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人生やり直しには代償が必要なんですが、覚悟は出来てますか?  作者: 釧路太郎
先生とうまなちゃん

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第25話 何を言っているのか全く理解出来なかったですね。

 何でも出来る優れた人間も度を越えてしまうと畏怖の対象になることがある。優秀過ぎるがゆえに妬まれることもあるのだろう。何の欠点も無く非の打ち所の無いような人間であったとしても、世の中にはうがった見方をしてまで粗探しをする者もいるそうだ。

 俺が由貴と血縁関係もなく全くの他人だったとしても同じ学校に通っているのであれば優秀さを耳にすることもあったと思う。学年が違っても噂は聞こえてくるだろうし、接点が何一つなかったとしても由貴の死を悲しんでいたとは思う。実際に、俺とも由貴とも学年が違う生徒たちからお悔やみの言葉を頂いたことが何度もあったのだ。関わりが無かったとしても、由貴の死を悲しんでくれる人はたくさんいた。


「俺は由貴が野球部でどんな事をしてたのか知らないんだけど、君たちにとって由貴ってどんな存在だったのかな?」

「一言で言うのは難しいんですけど、野球の技術以外の事なら何でも知ってるんだなって思ってました。当時はまだ誰も知らなかった理論を知っていて俺たちに教えてくれたってのもあるんですけど、面白い漫画とかもたくさん教えてくれてたんですよ。ユキちゃんはお兄ちゃんの影響で漫画を読んでるって言ってたんですけど、お兄さんって今でも漫画は読んでるんですか?」

「昔ほどは読まなくなったけど、普通の人よりは読んでるかもしれないな。でも、由貴と一緒に漫画を読んだ記憶はないかも。もしかしたら、俺がいない間にこっそり読んでたのかもしれないな」


 俺の部屋に勝手に入って漫画を読むのは構わないのだが、どうせ読むのだったらどんな感想を持ったのか教えて貰いたかった。野球の事だけではなく、俺の知らない由貴の話が聞けたという事だけで彼に会ったのは正解だったと言えるだろう。

 もしかしたら、両親も由貴が漫画を読むことを知らなかったかもしれない。家族でいる時は自分以外の誰かに付き合って自分の事は二の次だと考えているような行動をとっていたのだ。あの時に、俺が由貴に一緒に漫画を読もうと言っていたとしたら、どんな関係になっていたのかなと考えてしまった。


 漫画ではないのだが、小学校低学年だった由貴が真剣に辞書を読み込んでいたことを思い出した。

 俺もまだまだ子供だったので辞書に書かれている漢字は全く読めなかったのだが、由貴はスラスラと読んでいたように思える。もしかしたら、辞書を呼んでいたのではなく極稀に描かれていた挿絵を見ていたのかもしれない。それにしても、小学校低学年の女の子が辞書をじっくりと見ているなんて誰も考えたりしないだろう。俺も仕事柄辞書を使う機会は多いのだが、あんなふうに読み込もうとは一度も思ったことが無かった。

 そんなことが出来るからこそ、由貴は優秀だったと言えるのかもしれない。


「今になって考えるとあの時のユキちゃんの言ってることが理解出来るんですけど、当時は何を言っているのか全く理解出来なかったですね。小さい時からずっと言われてきたことと全然違う事をするように言われてたのに、ユキちゃんが言ってる通りにしてると上手くいくようになってるんですからね。本当にアレは衝撃でしたよ。もしかしたら、ユキちゃんって今の時代からあの時にタイムスリップしてきたんじゃないかってこの前話してたんですよ。そんなわけないのにおかしいですよね。でも、あの時のユキちゃんの知識はそうとしか思えないようなモノばかりだったんですよ」

「ソレって、君以外の人もそう感じてたって事?」

「そうですね。自分だけじゃなく、みんなもそう感じてたみたいです。監督はちょっと違ったみたいですけど」


 今になって考えると、由貴は本当に未来からやってきたのではないかと思う事も多々あった。

 あの時は冷静な子供なのかなと思っていたことなのだが、由貴はテレビに流れていた災害や事件事故なんかの映像を見ても特別何かを感じているようではなかった。あれだけの大災害を自分の目で見てしまうとどんな人間でも感情が表に出るのが普通だと思う。みんながみんな悲しい気持ちになるわけではないと思うし、中には対岸の火事だからと楽しむ人もいただろう。多かれ少なかれ何かしら感じるところはあるのが普通だと思うし、人間なんだからそれが当たり前だとは思うのだけど、由貴はテレビ中の出来事に関して全く関心を持つことはなかった。まるで、何度も見ているCMを見ているのではないかと思えるくらい何の反応も示さなかったのだ。

 彼の話を聞いて思ったのだが、由貴が未来から何度もタイムスリップしてきたのだとしたら、あんなに痛ましい事故や恐ろしい災害に見舞われたとしても自分に被害が及んでいなければ何とも思わなくなってしまうのかもしれない。

 どんなに悲惨な状況になっていたとしても、その状況の終わりがわかっているのなら心配する気持ちも起きなくなってしまうモノなのかもしれないな。


 でも、俺の知っている由貴はどんな結末が待っているのか知っていたとしても、今現在被害に遭っている人を心配するような子供だったはずだ。

 未来がわかっているとしても、無関心でいられるものなのだろうか。俺だったら、これから先どんな未来が待っているのかわかっていたとしても現状に興味は持つと思うし、頑張っている人たちを応援したいという気持ちにもなりそうだ。


 それに、由貴が本当に未来から過去へ行っているのだとしたら、俺も同じように過去に戻って由貴を助けることが出来るという事になるんじゃないか?

 そう考えると、由貴が過去へ行っているという事がこれから先重要になってくるという事だ。

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