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暇つぶし再び 後編

 前回までのあらすじ。

 色々大変ですが今日も世界は平和です。




「それで木城さん……『あの人達』は……」

 恐る恐る、ある意味一番気になっていた事を尋ねます。

「あ~……『あの人達』ね………その………元気?にしてるわよ…………………一応」

「そ、そうですか…………」

「「…………………………………………」」

 どちらともなく気まずい沈黙が落ちる。


『あの人達』

 それは私と戦った元攻略対象者達のこと。

 皮肉な事に全員を倒した私が一番重症で、彼等は怪我こそしていますが、どれも命には別状のない範囲で収まっていました。

 なお一番軽症だったのが一番最初に脱落した俺様生徒会長だったそうです、もっとも前歯は差し歯になったそうですけど。

 一応事が済んだ後に彼等も回収されて治療を受けました。

 その後、不埒なまねなんかできない様にサアさんの糸でぐるぐる巻きにされて放置されていました。

 ただ、私が重傷を負った事を知った優さん達の怒りは凄まじく。

「あと一時間涼子ちゃんが目覚めるのが遅かったら、どうなっていたか分からないわ」

 と穏やかな口調でサアさんが言った時には背筋に冷たいものが走った物です。

 穏やかに笑ってはいましたが、あれは本気の目をしていました。

 せ、セーフ!私セーフ!GJ私!良く起きた!!


 それと言うのも気絶から目を覚ました彼等は全然反省しておらず、見当違いな妄言をまき散らし医者や看護師さんたちには散々迷惑をかけ、友達を傷つけられた優さん達の神経を逆撫で続けていました。

 ですが彼等は魔法少女の力を奪ってしまえば、ちょっと他の一般人より優れている位の普通の人なんですよね。

 優さん達が戦ったラスボス達のように明白な犯罪行為には及んでいません。

 私に対して行った傷害も、あの生物にたぶらかされてしまったと言えばそれまでですし。

 何より今は魔法少女=可哀想な被害者という位置づけを世間一般に定着させようとしている真っ最中です。

 余り事を荒立てたくなかったのもあり臭い物には蓋をする様に、彼等は病院に一室に纏めて閉じ込めておくしかありませんでした。

 私は目覚めた当初そんな事は知らされずにいました。

 元々怪我人に聞かせたい様な内容でもありませんし、優さん達も口にするのも嫌だったそうなので、わざわざ話題にする事もなく、また私の方も、そんな事よりも、世界がどうなったかの方ばかりに気を取られて彼等の事は完全に頭から抜け落ちていました。


 それが良かった事なのか悪かった事なのかもう分かりません。


 少し話は変わりますが、皆さん私が何者か憶えていますか?

 転生者?

 乙女ゲームの悪役令嬢?

 いえ、そっちの方ではなく、私が得た力、そう魔法少女です。

 魔法少女の特徴、ヒラヒラの衣装などもそうですが、『魔法少女ミラクルポップ』の一番の特徴は何でも願いをかなえるミラクルポイントの存在です。

 原作では使っても碌な結果にはならない代物ですが、効果の方は折り紙つきです。

『魔法少女ミラクルポップ』は終盤までミラクルポイントを奪い合うバトルロイヤルでした。

 私達は原作の悲劇を防ぐためとはいえ、多くの魔法少女達を倒してきました、無論命を取るような真似はしませんでしたが、聞き分けのない人達には軽く病院送りになる位の措置は取りました。

 それで………ええ………どうやら私は気付かない内に彼女達のミラクルポイントを奪っていたようで。

 おまけに今回の魔獣が倒された時、別に魔獣を退治には参加しておらず、傍で気絶していただけの私ですが、何故かその分のミラクルポイントまでドサーっと入っていたらしくて。

 正直、原作の悲劇を知っている身としては見るのも嫌だったので、全然確認してなかったんですよね。


 それで話は元攻略対象者達に戻りますが。

 私が目覚めた時、同じ場所に攻略対象者達が居る事を知りませんでした。

 ただ、時々下の階から何か不愉快な叫び声の様な物が聞こえるな、とは思っていました。

 それが、攻略対象者達の声だと知らなかったと誓って言えます。


「まさか!まさか!!あんな事になるなんて……」

 あんな事態になるなんて思ってもいませんでした。

「涼子さん!余り自分を責めないで!」

「だって!私は!」

「落ち着いて、ほら、ゆっくり息を吸って」

 木城さんは無事な方の右腕を優しく握りしめ、優しく諭します。

「スー……ハー……すみません少し興奮してしまって……」

「いいの、貴女はこれまで必死で頑張ってきたんだから、全部終わって少し疲れてるのよ」


 ううう……気使いが身にしみる。

 木城さんもサアさんみたいに包容力があって安心します。

 やっぱり歳が「今何か変なこと考えなかった?」

 ギロリ

「考えてません!!」

 うおおおおお!?謎の威圧感が!?

 こ、怖!!サアさんと違って、木城さんには禁句なんですね。


 ええっと、何処まで話しましたっけ?

 そうそう、階下に攻略対象者達が居る事を知らなかったって所でしたね。

 あの時の私は目が覚めたばかりでぼんやりする頭に、更に麻酔が切れかかっていたため、左腕とお腹からジクジクとした痛みが断続的に襲われると言う状況でした。

 間が悪い事に、優さん達や看護師さん達も席を外しており一人病室でうなされていました。

 そんな中、何か不愉快な喚き声が階下から響いて来て、殆ど無意識だったんです。

「(ああもう……あの叫び声を『何とか』して欲しい)」

 そう、『願って』しまったんです。


 どう言う原理で作動したのか知りませんが、私の願いに反応したミラクルポイントが元攻略対象者達を『何とか』しちゃったんです。

「本当にあんな事になるなんて思ってもいませんでした……」

「ええ、分かってるわ、みんな貴女がそんな事する子じゃ無いって知っているわ」

 本当に考えもしなかった。

 まさか……



「まさか彼らがTSするなんて!!」



 ほんっっっとうに、どうしてこうなった!!

 確かに何とかしてほしいと思いましたよ!?

 でも別に性転換なんて願ったりしてません!!

 何なんですか、このへそ曲がりな願いの叶え方!

 あれですか、妄執の根を根元から建ち切るとかそんな感じ何ですか!?

 今でも思い出せます、狂ったような喚き声が一瞬止まったかと思えば次の瞬間、甲高い女性の悲鳴に変わった瞬間を。


 しかもたちの悪い事に、このTS現象、それを認識できたのは本人と私達の様なメアリー・スーだけなんです。

 どう言う事かと言うと、私達以外の人は最初から『彼等』を『女』だったと証言しているのです。

 それは、彼等を診察した医師や看護師だけでなく、彼等の家族までもが、最初から彼等は『女』であったと言っているのです。

 例外的に私達や、他のメアリー・スーである転生者達は彼らが男であった事を憶えていますが、それ以外の人達の記憶は例外なく皆、彼らが最初から女だったと証言しているのです。


 彼らの性転換は、魔法や呪い、状態異常などの類ではなく、ミラクルポイントが世界の因果律とかそう言った物を歪めて最初から『彼等』は『女』だったと言う風に作り変えたと結果だと。

「私達でもこれを『治す』のは無理ね、いえ、既にこの世界は、この状態が正常な状態になっているのよ」

 と、この現象を調べたサアさんの言葉です。

『この世界』以外の事を記憶している私達や、改変対象そのものである元攻略対象者は記憶の改変の対象外らしいです。

 本人は自身の事を男と思っているのに周りは昔から女だったと言っている。

 何と言うたちの悪さ。


 何なんでしょうね、この捻くれた願いの叶え方。

 猿の手ですか?むしろ3回チャンスがある分、猿の手の方がましです。

 サアさん曰く、もし元に戻そうとするのなら、変えた時と同じようにミラクルポイントを使えば元に戻る可能性があると言われましたが………

 その肝心のミラクルポイントですが、もう無いです。

 流石に5人分の因果律を弄るのには大量のミラクルポイントが必要だったらしく、五人を性転換させた時点でミラクルポイントは0になっていました。


 元凶である生物にもどうにか出来ないかと聞いてみましたが。

「あー無理無理こうなったらどうにもなんないよ」

「はあ!あんた達の技術なんでしょう!?」

「そんな事言ったって僕たちだってアレの原理を全て解明出来てる訳じゃないんだ、それとも何かい?君達は原子力エネルギーの全てを解明してから活用いるとでも言うのかい?」

 などとドヤ顔で言われたので、取りあえずサアさんの糸で亀甲縛りにして退室してもらいました。

「ああ!開いちゃう開いちゃう新しい扉ひらいちゃらめ~」

 なにやら分からない事を喚いていましたが、結局どうにもならないと言う事実だけが残されただけ。


 いや、ある意味、解決したと言えるのでしょうか?

 女に成ってしまった衝撃のためか、彼等……もとい彼女達はヒロイン達に抱いていた強烈な恋心が綺麗さっぱり吹き飛んでいました。

 性転換した衝撃か、ひとしきり騒いだ後、灰の様に真っ白に燃え尽きていました。

 その後、家族からの強い要望もあった事もあり流石にこの状態では何かする事も出来ないだろうと判断し、それぞれの家へと帰す事に成りました。

「それで、かれ……彼女達はどうしていますか?」

 一応見張りとかは付けているらしいですが、その後どうなったのでしょうか?


「まあ、なんて言うか……最初に言った通り元気は元気よ、そもそも何かしようと言う気力が無いと言うか……」

「まあ、そうですよねえ……」

「ご家族の方々も心配しているけど、こればっかりはねえ」

 いくら自分は男だと主張しても、否定される環境、それも否定する人達が自身と近しい人であればあるほどダメージは大きい。

「私も学校のデータ復旧作業の時、色々調べてみたけど、過去の公的な書類から、生徒達が私的に撮った写真まで全部改竄されて驚いたわ」

「そ、そんな所にまで……」

「正直な話、私も以前の『彼等』の事を知らなかったら、分からなかったでしょうね」

 つまり、彼らが男であった事を証明するのは自身の記憶しかないという現状、もう、ここまでするのなら、本人の記憶も変えた方が幸せだったような気もしますが。

「PTSDの可能性があるからって、カウンセラーとか精神科医が山ほど押し寄せてたから、その内元気になるでしょう」

「は、はあ……」

 無駄に財力のある家庭に生まれてしまったため、静かにさせてくれないようです。


「ふー……いけませんね」

 無事な方の右手で頬をぺちぺち叩いて気を取り直します。

 優さん達からも気にし過ぎない様に言われています。

 どうしょうもない事を今更うだうだ考えても仕方がありません。

 ここはポジティブになって。

「彼等に百合属性が無かったのを良しとしましょう」

「いや、その自己完結の仕方はどうなの?」

 いいんですよ、ここで、くよくよするよりずっと良い…………………と言う事にしておきましょう。

 何より全員、物凄い美人になってましたし。

 生まれながらの女として、こちらが色々自信をなくしそうになる位、美人だった。



「はあ、まあ貴女がそう言うなら良いけど、そうだ、涼子さん」

 コホンと咳払いを一つして話題を変え。

「あー……その……最近ご両親とは?」

「そう………ですね」

 私が目覚めて以来、色んな人が見舞いに来てくれましたが両親が来る事はありませんでした。

 少し寂しさを感じていましたが、仕方ない事だと思っていたある日、恐る恐ると言った様子で両親が病室を訪ねてきました。


 こちらとしては何を話したら良いのか分からなかったのですが、何かを決心した様な表情の両親を見て私も覚悟を決めました。

 私達はポツリポツリと時間をかけて色々な事を話しました。

 私にはやらなければいけないと思っていた事があった事や、自分自身の思い込みの事。

 それゆえ二人の思いやりに気付けなかった後悔。

 父と母も私の子供らしくない行動が怖かった事。

 子供を怖いという事実を認めたく無くて私から逃げたと言う事。

 少しづつ、ゆっくりと言葉を交わして行きました。


 無論これで全ての確執が無くなったわけではありません。

 私は両親の想いを無視した事実があるし。

 両親には子供を捨てた事実があります。

 ですが、両親はそれ以後もちょくちょく見舞いに来てくれるようになりました。

 ゆっくりと時間をかけて、またお互いを見つめ合おうとしている最中です。


「本当に竜太さんにはお世話になりっぱなしです」

 私が入院した当初、両親に連絡が行かなかったわけではありません。

 妙子さんを始め家政婦さん達から連絡を受けたそうですが、再び私に拒絶される事を恐れた両親は、会いに行くことに躊躇していたそうです。

 その事を知った竜太さんは両親のもとを訪ね直談判。

 あの夜、私が語った後悔の事を話し、もう一度私と話をしてほしいと両親を説得してくれたのです。

 竜太さんの真っ直ぐな言葉に後押しされてた両親はもう一度私と会う勇気が出たと両親は彼に感謝していました。

「へえ、竜太君がねえ……流石バトル物のヒーローって所かしら、男らしくてカッコいいわね」

 竜太さんの行動に木城さんはしきりに感心してますが……

「そう…………ですよね………」

 無意識に暗い声に成ってしまう。

「うん?どうしたの?」

「いえ、大したことじゃないんですが………ただ」

「ただ?」

「竜太さんって、誰にでも優しいのかなあって………」

 原作ではバトル一色で恋愛描写なんて無かったんですよね……

 他の人にも、一生懸命な竜太さん……………良い事なんだけど、何かやだ。

「あらあら」

 その後しばらくニヤニヤ笑いの木城さんにほっぺをツンツン突っつかれ続けました。


「まあ、とにかく安心したわ、これでようやく学園名物問題児の問題が片付いたわけだもの」

 まだ私のほっぺを、ぷにぷにしながら驚きの発言。

「え、何それ初耳なんですけど!?」

 私そんな立ち位置でした?

「授業参観も運動会も、あまつさえ三者面談にも来ない親の居る家庭を心配しない教師がどこに居るのよ」

「うっ」

 確かに言われてみれば。


 私の反応にハーと木城さんは物憂げな溜息を一つ。

「まったく、小等部から今まで、どう見ても家庭に問題ありな様子なのに本人は飄々としてるから問題にしにくかったし、当時の担任は随分気を揉んだらしいわよ」

「あー……そう言えば小等部や中等部の頃、何か色々言われてたような記憶が……」

 あの頃は悪役令嬢回避に躍起になっていたせいで周りに目を向ける余裕が無かったのであまり覚えていませんが……

「ああ……もうこの子は……」

 私の様子に木城さんは頭を抱えたかと思うとガバリと顔を顔を上げると。

「あのねえ!この際だから言っちゃうけど貴女、自分が学園でどう思われているか気付いてる!?」

「へ?学園で………そう言われても、これまで目立たず生きてきましたから……」

「成績優秀、品行方正かつ家柄もよく見た目も悪くない、さらに弓道部顔負けの弓の腕前を持つ、そんな子が目立たないとでも?」

「うん?………あれ??」

 言われてみたら確かに……

「何処か浮世離れした雰囲気ながらも何があっても騒がず静かに佇む姿に憧れる生徒も多いが、取り巻きになろうとする生徒はことごとく断られ孤高を貫くその姿に、彼女が良く居る中庭の一角に生えている大樹になぞらえて『大樹の君』と密かに呼ばれる」

「え………ちょっと、誰ですかそんな『私が考えた素敵なヒロイン像』みたいな恥かしい人は?」

「おまえだあああああああ!!!」

 どこぞの怪談のオチの様にビシっと指を刺されてしまいました。

 ええええ~~…………


 あ、でも言われてみれば心当たりが確かに、一年前のオリエンテーションの班分けで優さんに話しかけた時、あれほど周囲に驚かれたのも、そう言われれば納得が……………………ん?

「あの~木城さん……ひょっとして攻略対象者達が私を目の敵にしてきたのって………」

 嫌な想像が頭をかすめる。

「今まで孤高を貫いてきた『大樹の君』が突如、自分から声をかけて友人を作った、それがことごとく自分達の想い人だったとしたら…………何かあると考えるかもね」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハッ」

 喉を渇いた笑い声が通り過ぎてゆくのを感じる。

 ………………………………もう、笑うしかない。



「もしも~し、生きてる?」

 再びツンツンと突っついて来る木城さん。

「…………うう、ほっといて下さい」

 燃え尽きました……真っ白に。

「まあ、元気出しなさいよ」

「そんな事言っても…そもそも、そこまで知ってたなら何で教えてくれなかったんですか?」

 以前から他のメアリー・スーとも交流がある木城さんなら私が転生者だと気付いても良いはずでは?

「いや、私も最初、貴女の存在を知った時、原作とあんまりにも違うから多分そうだろうなとは思ったんだけど………」

「だけど?」

「私が生徒に接触するのを、あの禿(元校長)が妨害してきてね、こっちもまだ理事長に成り立てで足場が安定して無くて苦労したわ、ようやく禿の弱みを掴んで接触出来たのが、あの校長室での一件ってわけよ」

 校長ぇ………貴様には頭頂部に一本だけ残った毛さえも禿散らかす呪いをかけてやる。


「ほらほら、そんなにしょげてないで、もう少ししたら、お見舞いの品が届く予定だから、それで元気出して」

「止めて下さいよ、物で釣られる子供じゃあるまいし」

「そんな風に、しょげてるのは子供じゃないと?」

「う~………」

 そう言う言い方はずるいです。

 そんな私の様子にクスクスと笑いながらヨシヨシと頭を撫でてくれました。


 コンコン

「ああ、来たみたいね」

 暫く撫でるに任せていると不意にノックが響き来客を知らせます。

「さっき言ってたお見舞いの品ですか?」

「そうよ、すっごく良い物だから期待してて」

 木城さんはそう言って、いそいそと入口へ向かって行き何やら来た人とゴソゴソと何かしています。

 誰が来たのでしょう?木城さんが壁になって見えません。


「はい、お待たせ!」

 暫くして、ウキウキした様子で戻ってきた木城さんの手には何故か丼が。

「何ですかこれ?」

「私のお勧めのお店から特別に出前を持ってきてもらったの、あ、主治医にはちゃんと許可は貰っているわよ」

 そう言ってカパリと丼の蓋を開けると中身は天丼でした。

「いや、許可は貰ってるって言っても、お腹を串刺しにされた人間に対して丼物はちょっと重くないですか?」

「あら?いらないの?」

「いります」

 グダグダ言っていますが、さっきから天丼から良い匂いが漂ってきて堪りません。

 目覚めてから今まで食事と言えばお粥を中心とした軽い物ばかり。

 正直堪りません。

 ここらでがっつり濃いめの味が食べたいと思っていた所です。

 静まれ私の腹の虫、串刺しにされても元気だな。


「片手じゃ食べにくいでしょう、ほら、アーン」

 木城さんがそう言って箸で口元に天丼を持ってきて、堪らず。

「アーン」

 パクッ口に含んだ途端、えも言えぬ美味が口中に広がり。

「美味しいでしょう?」

 その瞬間、木城さんは悪戯が成功した子供の様な顔をして。

「味覚王選手権優勝者特製天丼よ」


「うーーーまーーーいーーーぞーーーー!!!」



 口からビームが出ました。



天丼は基本(これが言いたかっただけ)

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