奇妙な色の朝
S通りの怪
詳しい場所は伏せる。
東京都N区S台S通り――。
「なんか映画みたいだな!」
「セピア色の世界だなぁ」
早朝のジョギング中にすれ違った、大学生っぽい男二人組がそんなことを言っているのを聞いた。
妙に高いテンションだった。徹夜明けなのかもしれない。
しかし、彼らの言う通りだ。たしかに今朝の街並みは幻想的ですらあった。
セピアというより、街は薄暗ささえ感じさせる、濃厚な橙色に染まっていた。
走りながら、ふと、空を見上げる。
――おかしい。
思わず立ち止まってしまった。
こういう日は、東の空が朝焼けに染まっているはずだが、空は真っ青だ。
真夏の日中のような、雲一つ無い青。
そこだけが、くっきりと鮮やかで、不気味だった。
なにやら、もやもやした気持ちになってきたので、それを振り切るようにジョギングを再開する。
折り返し地点である○号線まで出た。
いつも、ここで横断歩道を渡り、反対側の歩道を使って、帰路につく。
だから、いつもどおり横断歩道を渡る。そして、来た道を戻ろうとした。
いきなり頭痛がした。
S通りはさっきよりも薄暗さに包まれているように見えた。
まるで黄昏時のようだ……。
そんなS通りを見るだけで、なぜか寒気がし、目の奥に痛みを感じた。
○号線の方を見ると、こちらはS通りの方に比べれば明るく、色鮮やかで、普通に見えた。
S通りは……もう見たくない。
視線を外して、再び見るたびに暗くなっていったらどうしようと、妙なことも考えたりした。
しかたがないので、大きく迂回し、S通りを避けるようにして帰宅した。
おかげでその日は遅刻した。
今でもS通りは朝晩のジョギングコースだが、周りの風景や空がおかしい時は通らないようにしている。
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