ヒロイン2人目
感想、評価、ブックマークをしてくれた方、本当にありがとうございます
一応週一更新を目標に頑張っていますが駄目な時は駄目だったと生温かい目で見てください。
優さんと友達になって少し時が経ちました。
衣替えの時期も過ぎ夏服に慣れた頃、彼女はやって来ました。
二作目のヒロイン。
『天羽 鈴』
ポニーテールに勝気な面立ち。
170㎝と女性としては高めの身長ですがスラリと伸びた手足のおかげで大柄な印象は受けません。
可愛い系であった優さんと違いどちらかと言うと、かっこいい系な雰囲気に男子より女子の方がキャアキャア騒いでました。
見た目通りの気が強くさっぱりとしたきっぷの良い姉御肌な性格で、理不尽な事に立ちしてはとことん抗う性格、弱気を助け強きをくじくを地で行くような人。
反面、可愛い小物や小動物などに弱い女の子らしい趣味を持つ。
以上が二作目ヒロインの情報です。
彼女が転校してきてから暫く前回と同様に彼女を観察しています。
ただ前回と違う事を上げるとすれば、優さんと言う協力者を得た事により、より近くで彼女の動向を探る事が出来ました。
優さんの時とは違いなるべく近くで観察しようと言う方針で不自然にならない程度に転校生である彼女に近づき親しくしています。
「鈴さん、おはようございます」
「おはよー鈴ちゃん」
「二人とも、おはよ!」
今ではこうして気軽に挨拶するほどの仲に成っています。
こうしてしばらく観察していましたが、性格は大した違いは無く非常に好感のもてる人です。
ただ、やはり優さんの時と同じでイベントが起きたり起きなかったり、起きたとしても内容が変化して居たりと優さんの時と同じです。
唯一違うのは俺様生徒会長ではなく眼鏡風紀委員長とフラグを立てている所でしょうか。
彼女の勝気な性格が眼鏡風紀委員長の琴線に触れたのかもしれません。
ファンディスクなどでも彼女の相手は眼鏡風紀委員長だったのも関係して居るかもしれませんが、眼鏡風紀委員長の強制イベントだけはしっかりと起きていました。
「うわー私の時ってあんな感じだったんだー」
とはその様子を見た優さんの感想です。
でも優さん、貴女も現在進行形であんな感じですよ?
優さんの願いも虚しく未だに俺様生徒会長に付き纏われているようです。
「う~ん、やっぱり分かんないな~」
「ですね~」
「私達みたいに転生してるのかな~」
「どうでしょうね~」
あの話し合いの後、優さんもこの大樹の事を気に入り昼食は一緒に大樹の傍で取るようになりました。
ここでこれからの事を話しあったり、優さんが恋人の事を惚気たり、家族の事を愚痴ったり、昨日見たテレビ番組の話をしたりして過ごしています。
…………ちゃんと鈴さんの事も気にしてますよ、木々の間から流れてくる風が気持ちよくて、まったりしている訳じゃありませんよ?
それにちゃんと考えもあります。
「もうすぐ臨海学校だね」
「はい」
優さんの言葉に私も神妙に頷きます。
あと数日で夏休みに入り、そのまま臨海学校出発します。
春のオリエンテーションとは違い二泊三日の泊まりのイベントです、なので私達は。
「鈴さん一緒の班に入りませんか?」
「え、いいの?」
「うん!鈴ちゃんが入ってくれるとすっごく嬉しい!」
という流れで鈴さんと同じ班に成る事が出来ました。
また、宿泊予定のホテルでの部屋割で、三人部屋をもぎ取ることができ、これで文字通り四六時中監視が出来ます。
………少し変態っぽいですね。
まあ、前回とあまり変わりが無いと言われればそれまでですが。
ともかく、そんなこんなで夏休みに突入、臨海学校の始まりです。
などと意気込んではみたものの、こうしたイベントは楽しい物です。
特に気の合う友人と共に過ごすとなれば余計です、なので。
「そうれ!」
「きゃーーー!!」
「やったな、おかえしだ!」
青い空、青い海、波間に響くは乙女の笑い声、弾むゴムボール、ビーチバレーを楽しむ乙女たち。
いえ、別に完全に遊び呆けている訳ではありません。
こうして遊びながら鈴さんを観察しています、やはり彼女は普通ではないようです。
今遊んでいるビーチバレー、優さんは流石、十二神流格闘技の使い手と言う事でしょうか、バレー部を始め他の運動部の人達を圧倒しています。
私も多少運動神経には自信がありました全く敵いません。
彼女いわく学園ではなるべく目立たないよう力をセーブしているそうですが、意味無いような気がします。
バレー部顧問の先生が獲物を狙う鷹の目に成っています。
こうして無双している優さんですが、その優さんに鈴さんはくらいついています。
優さんの打つ剛速球なアタックを打ち返したり、思いがけないフェイントなどを駆使し優さんにリードを許しません。
また優さんほどではありませんが、鈴さんの打つアタックは強力で、優さん以外取れません。
実質的にこの試合二人の対決と言っても良い状態です。
この超人バレー対決に巻き込まれた人はご愁傷さまとしか言えません。
……ええ、私の事ですけどね。
他のクラスメイトは早々に避難して今はコートの外で超人対決を見物しています。
逃げ遅れたのは私だけです、へるぷみー。
「二人ともいい加減にぶふう!!」
「「あ」」
今日の教訓
例えゴムボールだろうと剛速球+顔面は痛い事を学びました。
その後二人して土下座する勢いで謝って来ました。
鈴さん曰く。
転校してくるまで色々ごたごたがあってこんな風に遊ぶことが少なく、始めて同年代の子達と遊ぶ事が嬉しくて思わず羽目を外してしまった、本当に申し訳ない。
と、非常に申し訳なさそうにうなだれると鈴さん、隣には同じような表情の優さんが居ます。
特に鈴さんはポニーテールまでどこかしょんぼりしているように見えて、叱られた子犬を想像してしまって不謹慎ですが吹き出してしまいました。
その後、笑いの発作に襲われ転げまわるように笑う私をいぶかしげに見ていた二人でしたが気が付いたら二人にも笑いの発作が移って、最終的に砂浜で女の子三人大笑いをしていると言う良く分からない状態でこの騒動は幕を降ろしました。
まあ、その後も。
優さんと鈴さんに運動部の人達が押しかけたり。
二人がビーチフラッグで砂嵐を起こしたり。
海水浴で鮫が出現して優さんが退治したり。
その時の拳圧で海が割れたり。
などなど色々な騒動がありましたが割愛させていただきます。
本当の事件は二日目の深夜に置きました。
カタンッ
小さな物音でしたが皆が寝静まったホテルの一室にその音は思った以上に響きました。
ホテルの一室、物音を立ててしまった影は一瞬動きを止め、同室の少女二人をジッと見つめていましたが彼女達から規則正しい寝息が聞こえる事を確認すると、そのまま足音を殺し部屋から出て行きました。
それからしばし静寂があたりを支配し。
「行ったようですね……」
完全に言ったと確信してムクリとベットから起き上がる私。
昼間忙しすぎたのが良かったのでしょう、疲れすぎて逆に眠りが浅かったため、先ほどの物音で目が覚めました。
その後、必死に狸寝入りをしてやり過ごした私に演技力に拍手を送りたい。
こんな真夜中に鈴さんはどこに行ったのでしょう?
兎に角後を追うため隣のベットで寝ている優さんを起こさなければなりません。
「優さん!優さん!起きて下さい!!」
部屋の外に聞こえないよう小声で呼びかけながら優さんの体を揺すります。
「えへへ……もうたべれない……」
「優さん!そんなベタな寝言、言ってる場合じゃ!」
「だから、それタッパーに詰めて……」
「…………………………………」
取りあえず寝言大喜利かましてきた人の顔に濡れティッシュを置いて素早く身支度を整え鈴さんの後を追う事にしましょう。
「居ました!」
ホテルからかなり離れた岩場に鈴さんの姿はありました。
格闘家である優さんが気配を感じ取ることが得意だった事と。
鈴さん自身が真夜中に良く映える真っ白いパーカーを身に着けていた事でさほど時間をかけず鈴さんの姿を見つける事が出来ました。
鈴さんが立っている場所は周りの岩場がすり鉢状にそそり立ち彼女が立っている中央部は平坦な造りになっています。
それは長い年月潮の満ち引きで出来た天然のコロッセオのような印象を受けました。
「まさかこれが役に立つとは……」
私の目からは鈴さんは闇の中にポツリと白い輪郭が何とか見えるという距離にいます。
こっそり持ってきたスコープ付き暗視ゴーグルを覗き込みながら鈴さんの様子を窺います。
ちなみに優さんにも貸そうかと聞いた所、夜目でもあれ位の距離ならハッキリ見えるそうです。
バトル漫画出身者って………
ザッパーーーン
ザッパーーーン
岩場に打ち付ける波の音が響く中、鈴さんはただそこに立っています。
何をしているんだろうと思ったその時。
「そこに居るのは分かっている!!」
波を遮るように凛とした声が響きました。
「「!!!」」
突然の事に身を固くする私達、ですが鈴さんはお構いなしに声を張り上げます。
「私の事を監視していたみたいだからね!まどろっこしいのは嫌いだよ!さっさと出てきな!!」
何と言う事でしょう!私達の事がばれていたようです。
遠く離れたこちらまでビリビリとした怒気が感じられるほど怒っているようです。
「違いま「黙って!」」
何とか弁明しようと声を上げようとした所を優さんに口を塞がれ地面に押さえつけられました。
「ゆ、優さん何を……」
「油断したわ」
「え?」
「見てあれを」
身を低くしたまま鈴さんの方を見てみると異様な光景が広がっていました。
「な、何なんですか、あの人たち」
岩影からゾロゾロと人が出てきているのが見えました。
何よりも異様なのはその格好。
全員同じ背格好で何故か黒っぽい全身タイツのような物を着ています。
「わかんない、でも只者じゃないよ!」
私達が固まっている間に、その異様な人たちは鈴さんを取り囲んで行きました。
尋常な雰囲気ではありません。
「涼子ちゃん!何かあったら私が飛び出すから、その間に一直線にホテルまで逃げて!」
「優さん……分かりました、けれど無茶だけは絶対しないでください」
「分かってる、大丈夫だよ」
そんな事を話している間にも岩場の隙間からさらにゾロゾロと全身タイツの人達が出てきています。
そんな異様な光景の中なぜか鈴さんは動揺や怯えているようには見えません。
むしろ泰然とした余裕のようなものさえ感じます。
「ふん、数だけは揃えたってとこかい」
そう言って不敵に笑う鈴さん、こんな状況ですが、いえ、こんな状況だからこそ、その表情は輝いて綺麗だと思えました。
「こんな雑魚いくら集めたって同じ事さ」
「そう上手くいくかな」
全身黒タイツ集団から一人の男が出てきました、この人だけは全身黒タイツではありません。
かといって普通とは言い難く、何かごてごてした服を着ています。
「仲間もおらず、足場の悪いこの地、さらに多勢のこの状況で我らに勝てるとでも?」
「ふん、数を頼らなきゃ何も出来ない腰ぬけ共が、纏めてかかって来な!!」
彼女の言葉と共に変化は急にあらわれました。
「後悔するなよ小娘が!!」
突如男の体がボコリと膨れ上がり真っ赤な甲冑のようなものが現れた。
それと同時に両腕が避け真っ赤な鋏のようなものに変化します、その姿は正に。
「蟹だな」
「蟹ですね」
何やら蟹怪人のような存在が出てきました。
そして変化は男だけに留まりません。
「幻獣装着!!」
その掛け声とともに鈴さんはチェーンで首にかけていた指輪を人差し指に差し込みます、その途端、真っ白な光が辺りを包みこみました。
「うお、まぶし!」
そのあまりの眩しさに周りの全身タイツや蟹怪人さえも思わず目を覆うほどでした。
暗視ゴーグル外してて良かったです、何となく予感はしてました。
そして光が収まったそこに居たのは。
「疾風登場!ペガサスサクセサー!天馬の羽ばたき止められる物なら止めてみな!!」
そこに居たのは純白の鎧をまとった乙女。
蟹怪人とは違いスタイリッシュでどことなく機械的な鎧。
背中に白い羽を思わせる飾りが付いており、瞬馬を連想するようなスラリとした手足の装備。
顔は何処となく馬を思わせる仮面に覆われており、その姿はまさしくペガサスを思わせるいでたちでした。
「ペガサスウィング!」
そのかけ声と共に背中の羽の飾りが一瞬バラバラになったかと思うと羽の嵐となって蟹怪人を含め周りの全身タイツ達に襲いかかりました。
「ぐわああーーー!」
あ、あっという間にやられた。
怪人弱!
いえ、鈴さんが強いのでしょう。
ともかく私が言える事は一つ。
「今度は特撮物ですか!?」
ようやく二人目登場です
次からは、もう少し展開を早めたいと思います。