第8話 体育祭一日目④
店長…じゃなくて犬…もとい間宮凌さん
『さあ朱雀 対 玄武の試合が始まりました!各騎前へ出始めます!』
「間宮さん!どうしますか?」
下から声をかけられ、俺ははっとして気付く。
考え事をしていると、すぐに時間が経つからイライラしやがる。くそっ。
「まかせる」
俺は一言だけぶっきらぼうに言う。
来た奴は潰すだけだ。徹底的にな。
そんな考えを知ってか知らずしてか、馬鹿が1騎突っ込んで来やがる。
ちっ、めんどくせえな。
指関節を鳴らして待ち受ける。
そして敵と味方の馬がぶつかった。
俺が弱い…か。
右手で敵の頭を掴み引き寄せる。
そのまま左手でハチマキをむしり取り、騎手を引きずり落とす。
変わらないな、俺も。
馬が敵に向かい次の敵と向かい合う。
今度は手を組み合うが、その手に力を込め相手を威圧する。
そのまま相手のこめかみに寄せ、ハチマキをむしって相手も奥に倒す。
相手はバランスを失って馬ごと崩れ落ちた。
いや、変わったか。間違った方に。
左右から同時に敵が迫る。
右側から伸びる手を手首の部分で掴み、手を伸ばそうとする左の奴の頭を鷲掴みにする。
そのまま前で合わせるように騎手ごと馬からむしり取り、落とす。
分かっていても、引き返せない。
後ろから気配がする。
背中を掻くようにして右手を回し、敵の手首をつかむ。そのまま勢いよく前に引っ張り、俺に半分乗りかかった体の背中側のシャツを引っ張り前に叩き落とす。
あの日に決めたからな。
『決まっったぁぁぁっ!!一本背負い!』
『素晴らしい技でしたね。玄武の最後の大将騎も朱雀の西野くんによって敗れたようです。3-0で朱雀の勝ちです!』
『間宮1人で勝ったようなもんだよなー。なんだあのチート野郎はっ!!』
『5人を抜いた間宮くん、さも当然と言わんばかりに涼しい顔をしています。さぁっ、次は決勝です。青龍 対 朱雀!いったいどちらが勝つのでしょうか!
『雪むr『メキッ』』
『白虎団は待機スペースにお下がりください。なお青龍団は前に出て準備を始めてください』
“弱いくせに何やってんだよ”
“……ごめん”
“怪我、無い?”
“………僕強くなるから”
“…………”
“強くなってもう傷つけさせないから……だから…………”
「間宮さんっ!!」
誰かの呼ぶ声で起きる。
なんか夢見てた気がするが…思い出せねえ。
「間宮さん起きましたっ?」
「ああ゛?」
なんだコイツ。
せっかく人が寝てんのに起こしやがって。
俺が威嚇するとソイツは慌てて言う。
「ま、間宮さんが起こしてくれって言ったんじゃないですか。出番が来たら起こせって」
そういえばそんな気もするような。
それに良く見たら馬の奴かコイツ。
「相手は誰だよ」
欠伸を押し殺して聞く。
「副将の神崎です」
しかも心の野郎かよ。
首をひねるとゴキゴキッと音が響く。
もう一度欠伸を押し殺して、馬に乗る。
相手はもう待機していた。
「凌ちんおっそい!!」
「悪いな」
心がぶつくさと文句を垂れるが、適当にあしらう。
ガキみたいな事言いやがって。
普段じゃ大した事なさそうなのにな。
ピィー
笛の音で馬が動き出した。
互いに正面で向き合う。
「!?」
なるほど、中々楽しめそうだな。
笛の音で目つきが変わりやがった。
いつものヘラヘラした目とはまるで違う。
伸びてくる心の手を内側から外にはじく。
崩れて開いた正面から左手を伸ばしハチマキを狙う。
指先に触れたところで動きが止まる。
手首が心の右手で止められている。
それを外側に押し退けようと力で張り合いながら、開いた手つかみ合う。
しばらくそのまま拮抗するが、心が動きを見せる。
一瞬手首を掴んだ手を離したかと思うと、下から滑るように回し、再び手首を上から掴み直す。
今度は俺が上から抑えつけられるような形だ。
力が入りにくいったらありゃしねぇ。
掴まれた手を振られながら、体勢を崩すように攻め立てる心。
「ちっ、さすがにしんどいな」
「降参したら?」
「するか、アホ」
つかみ合う右手を押し込み、そのままハチマキを狙う。
だが心は体を左に捻り、その勢いで右手を離してハチマキを狙う。
「ちっ」
首を左にひねってハチマキを届かなくする。
心はすぐに手を引っ込めやがったから手は掴み返せない。
「おしかったな」
「下手な小細工はやめますか」
今度は両の手をしっかりと掴み合い、力勝負にいく。
下の馬も互いに押し合い潰そうしている。
そのまましばらく組み合い、心が口を開く。
「しぶ…っといね凌ちん!」
「俺のセリフ…っだろが!」
この間にも力比べは続いている。
「そろそろしんどいなぁ。周りは騒いでいるだけだから楽だなぁ…っと」
確かに周りは団に関係なく騒ぎに騒いでいる。
実況席なんか特にうぜぇ。
「いい加減にっ…くたばりやがれ」
さすがの俺も限界が近づいている。
心も口調はあれでも俺と同じだろう。
目つきも何となく弱くなっている。
「もうちょ…っと頑張ってみるよ」
そう言いながら力をさらに加える。
コイツ、力を蓄えていたな。
若干押されながらもせめぎ合う。
「!?」
「うわっと!」
しかし勝負は呆気なく終わる。
押し勝っていた心が突然前に倒れ、そのまま下に落ちる。
俺の勝ちだ。
『おっと!?突然神崎くんが下に転がり落ちました!この長い勝負間宮くんの勝ちです!』
『ざまぁみやがれっ神z『ボコン』すみませんでしたぁっ!!砲丸は勘弁してくださいっ!!』
『次は大将騎通しの決戦です!いったいこの間宮くんに雪村くんはどう立ち向かうのでしょうか!……と、その前に10分の休憩を挟みます』
周囲は長い試合の興奮の余韻と、呆気ない幕切れに口々に騒ぐ。
やっぱり周りから見ると、そんなもんか。
心が体勢を崩す前に俺の耳に声が届いた。
聞き慣れた、あいつの声。
それだけで気合いが入るとは……やっぱり俺は弱いな。
自嘲気味に笑って心を立ち上がらせる。
「あっちゃーやられちった」
いつもの少し抜けた様子に戻って、後ろ手に頭をかきながら笑みを浮かべる。
「勝ったと思って油断するからだ」
俺はぶっきらぼうに言う。
不本意だが少し照れ隠しも入っていたかもしれない。
「そうかもなぁ。で、次ミリーだけどどうする?」
「適当に負けとく。お前とやって満足したからな」
「だと思った」
「ふん、一旦休憩してくるぜ」
俺は日陰へと向かう。
さすがにしんどいな。
「ん?」
校舎の陰へと着いたところで、男3人に連れていかれる女子生徒を見かける。
男は外部の人間らしい。
「……めんどくせえな」
俺は後を追った。
スミマセンデシターm(_ _)m
更新が不定期になりそうです。
取りあえず昨日更新出来なくてすみませんです。
ごめんなさい。
最悪でも3日以上空けないと思います。
なるべく毎日頑張りますけど。
書きづらいですよー。
話はまとまっても、書けませんよー。
集中力がー。
とりあえずしばらくはまったりと書いていきます。
書けるときは何話もまとまって書けると思うんで。
そうなったら毎日更新に戻れそうです。
気長にお待ちください。
よろしくお願いします。
じゃあこのくらいで。
それでは




