生前の記憶がおぼろげになっているそうで、自分が転生した事実は憶えているそうですが、それ以外の記憶はかなりあやふやで、辛うじて自分が妖魔ハンターモルスシリーズを読んでいたといった記憶がある程度でそれ以外は憶えていないそうです。

 ただ、聞いただけでも、おぼろげな記憶でも原作知識のおかげか、それとも彼女の存在のせいか、色々と原作とは齟齬が生じているようです。


 そんなこんなで、勢揃いした五人のヒロイン。

 改めて現状を確認しますと、世界の意思なのか、それぞれ攻略キャラに好意を寄せられています。


 優さんに俺様生徒会長

 鈴さんに眼鏡風紀委員長

 由梨華さんにホスト系教師

 早苗さんに一匹狼系不良

 サアさんに後輩美少年


 などを筆頭に学園で有名なイケメン達に大なり小なり好意を持たれています。

 もっとも、その事に関して彼女達は、ひっじょっーーーーーーーに渋い顔をしています。

 何故かと言うと。

「そもそも、恋人が居る女性を口説くのはどうかと思います」

 と言う早苗さんの言葉が全てを物語っています。

 まさか優さんだけでなく他のヒロイン全員が彼氏持ちだったとは……


「そんな事言ったって、アタシにはアイツしか考えられなかったし……」

「わ~鈴ちゃんってば顔真っ赤!」

「あらあら、かわいらしいですね~」

「この話になると何時もこうなるね」

「あーもー!この話はやめやめ!!」

 ワイワイキャイキャイ

 春の陽気の中、賑やかな歓声が大樹の根元に木霊します。


 女三人寄れば姦しい、とはこの事、それも六人集まれば倍以上の騒がしさですが、これが私の今の日常です。

 思えば一年前、ヒロイン登場に震えていた時にはこんな風になるなんて考えてもみませんでした。

 それまでは、この大樹の傍に居るのは私一人だけでした。

 たった一年でこの場所の雰囲気はがらりと変わりました。

 何の因果か六人の転生者が一か所に集まり、しかもその内の五人は物騒な原作持ち。

 格闘家、変身ヒーロー、超能力者、勇者、不死者

 何と言いますか……今の状況を一言でまとめると。


「メアリー・スーがいっぱい」


プロットの段階では忍者と妖怪と軍人と決闘者(デュエリスト)を出す予定でしたが流石に収拾がつかなくなるので今の五人まで減らしました。

いつか別の形で出せたらいいなと思っています。

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