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困った事態

 どうも皆様こんにちは。

 前回、色々あって泣いたり決心したりと色々ありましたが、今現在少々困った事態になりました。

 何故かここ最近、攻略対象者たちが私に接触してくるようになりました。

 もっとも、それは好意的な物ではなく、脅迫の類の様なもので、彼らの言い分を纏めると。


 ヒロイン達が自分達に靡かない

 ↓

 自分達に惚れないなんて可笑しい

 ↓

 ヒロイン達と仲の良い奴が居る

 ↓

 コイツの仕業だ


 という超理論が展開されています。

 ようするに、私がヒロイン達と攻略対象者達の恋を妨害していると彼等は言い張っているのです。

 彼等曰く私がヒロイン達に近づかなければ自分達がヒロイン達に近づく機会が増えると思い込んでいるようで、私にヒロイン達から離れるようにと迫って来ました。

 無論そんな事、私が了承するわけがなくきっぱりと断り続けているのですが。

 今までのヒロイン達から手ひどく振られ続けて変に根性が付いてしまったせいか、彼等は諦めると言う事を知らず。

 ここ数日私は攻略対象者達に付きまとわれていると言う全く持って嬉しくない状況に陥っています。


 何なんでしょうね、ここに来ていきなりの悪役令嬢補正が出てきたのでしょうか?

 私が断り続けていると彼らの行動も過激化していきここ最近ではほぼ脅迫の様な状態になっています。

 特に、俺様生徒会長などは。

「俺が頼んでいるのだから言う事を聞くのが当然だ」

 という謎理論を前面に押し出した脅迫をしてくるので相手をするのに非常に疲れます。

 もっとも他の攻略対象者達も似たような物で、脅迫、恫喝、要請、お願い。

 言い方は違いますが皆一様に私をヒロインから引き離したいようです。

 自分勝手な理論に振り回されている彼等はどんな忠告もその耳には入らず、すでに妄執の域に達しています。


 無論、優さんを始め鈴さん由梨華さん早苗さんサアさんも私が絡まれていると見るや、すぐさま助けに入ってくれるのですが彼等もしつこく彼女達の防御の隙間を縫って来ます。

 放課後や休み時間だろうが、移動教室の途中だろうが、最悪トイレの前で出待ちされた事もありました。

 流石にその時は悲鳴を上げて、それを聞いた優さんがすぐさま駆けつけてくれましたが、下手な変質者より怖かった。

 とにかく暇さえあれば此方に自分の意見を一方的に押し付けてくる彼等の悪意に晒されて、ここ数日私の神経はガリガリと削られっぱなしです。


 また、今までヒロイン達を追っかけていた彼らが急に標的を変えた事に学園の生徒達に視線は嫌でもこっちに向かって来ます。

 生徒たちの好奇の視線が日々きつくなって行くのを感じます。

 今までなるべく目立たない様にしてきたのに………

 どうしてこうなった。


 そんなこんなで精神力が削られようともお腹はすきます。

 恒例の大樹の傍での食事会。

 もぎゅもぎゅと好物の卵焼きを頬張りながら。

「それにしても困った事になりましたねえ」

 愚痴をこぼします。


「大丈夫?涼子ちゃん」

「ごめんな、私達のせいで」

 私の言葉に皆一様にシューンとなってしまいました。

「あ、別に皆さんを責めている訳じゃあないですよ」

 そもそも変な思考に寄ってしまった攻略対象者達が悪いのですし何より。

「どうも、教員の動きが変なんですよね」

 最初に攻略対象者達から因縁を付けられた時から何度か教師に相談しているのですが、どうも効果が芳しくありません。

 ホスト系教師に由梨華さんが迫られていた時など色々と力になってくれていたはずですが最近はそちらの方もおかしいようです。

 今回の事を学年主任に相談しましたが以前と違って反応が思わしくありません。


「どう言う事なんでしょうね?」

「今頃になって原作補正が働いたとか?」

「攻略対象者達が裏から手をまわしたとか?」

「今更な気もしますが、それが一番しっくりきますね」

 やるならもっと早くやっているような気がしますが、何だかんだで彼等の家の影響力はそれくらい出来てしまいますからね。

 教員が敵に回るのは厄介ですね。

「とにかく、涼子ちゃんは一人で行動しない事!」

「う~ん、今の所それしか方法は無いみたいですね」


「登下校も当番制で常にだれかと一緒に居るように」

「教室でもなるべく私達と一緒に居ること」

「移動教室も、一人で行かない事」

「もちろんトイレも付いて行くから」

「勝手にふらふら出歩いちゃだめよ」

 私は幼児か。

 と言っても他にこれと言って代案があるわけでもなし。

 攻略対象者達が諦めるのを待つしかないのが現状です。


「あ、それとこれも持っていてよ」

 そう言って鈴さんはストラップの様なものを手渡してきました。

「これは?」

「博士に特別に作らせた高性能防犯ブザーだよ」

「防犯ブザーですか、これが?」

 ますます子供扱いな気がしますが、これは見た目にはただのストラップにしか見えません。

 特徴があるとすれば飾りに部分が例の生物を模った作りになっている事だろうか。

 どうにも防犯ブザーには見えないですね。

 そもそも、ブザーを鳴らすためのスイッチが見つからないです。


「これ、どうやって使うんですか?」

「使い方は簡単、飾りの生物の首を引き千切ると発動する仕組みになってるの。」

「相変わらず生物に対するヘイトが高いですね」

 無理もない事ですが。

「これは凄いよ!下島博士も久しぶりに満足のいく物が出来たって喜んでたもん」

 脳裏に下島博士が嬉しそうにサムズアップしている姿が浮かぶ。

 何故か凄まじく不安な気持ちになるんですが?

 爆発とかしませんよね?

 以前庭をスイカの海に帰られた思い出が……

 ですが背に腹は代えられません、取りあえず学生鞄に付けておく事にしましょう。


 そんな会話をしたのが数日前。

 そして現在、私は。


「おい、聞いてるのか!」

 聞いてません。

「ふ、俺を無視するとは覚悟はできれるんだろうな」

 ねえよ、そんなもの。

「困った子だね、少し僕たちのお願いを聞いてくれるだけで良いんだ」

 大人の男の猫撫で声って気持ち悪い。

「てめえ、ふざけてんじゃねえぞ」

 貴方のおつむほど、ふざけてはいませんよ。

「ねえ、僕のお願い聞いてくれないの?」

 聞きたくもねえ。


 攻略対象者達に掴まってしまいました。

 ちなみに先ほどのセリフは上から順に俺様生徒会長、眼鏡風紀委員長、ホスト系教師、一匹狼系不良、後輩美少年となっています。


 いやね、最初は良かったんですよ。

 四六時中彼女達と共に行動を共にしていたら彼等も寄ってこなかったし。

 ここ数日は平和でした。

 でも今日、登校する段階になって当番のはずの優さんが寝坊したと言うメールが来まして。

 この段階で他の人に連絡を取れば良かったのですが。

 朝からみんなに迷惑をかけるのも悪いな、とか、早めに登校して人目のある教室でじっとしていたら大丈夫だという考えが頭をよぎってしまい。

 ええ、油断していました、その事に関しては言い訳できません。

 まさか校門で彼等、五人と同時に鉢合わせするとは思いもよりませんでした。


 そもそもこんな人通りの多い場所で大の男五人で女の子一人を取り囲んで脅すなんて真似良く出来ますね。

 もっとも他の生徒たちも関わりたくないのか見ない振りをしていますが。

 そりゃそうですよね、私だってこんな連中とはお近づきになんか成りたくありません。

 寧ろ通行の邪魔をしてごめんなさい、という気持ちでいっぱいです。


「おい、聞いてるのか!!」

 だから聞いてませんって。

「こっちが下手に出てりゃあ良い気に成りやがって!!」

 俺様生徒会長が私の胸倉を掴みます。

 何時、何処で、誰が下手に出たって言うんですか。

 あ~あ、いい加減にしてくれませんかね。

 めんどくさいな~魔法少女に成って全員ぶちのめしちゃダメかな~

 駄目だろうな~目撃者いっぱい居るし、他に方法ないかな~

 と彼等の合法的な排除方法を14通りほど考えた所で。

 ふと鞄にぶら下がっている例のストラップに目が止まり……


 学園へ続く通学路にて。

「あれ、優じゃない、どうしたんだ、こんな遅く、今日は優が当番のはずでしょう?」

「あ、鈴ちゃん、実は寝坊しちゃって」

「え、それじゃあ涼子は?」

「他の子に代わってもらうように頼んだけど、鈴ちゃんじゃ、なかったんだ」

「うん、アタシも今来たとこだし」

「じゃあ、誰だろ?」

 二人が首を傾げた所に。

「あ、優ちゃん鈴ちゃん、おはよう」

「お二人とも、おはようございます」

「おはよう、二人とも、あら?涼子ちゃんはどうしたの?」

「え?誰か一緒じゃ無かったの?」

 他の三人も合流してきたが、そこには彼女の姿は無かった。

「ねえ、優これって……」

「うん、不味いかも」

 不吉な予感を感じ取った瞬間。


 ビビビビビビビビビビビビビビビビ!!!


「「「「「!!!!」」」」」

 遠くからけたたましいブザー音が聞こえた瞬間、五人は一斉に走り出した。




「君達は何をやったのか理解しているのかね!!」

 普段からタコみたいだと思っている頭から更に湯気を沸き立たせながら校長が怒鳴っています。

 あの時、思わず防犯ブザーを作動させてしまった私。

 下島博士特性防犯ブザー。

 その特性は、大音量のブザー音と共に半径10m以内に居る所持者に対し敵意を持っている生命体に対し激しい腹痛を起こさせると言う物。

 効果は抜群でした。

 ブザーを作動させるとともに腹を押さえて動けなくなる攻略対象者達。

 その直後、現場に駆けこんできた優さんによって、吹き飛ばされました。

 ええ、文字通り『飛び』ました。

 一昔前のカトゥーンのような見事な吹き飛びでした。

 その後、騒ぎを聞き付けた教師たちによって私達は校長室に連行され、こうして説教を受けている訳です。


「そもそも、校門の真ん中で防犯ブザーを鳴らすなど何を考えているのだね!」

「お言葉ですが校長先生、私は彼等によって不当に拘束を受けていました」

「だまれ!誰が勝手に喋って良と言った!!あまつさえ動けない五人に暴行を加えるとは!!」

 その認識は間違ってはいませんが正解でも無いです。

 どうも校長はこちらの話を聞く気が無い様子、はなっから此方を悪役にする気のようです

 不味いですね、悪役補正がこんな所で作用し始めたのでしょうか?

 これは私の油断が招いた事、何とか他の五人に類が及ばない様に出来ないでしょうか。

 色々考えを巡らせている内にも校長の話はどんどんヒートアップしていき。


「君達には即刻厳しい処分を「その必要はないわ」

 突如現れた第三者によって遮られました。

 扉の方から三十代前半くらいでレディスーツをピシリと着こなしている美人さんが現れました。

 キリリとした表情からは、やり手のキャリアウーマンのオーラが溢れています。

 えっと、助けに入ってくれて何ですが、誰ですか?


「り、理事長!?な、何故ここに!?」

「あら、私がここに居ては何か問題が?」

「い、いえ、そんな事は……」

 なんと!理事長でしたか。

 ゲームでは、理事長など出てこなかったし、式典などの挨拶も代理の人が理事長からの手紙を読み上げるだけだったので今まで女性だと言う事すら知りませんでした。


「それより、何故彼女達が一方的に責められてるの?」

「そ、それは彼女たちが暴力事件を起こしまして……」

「へえ、暴力事件?」

 理事長の眉がキリキリと吊りあがって行きます。

「そ、そうです!事もあろうに校門の真ん中で防犯ブザーを鳴らし、驚いて身動きの取れない生徒四人と教師一人に暴力を振るい」

 あ、そんな筋書きになっていたのですか。

 校長は気付いているのか居ないのか、理事長の視線がどんどん冷たくなっています。

「ふうん、それは誰の証言かしら?」

「そ、それは、もちろん被害者の」

「へえ、つまり貴方は自称被害者の一方的な話を鵜呑みにして彼女達には弁解の余地も与えなかったと?」

「い、いえ、別にそんなつもりは、ただ被害者は信用のおける人物であり……」

「他の目撃者によれば、登校してきた日比野さんを自称被害者たちが取り囲み大声で脅していたと言った証言もありますが?」

「そ、それは……」

 真っ赤だったタコ頭が青くなっていきます。


「数日前に日比野さんが特定の生徒と教師から脅迫を受けていると言う相談があったそうだけど?」

「そ、そんな話し知りませんなあ……」

「ええ、そうね、何故か相談を受けた学年主任に退職をチラつかせて上に報告しない様に圧力をかけた人が居るらしいわね」

「べ、別に私はそんなつもりで言ったわけでは!!」

「あら、いつ私があなたの事だと言ったかしら?」

 タコ頭が更に青くなっていきます。


「恋愛も青春の一ページなら大いに結構、だけど節度は守るべきだと思わない?」

「は、はい……誠にごもっともで」

「ウチの生徒にストーカー紛いの好意を寄せている教師が居るらしいわね」

「そ、それは……」

「随分前から相談を受けているみたいだけど、件の教師に何の処罰が無いのはどうしてかしら?」

「い、いえ別にそれほど重要視する事ではないと判断しまして……」

「へえ、それは件の教師が貴方と親戚関係にあるのと何か関係あるのかしら?」

 既にタコ頭は真っ白になっています。


「それから、ほら」

 バサッ

 机の上に数枚の写真がばら撒かれます。

 それは………………ええっと、詳しく描写するならイヤ~ンなお店で鼻の下を伸ばしまくっている校長の写真です。

「これに写っているのは誰かしら?」

「そそそそそれは!!」

「あと、こっちの写真に写っているのは自称被害者の一人の家の関係者よね」

 別の写真には何やら分厚い紙袋を受け取っている校長の姿が映されています。

「ちちちち違うのですすすすす、こここここここれは何かの間違いでででででで」

 見苦しい言い訳に、呆れたように溜息を一つ吐くと。


「今日限り貴方はクビです、私的な賄賂を受け取り学園の秩序を乱したとして準備が出来次第、告訴させていただきます!」

「な、なあああああ!!ま、待って下さい!!」

「連れていけ!!」

 理事長の号令と共に黒服の男たちが部屋にドヤドヤと流れ込んできて校長、いえ元校長を羽交い絞めにして引きずって行きます。

「は、放せ貴様等!私にこんな事をしてただで済むと思っているのか!!」

 元校長はそのまま部屋の外へと連れ出されて行きました。

 後には急展開に付いていけない私達と理事長が取り残されました。


 その後。

「こんな場所じゃあ何だから」

 と言う理事長の言葉と共に私達は理事長室へと場所を移しました。

 理事長室は先ほどの校長室と違いゴテゴテした飾りを排した機能的な内装になっていますが、全体の色彩が淡い暖色系で統一されており、居心地の良い空間になっています。

 進められて座ったソファもふかふかで、校長室では立ちっぱなしだったので助かりました。

「口に合うと良いのだけど」

 そう言って出されたお茶からは良い香りが漂ってきて、先ほどの疲労が取れて行きます。


「改めて自己紹介させて貰うわね、私は『木城 貴音(きじょう たかね)』この学園の理事長よ」

 そう言ってニッコリ笑いかけてくる木城さんは先ほどの先ほどまでの厳しい表情とは打って変わって穏やかで上品な印象を受けます。

 その後、今回の事態の真相の説明を受けました。

 と言っても目新しい情報も無く、先ほどの会話で全て説明されていたように、攻略対象達に懐柔された校長が裏で色々手を回していた事。

 そのせいで他の教員達の行動が制限されていた事、成功の暁には理事長の座を約束されていたとか。

「貴方達には此方の不手際で非常に不愉快な思いをさせてしまって、ごめんなさい、騒ぎを起こした五人と関係者には厳しい処罰を下す事を約束します」

 なお、脅されていただけの教員の方は軽い罰だけで済むそうで一安心です。


 そうして、一通りの話が終わった後。

「それで、ここからが本題なんだけど」

 コホンと咳払いを一つして、木城さんは私達を見回すと。

「あなた達、転生とか聞いたことある?」

「「「「「「あ、やっぱりそうだったんだ」」」」」

 一同の心と声が重なった瞬間でした。


 こうして新たな転生者、いえメアリー・スーである木城さん、彼女を通して、もう一つ新たな出会いがある事を。

 その出会いが大きな意味を持つ事になる事を。

 私達が知るのはもう少し先の事。



補足として

涼子は魔法少女のメアリー・スーで乙女ゲームのメアリー・スーではありません。

乙女ゲームの方のメアリー・スーは理事長です。

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