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猫の王子様  作者: 嶋次郎
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猫の王女様?

ついに王女との対面のときがやってきた!新次が助けた白い猫の猫人の姿をみることができる。いったいどのような姿なのか。

俺は今、軽い食事を食べ終えて、この部屋でくつろいでいた。


まずはじめにテレビをつけてみることにした。

まさか猫の国にテレビがあるとは思いもしなかったのでさすがに驚いた。

猫が企画し、それを放送しているなど、誰も考えたことはないだろう。


テレビは人間が使うものとよく似ていた。

形などは違うが、リモコンなどは人間たちが使っているものとほぼ同じといっていいだろう。

猫の国にも地上デジタル放送が普及しているようだった。


そして本命の番組。

とりあえずいくつかのチャンネルを回してみた。


バラエティ、ドラマ、アニメ、映画、スポーツ番組などもある。

出演しているのはみんな猫人のようで、アイドルのような格好をした猫人や喋りのうまい芸能人、リアクション芸人なんかもいるようだ。


「……していました。今日の朝に国民と王宮による人間界の人間の入国を祝うパレードが行われました。国民の皆さんはとても興味のある様子で見ていたようです。しかし、中には人間の入国に不満をもつ猫人いるようでしたが、王宮より派遣された兵士に取り押さえられ、鎮圧したようです。

王宮では今夜、歓迎のパーティーが行われるようです。今後、情報が入り次第お伝えいたします」


どうやら俺がこの国に来たときの話のようだ。この国に入国した人間第一号なのだからニュースになって当然といえば当然だ。


しかし、不満を持つ猫人がいるというのが少々気になる。

もともと猫だけが幸せに生活できるはずの国だ。いきなり人間が入ってきてしまったら反対する猫人が出てきても仕方のないことだと思う。

中には人間界で人間に虐待を受けた猫や、捨てられて行き場をなくした猫たちが人間たちを恨んでいるかもしれない。


だとすると、俺のこの国への入国は喜ばしいことではないのだ。

もしもここが俺のいた世界ならば、テロリストなんかが出て来て、俺の命を奪いに来たりするのかもしれないが、この国がそうでないことを祈ることにしよう。


「ま、なんとかなるだろ。パーティーといってもメシ食って帰るだけだと思うし。ここに長く滞在するということはないだろうしな。テロなんて起こることはないだろ」


そういえば俺の格好が青い水玉のパジャマだった。

着替えを用意してあるといっていたがこのクローゼットの中だろうか。


俺はソファーから立ち上がりクローゼットに向かった。

クローゼットを開けてみると中には高級そうな黒いスーツが入っていた。

他には何も入っていないようだったのでこれを着ろということなのだろう。


スーツを着るなんて大学の入学式以来だ。新しく買ったスーツはその時しかきたことがなかったな。


スーツをクローゼットから取り出し、ベッドの上に並べた。

手にとって見ると、生地の手触りがよく、とてもよいものを使っているのがわかる。

これから会う王女様とやらは、これくらいの格好をしなければ会うことすらできないということなのだろう。


俺はきていたパジャマをすべて脱ぎ払い、パンツ一丁となる。

脱ぐときは全部脱いでから着る派だ。


そしてまずはワイシャツを着ようとして……。


コンコン。


ドアのノックする音だ。

おそらくミルフィがきたのだろう。


「新次様、お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


「あ、うん。ちょっとまってて」


「いえ、ドアを開けてもらわずとも結構ですよ。では失礼します」


はじめのドアのくだりの時のようになると思い勘違いしたのだろう。

ミルフィはためうことなくドアを開けてしまった。


そして彼女の目の前にはパンツ一丁の男が一人。


「……」


「……」


沈黙。


こういうときは悲鳴を上げられると思ったのだがそんなことなかった。

頭の中が真っ白だ。

人というのはショックを受けると何も考えられなくなるらしい。


「お着替えでしたらお手伝いしますよ。シャツを貸してください」


なんとミルフィは違った。

悲鳴をあげるどころか俺の着替えを手伝うというサービス精神を発揮させようと、俺が持っているシャツに手を伸ばそうとしていた。


「いやいやいや、自分でするから!着替えくらい大丈夫だから!」


「いえ、これもメイドの仕事のうちですから。新次様、シャツをお渡しください?」


「俺の世界じゃそれ普通じゃないから!逆に恥ずかしいからやめて!」


「え、そうなんですか?旦那様の服はよくメイド長が着せておりましたが……」


「いいから!自分で着るからちょっと出て行ってくれる?頼むから!」


女の子に裸体を見せてしまうとはなんとも恥ずかしい。

俺は今、初めて自分がすごいところにいることと、これが夢なのではないかという思いが強く増したのだった。





「新次様、申し訳ありませんでした」


「いやいや、気にしないで。こっちと俺のいた世界じゃいろいろ違うところがあるだろうから」


俺が着替え終わり、ミルフィが再度部屋に入ってきた。

俺に深々と頭を下げる。90度に近い角度の謝罪だった。

あの場合は俺がこちらの風習に合わせるべきだったのだろうか。

でも猫とはいえ今は女の子の姿だし、なかなかきついものがある。女の子と触れ合うのもあまりなれていないので俺にはレベルが高そうだ。


「俺に何の用事だったの?」


「あ、はい。実はこれより王女様の場所までお連れすることをお伝えに参りました。ですが、私とんだ失礼をしました。誠に申し訳ありません」


「それはもう終わったことだよ。気にしないで。これから俺は君についていったらいいのかな?」


「はい。王女様は王の間にてお待ちです。新次様にお会いするのをとても楽しみにされていました」


「そっか。じゃあ早く挨拶に行かなきゃだね。案内よろしく頼むよ」


「はい。こちらです」


俺はミルフィを追って歩き出した。

廊下を歩いていると多くの使用人を見つけた。

執事やメイドなどが俺の顔を見るたびに丁寧な一礼をしていく。

まるで大富豪になったような気分だ。


広い廊下を次々に歩いていく。

この城に入ったときに玄関を入った目の前にあった扉がおそらく王女の間なのだろう。


おそらく今は来た道を戻っていると思われる。

正直いまきた道を一人で戻れといわれても戻れる自信がない。

それだけこの城は広い。


そして扉を抜けるとそこは玄関だ。

やはりあの大きな扉の先が王女の間なのだろう。


階段を上り扉の前に着く。


「すぅー……はぁー……」


緊張のために深呼吸をして落ち着かせる。

猫といっても一国の王女だ。

失礼のない対応をしなければならないだろう。


「大丈夫ですか?」


「え?ああ、ちょっと緊張してるよ」


「王女様は私たち使用人にも親しく接してくださる優しい方です。何も心配などないと思いますよ」


「そうかな……じゃあ、ミルフィの言葉を信じてみるよ」


「はい。では扉を開けてください」


ミルフィの一言で見張りの兵士たちが扉を開けようとしている。

だいぶ重たいようで両開きの扉を片方5人ほどで開けている。

まるで金庫の扉のようだ。


ギギギ……という音とともに扉が少しずつ開いていく。


部屋の中が見えてきた。中には両側に並んだたくさんの兵士たちがいて、床にはレッドカーペットが敷かれている。


俺はカーペットを伝ってミルフィと歩みを進めていく。


周りを見渡してみると猫の金の装飾がされていたり、この国の紋章のようなものが飾られていたりと、豪華なつくりとなっている。


そして玉座の近くまで来て立ち止まるミルフィ。

正直王女を見るのが楽しみだったのでまだ玉座のほうはみていない。


意を決して前を向く。


「……あれ?」


向いたのだがいなかった。

どこにいるのかと周りをきょろきょろと見る。


にゃー。


「ん?」


声のしたほうを向くと俺の足元に一匹の真っ白い猫がいた。


「あれ?この猫って俺が猫王あげた猫じゃないか。てことはこの猫が女王様?この猫は猫人になれないのかな?」


俺は足元に来た白い猫をなでた。ふわふわしてつやのある毛並みをしていた。

触っていてとても気分が良い。


「おお、王女様が猫のお姿で体を触らせてるぞ」


「ああ、新次様ってもしかしてすげえ人なんじゃないか?」


そんなことがひそひそと周りから聞こえてくる。

なんだ?そんなにすごいことなのか?ただなでてるだけだぞ?


「ああ、そこいい。もっとなでてくれ」


声が聞こえた。声の感じから美人だということが容易に想像できるような声だった。

その声は俺がなでている猫からのものだ。


「うお!やっぱしゃべるんじゃねえか!」


「なでるのをやめるなよ。もっと頼む」


驚いて反射的になでるのをやめたのだがおかわりを要求してきた王女様だった。


「お嬢様、自己紹介がまだです。新次様が混乱しておられますよ」


「ああ、そうだな。ちょっと待っててくれ」


そういうと王女様は玉座の裏まで歩いていった。

その近くではメイドが赤い布で周りを取り囲んでいく。

いったい何をしているんだろう。


「いま猫人の準備をしてるんですよ。人前では恥ずかしいですから」


ミルフィが俺の疑問を消してくれた。どうやら変化するらしい。

そういえば俺も猫の姿になれるのだろうか?

そもそもどうやるのかもわからないけど、なれるものなら一度はなってみたい気もする。


「またせたな」


そういって王女様が玉座の後ろから姿を現した。


「……あ」


そこには天使がいた。


というのは言い過ぎでもなんでもなく、ただ単純に美しかった。

顔立ちは整っていて、髪の毛は背中まであり髪の先がカールしている。

頭に飾っているティアラは美しい光を放っていて王女様の魅力をさらに引き立たせていた。

そしてきわめつけは着ているドレスだ。細部の装飾もさることながら、白いドレスということで清純さというか純粋な美しさがあった。


「どうした?なにかへんだったか?」


「いや!とてもきれいで見とれてしまって……。よく似合ってると思いますよ」


「そうか?ありがとうな。申し遅れたが、私は第一ネクロス帝国王女、フェミニア。今後ともよろしく頼む」


「俺は荒川新次です。こちらこそよろしくお願いします」


フェミニア。

それがこの国の王女の名前。

5億人の猫たちが暮らすこの国を束ねている一人だ。

おそらく容姿だけでなく、政治や経済についても詳しいだろうフェミニア王女。

どれだけの猫たちが彼女と会話できるのだろうか。

そう思うと俺はかなりの幸運の持ち主なのかもしれない。


「新次、おまえは命の恩人だ。堅苦しい話し方はやめてくれないか?」


「敬語をやめろってことですか?」


「そうだ、私とお前は対等な仲になるんだからな。あと名前もフェミニアでいい」


「そうですかね。……わかったよ、フェミニア」


「それでいい。じゃあこの後私の部屋に来てくれ。ミルフィ、新次を私の部屋へ案内を頼むぞ。私は先に戻っているからな」


「わかりました」


そういい残し、フェミニアは去っていった。

これから俺は彼女の部屋に行ってなにか話をするのだろうが、いかんせんこんな経験がほとんど皆無だ。

女の子の部屋に入るというのはいささか不安を覚えるが、なんとかするしかない。


まあ、がんばろう。

☆フェミニア

年齢……18歳/王女


身長……156cm


髪……背中まである銀髪ロング。毛先がカールしている


猫の種類……白猫

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