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僕は僕だから僕なんだ  作者: 深雪林檎
◆第一章
1/52

第1話 転入生

高2の春、始業式の翌日。

時刻は8時38分。

朝のホームルームギリギリの時間。


「やあ、ミリー」


自分の席に着くと左隣の席の無駄に爽やかな青年、神崎 かんざきしんが声を掛けてきた。


「おはようございます、心」


誰にでも敬語を話す、それが僕―――雪村・A・ミリオネーゼの特徴である。そしてハーフで髪はアッシュブロンド(学校では黒髪のウィッグ)である。


「相変わらずミリーは可愛いなぁ」


「僕は男です。気持ち悪いので止めて下さい」


心は見た目は超が付くくらいの美形で長身、スタイルも良く運動神経抜群なくせに性格が子供っぽい。普段からこんな調子なので僕は呆れて返す。

僕は小柄だが運動もかなり出来るし、顔も…不本意ながら心と違う方向で美形だ。


「はいみんな席に着いてー」


教室の扉を開けて担任の島田先生が入ってくる。


「HR始める前に転入生を紹介するわよー」


(転入生?始業式の次の日に?)

担任の発言に訝っていると、教室中がざわついているのに気が付いた。確かに普通に転入生が入ってくるだけでもそうなるだろう。

ざわつく生徒を気にせず担任が転入生を教室に入るように促す。


「「「おおーっ!!」」」

「「「キャーッ!!」」」


途端にざわつきが歓声に変わった。

僕は席が一番後ろで小さいから、転入生を見る前に前の奴が立ったので見えなかった。


「あ、なるほど」


思わず口にした。

背中まで伸びる綺麗な髪、細くて長い手足、少し凛とした整った顔立ち。


「へーあの娘も可愛いなぁ。ミリーと良い勝負だね」


左隣からなにやら聞こえたけど、無視しておこう。


「じゃあ自己紹介お願いねっ」


担任の進行でざわつきも収まる。


「柊 燈加ひいらぎとうかです。よろしくお願いします」


小さいが澄んだよく通る声で言った後、礼儀正しくお辞儀した。


途端にまた歓声とも絶叫とも言えそうな爆発音が教室に響く。


「はいはい、うるさいわよ。じゃあ柊さんあいてるところ適当に使ってね」


手を叩き生徒を黙らせて、適当に席を決める。

まあ始業式に席替えを(勝手に)して、あいてるところは一番前の3つしかないけど。

柊さんは何故か何かを探すように教室を見渡して、僕を見て止まった。


「?」


僕が不思議がっていると、柊さんは僕に指を指して言った。


「あの男の子の隣がいいです」










「であるからこの数式を………」


前の黒板に書き込みながら数学教師が説明している。

一限目だというのに僕はすごく疲れている。

右隣には姿勢良く授業を聞いている柊さん、一番前には鈴木(だったっけ?)君が。



柊さんの発言からの流れを簡単に説明。


柊さんが心に交渉

心が(駄々をこね)交渉失敗

反対側の鈴木(仮)に交渉

鈴木(仮)が断る

クラス中が鈴木(仮)に大ブーイング

鈴木(仮)が泣きながら一番前の席へ



鈴木(仮)君が可哀想だった。

後で謝っておこう。なんとなくそうしないといけない気がする。


それにしても何で僕の隣がいいなんて言い出したのだろう。

あの(席を奪った)後クラスのみんなが質問責めにしていたけど、それについては「特に意味はない」と答えていた。


「今日はここまで。ちゃんと予習復習しておくように」


考えているうちに授業が終わり、休み時間は相変わらず柊さんは質問責めで、一度も話すことなく午前中は終わった。











昼休み僕はいつものメンバーと屋上昼を取っていた。

「ミリーの隣の女、誰だよ?初めて見るけどよ」


購買のパンをかじりながら聞く間宮 まみやりょう。金髪でピヤスを付けたこの辺一帯の不良のトップだが、実際は気さくな奴。ちなみに僕の前の席だが午前中は爆睡(教師は黙認)のため全く知らない。


「転入生の柊 燈加さんですよ、凌さん」


答えたのは桐生 茅依きりゅうちいちゃん。僕よりもさらに小柄で髪の毛を左右の耳の上で縛っている、おとなしくて可愛らしい女の子。


「今更そんな質問なんて相変わらず抜けてるね、君は。」


笑顔でからかう稲嶺 来人いなみねくると。人間観察と情報(弱み)収集が趣味な腹黒いメガネの男。本来、屋上の出入りは禁止だが、教頭に交渉(脅迫)して鍵を借りたらしい。


「凌ちんらしいけどね~」


そして心に僕、それから


「玲はまだ帰ってきませんね」


伊波 いなみあきらはジャンケンで負けて飲み物を買ってきてもらっているのだ。


「私ちょっと見て来ます」


「あんなのほっとけって」


茅依ちゃんを凌が止める。凌は玲が苦手なのだ。


「あんなので悪かったわね」


「げっ」


屋上の入り口に飲み物を抱えたショートヘアにリボンがトレードマークの玲がいた。それから…


「あっ、柊っちじゃん。どしたの?」



「ここに雪村君がいるって聞いたから、伊波さんに連れてきてもらったのよ」



玲の後ろにいた柊さんが笑顔でまた僕を見て言ってくる。

また僕の名前を出すの?

綺麗な人からそう言われるのは嬉しいけど、なんで僕に?


「ミリーが?」


横で玲と言い争っていた凌が話に入ってくる。そして柊さんの言葉で来人の眼鏡が光ったのを僕は見た。


「はい、雪村君が」


「僕に何か用ですか?」


「いえ、特には」


「…えと、とりあえず一緒に昼でも如何ですか?」


「はい、頂きます」


笑顔で僕らの輪の中に入ってくる。

何だか頭が痛くなってきた。

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