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猫の王子様  作者: 嶋次郎
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猫の何のパーティー?

これから始まるパーティー。どうやらフェミニアは何かを後悔するつもりらしいがいったい何を話すのか。

「またせたな」


フェミニアの部屋を出てから数十分。

どうやら彼女が着替えを終えて部屋から出てきたようだ。


真っ白なドレスに身を包み、首からネックレスをさげ、指にはダイヤの指輪をしている。

髪型もさっきまでと違い、きれいに纏め上げ、とても清楚な印象を受けることができた。


「……きれいだ……」


本当に自然に、流れるように口から言葉がこぼれた。彼女は俺に微笑みかける。その笑顔はまぶしくて、とても優しくなでるような笑顔だった。


「そうか?よくお世辞で言われるのだがな」


「そんなことないよ!本当にきれいだ」


「そ、そうか?あ、ありがとう」


俺の必死な言葉に少し驚いたようだった。

実際彼女は自分がどんな姿をしているのかあまり気にしていないのだろう。

おそらくお世辞で『きれい』なんて言葉を人間に使うことなどほとんどないだろう。

彼女にその言葉を言った人たちは本心からいったのだと俺は確信する。


「では行こうか。そろそろ貴族や他の国の王などが待ちくたびれていることだろう」


これから行うパーティーには他国の王様がくるのか。

フェミニアと一緒にいる以上、彼女の立場もあるので失礼のないようにしなければならない。


「では新次様、お嬢様。これよりパーティー会場へとご案内いたします」


「よろしくお願いします」


歩き出したメイド長のリアスさんに俺とフェミニアはついていく。


「新次」


「なに?」


フェミニアが俺の耳元で小さく耳打ちしてきた。


「なぜリアスにそんなあらたまった言葉を使うのだ?ミルフィには普通に話していたではないか」


「だってミルフィとはきっと年下か同い年くらいでしょ?リアスさんはたぶん年上だし、見た目は若く見えるけど本当は結構いってそうだしね……。それに……」


「それに?」


「いや、なんでもないよ」


とても、俺の姉貴に似ているからとは言えない。

姉貴もこんな風に言葉にとげがあるというか、話す声にとげあるような気がして苦手だった。

しかも地獄耳ということで、俺が拓海に姉貴の昔の話をするとすぐに飛んできたときもあった。

それ以来この(たぐい)の人は苦手なのだ。


「そういえばパーティーで俺は何かすることがあるの?挨拶とかスピーチみたいなのは苦手なんだけど……」


「大丈夫だ。私と一緒に壇上に上がることにはなるだろうが、私の後に一言くらいの挨拶を頼むことになるな」


「そう?まあいいけど」


どうやら集まった人たちの前には出て行かなければならないようだ。

一言の挨拶といってもさほど何かいうべきではないだろう。

とりあえず、自分の名前と集まってくれている人たちへのお礼の言葉くらいで良いだろう。


「到着いたしました」


考え事をしていたら会場についてしまったようだ。

俺はネクタイのずれや、髪の毛などをチェックし、一度深呼吸をした。


俺のほうをチラッと見てきたリアスさんに対し一回うなずく。


彼女は合図を見て扉を開けた。


飛び込んできたのは拍手喝采の嵐だった。


「ようこそいらっしゃいました新次殿」


「フェミニア王女、お久しゅうございます」


周りからの言葉が熱烈に飛び込んでくる。

中には若い男女の猫人、太った裕福そうな猫人、もう定年を過ぎたようなよぼよぼの猫人もいた。


次に飛び込んできたのが多くの料理の数々だった。

人間界では見たことのないような料理が並べられていた。


「新次、これから皆の挨拶を聞くために一番奥の席に行く。私についてきてくれ」


「う、うん……」


周りの雰囲気に圧倒され少し気が小さくなっているようだった。

この場には世界を渡り歩いてきた大物が勢ぞろいなのだろう。

中には王様や王子様、女王様なんかもいることだろう。


俺とフェミニアは奥のほうに用意されたテーブルに着く。

周りの猫人たちも次々に席に座り始めていった。


全員が席に座り終わると急に照明が落ちた。そしてステージに照明が照らされる。


「みなさま、長らくお待たせいたしました。これより、荒川新次様の歓迎のパーティーを始めさせていただきます。恐れながら司会は私、当王宮のメイド長をやらせていただいております、リアスと申します。よろしくお願いいたします」


流暢な喋り方で言葉をつなげていくリアスさん。ただの挨拶なのになぜか彼女に引き込まれていくような効果が彼女の言葉と喋り方にあったことに不思議に感じた。これもメイド長の力なのだろうか。


「では、これより乾杯の音頭をとっていただく、我が第一ネクロス帝国王女のフェミニア王女にお願いいたします。では皆様ご注目ください」


すると俺の隣に座っていたフェミニアにスポットライトが照らされる。

フェミニアは立ち上がって言葉を発した。


「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきまことに感謝いたします。僭越ながら、私が乾杯の音頭をとらせていただきます。では皆様、グラスをお持ちになってご起立ください」


フェミニアの言葉で会場にいる全員がグラスを持って立ち上がる。

そして俺もグラスを持って立ち上がった。


「では、荒川新次の歓迎を祝して……カンパーイ!!」


「「「「「カンパーイ!!!」」」」」


これからパーティーの始まりだ。


ちなみに一口飲んだこの飲み物は炭酸のような感覚がしたのでシャンパンのようなものだったのだろう。

味は人間界のものとは違い、少し酸味のある梅酒のような味だった。


乾杯を終えて、周りでは次々と楽しそうな話し声が聞こえてくる。

最近の娘の話、政治的な話や自慢話まで多種多様だった。


「新次様、我々の世界へようこそいらっしゃいました。歓迎いたします。私はケムルン共和国の王、ミツギと申します」


「あ、どうもありがとうございます。はじめまして、荒川新次と申します」


近づいてきた他国の王様、ミツギが俺に挨拶をしてきた。

あとでフェミニアにあの国を聞いたのだが、ケムルン共和国とは今のネクロス帝国の5代目前からの付き合いのある国だそうだ。

お互いの政治的理念が一致しており、今までよい関係が続いてきたということらしい。


「お聞きしましたよ。私の親友の娘を助けていただいたそうで、私からも感謝いたします」


「いえ、当然のことです。でもまさかこのようなことになるとは思いませんでした」


「ええ、私たちもこのような事例は過去に存在しませんから。私たちよりもあなたのほうが驚いているでしょうがね」


「全くです」


そう言ってお互い笑い合う。

一国の王様と聞かされていたのでどのような人かと思えばなじみやすい人で俺は安心した。

この明るさと雰囲気でこの国と彼の国は今まで友好な関係を築いてきていたのだろう。



その後もたくさんの貴族や王族の猫人たちと会話した。

どちらかというと女性の猫人が多く来たような気がする。逆にフェミニアには男性の猫人が挨拶に行っているようだった。

あの容姿だ。男にあの人のことをどう思うかと問いかければ100人が美しいと評価するだろう。

それくらい美しい。


俺はといえば話しかけてくる女性たちとそつなく会話を交わしていた。中には手を握ってきたりするものもいて少しあせったところもあった。

そのときなぜか隣から鋭い視線を感じたこともあったがあれは何だったのだろうか……。



この話はもう少し続きます。

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