第三章 設定 + おまけ
先日は休ませて頂き、ありがとうございました。
投稿を再開しますので、どうかよろしくお願いします。
第三章設定 + おまけ
●キャラクター
※ステータスはあくまでフレーバー
※筋力や敏捷は一般的な成人男性で『10』、軍の特殊部隊で『15』、世界記録保持者や金メダリストで『20』。ただし、『1』の差は数字が大きくなるほどに大きくなる。
『矢広耕太』
種族:ハーフヒューマン・クオーターエルフ・クオーター鬼人
霊格(LV):32
筋力:68
耐久:68
敏捷:68
魔力:68
異能:スクロール作成・未来視の魔眼・ヤドリギの矢
固有:変若の血潮
備考
本作主人公。ハーフエルフの父とハーフ鬼人の母をもつ。通称『雑種』。
異能以外の才能は平凡だが、異能に関してのみやたら才能がある。それもあってか、同じレベル帯と比べステータスが高く、成長速度も速い。
何かに特化した能力というわけではなく、近接もできる魔法使いに見える回復職っぽい生産職と、かなりややこしい存在。パーティー編成で困ったら入れておけ枠とも言う。
たつみんランドでの戦いでレベルが急成長。異能者にとって『LV:30』は1つの壁と言えるものであり、もしかしたらこれにより『やれる事の幅』が増したかもしれない。
合宿から帰ってきて両親から非常に心配されたが、彼としては弟か妹ができていないかの方が気になってしょうがなかった。
『小鳥遊美由』
種族:人間
LV:16
筋力:28
耐久:31
敏捷:38
魔力:27
異能:食いしばり
備考
本作ヒロインその1。100年後の未来から来た兵士。
未来と言っても並行世界であり、こちら側の世界で何をしても彼女のいた世界に影響はない。
異能者としての才能は壊滅的だが、異能者以外の才能は多才。特に人型兵器のパイロットとしてはエースと呼んで差し支えない実力を有する。
ただし、人類滅亡寸前の世界で7歳から脳缶状態でパイロットをしていた為、常識には非常に疎い。最近、ようやく日常生活はギリギリ問題なく過ごせる様になってきた。
どこがとは言わないが『K』。恐らく作中の人間では最大である。
未来の推し英雄だった矢広耕太が女体化したソシャゲキャラの格好を、こちら側の世界の矢広耕太にさせようと計画している。動機はガチャの爆死。未来のソシャゲに天井は存在しない。
『井上璃子』
種族:ダークエルフ
LV:26
筋力:58
耐久:49
敏捷:61
魔力:66
異能:付与魔法・雷撃魔法・呪毒魔法
固有:不明(標的から生命力と魔力を簒奪する事のみ判明)
備考
本作ヒロイン?の自称『オタクに優しいギャル』。他称『ギャルのふりをするオタク女子』。
『回帰の日』にダークエルフとして覚醒した結果、何故かギャルを自称し始めた変人。
異能者としての才能も高いが、それ以外の才能も高い。自称ギャルな以外は文武両道才色兼備の人。オタクとしても根明系のオタク。
特にプログラミングと料理の腕に自信有り。前者は並の学生以上、後者は下手なプロよりも上。ただし、喫茶店料理以外の料理はギリギリプロを名乗れるかどうか。
自身の固有異能に関しては『見たらドン引きするのは確実』と評しており、緊急時以外は使いたがらない。
どこがとは言わないが、『FよりのE』。肉体年齢はダークエルフ化で現在14歳である為、成長の可能性がある。
『石山岩子 魂の名:ロッソ・ヴェンデッタ』
種族:ダンピール
LV:28
筋力:60 夜間:64
耐久:55 夜間:59
敏捷:62 夜間:66
魔力:62 夜間:66
異能:怪力・加速・再生速度増加
固有:不明
備考
本作のヒロイン?な25歳独身。
前の章で色々あって、現在は喫茶店『アルフ』から比較的近いマンションで母親と2人暮らし。
『回帰の日』前まではデイトレーダーとして稼ぐ半引きこもり。そこそこ儲けていたらしい。
異能者としての才能は高いが、種族と異能者への迫害が合わさった結果並行世界では『人類の敵』となり、その世界の矢広耕太に討たれて盛大に心の傷となっていた。
重度の中二病患者であり、25歳になっても沼から抜け出せていない。何なら本人が抜け出す気がない。自称魔界貴族。
今章におけるたつみんランドでの戦いにおいて、観覧車の上からとても雄々しい雄叫びをあげていた。
どこがとは言わないが『G』。どこがとは言わないが。
ダンピールの特性上、夜間はステータスが若干上昇。また、魔力を消費して飛行可能となり、再生速度も更に上昇する。
『竜宮金子』
種族:人間
LV:34
筋力:62
耐久:68
敏捷:57
魔力:63
異能:魔力障壁・氷の息吹・黄昏の具足
備考
本作のヒロイン?自称『たつみん』な着ぐるみ女子。年齢は20歳。
高校生の頃に両親を魔物に殺され、住んでいた家と畑が土砂崩れに飲み込まれた。
故郷の村で空き家を買い取り、そこに住んでいる。彼女に残された唯一の『家族の思い出』であるたつみんランドに強い執着心を持っており、その土地から離れる気はない。
並行世界では、たつみんランド防衛の為ダンジョンから溢れ出た魔物達相手に孤軍奮闘。彼女の戦いによって村人の半数が助かるも、竜宮金子とたつみんランド。そして村はこの世から消え去った。
着ぐるみを纏っている時は『たつみん』。そうでない時は『竜宮金子』を名乗っている。着ぐるみパジャマや、たつみん印の布マスクでもギリギリ『たつみん』な模様。
どこがとは言わないが『G』。どこがとは言わないが。
高校を卒業後、金銭的な理由から進学はせずに猟師兼冒険者として働いている。それ以外にも、村で力仕事をしたりする半何でも屋。ある意味一番冒険者っぽい。
なぜか璃子からは『カナっちって地味に湿度高そう』と言われているが、着ぐるみの中は彼女の異能によって非常に快適な空間である。それこそ、もう1人入っても狭くはあるが気温や湿度には問題ない。
『上代絹江』
種族:人間
LV:10
筋力:27
耐久:25
敏捷:30
魔力:30
異能:火炎魔法・魔力調整
備考
耕太達と同じクラン『アルフ』に所属する冒険者。大学生。
何でも絵にしようとする変人。本人はむしろ意識して『変人をやっている』が、そもそも十分に変人。
異能者としての才能は『日本の異能者では平均的』。強いて言うのなら、『火炎魔法』は詠唱ではなく空中に魔法文字や魔法陣を描く事で発動。『魔力調整』は魔力の消費を抑える異能であり、ちょっとだけレア。
写実的に人や物を描くのが得意。また、速筆でもある。
だが、独自の表現性やセンスが足りないとされ、美大には落ちた。本人としてはいつかそういった評価を見返したいと考えている。
それはそれとして、絵で食っていく為に『絵描き』としての仕事に拘るつもりはない。街で通行人の似顔絵を描く事もあれば、アニメやゲームキャラのイラストを某祭典で販売する事も。
どこがとは言わないが『B』。どこがとは言わないが。
ぼさぼさの黒髪で、猫背。皮肉気な笑みを浮かべているが、顔立ち自体は整っている部類。
『犬吠埼芽衣斗』
種族:獣人
LV:10
筋力:28 怪人時:33
耐久:26 怪人時:31
敏捷:30 怪人時:35
魔力:32 怪人時:変化なし
異能:怪人化・生活魔法
備考
同じくクラン『アルフ』に所属する冒険者。元々は男性だったが、『回帰の日』に異能者として目覚めた事で種族が『キキーモラ』に。その影響でTSする事に。
見た目は灰色の髪をボブカットにした美女。服装は常にメイド服。それ以外に着れる服は『女中用の着物』『メイドビキニ』『元祖メイド服という名の麻の服、ロングスカート、頭巾スタイル』のみ。普通の服を着るとメイド因子が暴走する。
常に男だった頃の自我が喪失しかけており、段々と瀟洒なメイドさん化している。もはや、意識しなければ元々の口調で喋れない。
メイド因子を発散する為、時折クランメンバーを奉仕のサンドバッグにしている。主に私生活がダメ過ぎる絹江と、村にダンジョンが13個もあって大変なたつみん。
なお、元々の人格が『法律を犯していないだけでかなりのダメ人間。というかたぶんいつか違法な事やらかす』感じだったので、周囲の人間からは『もうこのままメイドさんになった方が良いのでは?』と思われている。
どこがとは言わないが『H』。どこがとは言わないが。
また、何がとは言わないが『二刀流』である。何がとは言わないが。
怪人化した姿は、特撮の格好良い悪役怪人の様な姿。カラスと狼が混ざった様な異形である。
『生活魔法』は偶にあるチートなアレコレではなく、マッチレベルの火を出したり、ドライヤーレベルの風を出したり、半径1メートルのゴミを集める等の異能。日常生活においてはある意味でチートかもしれない。
メイド因子が暴走している際にマスターへ弟子入りし、プロレベルの料理スキルを身に着けている。また、掃除洗濯裁縫も本職のメイドさんが唸る程。
たぶんもう手遅れ。というか魂の形状がメイドなので『変若の血潮』とかそういう固有異能でも戻せない。本人は一応諦めていないが。
●登場した魔物
『アーデルブラント』
筋力:23
耐久:25
敏捷:22
魔力:26
異能:呪毒魔法・念力魔法
備考
巨大な頭蓋骨の姿をした魔物。対象を呪い、衰弱死させる。
耕太がこの魔物にとって天敵とも言える固有異能があったので、ただの『生前ストーカーで現在はた迷惑な悪霊』という扱いをされたら、一応日本の冒険者でも初心者には厳しい相手。でも逆を言うと初心者でも狩れる。
『サラマンダー』
筋力:43
耐久:42
敏捷:46
魔力:48
異能:炎の息吹・炎の皮膚
備考
馬ほどもある巨大なトカゲ。首が長い。
日本の冒険者界隈において、中級から上級でなければ戦えないとされている。適性レベルは4人パーティーで『LV:20』ぐらい。
耕太が炎にビビっていただけで、あの段階でも圧倒できるステータスではある。しかし、地形が人間の足には向いていないので注意が必要。
『レッサーデーモン』
筋力:55
耐久:50
敏捷:47
魔力:54
異能:深淵魔法・毒の爪
備考
たつみんの地元にある13個のダンジョンの1つを根城にする魔物。
ズメウほどの知能はないが、それでも並の魔物よりは知能が高い。また、近接戦も魔法戦も可能。『深淵魔法』は人の身では使えない術であり、物理的な破壊力を強めた呪毒魔法とも言うべきもの。
強力な魔物だが、『破邪』系統の魔法に滅法弱い。
●ボスモンスター
『フルカス』
筋力:70
耐久:65
敏捷:60
魔力:70
異能:火炎魔法・占術・魔法理解
備考
今回レッサーデーモン達を率いた魔物。ソロモン72柱の一角であり、唯一騎士の位を持つ存在。
その見た目と『突き刺す者』という名前に反し、実は本来戦闘は門外漢。また、騎士の位とは貴族の階級としてはかなり低いものである。
つまり、ソロモン72柱の中では『弱い部類』。
人間並かそれ以上の知能を持ち、自衛隊の間引き部隊を上手くやり過ごして兵力をため込んでいた。そして、間引き部隊の周期を読み切り、彼らの不在時に地上へ打って出た。
『魔法理解』の異能は、初見の魔法だろうとその術理を理解するもの。人間の脳では、扱いきれない。これにより、封鎖所の結界をすり抜けて出てきた。
最期は『破邪』の魔法を受け、消滅。魔石へと変わる瞬間まで、愛馬から降りる事はなかった。
●Q&A
Q.
冒険者の初心者とか中級者とかって、どの辺が基準?
A.
実は、作中世界ではまだその辺が定まっていません。現在、対霊庁が頑張って策定中です。
各クランで大雑把な基準を設けていたり、自衛隊や警察でそれぞれ決めていたりします。何なら海外でも勝手に基準が作られているので、かなりカオスです。
メタ的な視点で言うと、現在は『LV:10までが初心者』『LV:20までが中級者』『それ以上は上級者』ですね。
ただし、異能者全体のLVが上がったり、魔物が活性化していくとこの基準も変わります。
Q.
泉原臨時総理は、魔物なの?人間なの?
A.
現状は不明です。公的なプロフィールでは『人間』かつ『非異能者』です。
Q.
作中日本の『回帰の日』以降の内閣ってどんな感じ?
A.
もの凄く大雑把に言うと。
『回帰の日』が発生時の内閣
「なんじゃぁこりゃぁ!?すぐに対処しないと日本が終わるやんけ!既存の法律と組織じゃどうにもならんぞ!?」
「こんな時期に大臣とか貧乏くじじゃ!内閣総辞職って事で強引に対霊庁に強権をシューッ!超☆エキサイティン☆そして我々はクールに政界から去るぜ……」
「あ、火中の栗をツナギ内閣が拾ってくれたら、また戻ってくるから。アデゥー!」
東京で霊的災害が起きるまでの内閣
「貧乏くじ押し付けやがった!?と、取りあえず総理と官房長官以外は、『ツナギの使い潰し要員』で固めて……。官房長官は、若手筆頭で防衛大臣の人気者にお願いしよう」
「対霊庁に与えられた強権は、他との調整の為に一旦はがして、でも段階的に渡す感じで。同時に、国内の異能研究と、法整備を進めて……兎に角、異能者を上手く使える仕組みを作らないと」
「え?新しい防衛大臣?どうせツナギだし、適当な奴で今はいいや」
霊的災害で前の内閣の主要メンバーが泉原以外全滅後の内閣
「泉原誠防衛大臣、臨時総理として就任!対霊庁に渡されていた、異常な強権は取り上げ、各省庁との連携こそ重視するぞ!あと、他にも新しいポスト……もとい、必要な省庁を作るのだ!」
「まずは東京、いいや関東圏に絶対防衛線を敷く!地方は下位の冒険者で対処!その間に東京で練り上げた猟犬で、日本全土を守れる様にするのだ!」
「とりあえず、無駄に増やした避難所は撤去!都市部の避難所に集中だ!」
って感じですね。なお、『回帰の日』時の内閣が東京の霊的災害に巻き込まれていないとは言っていない。
Q.
『ヴァルハラ』と『アース』って繋がっているの?
A.
表向きは別組織で、偶に協力するってだけですね。
裏ではズブズブです。
Q.
並行世界のロッソさん、『ヴァルハラ』堕ちでそのまま……。
A.
実は並行世界の彼女、『ヴァルハラ』の手引きで警察から逃げるも、本部に行く前にきな臭さを察知して脱走しています。悪化した人間不信が、功を奏しました。
ただし、潜伏中もあちこちで異能者と非異能者の諍いを見ているので、どんどん人間という種への感情が……。
Q.
本編時空の異能者と非異能者の雰囲気って、どんな感じ?
A.
わりと改善してきています。異能者の犯罪者を異能者が止めたり、霊的災害に地方の異能者が対応してくれているので。『アレ、もしかして異能者も普通に人間なんじゃ?善人と悪人がいるってだけじゃね?』となってきています。
ただし、やはり未だ薄氷の上。『ちょっとの切っ掛け』で、風の流れは変わるでしょう。
Q.
本編時空と並行世界。耕太はどっちの方が強い?
A.
本質が同じ存在なので、最終的な強さは互角ですね。
ただ、本編の方が修羅場潜っているし、精神に余裕があるので確実にこっちの方が強いです。
並行世界の方だと、学校や近所からの虐めでメンタルボロボロになった結果『スクロールの応用・開発』とか出来ずに、惰性で普通(当社比)のスクロール手書きで作っているだけなので……。
Q.
並行世界だと、たつみんは……。
A.
お察しの通り、フルカスとの戦いで死亡しています。彼女のお葬式は、生き残った村人達とマスターが協力して行いました。
命懸けで戦い、その結果村人の半数を救った彼女の死ですが、あの世界線だともう非異能者と異能者の溝は修復不可能な領域です。対立は、もう止まらないでしょう。
Q.
まともな非異能者枠、はよ。
A.
松田君がおるじゃろ、というのは冗談として。次の章までお待ちください。
非異能者でもまともな人はまともです。異能者も非異能者も、どちらも人なのですから。
たぶんマー●ル市民程ではないはず。
Q.
非異能者のまとも枠と言えば、耕太の中学時代の友達って。
A.
彼は、世間が異能者への排斥を強めると耕太を心配して会おうとします。逆を言えば、異能者への排斥が強まらないと『俺がいなくても、大丈夫だよな……?』と接触しません。
たぶん並行世界だと、次の章あたりの頃に死にます。
シナリオ部長
「耕太君の心を癒す存在だよ!具体的には、彼と再会してまた一緒に遊ぶ様になって、SAN値が1D3ぐらい回復するよ!」
「その後に彼の遺体を見てSAN値が1D6+1ぐらい減るだけだよ!あと『呪い』を残すけど、おかげでこれから沢山戦えるから+だね!」
「でも、せっかく再会したお友達を魔物から守れないだなんて……もう、耕太君のお茶目さん☆」
●おまけ 耕太達がフルカスと戦っている頃。とある戦いの記録
サイド なし
東京と言っても、全てが都会なわけではない。
農業用のハウスと山々が目立つその場所で、2つの影が衝突する。
硬質な、鋼同士がぶつかった音。互いに弾かれた影の内、片方が膝をついた。
「はぁ……はぁ……!」
それは、美しい少女だった。
灰色の髪を後頭部で纏め、古代ヨーロッパを彷彿とさせる衣服に身を包んでいる。
両手足に革製の籠手と脛当てを装備し、目元に巻かれた黒い布で両目を覆われていた。
健康的なその肢体には、幾つもの傷が刻まれている。軽い裂傷もあれば、とめどなく血が流れている傷もあった。
「くくく……かかかかかっ!」
それに相対するのは、妙齢の女性。
豪奢なドレスを身に纏い、長い茶髪を夜会巻きにしている。
だが、その華やかな衣服とメイクに反し、彼女の両腕は肩から先が無骨なガントレットに覆われていた。
狂笑をあげるその美女は、嘲る様に片膝をついた少女を指さす。
「無駄なんだよぉ!アタシの固有異能は最強だ!その上、警察が犯罪を立証する事もできない!この意味が分かるかぁ?なぁ!」
大仰に、その女性は両手を広げる。
戦いの最中だというのに、あまりにも無防備な行動。だが、彼女はそう思っていない。
「アタシは、神に選ばれた!いいや、アタシこそが、神!そのものだって事なんだよぉ!」
余裕。その傲慢な精神と、それに見合った異能者としての才。
ガントレットに取り込まれた犠牲者達の魂があげる怨嗟の声をBGMに、彼女は酔いしれる。
不愉快な哄笑を聞きながら、目元を黒い布で覆った少女が……『百目鬼穂鶴」が、得物を杖代わりにして立ち上がった。
その姿に、美女は眉をしかめる。
「なんだよ。まだやるってのかぁ?たっくよぉ……いい加減飽きてきたぜ。ろくに悲鳴をあげねぇから、つまらねぇんだよお前。痛覚あんの?ちゃんとさぁ」
「痛覚なら……ありますよ……『まだ』」
「あっそ。で、その『木刀』でまぁだ戦うってか?」
ガントレットに包まれた指が向けられた先。穂鶴の手には、朱で不可思議な模様が描かれた、木刀がある。
互いの得物がぶつかった際、金属同士が衝突した音がしたというのに。
それはつまり、この木刀が超常の物体である事を示している。
「お前も運がねぇよなぁ。折角の固有異能が、そんな貧相なものなんてよぉ」
「……私は、自分が不運だなんて思った事。人生で一度もありません」
両の足で立った穂鶴が、しっかりと木刀を構える。
「そうかよ。つくづく気に入らねぇガキだぜ。人の『狩り』を邪魔しておいて、私は正義のヒロインでーすって面しやがって」
「だ……め……逃げて……ほづ、る……」
そんな彼女の耳に、幼馴染の声が届く。
穂鶴の背後。10メートルほどの距離に、金髪の少女が倒れていた。
妖精の様に愛らしい彼女の顔は土と血で汚れ、右手足が歪な方向に曲がっている。
『金木菜々美』は、ボロボロの姿でなおも戦おうとする親友を止めようと、必死に左手を伸ばした。
しかし、その指先は、届かない。
「そこの金髪ぅ。お前は良い声で鳴くから好きだぜぇ?」
ガントレットの美女が、にちゃりとした笑みを浮かべる。
「お前はもっと不運だよなぁ。そこの灰色のを庇って、ボロボロになってよぉ!目が見えないくせに戦場に出たそいつを、存分に恨むがいいさ!」
「……ごめんね、菜々美」
「ちが……ほづ、る……!」
「そうそう!ちゃーんと謝っておけよぉ!アタシのガントレットの中で同棲するんだからなぁ!先に仲直りしておかなきゃぁなぁ!」
ガシャリと、美女が両手のガントレットを鳴らした。
「ま、『消費』されるまでの短い間だ。別に、仲直りの必要はないかぁ!」
「だめ……ほづる……にげ……!」
「ごめん。本当にごめん。『また』、約束を破っちゃう」
いつの間にか、穂鶴の左手に銀色の短剣が握られていた。
ここにきて新たな武器を出してきた事に、ガントレットの美女は警戒から表情を引き締めた。
だが、すぐにその赤い唇を歪める。
何も恐れる必要はない。あの『転移使い』と違って警察に捕捉すらされず、人を殺めてきた自分に勝てる人間などいないと、彼女は思っていた。
そう、思い込んでいた。
「何をする気か知らないがぁ……終わりだよぉ!小娘ぇえええ!」
両のガントレットから、膨大な赤い魔力の渦が放出される。
それは彼女の身体能力を飛躍的に上昇させ、絶対なる破壊力を拳に与えた。
この場にいる者は知る由もない事だが、あのガントレットに覆われた拳の破壊力は───とある魔神のランスチャージに匹敵する。
大地を踏み砕き、美女は狂気の笑みと共に突撃した。
「ぶっ潰れなぁあああ!」
振り上げられた拳が迫る中。灰色の少女、穂鶴は。
己の胸に、銀の短剣を突き立てた。
その光景にガントレットの美女は驚愕し目を見開くも、腕を止める事はない。むしろ、少女の『魂』を逃がすまいと加速する。
たった3人しかいない、土の地面が目立つその場所に。再び、轟音が響き渡る。
「なっ……」
だが、衝突した彼女らが弾かれ合う事はない。
「ん、だとぉおお……!?」
穂鶴が片手で握る木刀が、鉄拳を見事に受け止めているのだから。
無造作に振るわれた右腕によって、ガントレットの美女が弾き飛ばされる。
「ぐぅ……!」
数十メートルの距離を吹き飛ぶも、彼女は両腕を地面につけて転倒を免れた。
血走った両目で、ガントレットの美女は穂鶴を睨みつける。
「どういう手品だぁ……!?このアタシが、力負けしただとぉ……!」
「貴女を、犯罪者として警察に突き出すのは難しい」
ガシャリ、と。1歩踏み出した穂鶴の足が音を出す。
爪先から、彼女の左足が金属へと変化していく。球体関節の、眩い銀色の義足へと。
親友の太腿の半ばまでが無機質な物体へと変わっていく光景を、菜々美は涙を浮かべてながら見つめ……痛みと魔力切れから、意識を落とした。
「たとえ、傲慢だとしても……それでも、私が。私の異能がっ」
穂鶴の持つ木刀が、形を変える。
それは、弓。瑞々しい葉で彩られた、神々しい輝きを放つ、西洋の弓。
「───貴女を、裁く!」
「───小娘ぇがぁあ!」
銀色を纏う灰色と、赤色を纏う黒色が、何度目かの衝突をする。
これは、歴史に残らぬ戦い。これは、日の目を見る事のない記録。
とある少女が、己を生贄に我を通した姿を、分厚い雲のベールによって月も太陽も見守る事はなく。
代わりに、偽りの神を名乗る存在だけが、遥か遠くから観測していた。
読んで頂きありがとうございます。
感想、評価、ブックマーク。励みになっております。創作の原動力になっていますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。




