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12/25

眠れない夜

ギリギリ一月中に更新できました。

 コチコチと単調な時計の音だけが響く深夜、私は。

「眠れない……」

 昼間変な時間に昼寝したせいで一向に睡魔がやって来ません。

「眠れないよう~」

 一旦眠れないと思ったら後は泥沼。

 ベットの上で無意味に寝返りを打つだけの何とも言えない時間をただすごしています。


「仕方ない、あれをやるか」

 こんな時、難しい数学書や哲学書を開けばあら不思議。

 あっという間に睡魔に誘われ眠りに落ちて行きます。

 この家の書庫には結構な数の蔵書があり、寝付けない日などに重宝しています。


 今日も以前と同じように適当に本を見繕っていましたが、ふと、とある本棚の一角に目が止まりました。

 歴史書。

 その本棚には多数の歴史書が並んでいました。

 普段なら、見向きもしなかったその一角に今は目が離せなくなっています。

 まさかそんな事は、と思いますが昼間見たテレビの光景がフラッシュバックしてきます。

「……………………………」


 嫌な予感しかしませんが、このままだと眠れそうにありません、女は度胸、思い切って見てみましょう。

 意を決して一冊の本を手に取り広げます。

 誰かが生きた証を綴った文字たちの羅列。

 それらをゆっくりと追って行きましょう。

 夜はまだ長いのですから。



『ロミオとジュリエット』

 世界中の人々に知られる二人の愛と悲恋の物語………のはずですが。

 物語は前半まで変わりなく二人が恋と二つの家の確執が描かれています。

 ですが物語の後半、二人が些細な行き違いにより互いが死んだと思い死を選ぼうとした時、それは訪れます。

 ジュリエットが死んだと思い毒を飲もうとするロミオの前に突如、彼の妹が現れロミオを止めます。

 やがて仮死の薬から目覚めたジュリエット、再会を喜び合う二人に妹は語りかけます

 このまま両家が争い続けていたなら疲弊した都市はヴェネチアの支配下に成ってしまうと言う事。

 妹は両家の争いを収める事が出来るのは二人にしか出来ないと二人に説きます。

 説得に奮起したロミオは、様々な人々の手を借り少しづつ両家のわだかまりを解いていきやがて正式にジュリエットと結婚します。

 そして、教会と神聖ローマ皇帝の影響力を排しヴェローナ公国として独立、初代国王として王位につきました。

 めでたし、めでたし。


 以上がこの世界の『ロミオとジュリエット』の大まかな内容です。

 この世界では本当に起こった出来事で、このお話を知ったシェイクスピアが戯曲化し現在でも続く名作として後世まで語り継がれる事に成りました。

 現在でもこのヴェローナ公国はイタリアの中にありながらも独立を保っており、ロミオとジュリエットの子孫が王家として、そして妹の家系は宰相として国を支えているそうです。

 また、この時代猛威をふるったペストの死亡者数がこの都市だけ異様に低いのが目にとまります。

 どうやら国主体でトイレやお風呂そしてネズミ退治といった衛生関係の事業に積極的に貢献したようで、当時としては考えられないほど清潔な都市だったと歴史書にも描かれています。



『ジャンヌダルク』

 フランス救国の英雄にして悲劇のヒロイン。

 彼女も私の知っている歴史と同じように軍を率いて戦います。

 ただ違うのは、本来なら女一人で戦っていたはずのジャンヌですが、この世界では彼女の幼馴染の少女と共に戦場に立っていたと記されています。

 幼馴染と共に戦場に立ったジャンヌは史実通り目覚ましい戦果を上げフランスを勝利に導きます。

 その幼馴染も幾つかの作戦を立案して勝利に貢献したと伝えられています。

 そんな活躍があっても、やがてジャンヌはイギリスに囚われる事になってしまいます。

 ここで不意に幼馴染に関する記述が一切なくなります。

 裁判によりジャンヌは死刑を宣告され火刑に処せられます。

 ジャンヌが火刑に処せられる様はまるで『人形を焼くかのように静かだった』と伝えられています。

 ジャンヌの死後、彼女の熱心な信奉者だったジル・ド・レ男爵は領地に戻り一人の女性を妻とします。

 彼は妻を愛するあまり、妻の姿を自分以外の誰かに見せる事はけしてなかったと伝えられています。

 唯一の例外として、一人の侍女だけは常に奥方の傍に居る事を許したそうです。

 その後、子宝にも恵まれた男爵家は穏和な治世と画期的な農業技術によって発展してゆき、その様は『聖女の奇跡』と讃えられています。


 なお、ちょっとした小話として。

 子宝に恵まれた男爵家ですが、その末の娘は母親に似てとても美しかったそうです。

 彼女がとある舞踏会に出席した時、彼女の姿を見たとある老軍人が彼女の姿に驚き深く頭を垂れたと伝えられています。

 また、当時としては画期的な農業技術は奥方の侍女が授けたと言われており、近年の研究で、男爵領で僅かですが水田で米を作っていた形跡が見つかり学会の議論を呼んでいるそうです。

 ………うん、わかりますよ、お米食べたいですよね。



 また、こうして歴史書に乗らなくても、その子孫がやらかしちゃう事もある様です。

 日本の歴史では本能寺の変も幕末の動乱も起こっています。

 その後訪れる、世界大戦での日本の敗戦GHQによる統治など変わっていません。

 ただ、そこに日本の統治に対する顧問を務めた二人の女性の名前がありました。

 彼女達は比較的、日本に好意的な統治の仕方を提案。

 幾つかの財閥などが解体を免れています。

 彼女達は、それぞれ時期は違いますが祖先が日本からの移民だったらしく、それゆえ日本に対し好意的だったと言われています。

 二人の名前は。

『坂本 龍魅』

『織田 信子』

 何でも祖先の名前の一文字を貰ったそうで。

 …………織田信長と坂本竜馬ですよね?

 生きていたんですね、サイン下さい。


 まあ、そんなこんなで、ちょっと調べてみたら出てくるわ出てくるわ、ツッコミが追い付きません。

 あと、何気にこの世界では切り裂きジャックの事件は解決してたりします。

 なんでも犯罪者と共に滝壺に落ちそうになった所を、とある女性に助けられた名探偵が推理して解決したそうです。

 なお、その後彼はフランスで有名な怪盗と何度も知恵比べをしたとかしないとか。



 空に満天のお星様。

 何となく昼間の様にこの棚の歴史書全部、バサーって感じで庭に投げ出したらさぞスッキリするような気がしますが、昼間の奇行のせいで妙子さんを始め他の家政婦さんや庭師さん達に色々心配をかけてしまったので、ここは自重しましょう。

 まあ、何と言いますか、前回から言える事ですが。

 今の気持ちを一言で表すのなら。

「何で今まで気付かなかったんだろ」

 の一言に尽きます。


 言い訳をさせてもらえるならば、今まで歴史の勉強と言えば、基本的に年表の暗記が主でした。

 彼女たちの行動のせいで色々と変わった部分はありますが、そのいずれも、年表を変えるような事態にはなっていません。

 イタリアではヴェローナ以外の地域ではヴェネチアが権勢を誇り。

 フランスではブルボン朝が王位に付きやがてフランス革命へと続いて行きます。

 テスト用に私が暗記している年表には何の変化もありませんでした。



「はあ……」

 溜息をついた途端、喉の渇きを自覚します。

 頭を冷やす意味も兼ねて何か冷たいものでも飲みましょうか。


 冷蔵庫の中にはジュースとミネラルウォーターがありました。

「う~ん」

 ミネラルウォーターという気分でも無く、ジュースを手に取ってみましたが、何となく違う気がします。

 こう喉の奥にガツンと来るような強烈な炭酸系が飲みたい気分です。

 冷蔵庫の中にある果汁100%ジュースでは満足できそうにありません。

 時計を見ると既に今日が昨日に変わってから随分時間がたっています。

「…………………………………………………」



 てろてろてろ~ん

「らっしゃいませー」

 気の抜けた店員の声に迎えられ、深夜のコンビニに足を踏み入れました。

 やってしまいました。

 気が付けば小銭を掴んで家を飛び出していました。

 まったく、らしくありません。

 こんな時間に出歩くなんて今までありませんでした。

 陳列された飲み物を幾つか掴みさっさと会計を済ませます。


「ありがとざーしたー」

 気の抜けた声を背に早足でコンビニから立ち去ります。

「はあ……」

 無意識に溜息が出ていました。

 こんな時間に出歩く事に何か緊張でもしていたのでしょうか?

 溜息とともに吐き出した息も蒸し暑い濁った夜の空気に溶け込み、もやもやとした感触は未だ肺の中に居座りどんどん重くなっていくような気分がします。

「あああ!もう!!」

 プシュッ

 いらだち紛れに力任せに缶ジュースを開ける。

 炭酸系のそれは開けた衝撃で中身が少量飛び出したが気にせず一気に喉に流し込む。

 ゴッゴッゴッゴ……

「ぐッごほごほッ!!」

 炭酸が喉を焼く感触に激しく咽ってしまいます。

「はあ………」

 一連の意味のない行動に虚しさだけが募ります。


「何してんだろ私……」

 応える者のいない問いをポツリと呟いた……つもりが。

「何がだ?」

 振り返れば何故か優さんのお兄さん、竜太さんの姿が。

 そして私は。

「へう?!」

 思いもかけず返答が返ってきた弾みで、炭酸の影響か変な声が出てきてしまいました。

 …………本当に締まりませんね私って。



「落ち着いたか?」

「もともと、慌ててなんていませんよ」

 何故かこちらの顔色を窺うような竜太さんの仕草に苦笑で返しながら、こっそり心の中で本日何度目かに成る溜息を付きました。

 あの後、竜太さんは何故か。

「ちょっと乗って行かねえ?」

 と、近くの公園のブランコに誘い、私達はブランコに隣り合って座っています。

 何だこの状況。


 どうしてこうなった、そもそも。

「竜太さんこんな時間に何してたんですか?」

「う~ん……なんつーか、柄でもない勉強なんてしてたせいか、寝付けなくってな、ちょっと軽く運動でもしようと思って家から走ってきたんだ」

「走ってきたんですか……」

 ここから優さんの家まで結構な距離があったはずですが……

「でもやっぱ平地は駄目だな、全然疲れねえ、やっぱ修行は山だな山」

 本当に何時間走り続けているんですか、そもそも。

「そんな事して翌日眠くなりませんか?」

「大丈夫だ!授業中寝てるからな!」

「おい」

 それで良いのか受験生。

 なにより。


「そんな事して、また陸兎さんに迷惑かけたって優さんが怒りますよ」

「いいんだよ、アイツ等ほっとくと延々目の前で惚気るからな、たく見せつけられるこっちの身にもなれってんだ」

「まあ、ちょっと眼のやり場に困る時はありますね」

「だろう?まったくアイツ等傍に人がいろうとお構いなしにイチャイチャと……」

「あはは、やっぱり家でもそんな感じなんですね、学校でも大体話す事と言ったら陸兎さんの事で……」

「学校でも惚気てんのかよアイツ」

「ええ、例えばですね……」

「あっはっはっは、アイツ本当に馬鹿だなあ、そう言えば家でも……」

「ええ!優さんがそんな事を!!」

 気が付けば竜太さんと長い間話しこんでいました。

 話しと言っても私たちに共通する内容と言えば優さんの事を中心に学校のちょっとした事とか家での出来事とかが主でしたが、何時もは友人たちが恋人の愚痴や家の事を話すのを主に聞き手に回っていたのでこうして自分から色々話すのは何だか新鮮な気分です。


「それで優が言っちまったんだ「お父さんの笑顔が怖いって」あの時の親父の顔と言ったら!!」

「ぷっあはははは、竜鉄さんも気の毒な……」

「…………………………………」

「どうしました?」

「いや、ようやく笑ったと思ってな」

「あ……」

「何かこの前合った時と違って元気がないみたいだったからさ」

「それは………………」

「わりいな、俺は妹みたいに頭が良いわけでもないし、気が効くような性格でもねえからさ」

「いえ、そんな……私の方こそ気を使わせてしまって……」

 そんなに分かりやすく落ち込んでいただろうか?


「まあ、なんつうか月並みな話だけどよ、人に話してすっきりする事もあるぜ?」

「…………………話す」

 それは今まで考えてもみなかった事でした。

 私と同じ五人以外の誰かに話をするなんて。

「あ、別に言いたくなきゃ無理に話す事はねよ、第一俺は人の相談に乗れるほど頭が良いわけでもねえしな、それこそ、そう言うのは優の奴の方が向いてるしさ、アイツに言いにくいんだったら他にも羊司とか蛇太郎みたいな頭の良いヤツ紹介するし」


 提案されたのは作品の中でも頭脳派の人達の名前、でも私は。

「竜太さん………聞いてもらえますか?」

「……………俺で良いのか?」

「はい、竜太さんに聞いてもらいたのです」

 それは、この真っ直ぐな人に今胸の中にある私にも分からないイライラをぶつけたいと言う子供っぽい発想かもしれない。

 それでも今私はこの人に話したいと思った。


「わかった、俺でよければ」

「そうですね………うまく言葉に出来るか分かりませんが聞いて下さい」

「いいさ、自分の言いやすいように話してくれ聞き役になったからには力の限り聞き役になろう!!」

「どういう力の使い方ですか……」

 ですが、おかげで何となく力が抜けて上手く話せそうな気がします。

 だから聞いて下さい、私の物語を。



 今から十数年前の事です、日本のごく普通……と言うには少々裕福な家庭に女の子が生まれました。

 両親のいっぱいの愛情と共に育てられた女の子は、すくすくと成長していきました。

 やがてある程度、大きくなると女の子は自主的に様々な事を学び始めました、そんな女の子を見って両親は天才だと喜びました、でも彼等は気が付きませんでした、女の子は自分が破滅の運命にあるという強迫観念の様な物に突き動かされているだけだと言う事に。

 まるで生き急ぐかのような鍛錬と勉学に流石の両親も心配し休むよう促しましたが女の子は聞き入れませんでした。

 ひたすら自身を研鑽する娘の姿に両親もおかしいと思い始めたのでしょう、彼らなりに女の子を案じました。

 子供が喜ぶような菓子やドレス、パーティー、玩具やゲーム、テレビなど進めましたが女の子は見向きもしません。

 両親はだんだんと女の子の事が分からなくなってきました。

 次第に娘に話しかける回数が減って行きましたが女の子は気にしません。

 だって邪魔されずに勉強が出来るから。

 やがて決定的な出来事が起きました。

 良かれと思って進めていた女の子の縁談を女の子が勝手に破談にしてしまったのです。

 両親に縁談で起きるメリットとデメリットを子供とは思えないほど理論的に話す女の子の姿を両親は異常な物を見るような目で見ていました。

 やがて両親は家に帰ってくる事自体少なくなってきました、いえ、帰る場所を別にしたのです。

 別の場所に家を作りそこに移って行きました、女の子を一人家に残して。

 取り残された女の子、でも女の子は何も思いませんでした。

 身の回りの事は家政婦さん達がやってくれるので何の問題も無く過ごせましたし、むしろ煩く無くなって良かったとさえ思っていました。

 女の子はそのまま、その家で歳を重ね、自身を鍛え続けました、何時か来る破滅の未来から逃れるために。

 やがて女の子は自分と同じ境遇の子達と出会い、そして知ります。


 世界は彼女が思っているよりもずっと優しいものだと言う事に。


 気付くのは簡単な事でした。

 それまで彼女が遠ざけていたテレビのスイッチを入れるだけで彼女には気付く事が出来たのです。

 ただ、がむしゃらに己を鍛える事しか選択しなかった女の子はたったそれだけの事に気が付けませんでした。

 そして今日も女の子は両親が捨てた家に住み続けています。

 おしまい。



「以上が私のお話です」

 一気に話したせいで随分と喉が乾いてしまいました。

 既に炭酸の抜け切ったジュースを飲み干します、うん、普通にまずい。

 チラリと竜太さんの方を窺えば何やら思案顔で考え込んでいます。

「う~ん、なあ涼子、ちょっと聞きたいんだけどよ」

「はい、何でしょう」

 転生の事とか突っ込んで聞かれたら、どうしましょう?

 そう言うのは優さんに相談してから話した方が、などと言ったこと考えていた私にとって。

「その女の子は『後悔』してるのか?」

「え?」

 竜太さんの問いは完全に意表を突かれた物でした。


「後悔………ですか?」

「ああ、その女の子は今まで努力してきた事を後悔してるのか?」

 後悔………

 後悔してるのでしょうか私は?

 この世界に生まれた事に?

 十数年間を無駄にした事に?


「それは………違うと思います」

 うん、それは違う。

 生まれた事に後悔は無い。

 悪役を回避しようとしてきた事も無駄じゃない。

 今の力があるから何とか皆の力になれているのだから。

 でもそれじゃあ……


「じゃあ何で女の子は、辛そうなんだ?」

 竜太さんの言葉が頭の中で反響する。

「辛い……」

 私は………何が辛いのでしょう?。

 後悔は無い。

 それでも胸の奥にある、この辛さの源は。

「お父さん、お母さん…………」

 ああ……そうか………

 ポロリと零れた言葉と共に理解します。


「ごめんなさい………」

 言葉と共にポタリ、ポタリと涙が零れて行きます。

「ごめんなさい……」

 せっかく、この世界に生んでくれたのに。

「ごめんなさい」

 私を愛してくれたのに。

「ごめんなさい」

 私を心配してくれたのに。

「ごめんなさい」

 二人の想いに気が付けなくて。

「ごめんなさい」

 両親に私を捨てさせてしまった事。

 それが私の『後悔』。



 それから暫く後。

「すみません、タオル汚してしまって」

 竜太さんが貸してくれたタオルは涙と鼻水でぐしゅぐしゅになってしまいました。

 思いっきり泣いたおかげでしょうか、胸の中にあったモヤモヤも無くなっています。

「いや、元々トレーニング用のタオルだから気にすんな、それより汗臭く無かったか?」

「あ、はい、それは大丈夫です、タオル洗って返しますね」

「え、いいよ、そんな気を使う事無いって」

「そんな訳にはいきませんよ、それに家事は優さんがしているでしょう?優さんに迷惑をかけるわけにはいきませんよ」

 そう茶化して言えば竜太さんも反論できません。

「あー……そんじゃあ頼むわ」

「はい、任されました」

 そうニッコリ笑えば、何故かプイとそっぽを向かれてしまいました。

 ううむ?どうしたんでしょう。

 そう言えば泣いている時も手を上げ下げしたりと挙動がおかしかったですが?

 まあ、いきなり目の前で女の子に泣かれたら驚きもしますよね。


「なあ……その……さ、涼子はこれからどうすんだ?」

「両親には何時かちゃんと話し合いたいと思います」

 むしの良い話かもしれませんが、しっかり二人に謝りたい。

 今更家族に戻れるなんて思っていませんが、それでも二人と話したい。

 そのためにも魔法少女関係をさっさと何とかしないといけません。


「ふあぁ……」

 色々すっきりしたら急に眠気が…

「おいおい大丈夫かよ」

「ええ、急に睡魔がきたみたいです、そろそろ帰らないと」

「馬鹿、一人で帰せるわけないだろ、送ってくよ」

「すみません」

 ここは好意に甘えるとしましょう。

 うう、目がしょぼしょぼしてきた。



「送っていただいて、ありがとうございます」

「別に良いって、それにしても優から聞いたけど、すげえ家だな」

 家まで送っていただいた後、私の家を見た竜太さんが呆れたように呟きます。

「ええ………そうですね、私一人にはちょっと大きすぎる家です」

 妙子さんや庭師さんが綺麗にしてくれても、この家で眠るのは私一人だけ。

 今更ながらに自身の歪さを突きつけられたような気がします。


「…………なあ、家に来るか?」

「え?!」

 突然の竜太さんの提案にビックリしてると。

「あ、いや、別に変な意味じゃねえぞ!家は道場で部屋はいっぱい余ってるし、それに優だって喜ぶしさ!!」

 何故かあわあわと慌てた様子の竜太さん、彼の申し出は凄く嬉しいです。

 優さんや竜太さん竜鉄さんと共に住む日常はきっと楽しいものでしょう。

 ですが、たとえ両親が私を押しこめるための檻として残した物だとしても、妙子さんや、庭師さん達はこの家を私の住みやすいよう心を砕いてくれた家です。

 何だかんだで愛着だってあります。

「だから、もう少しこの家で頑張ってみようと思います」

「……そっか、それなら良いんだ、でも無理はするなよ」

「はい、その時は竜太さんの家にお世話になりますね」

「お、おう……」


 さて、こうして何時までも家の前で話しこむわけにはいきません。

「それじゃあ、竜太さん今晩は色々相談に乗っていただいて、ありがとうございます」

「別に良いさ、また何かあった時には遠慮せず言えよ」

「はい、必ず」

「じゃあな、おやすみ」

「おやすみなさい竜太さん」

 見送る竜太さんの背中は夜の闇の中にあっという間に消えて行きました。


「さて、さっさと寝ますか」

 魔法少女関係を何とかする。

 そのためには今は確りと睡眠をとって、英気を養わなくてはいけません。

 こうして私の妙に長い夜は終わりました。




 ですが、この時、私は知りませんでした。

 私も竜太さんさえも知覚出来ないほど遥か遠くから私を監視する『目』が存在している事を。

「これが最後の一人、日比野涼子だ」

「ふん、随分と弱いな、今殺すか?」

「いや、今はまだ不味い、彼女に何かあれば他の五人に気取られる」

「左様、事を起こすには戦力が全てそろった時に」

「かの魔獣の力と我らの力を持って」

「「「「「奴らに真の絶望を」」」」」

 憎悪に塗れた五対の瞳が私を見ている事に気付く事はありませんでした。



今回は難産でした。

書いては消し書いては消しの連続で書きたい事があるのに上手く表現できない状態でした。

話は変わりますが今さらですが今年の初夢の話題ですが。

コ〇ンと金〇一が居るペンションに泊ってしまい

((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

している所にル〇ンがとっつぁんにに追われて機動隊と共に突撃してきた。

といった内容でした。

……今年の運勢どうなるんでしょう?



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