番外編 その後の二人【凌編】
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新規投稿『Dream Circulation』
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屋上で左頬を触る。
じんわりと熱が感じられる。
別に痛い訳じゃない。
他の傷に比べたらたいしたものじゃない。
あいつの心の傷に比べればないに等しい。
「……あいつ……泣いてたな」
俺を叩いてすぐに教室を走り去ったが、確かに泣いていた。
俺が泣かせた。
俺が護ると言ったのに、俺が傷つけた。
自分のことは自分が一番分かっている。
自分がおかしくなっていることも。
でも、最近の自分の行動は自分で分からなかった。
喧嘩はキライだ。
強くなるためにとがむしゃらに、馬鹿みたいに喧嘩に明け暮れてきた。
高校に入ると向こうからドンドンきた。
本当は喧嘩はしたくない。
でももう遅かった。
痛いのはキライだ。
喧嘩し始めた時はよく怪我した。
だから弱いものが傷つくのはいやだった。
そのために強くなろうとした。
その結果単なる強さは手に入れたと思う。
でも、本当の強さは手に入れてなかった。
だから、あいつを傷つけた。
周りの弱いものまで傷つけた。
多分、今回のことだけじゃなくて今までずっとあいつを傷つけていたに違いない。
今になって分かる。
自分がどれだけおろかだったのか。
自分が強さを履き違えていたこと。
うわべの強さしか追い求めてなかった馬鹿な自分。
それを見てきたあいつの気持ち。
「……本当に最低だな」
「今からでも遅くはない」
「っ!?」
突然横から声がして驚く。
いつの間にか入り口の所に眼鏡の男が立っていた。
「いや、屋上の鍵を閉め忘れてね。今から閉めても遅くはないと思っただけだ。深い意味はない」
男はニヤリと笑い言葉を続ける。
「それから君はこんなところにいて良いのかい?行くべきところがあるだろう?ああ、授業のある教室にだ。これにも深い意味はない」
胡散臭い男だが、何故か悪意は感じない。
今回だけは善意で言ってやる、といった感じがする。
「そうだな。こんな所にいても意味はないな」
俺は男の横を通り過ぎ階段を駆け降りた。
「来人?こんな所にいたんですか」
「ミリーか」
「何をしてたんですか?」
「善意からのお節介だな」
「はい?」
「いや、何でもない。誰かさんのお陰で授業もないしな」
「また間宮君が喧嘩したみたいですね。良い人そうなんですが」
「不器用なだけなんだろうな」
「そうかもしれませんね」
やっと見つけた。
体育館の裏で膝を抱えて座り込む玲。
俺はゆっくり近付いていく。
「…………」
玲が気付いて顔を拭う。
多分まだ泣いていたのだろう。
罪悪感がまた襲う。
「2人きりになるのはあの日以来だ…………な」
「…………」
横に座りながら声をかける。
話すのもあれ以来で口調をどうしていいか分からない。
玲は何も言わず、こっちも見ようとしない。
「……悪かった」
そんな事しか言えない。
いや、言わない。
「なんでアンタが謝るんだよ。叩いたのはこっちだ」
玲がボソボソと呟く。
「……叩かせるような事をしたからな」
「…………」
「今まで悪かった。まだ待っていてくれるか?」
「…………」
玲は返事をしなかった。
その代わりに膝に顔をうずめる。
小さく“ばか”と聞こえたような気がした。
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しばらくお互いに無言の時間が続いた。
玲が口を開く。
「おい、バカ」
「……なんだ」
「腹減った」
「食ってねぇのかよ」
そういえばさっきまで昼休みだったな。
食べ損ねたのか。
「買ってこい、犬」
「誰が犬だ」
「ちっ、使えねぇ」
「ダイエットでもしてな。デブ」
「何だと!?この駄犬が!!」
「何だよ!!デブはデブだろうが」
お互いに大声で言い合う。
2人に湿っぽいのは要らない。
気持ちを確かめる事はしない。
俺は伊波玲の事が
私は間宮凌の事が
心の底から好きだから
読んでいただきありがとうございました。
ちょっとまとめきれてなかったような気もしますが(汗)
とにかく雪の日後の二人の話でした。
ここからまた二人が他のメンバーとどう関わっていくのか、と繋がっていくわけなのですが
とりあえずここまでにしておきます。
二人の視点からになるかも分かりません。
ミーの視点からはならないと思います。
前書きにも紹介しましたが
新規に小説を投稿させていただきました↓
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『僕は~』と違ってちゃんとプロットを考えてます。
けっこうシリアスなお話の予定です。
ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
ではこれにて失礼します。