第3話 同棲
長い綺麗な髪を指で左耳に掛けて、スプーンを口に運ぶ美少女の柊さん。
そんな仕草を見ていると目があって
「雪村君、おいしい?」
「はい、とてもおいしいですよ」
柊さんが笑顔で聞いてくる。
父親が「飛行機の時間だから」と言って早々に去っていき、柊さんが「とりあえずコレ食べようか?」と照れ笑いしながらビーフシチューを出してくれたのでおとなしく従っていただいている。
「そろそろ、説明していただけますか?」
父親はほとんど説明もせずに行ったので、現状がいまいちよく分からない。柊さんから説明してくれそうにも無いので、我慢出来ず僕から尋ねる。
「もう、食事中にお喋りするのは行儀が悪いんだよっ」
「…初めに話しかけてきたのは柊さんです」
柊さんは膨れっ面でたしなめてきたが、僕は全く表情を変えず返す。
「ほんとに、可愛い顔してるくせに性格は全然可愛くないんだから。それから敬語似合わないから止めた方がいいよ?」
「余計なお世話です」
ほんとに余計なお世話だ。僕は敬語しか使わない。そう誓ったんだ。他人にとやかく言われようが、これだけは変えない。いや変えられない、変えてはいけないんだ。
「でもその髪は似合ってるね。学校でも隠さずに行けばいいのに。勿体無いよ?」
「っ!!」
しまった!!一度家に帰ったから油断していた。慌てて隠そうとする、が無駄な努力だと諦める。
「どうでもいいですから、早く説明してくださいっ」
ついその焦りを誤魔化そうと強い口調になってしまった。
「そんなに急かさなくてもいいじゃない。えーと、じゃあどう話そうかな?なんかちょうど良い言葉が…」
話をまとめるように俯いて考え込んでいる。学校での性格と全然違って表情がコロコロ変わる。猫をかぶっていたのか。
「うん、簡潔に言った方がいいよね」
手を叩いて顔を上げる。どうやらまとまったらしい。
「同棲します!!」
飛びっきりの笑顔で断言した。
「…帰ります」
立ち上がり玄関に向かう。
「ちょ、ちょっと待ってよ。何で!?」
慌てて柊さんが追いかけてくるが、相手にしない。
父親からの少ない言葉で予想はしていたが、これだけ堂々とあえてその単語を言われて「分かりました」なんて言えるか。
1人暮らしでもなんでもしてやる。
「ちょっと雪村くん!!」
「大体荷物もないのにこんなとこ暮らせませんよ」
何も説明されずに連れてこられて、手ぶらなのだ。
「そうね、そろそろ来る頃かしら」
時計を見てなにやら呟く、と同じくらいにインターホンが鳴る。
「はーい」
スリッパをパタパタと鳴らし僕を通り越して玄関に向かう。
そして柊さんが扉を開けると、中に入ってきた運送屋数人によって、ダンボールがバタバタと玄関に積み上げられていく。
「はい、これで全部です。ここにサインお願いします。あ、ご依頼通り残りの家具や家、土地は売却するように手続きが済みましたので。では失礼します」
「ご苦労様で~す」
それだけ言い残して運送屋は去っていく。柊さんはにこやかに手を振っている。そしてこっちに振り向いて
「はい、雪村くんの荷物よ。聞いての通り家は売っちゃってもう無いから」
「なっ!?」
なんて用意周到な。お父さんの仕業か?
ていうか僕の意思は!?人権は!?
「諦めてここで暮らすの。分かった?」
勝ち誇ったように言ってくる。
「その前に、柊さんは一体何者なんですか!?なんで僕と暮らすんですか!?」
「そんな細かい事どうでもいいじゃないの。雪村くんがここで暮らす、私がお世話する、ついでに暮らす。たったそれだけのことじゃない」
それがどうしたの?と言わんばかりに笑って答える。
「それが一番問題だって言っているんです!!」
何でクラスメートの異性、しかも正体不明の人と暮らせるんだよ。いくら何でも色々と問題があるだろう。
「何?雪村くんもしかして変な事考えてない?うわーエッチ」
「考えていませんっ!!」
な、何を言い出すんだこの人はっ!!
「なら全然平気だねっ」
悪戯っぽく笑ってくる。
どうやら決定事項なので諦めるしかないようだ。
「…もういいです。いいですから柊さんがどういう人なのかだけでも教えて下さい」
「うーん」
またしても考え込む。
「まあ、マリアさんの知り合いってとこかな。んでマリアさんに頼まれたの」
「お母さんに…?」
「うん、日常生活から学校生活までちゃんと見てやってってね。と言うわけでこれからよろしくねっ」
またまた頭が痛くなってきた。
今日だけで何回目だろうか。
そんなこんなで、グダグダのうちに僕と柊さんの同棲生活が始まってしまった。
えー、いろいろと書くのが大変になってきました。
キャラの性格がうまく書き分けられず、何だか矛盾したりしそうです(汗)
登場人物が増えたりするともうパンクしそうかもです。
もともと作者のボキャブラリーは少ないので、
「ふ、初心者がww」
と笑って見守っていただけるといいです。
柊燈加について最初は性格がいまいち掴みづらいようにしているつもりです。
まあ、ミー君が生活に慣れてくるにつれて分かってくるのではないでしょうか。
主人公のミー君については、小さくてかなり可愛い外見の設定ですが、敬語なのでそんなイメージがあまりないかも?(作者は自分で書いて思います)です。
作者の言葉足らずなせいかもなので、伝わりやすいように努力していきます。
見ていただいた方へ、出来たら感想なんか欲しいなぁ…なんて欲張りな作者です。
指摘なんかもしていただけたら、ぜひ活用させていただきたいです。
ぜひぜひ一言よろしくお願いします。