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雑種と未来人の現代ダンジョン  作者: たろっぺ
第一章 雑種と未来人
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第三話 顔合わせ

第三話 顔合わせ




 突如現れた人型ロボットに、開いた口が塞がらない。面頬がなかったら、もの凄いマヌケ面を晒していたと思う。


 ずんぐりとした人型ロボットは暫しこちらを見つめた後、首を360度回転させて周囲を見回した。


 そして、家の表札やシャッターの下りた店舗の看板を凝視する。


『……W■■■……■■p■■……■■■……!?』


 スピーカーでもあるのか、ノイズ混じりに声が聞こえてきた。分かり辛いが、英語だという事は何となく理解できる。


『L■……■d……■■……SUPER・SUKEBE……!』


 やっぱり知らない言語かもしれない。


 再び自分の方を見たかと思えば、とんでもない暴言を吐かれた気がした。


 よくわからない空気が流れる中、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。警察が来てくれたらしい。


 灰色のロボットは、突如方向転換。自分に背中を向け、足裏のローラーを回転させた。


 モーター音を響かせ、ロボットが走り去っていく。かなりのスピードだが、華麗なコーナリングで横の道へと入っていった。


「……なんだったの、いったい」


 呆然と呟く自分に、答えてくれる人は誰もいなかった。



*    *    *



 あの霊的災害から、2日。月曜日。


 4月の上旬という事もあり、まだクラスメイトの顔と名前も一致していない教室へと、重い足を運ぶ。


「お、おはよー……」


 ぼそりと、小声でそう言いながら教室へと入った。ドア近くにいた生徒が、驚きつつも返事をしてくれる。


 それに愛想笑いをどうにか浮かべながら、自分の席についた。


 ……あの霊的災害での死者は、0人だった。


 奇跡としか言いようがない。あの場所に発生した『迷宮』が小規模であり、なおかつ出現した魔物がスケルトンという、比較的弱い部類だったのは不幸中の幸いだった。


 その奇跡に、自分が貢献したのだから変な気分になる。無意識に唇が弧を描くのを、慌てて戻す必要があった。


 しかし、あのロボは何だったのだろう。誰かの異能だったのだろうか?それだけが、未だ疑問である。テレビでも、その辺りはやっていなかったし。


 まあ、そもそもあの一件は夕方のニュースに10分だけ流れただけなのだけど。


 驚く事に、ほぼ同時刻に東京でも霊的災害があったのである。しかも、スケルトンより結構強い魔物が出現したと聞いた。死者も多数出たと、アナウンサーが神妙な面持ちで言っていたのを覚えている。


 その状況で、異能者の女子高生が友人と共に避難所守って戦ったのだ。件の女子高生達が美少女な事もあって、話題は全部そっちに持ってかれてしまった。


 だがしかし。ここは東京から遠く離れた、ド田舎という程じゃないがプチ田舎。話題にするなら、身近な方のはずだ。


 しかも、現在の自分の顔は……自分で言う事じゃないが、結構なイケメンである。ついでに高身長な細マッチョ。


 ありがとう、ハーフエルフになってイケメンになった父さん……ありがとう、ハーフ鬼女になって美女になった母さん……。


『回帰の日』以前までは家族3人揃ってモブ顔だったが、今は違う。読者モデルにだって、なれるかもしれない。


 なお。美男美女化した上に、種族の影響か若返った両親のラブラブっぷりは増した。元々『行ってきます』のキスをする2人だったが、そのキスの時間が長くなっている気がする。


 まったく関係ないけど、自分は今、現在冒険者になった事と同じぐらい1人暮らしに憧れていた。


 あとこの前、母さんがもの凄く気まずい顔でちょっとお高いイヤホンを買ってくれました。うん、これも関係ない。関係ないったら、ない。


 閑話休題。つまり、現在の自分は『イケメンかつ、人々の命を救ったヒーロー』なのだ。これはクラスの人気者になる。間違いない。


 ヘイカモン!質問カモン!勇気を出して、皆話しかけて!


 ……お前が勇気を出して話しかけろよとか、そういう心無い言葉はやめてね。


 自分で自分の言葉に傷ついていると、他の女子生徒に押し出される様にして、1人の女子が近づいて来た。


 未だ名前を覚えられていないが、高校に入学して初めての女子との会話。


 緊張しながら、全力で自然な笑みを浮かべようとする。


 ……頑張れ、僕の表情筋!


「あ、あの、矢広君。ちょっと良い?」


「うん。だ、大丈夫……だよ?」


 その女子生徒は困った様に視線を彷徨わせた後。おずおずと尋ねてくる。


「矢広君って異能者、なんだよね。この前霊的災害に巻き込まれたって、本当?」


「うん……まあ。一応」


「そ、そっかー」


 こちらの返答に、女子生徒は何度も頷いた後。


「じゃ、じゃあ。それだけだから」


「あ、うん」


 そそくさと、元いた集団に戻っていった。


 彼女らの会話が聞こえてくる。小声だろうが、エルフ混じりかつ教室内での事だ。自分の耳は、ハッキリと音を拾った。


「やっぱり本当なんだって……」


「ええ……!じゃあ、あの噂も?」


「本当なんじゃない?」


 女子生徒が、真剣そうな声音で続ける。



「異能者は、魔物を引き付けやすいのかも……!」


 ……そっかー。



 大きく『へ』の字となる口元を隠す為に、机に突っ伏す。


「怖いよねー……もしかして、この教室も危ないのかな?」


「ちょっと、やめてよ……!私、まだ死にたくない……!」


「矢広君、転校とかしてくれないかな……」


「でも、本人に何か言うの怖くない?呪われるかも……」


「私聞いたよ。この前ね、隣町で不審死が起きたんだって。きっとそれも異能者が……」


『回帰の日』から、2年。


 異能者と非異能者の間には、すっかり溝が出来ていた。


 超能力や魔法を得たとして、人は何をするだろう。スーパーマンの様に人助け?未知の物質の創造や研究?生活の中で何気なく利用するだけ?


 勿論、大半の異能者はそうなのだが……犯罪に使う者も、少なくない。


 なんせ、密室殺人も金庫から宝石を盗む事も、人を洗脳する事も異能次第では可能だ。


 自分だって、やろうと思えば証拠を残さずに人を殺せる。やろうと、思わないだけで。


 ざわざわと賑やかな教室で、彼女らの様な会話をする生徒は他にも沢山いた。


 ……あー。


 教室で、霊的災害とか起きないかなー。


 そんな不謹慎な事を考えながら、今は兎に角タヌキ寝入りをする事にした。



*    *     *



 そんな悲しい学校生活が過ぎ去り、土曜日がやってきた。


 バスを使い、喫茶『アルフ』へと向かう。だがその道のりは、前回よりも長い。


 先週起きた霊的災害。『迷宮』が出現したのは、とある独居老人の家だった。そこを中心に、半径1キロは危険区域として現在封鎖されている。


 それで、バスが遠回りをしているのだ。


 もっとも、封鎖もあと2週間か3週間もすれば解除されるだろう。


 政府がその家屋と隣の家を崩し、『封鎖所』を建設するのが、現在の常識となっていた。当然その家の持ち主や近隣住民からの苦情はあるものの、仕方のない事だと当事者となる者以外は受け入れた。


『封鎖所』が完成すれば、立ち入り禁止が解除される。そうしなければ、日本の物流も経済も回らない。国会では、この立ち入り禁止区域の範囲と期間について、今日も会議が行われているとか。


 なんにせよ、苦肉の策ばかりなのが、今の社会なのかもしれない。


 そんな事を頭の中に浮かべていれば、バスが目的地に近づいてきた。座席横のボタンを押してから少しして、目当てのバス停に停まる。


 料金を払って降車し、歩く事3分。人通りの少ない住宅街を抜ければ、喫茶店が見えてきた。


 濃い茶色のレンガと、白い壁が組み合わさった店構え。腰までの高さの立て看板に、ベルのついた扉。


 当時の事なんて知らないけど、昭和のクラシカルな雰囲気が漂う、オシャレな店構えであった。


 恐る恐る、扉を開ける。


「おや、いらっしゃい。矢広君」


 カウンターでコップを拭いていた井上さんが、ニッコリと微笑む。


「あ、はい。どうも……」


「この前は大変だったね。一応電話で無事なのは聞いていたけど、大丈夫?体と、心は」


「はい。その、たぶん。大丈夫です」


「よかった……」


 心底安心したという様子で、井上さんは胸を撫で下ろす。


 ここまで心配してくれたのは、両親以外だとこの人だけだ。駆け付けた警察の人は、忙しかったからか塩対応だったし。


「でも……まだ冒険者は続けるつもりなのかな?ご両親は、なんて?」


「……両親からもやっぱりやめないか、とは言われましたが。でも、逆に、冒険者になった方が良いかなって……自分は、そう思っています」


 緊張からどもりながらになってしまうが、どうにか自分の意思を伝える。


「ああいう事が起きるからこそ、自衛の力が欲しいんです」


 異能者は、魔物を倒す程に強くなる。それこそ、RPGのキャラクターの様に。


 魔物を倒し、その時に散った魔力を吸収。『霊格』が補強され、身体能力や魔力量。更には異能の出力まで上昇する。


 霊格の事を、レベルと表現する人もいるぐらいだ。市役所の対霊課に行くと自身の『ステータス』っぽいのまで見る事が出来るから、ゲーム感覚の冒険者もいると、ネットで聞いたことがある。


 自分の答えに、井上さんは一瞬だけ眉を『八』の字にした後。


「なら……私から言える事は、『安全第一で頑張って』しかないね」


「はい。あの、ありがとうございます……」


「ううん。感謝する必要はないよ。私はクランマスターだからね」


 持っていたグラスを棚に置き、井上さんは少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「そうそう。実は今日、もう1人クランの加入テストを受ける子がいるんだけど……良いかな?」


「へ?」


「直前でごめんね。どうしても早く冒険者になりたいって、必死そうだったから……」


「い、いえ。それは、別に良いんですが」


 緊張するので、本音を言うと良くはない。だが、慣れなければいけない事でもある。


 冒険者は、ソロでの『迷宮』攻略を禁止されていた。最低でも、2人組で入らないといけない。


 ……2人組という単語を思い浮かべただけで、吐き気がしてきた。


 トラウマと戦いながら、どうにか愛想笑いを浮かべる。吐きそう。


「その、大丈夫?やっぱり、別の日にしようか?」


「大丈夫です。集団行動に、慣れないといけませんから」


 ……切実に、ラノベで偶に聞く『プライベートダンジョン』が欲しい。


 まあ、実際に持った場合、バレた瞬間未成年でも実刑判決となるらしいが。本人どころか、その周辺一帯の人間が危険なので。


 何なら、1年前にそれでやらかした異能者がおり、50人近くの人命が失われた事で大ニュースになった。その異能者が1人だけさっさと逃げていたのもあって、余計に世間からの異能者に対するイメージが落ちたのは言うまでもない。


 先程自分で言った通り、集団行動に慣れなければ。そう自分に言い聞かせていると、カランコロンと、後ろでベルの音が鳴った。出入口の前に立っている事を思い出し、すぐに横へ数歩分ずれる。


 移動した後、入店してきた人物に視線を向けた。


「っ……!」


 思わず目を見張る程の美女が、そこにいた。


 濡れたカラスの羽の様な、腰まで伸びた長い黒髪。内側の髪だけ色素が薄いのか、薄紫色に見える。


 切れ長の瞳はアメジスト色で、本物の宝石の様に輝いていた。しかし、刃の様な鋭さを同居させている。この瞳で見つめられれば、魂を奪われるかもしれない。なんて、そんな馬鹿げた考えが頭をよぎる。


 新雪の様に、汚れなき白い肌。ハーフかクオーターなのか、外国の雰囲気を感じる整った顔立ち。ダークエルフである井上さんにも匹敵する、凄まじい美貌であった。


 その上、とんでもないスタイルをしている。


 爆乳。そうとしか表現できない。ダボッとした濃緑のミリタリージャケットの上からでもわかる、大きく育った胸。


 長い手足に、高い位置にある腰。紺色のジーパンに包まれたお尻から太腿のラインが艶めかしい。というかケツでっか。太腿ふっと。でも膝から下は細くて長い。


 もしかしてエッチなソシャゲご出身ですか?と。頭の悪すぎる感想が浮かんでくる。自分で自分の人格が、とても残念なものに思えてきた。


「やあ、小鳥遊ちゃん。よく来てくれたね。ちょうど、君の話をしていたんだ」


 井上さんが、入ってきた女性……いや、少女に微笑む。


 その美しさとスタイルに圧倒されていたが、良く見れば彼女の顔立ちにはまだあどけなさがあった。もしかしたら、歳の頃は自分と同じぐらいかもしれない。


「本日はよろしくお願いします、マスター。それと……」


 小さく井上さんに会釈した後、少女はこちらに向き直る。


 慌てて、自分も背筋を伸ばした。ついでに、視線も胸元から引きはがす。


「そちらは矢広耕太君。今日、君と一緒に加入テストを受ける子だよ」


「っ……!なるほど、貴方が……」


 井上さんの紹介を聞き、少女は深く頷いた後。


小鳥遊美由(たかなしみゆ)と申します!本日はよろしくお願いします!」


 もの凄いハキハキとした声で、ビシリと敬礼をした。


 ……え、なんで敬礼?


「あ、はい。よろしくお願いします……?」


 何故か、満足気に『むふー』と鼻息を吐き出す少女こと、小鳥遊さん。


 ……ミリタリージャケットを着ているし、軍隊に興味があるのだろうか?


 困惑する自分や井上さんの様子に気づいた風でもなく。


「……!」


 小鳥遊さんは、やけに力強い目でこちらを見つめていた。





読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
英語のところ、たぶん 『What happens now!?』(これからどうすれば……?) 『Legendary SUPER・SUKEBE!』(伝説の……スーパードスケベ人……!?) って言ってる…
スーパーすけべ!? もしかして異世界や並行世界に ハーレムきずいたすけべ賢者さんが 親戚にいらっしゃったりします?w
「っ……!なるほど、貴方が……噂のSUPERスケベ!!」 まさか通りすがりのスコープドックの中の人?
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