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雑種と未来人の現代ダンジョン  作者: たろっぺ
第一章 雑種と未来人
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第十三話 異能者としての才能

第十三話 異能者としての才能




 役所で調べてもらえる、異能者の能力値。それもまた、異能の力を利用している。


『鑑定』。数多のネット小説でチート技能扱いされたそれが、異能として現実に現れたわけだ。


 対象の身体能力、そして魔力量を数値化出来るという、前半部分だけでも世界中のスポーツ関係者が喉から手が出る程に欲する異能である。


 それで調べた所、重量挙げの世界チャンピオンの筋力や、現役の100メートル走記録保持者の俊敏は、『20』。スワット等の特殊部隊は『15』で、一般的な成人男性が『10』から『11』だとか。


 で、自分の能力値……ステータスを前に役所で調べてもらった結果は。



『矢広耕太』

種族:ハーフヒューマン・クオーターエルフ・クオーター鬼人


筋力:21

耐久:21

敏捷:21

魔力:21



 ……数値の高さ以上に、綺麗な横一直線な方が正直インパクト強かった。


 まあ、先程ブラックラットを倒した時に『霊格』……レベルが上がった感覚っぽいのがあったので、たぶんこの数値も上昇していると思う。


 兎に角、わりと強い。固有異能もあって、かなり打たれ強い方だ。


 対して、小鳥遊さんのステータスなのだが……。



『小鳥遊美由』

種族:人間


筋力:11

耐久:12

敏捷:16

魔力:10



 ……うん。


 見た目華奢な少女なのに、プロのアスリート並みの身体能力は凄いと思う。


 でも、クマの親戚かと疑うような巨大鼠相手に軍刀で戦うのは、ちょっと無茶ではなかろうか。


 しかも、彼女がもつ異能は『食いしばり』のみ。ゲームだったら神スキル扱いされる異能だが、これ単品かつこのステータスだと現実じゃ流石に……。


 そんな彼女がなぜ、前衛を張ろうとしたかと言うと。


「矢広さんの真骨頂は、後衛であるはず……後方からのスクロールマジックと、固有異能による治癒に専念するのが効率的だと考えたのですが……」


「いやぁ……まあ。理屈はわかるんだけどね?」


 魔法攻撃も出来る回復役。ついでに、スクロール次第で支援魔法も使える。


 あと、魔眼のおかげで魔法の命中率も高い方……らしい。講習会で言われただけなので、実感はないが。


 カタログスペックだけ見ると、確かに『後ろにいろ』という能力はしている。


 だが、ケニングはおいそれと出せないし、そもそも修理中だ。かと言って小鳥遊さんが前に出るのは、危険すぎるだろう。


 ……あと。これを言うと怒られそうなので言わないが、女の子に守ってもらうのは自分のなけなしのプライドが……。


 魔石を拾い上げ、彼女に笑みを向ける。面頬で、分かり辛いと思うけど。


「まあ、うん。取りあえず、事前に決めた通り今度は僕が前衛で……」


「……わかりました。ただ、私には遠距離攻撃手段がありません」


「なら、スクロールを使って援護射撃をお願いしたい……かな?」


 チラリと、小鳥遊さんがこちらの杖を見る。


「いえ、他人の『霊装』は魔力の通りが悪いと聞きますので、お借りしても使えない可能性があります。ならばいっそ、刀を投げて……」


「あ、いや。この杖じゃなくって」


「……?」


 疑問符を浮かべる小鳥遊さんに、リュックに入れていた『とある物』を掌に出現させてみせる。


 それは、木で出来た銃であった。


 中折れ式の単発式拳銃。銃口の部分には、ビー玉がくっついている。


 塗装もされておらず、一見すればただの玩具でしかない。だが、見る者が見れば内包している魔力がわかるはずだ。


「これを使って、スクロールを使ってみてくれる……?」


「……まさか、魔道具?」


「うん。自作だけど」


「自作!?」


 驚いた様子で、小鳥遊さんが拳銃……正確には、拳銃型の杖とこちらを交互に見比べてくる。


 ちょっと照れくさい。作った後に部屋の引き出しに放置していたが、今日彼女が前衛に挑戦すると聞いて、持って来たのだ。


 何を隠そう、これは『変若の血潮』を使って育てた木を使っている。


 木と言っても、観葉植物程度の大きさだ。庭にホームセンターで買った種を植えて、固有異能を使ってみたのである。


 どうせ失敗するか、成功しても大きくなるのは時間がかかるだろうなー……と、思っていたのだが。


 植えた翌日、肩ぐらいの高さになっていて親と一緒に驚いたものである。


 そうして育てた木を使い、スクロールの『芯』を自作しているわけだ。その最中に、遊び半分で作ったのが、コレである。


 素人の作品だけあって、色々と雑な所は多い。使いづらい上に壊れやすいが、魔法の発動だけなら出来るはずだ。


「霊木から切り出した、魔道具……本当に、お借りして良いのですか?」


「そんな大袈裟な……別に、壊してしまっても良い物なので」


「い、いえ。大切に使わせて頂きます」


 やけに丁寧な手つきで、小鳥遊さんが杖を受け取った。


「グリップの上についている棒を後ろに引っ張ると、銃身が開くよ。装填したら閉じて、引き金を引きながら魔力を籠めればそれだけで使えるはずだから」


「……わかりました」


「あと、これ。スクロール。使い易い、『風弾』を10個」


「はい」


 彼女がスクロールを受け取ったのを確認し、正面に向き直る。


 仕事に関する事なら、スムーズに喋る事が出来る様になってきた気がした。コミュ障からの脱出も、近いかもしれない。


 こっそりとガッツポーズをした後、剣を鞘から抜く。


「じゃあ、その、行こうか?」


「はい。ですが、その前にお聞きしたい事が」


「え、なに……?」


 どうしたのかと振り返り、直後に視線が胸に吸い寄せられるも、慌てて上を向く。


 彼女の顔をジッと見つめて、どうにか誤魔化した。


「スクロールを惜しげもなく使っている様ですが、数は大丈夫なのですか?1つ作るのにも、それなりの時間を要すると聞きますが」


「あ、うん。今のところは大丈夫。家に700本ぐらいあるから」


「なっ……」


 こちらの答えに、小鳥遊さんが絶句する。


 うん。自分でも『時間あまり過ぎだろ』とは、作ったスクロールを眺めていると思う事があるので。彼女のリアクションは尤もだ。


 1日に作れるのは、魔力の都合で4本。ただ、午前午後で途中魔力の回復時間を入れるのなら、8本はいける。


『回帰の日』から2年。受験もあったし、サボった日もあるから、流石に4桁には届かなかったが、すぐに弾切れとなる心配はない。


 ……友達いなかったので、時間はわりとあったのだ。


 中学時代。最初の頃は『雑種~』とふざけ合っていた友人達も、テレビで異能者の事件やら何やら増えると、疎遠になっていたものである。今では連絡も取り合っていない。


 それからだろうか。こんな、自分でも呆れるぐらい他人と会話するのが苦手になったのって。


 ……あ、何か泣きたくなってきた。


「そんなわけだから、気にせず使って」


「……わかりました。貴方を普通の尺度では考えない事にします」


「え?いや……まあ、どうも?」


 よく分からないが、褒められている気がするのでお礼を言っておいた。


 正直、他の人がスクロール作りにどれぐらいかけるのか知らないし。ただ、自分みたいに材料をすぐ手に入れられない人も多いだろうから、苦労はするかもとは思う。


「あ、そうだ。その、出来ればで良いんだけど……今度、あのガレージの機械で、スクロール作りを手伝ってもらえたらなって……」


「勿論です。ご自由にお使いください。私も、修理の合間でよければ手伝います」


「あ、ありがとうございます……」


「いえ、こちらこそ」


 面頬の下で愛想笑いを浮かべながら、小鳥遊さんに会釈して前へと向き直る。


 ……ダンジョン探索の空気じゃないな。


 意識を入れ替えようと、再び深呼吸をする。自然と、額の角へと意識が向いた。


 鬼の血なのか、闘争欲が少しだけ湧く。我を忘れる程じゃないから、こういう時便利だ。


 剣を手に、ゆっくりと歩き出す。今度はナビ役を小鳥遊さんに任せ、通路を進んだ。


 まるで、大きな都市の下水路だったかの様な、ブラックラットの住処。そこに自分達の足音が響き、数分が経過する。


 時計を見て時間を確認するかと思った所で、微かに別の足音がした。


「っ!」


 咄嗟に立ち止まり、剣を構える。直後、数メートル先の曲がり角からブラックラットが現れた。


 基本的に1体で行動するこの魔物だが、運が悪い事に2体いる。比較的こちらに近い方の個体が、牙を剥いて飛びかかってきた。


 こっわ……!?


 大きく開かれたげっ歯類の口に、本能が悲鳴を上げる。だが、自分の両目は正確にその動きを読んでいた。


 未来視により、軌道を把握。相手の頭部目掛けて、剣を振るった。


 ガツン、と。刀身と骨がぶつかる音がする。ハッキリとした手応えが腕に伝わり、鮮血が床を濡らした。


『ギァッ!?』


 悲鳴を上げ、ブラックラットがよろめく。その頭からは、ボタボタと赤い血が流れていた。


 生物を切りつけた嫌悪感を闘争本能で上書きし、続けて逆袈裟に剣を振るう。避けようとした魔物だが、その動きもまた視えていた。


 強引に斬撃の軌道を変え、顎を捉える。腕の筋肉が引きつる様な痛みを発したが、すぐに消えた。固有異能により、治ったのだろう。


 片刃の刀身が皮も肉も断ち切り、骨をかち割って食い込んでいた。切っ先の部分は、喉の辺りを裂いている。


 目の前の個体から、力が抜けた。刀身にズシリと重さが加わったかと思えば、もう1体がこちらへ跳びかかってくる。


『ヂヂヂッ!』


「この……!」


 剣が抜けない。ならばと、左の拳を振りかぶる。


 相手の前歯がこちらに届くより先に、殴り飛ばす。そう考えながら腕を振るおうとした瞬間、魔眼が別の未来を視た。


 咄嗟に腕を引っ込めたのと、不可視の鉄槌がブラックラットに直撃したのが、ほぼ同時。


『ギィ!?』


 宙を舞ったブラックラットが壁に叩きつけられ、重い音が通路に響いた。


 眼前の個体を蹴り飛ばして刀身を引き抜きながら、一瞬だけ後ろを振り返る。そこには、素早く次弾を装填している小鳥遊さんがいた。


 だが、彼女が撃つまでもない。顎を叩き割ったブラックラットが消滅するのを横目に、残る1体へと駆け寄る。


『ヂ、ギ……!』


「しゃぁ!」


 ふらついているブラックラットの首へ、思いっきり剣を振り下ろした。肉厚の刃が、走って来た勢いもあってすんなりと骨にまで届く。


『ヂィィィ!?』


「い……!?」


 思ったより大きな悲鳴が鼓膜を揺らし、つい柄から手を放しそうになった。


 だが、慌てて刀身を押し込む。僅かに暴れたブラックラットだったが、すぐに動かなくなった。


 魔物が黒い靄となった後、数歩後退。周囲を見回して、他に敵がいないのを確認する。


「ふぅぅ……」


 大きく息を吐いて、暴れている心臓をなだめた。


 命を奪う感覚というのに、まだ慣れていない。興奮よりも罪悪感が勝るのは、人として正常な証と思うべきか。


 返り血の残っていない刀身を見て、心を落ちつける。相手は真っ当な生物じゃない。お化けみたいなものだ。そう、自分に言い聞かせる。


「お疲れ様です。怪我はありませんか?」


「え、あ、はい」


 慌てて小鳥遊さんに振り返り、背筋を伸ばす。


 彼女はこちらの無事を確認すると、小さく頷いて足元に落ちた空のスクロールケースを取ろうとした。


「あっ」


 しかし、指に触れた瞬間、金属製のケースは淡い粒子となって消える。その中身は灰しかなく、そちらも空気に融けていった。


「あ、それは、回収しなくて大丈夫。魔力で構成された物だから……」


 あのスクロールケース。実は『霊装』の部分展開である。おかげで、放置してもゴミにならない。


 そしてスクロールは使ったら内部の魔力を使い切り、灰となる。こちらはゴミとなってしまうが、ダンジョン内の場合、ああいった『魔法の残りかす』はダンジョンが吸収してしまうのだとか。


 詳しい原理は、自分も知らない。ただ、ダンジョンの養分としては誤差程度のもの。しかも魔物を倒しているのでむしろ内部の魔力量はプラマイで減っている。


 ……と、対霊庁のホームページに書いてあった。


 自分以外のスクロール使いが、その辺を既に調べてくれたのだろう。ありがたい話だ。


「小鳥遊さんも、お疲れ様。援護、ありがとう」


「はい。これなら、私もお役に立てる様です」


「うん。その、お願い」


「はっ!」


 無表情ながら、小鳥遊さんの頬がほんのりと赤くなっている気がした。


 元気よく返事をしながら敬礼する彼女のお胸が、たゆん、と揺れる。


 自分でも鼻の下が伸びるのが分かったが、面頬のおかげでバレなさそうだ。


 すぐに視線を床へと向け、魔石を回収するのだった。



*    *     *



 ダンジョンに入って、約2時間。


『封鎖所』の一室に戻り、安堵の息を吐きながら『霊装』を解除した。背中にリュックの重みが加わるも、むしろ肩が軽くなった気がする。


「無事、帰ってこられたね」


「はい。お互いに負傷がない様で何よりです」


 前衛として戦えないと凹んでいた小鳥遊さんだったが、もう切り替えが済んだらしい。いつもの淡々とした口調が返ってくる。


 ……それはそうと、早く『霊装』を解除してほしい。


 薄い生地越しに見える谷間や鼠径部から、必死に目を逸らす。眼福であると同時に、目に毒な格好だ。


 どうにか、魔力の通った布を見つける必要があるかもしれない。でなければ、自分の心臓が持ちそうになかった。


「えっと。じゃあ、後は『アルフ』に行って魔石を預かってもらうで……いいよね?」


「はい。問題ありません。というより、他になかったかと」


「あ、うん……」


 咄嗟に別の話題で気を紛らわそうとしたが、失敗した。


 基本的に、ダンジョン内で得た物品を売買する事は禁止されている。


 魔石等は所属しているクランに持ち帰り、そのクランが報告書と一緒に市役所へ提出。そこから県庁を経て、対霊庁に……という流れだ。


 そして、国から支払われた報酬をクランが月末に冒険者に分配する……らしい。


 何というか、色々と面倒な仕組みだ。まあ、一部のクランや冒険者は、『裏社会』にダンジョンで得た品や、異能で作った道具を売っているという噂もあるけど。


 閑話休題。魔石は、『回帰の日』から2年が経った今も未知の代物である。


 だが、使用方法は部分的にだが分かってきていた。燃料である。


 長時間火に晒すと、魔石は燃えるらしい。しかも物凄い勢いで。それでいて、化石燃料程の二酸化炭素は出さないのだとか。


 よって、これを使った火力発電が出来るのではないかと、期待されている。何なら、アフリカの方では既に現地の異能者が燃料として生活に使い出していると、ニュースで見た事があった。


 それ以外にも、異能で作る魔道具や魔法の薬の材料にもなるらしい。スクロールにも使い道はあるが……自分は、固有異能で色々と代用出来るので無縁である。


 そんな次世代の燃料である魔石のお値段は……小指の先ぐらいの物で、なんと───。



『1万円』



 今回の探索で回収した魔石は7個。7万円分の稼ぎとなる。2人で割ると、3万5千円だ。


 1日に高校生が稼いだ金額と考えると、破格である。しかし、危険な目にあってこの金額は、正直少ない様に思えた。


 何でも、猟師さんへの報酬を基準に、国会で政治家さん達が話し合って決めたらしい。


 ここから税金とか冒険者免許の更新費用、そして政府がやっている冒険者用の保険分が引かれるわけで……正直、裏ルートに手を出す人の気持ちも、分からないでもない。やらないけど。


魔石が本格的に火力発電所で使われる様になったら、もっと高く買い取って貰えるのだろうか?


 そんな事を考えていると、いつの間にか小鳥遊さんも『霊装』を解除していたらしい。彼女が、余ったスクロールと杖を差し出してくる。


「ありがとうございました。スクロールの代金は、後程」


「あ、いや。大丈夫だから。援護してもらったし……。というか、スクロールの受け渡しで金銭のやり取りは、まだ法律が追い付いていないというか……」


「ですが、タダというわけにはいきませんので」


「……なら、例のスクロール作成の件、電気代とか機械の使用料とか、チャラにしてもらえたらなーって……」


「……それでは足りないのでは?」


「……じゃあ、他にも何かお願いするかも?」


「わかりました。そういう事でしたら」


 納得してくれた様で、小鳥遊さんが大きく頷いた。



「私に出来る事なら何でもします。何なりとお申し付けください」



 ……そっと、両手で顔を覆う。


「?どうしました、矢広さん。まさか、どこか負傷を!?」


「……いえ。体は、健康です」


 むしろ、健康過ぎるのが問題です。


 ……沈まれ、煩悩!!


 この後、バスの中でも小鳥遊さんに体調を心配され続け、罪悪感が尋常ではなかった。


 罪な女だよ、あんた……。





読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
これ推しから直接貰ったグッズ 家宝決定ですね
>『雑種~』とふざけ合っていた友人達 凄い傲慢な金ぴかさんになってるやついそう >植えた翌日、肩ぐらいの高さになっていて親と一緒に驚いたものである。 木じゃなく果実作る野菜とか試してみようぜ!! …
ええやんけ、毎日なんでもしてもらえや!(;`皿´)
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